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2007年09月07日

【良い店とは?】「流行る店」吉野信吾


流行る店
日経BP社
発売日:2004-03-04
おすすめ度:4.0


【本の概要】

◆今日お届けするのは、先日ちょこっとご紹介した、飲食店経営に関する一冊。

ちょっと古めのこの本を推薦してくれたのは、某ベストセラー作家さんです。

と言うか、その方が激プッシュしてくれなかったら、めぐり合うこともなかった可能性大(笑)。


◆著者の吉野信吾さんは、雑誌『POPEYE』(マガジンハウス)の編集を経て、商業施設やお店のプロデュースをなさっている方。

本書の「まえがき」にもこうあります。

設計、プロデュース、マスメディア、それに運営業務という立場の異なる4つの現場に、実際に携わっていたからこそ導き出せた「成功へのカギ」がここにあると、少なからず確信しています。

確かに一般的な「飲食店経営本」とは、違った切り口で迫っているこの本。

目からウロコが落ちることウケアイ(?)!


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【目次】

第1章 お店をつくるまでに考えること、実践すること
 まず、振り返ってみましょう。なぜ、飲食店を始めようと思ったのですか?
 開業に絶対欠かせない六つの条件 ほか

第2章 超実践的マスメディア利用術
 マスメディアの活用次第で店の成否が決まる
 本当に宣伝効果があるのは、雑誌の「お店紹介」記事だけ ほか

第3章 成功するBAR経営学
 食事メニューの多いBARは、失敗する
 BARが狙うべき「客筋」 ほか

第4章 誰も語らなかった「非常識」成功術
 「お客様は神様です」から「お店は神様です」へ
 あえて「敷居の高い」店にする ほか



【ポイント】

■マスメディアについて
⇒飲食店の場合、マスメディアのうちもっとも有益なのは「雑誌」、次いで「テレビ」

飲食店に関する情報は、基本的に「雑誌」が源

「雑誌」を制覇すれば、テレビは自動的についてくる


■名編集者に好かれる店作り
⇒一番取り上げられやすいパターンは、「実際に取材し記事を書く(フリーランス、契約)記者、もしくはページ担当編集者の目に留まった店

⇒ネタ的に「情報として新しい」「内容が新鮮」「今の時流の先端」であればあるほど、ページ上で大きく取り扱われる


■何度も紹介されるにはいくつもの「切り口」を持つ
⇒雑誌編集者が、「お、この店、面白いじゃないか」と思うような「切り口」を、なるべくたくさん持っているお店こそが誌面で紹介されやすい

⇒お店の工事に着工する前に、まず、店の「切り口」をどう定めるかに、注意を注ぐ

⇒例:「イタリアン・レストラン」の「切り口」

「イタリア人シェフのいるイタリアン・レストラン」
「ピッツァの釜があるイタリアン・レストラン」
「イタリア大使館御用達のイタリアン・レストラン」
「一軒家のイタリアン・レストラン」...


★ちなみにこれらをてんこ盛りにすると

『「青山のはずれの」「一人食事4000円でおつりがくる」「イタリアから招いたシェフが作る」「イタリアのレストラン協会認定で」「炭火焼の炉と」「ピッツァの釜がある」、「自家製パスタが自慢の」、「イタリア製家具に囲まれた」「在日イタリア人と大使館員が日々集う」「日本でも例を見ないほどのイタリアワインのストックが充実した・・・」(以下略)、レストラン』となります(行ってみたいかも(笑))。


■成功するBAR経営学
●食事メニューは少なめに

おつまみの売上比率が高いバーでは、売上額は高くても、利益率が低くなっている


オンリーワンを目指す

⇒「今日最後の一杯はあの店で」とお客さんが思いついてくれるような印象深い、インパクトのあるバーにしない限り、きょうびのお客さんは来てくれない

「好きな人にはたまらない世界」を体現できるかどうかが鍵

★著者が手がけた店:日本初のテキーラ専門バー『アガベ』


■誰も語らなかった「非常識」成功術
●あえて敷居の高い店にする

★例:神楽坂『伊勢藤 』

BGMもクーラーも扇風機もなく、古い日本情緒たっぷりの店内。雰囲気を味わいながら静かに飲んでもらうというのが店の方針だから、大声は厳禁だ。酒は日本酒白鷹のみ。

⇒お店は「職人気質を楽しんで理解してくれるお客さんと長く付き合いたい」し、お客さん自身もお店のそうした姿勢に対して贔屓(ひいき)心を持つ


●チラシを撒くのは「自殺行為」

チラシを配布している店にプレステージはないし、そもそもプレステージのある店はチラシなど配らない

⇒クーポン券を使うお客さんというのは、絶対的に上得意客にはならない


●子供を入れない

「最も少ない労力で、高い利益率の商品」である「酒」を飲むお客さんにとって居心地の良いお店の最低条件は、「子供のお客さんのいない店」


●お酒が売れない店は儲からない

⇒お酒の原価率(抜粋) 

