2007年09月28日
【フィンランド】「受けてみたフィンランドの教育」実川真由、実川元子

受けてみたフィンランドの教育
【本の概要】
◆ここのところ留学づいている(?)ワタクシが、今日お送りするのは、最近教育面で目覚しい発展をとげているラシイ「フィンランド」の留学体験記。本書の著者の一人で、留学された真由さんのお母さんでもある実川元子さんは、翻訳者ということで、語学のプロ。
高校生の留学体験記の共著者としては、「かなり強力」です。
◆フィンランドと言えば、私にとっては「Nokia」なんですけど、もう一つの顔が「教育」。
かつての「教育大国」日本は、下記サイトをご覧頂ければわかるように、「ゆとり教育」の弊害なのか、得意だったハズの数学でも2003年には6位へと後退しています。
参考:PISA(OECD生徒の学習到達度調査)2003年調査
それに比べると、フィンランドは、読解、科学で1位、数学、問題解決能力で2位と、圧倒的な強さ!
果たしてその秘密は(汗)?

【目次】
第1章 留学前にやったこと第2章 塾のない世界
第3章 英語は書くことに始まり書くことに終わる
第4章 フィンランド語を習得する
第5章 自分をいかに表現するかという国語
第6章 落ちこぼれをつくらない留年というシステム
第7章 白夜とダンス・パーティー
第8章 将来を決める
【ポイント&私のコメントなど】
■本書の構成
◆本書は目次の各章ごとに、まず真由さんが体験談をつづり、その後を元子さんが補足&解説する形式を取っています。真由さんの書かれた部分は、編集者さんの手が入っている(多分)とはいえ、視点としては高校生のものであり、感覚的にニュアンスがつかめなかったり(私がおじさんだから?)するところ、大人である元子さんの解説により、納得することも多々。
このスタイルは、個人的には非常にわかりやすかったです。
以下、気になったポイントと私のコメントを。
■「読む」ということ
◆フィンランドにおいては、高校のテストのほとんどが「エッセー」。ゆえに勉強というモノは、エッセイを書くための「知識を詰め込む」ことに他ならないのだそう。
◆ただし、ただ知識を詰め込めばいいわけではありません。
この辺り、ひたすら「暗記」にいそしむ(?)日本の高校生とはかなり違いますね。しかし、知識を詰め込むだけはテストには臨めないというのも、事実だ。フィンランドのテストが意味することは、詰め込んだ知識について、自分自身の意見を書くことにあるからだ。(中略)
つまり、知識は前提であって、それをどう自分が考えるかという点を先生は見る。私もずいぶん英語のエッセイを書かされたが、先生から返ってくるコメントを見ているうちに、求められているのが、自分なりの物の見方なのだということがよくわかった。
■日本語から考えない
◆英語の授業でのエッセイに悪戦苦闘した真由さんは、それまで「日本語で考えた文章を、辞書を使って英訳」していたスタイルをやめることにします。◆実は私も、語学留学時には、最初から「英語で物事を考える」ようにしていました。そこで、私はエッセイを書くときには英語で物事を考えるようにした。英語で物事を考えると、単語力の貧しさから考える事柄も小学生並みになるが、仕方ない。重要なのは、難しい言葉をわざわざ辞書で調べず、自分の書ける範囲でしっかり起承転結のある文章を書くことだった。
そうしてできた文章は、単語はやはり小学生並みではあったが、今までのエッセイと決定的に変化したことがあった。
それは先生が私の述べたことを理解したことだった。
その結果、真由さんと同じく、思考レベルは「小学生並み」に(汗)。
その代わり、口にできるレベル以上のことは考えられなかった分、1日中頭の中で、英語の独り言を言ってました(笑)。
コレを続けていたせいか、ある時点から急に英語が話せるようになった記憶が。
◆なお、この話の章の解説で、帰国後の真由さんが、出国前に比べて、「非常に論理的になった」という元子さんのお話がありました。
それは喋る内容だけでなく、高校の卒業論文でも発揮されたそう。
私も意識的に「英語で考える」ことによって、「必然的に」論理的な構成にならざるを得なかった経験があったので、このくだりには納得でした。
■「教」と「育」
◆真由さんの視点は、勉強のみならず、フィンランドと日本の「学校教育」そのものについても向けられます。真由さんの高校で一番尊敬されていたエヴェという国語の先生との比較。
自分が学校教育から離れてずい分経っていたので、はじめはピンと来ませんでしたが、言われてみれば、確かに日本の学校教育は、ある意味「しつけ」のようなことまで行うのが当然と、学校側も生徒(の親)側も思っているフシがあります。エヴェは学校ではどんなときも「先生」である。生徒の母親になることも、友達になることもない。どんな生徒と接するときも彼女は教育者の視点を忘れていないのだ。
それでは、日本の先生の役割とはなんだろうか。
日本の学校教育は、「教」より「育」の比率が圧倒的に高いように思える。
日本の学校では、学問を教えることが全てではない。生徒は先生に、ときには親代わりになることを望み、ときには友達のように接して欲しいと願っている。生徒の親でさえもそれを求めているときもある。子どもの生活を正したり、将来ための一般的な教養を教えることを、学校という小さくて狭い場に求めているのが日本の学校教育の現実ではないだろうか。
もっとも私の通った高校は、大学の付属校ということもあって、全くの放任主義であり、普通の高校とはまたちょっと違うのですけど(汗)。
◆また、真由さんによると、フィンランドでは、生徒が先生を「尊敬」していたそう。
これは日本でいうところの「憧れ」とは全く別の、「教育者」としての尊敬になります。
逆に、フィンランドで「育」を重視する日本の学校のような先生がいたら、
とのこと。残念ながら、誰もそんな先生を尊敬しないだろう。
この辺の「先生に対する考え方」も、フィンランドの「教育」の躍進の秘訣なのかもしれません・・・。
【感想】
◆ほんの一部だけ抜粋しましたが、本書は「フィンランド留学」や「フィンランドでの生活」、さらに「フィンランドという国」に関して、幅広い内容が記載されています。特に「家を大事にする」ですとか、「食材は安いけど外食すると高い」(マックでハンバーガーとドリンクのセットで約1200円(汗)!)なんて話は、「フィンランド」を理解する上では、欠かせないことかと。
一方、教育に関しても、「高校卒業後、すぐに大学に進む人は少ない」「留年は別に恥ずかしいことではない」といった、日本との違いが随所に見られました(抜粋せずスイマセン(汗))。
冒頭で掲げた「フィンランド躍進の秘密」にストレートに繋がるかは微妙ですが、その要因の一つである可能性は高いです。
◆また本書では、日本の教育が「暗記中心」であるのに対して、フィンランドは「自分の言葉で考えることにおもむきを置いている」点を指摘しています。
結局、日頃から「考える」習慣がないと、あるレベル以上には達しえないのかもしれません。
今の日本の「受験」について言うなら、「考えることなく解答できる」よう訓練している部分があるのも事実だと思いますし、自分自身が、そういう「反射的に解答する(できる)」習慣と引き換えに「学歴」や「資格」を得てきた以上、言えた義理ではありませんが(汗)。
◆ちなみにフィンランドの「数学」のテストには、計算機(関数計算機らしいです)が持ち込めるそうなので、ハナから暗算能力は問われていない模様(汗)。
そのせいか、お店でおつりの計算もろくすっぽできないフィンランド人に、「数学」でも劣るというのが、悔しいというか何というか。
「暗算」と言えばインド(?)ですけど、そう言えば上記のランキングの「数学」にインドも出てきませんね。
うーん、今、暗算が流行り(?)ですが、暗算ができればいい、ってもんでもないのかも・・・?
◆なお、本書の最初には、真由さんが留学の際に選抜試験に通ったAFSについての紹介もあります。
私の高校のクラスにも、AFSによる留学を終えてクラスに編入した「先輩」が、二人いました。
二人ともアメリカ帰りだったので、てっきりAFSとは「アメリカ留学の機関」だと思っていたワタクシ(恥)。
◆真由さんは、フィンランドでの1年間の単位を認められて、帰国後は同じ学年に編入できたのですが、認められないと下の学年に入らなくてはならないワケで、今の日本の現状では、難しい問題も色々ありますよね。
実際、真由さんのお姉さんも高校時代にAFSでチリに留学したものの、大学時の留学は、その後の就職のことを考えて断念したとか。
日本も、こういうところから改善していって、国際性のある若者をどんどん輩出すべきではないでしょうか・・・と内弁慶のsmoothが言ってみるテスト(汗)。
色々考えさせられた一冊!

受けてみたフィンランドの教育
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【編集後記】
◆昨日、私の仕事中に(笑)、ヨメとムスメは横浜の「アンパンマンこどもミュージアム」に行ってきたとか。そこで買ってきた、ドキンちゃんのパン。

確かに似てます(笑)。
ただ、お値段は、「1個300円」ナリ(汗)。

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本のカテゴリーが集中することは私もあります。違ったジャンルかと思って選ぶと意外な内容に驚いたりと。こういうのを無意識くんというんですかね。最近もありましたよ。
英語を使うと論理的に考えられるようになるとは初耳でした。言語と思考って関連性が強いんですね(当たり前といえば当たり前ですが)
教師が教師として生徒に接するというのも当たり前ですが、日本ではその当たり前の役割分担ができてないところが多いんでしょうね。
やはりアンテナが立つのが原因かもしれませんよね。
1冊読むと、つい他の本も気になるという(笑)。
>LuckyUSさん
私も言語学者とかじゃないので、勝手な想像ですが、「論理性」という観点からは、少なくとも日本語より英語の方が優れている気がします。
もちろん、日本語でも論理的な方は大勢いますけど(汗)。