「ワイン、シャンパン・・・33〜50%」
「日本酒・・・26〜30%」
「ビール(国産生)・・・22〜27%」
「ハードリカー&リキュール・・・9〜12%」


⇒仮にワインのコストが40%であっても、フードコストの40%とその内容が全く違う「時間経費」「人件費」等

お酒は腐らないので、雑損がほとんどない(回転が良ければ劣化も考えなくてよい)


【感想】

◆色々な意味で考えさせられた一冊でした。

まずは、お店選びでインターネットと競合せざるを得ない「雑誌」は、世間一般的には「もう終わった」みたいに言われているところ、本書によると、飲食店にとっては、「テレビよりも雑誌の方が重要である」、と。

本書のスタンスにおける「良い店」というのが、固定客相手に長く続けるタイプなため、流行に踊らされるだけの客を相手にしない、という意味では、これは当然です。


◆ただ、もうひとつ思ったのが、インターネットにはない、雑誌の良さ

キチンとしたテーマなり目的があれば、インターネットによる検索は有効ではあるものの、特に何もない状態では、効率的にお店を探すことなどできません(というか、「何を探すか」すら決まっていないわけですから)。

雑誌のような「オーソリティ」が、ページを割いて紹介するようなお店なら、行ってみようかな、と思うのもごく自然なこと。


◆一般的なネットユーザーなら、そのお店の名前で検索をかけてクチコミを確認することも多いでしょう。

つまり、いずれにせよ、「最初のとっかかり」として、雑誌が存在するわけです。

そして実は、テレビも雑誌を見て飲食店のネタを探しているので、雑誌で取り上げられるというのは、単純な発行部数以上の影響力があるわけですね。


◆また、後半から展開される『「非常識」成功術』も、個人的には衝撃でした。

特にポイントにも挙げたように、お酒と食事とでは、同じ売上金額であっても、その利益率がとんでもなく違うんですね。

仕入れてきたものを、ほとんど手をかけずに出せることができれば、それだけ利幅が大きくなる、と。

当たり前と言えば当たり前なんですが、意識していませんでした(汗)。


◆そう言えば、もんじゃ焼きとかって、フツウお客さんが自分で作りますよね?

あれも、あんまりお店としては手がかかってないような。

この辺は、何かに応用できそうな気がするので、頭にストックしておきます(笑)。


◆なお、本書で主張されているスタイルというのは、あくまで「飲食店経営の方法論の一つ」であり、全てのお店がそうあるべき、というのではないことを、著者の吉野さんも述べられています。

特に、チェーン店展開をしようとする場合に、「数字なんて知らなくていい」というわけにはいきません(笑)。

正攻法というか、理詰めな考え方の本も併せて読んでいただくと、考え方に多面性が持てて宜しいのではないでしょうか。

例えば、本ブログの2007年上半期売上高3位のこの本とか(笑)。

小さな飲食店 成功のバイブル―赤字会社から年商20億円企業までの軌跡
インデックスコミュニケーションズ
発売日:2006-11
おすすめ度:5.0
(本ブログ内での記事は下記リンク参照)


【関連記事】

【ザ・商人】「ご飯を大盛りにするオバチャンの店は必ず繁盛する」島田紳助(2007年06月08日)

「小さな飲食店真実の店長バイブル」鬼頭宏昌(2007年05月23日)

「小さな飲食店 成功のバイブル」鬼頭宏昌(2007年02月06日)

「これ、知ってました?集客に、お金はかからないのです。」藤村 正宏 (著)(2006年05月21日)


【編集後記】

◆昨日アマゾンアタックかけた本。

WORK HACKS! ワークハック !
アスコム
小山 龍介(著)
発売日:2007-09-01
おすすめ度:5.0

「IDEA HACKS! 」等でお馴染みの、小山龍介さんの新刊です。

あの小山さんの本なのに、何故に画像がない(汗)?


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この記事へのコメント
               
smoothさん、こんにちは!

そう言えば、
元マイクロソフト日本社長だった、
成毛さんが、
やるなら、鉄板ビジネスが一番儲かるといったようなことを言ってました。
やっぱり、お客さんが勝手に焼いてくれるので、経費率が低いということでした。

Posted by ニタ@「教えて会計」 at 2007年09月07日 08:06
               
これまた面白そうですね^^

ちょっと視点の違うところからの文章だから
気づかされることも多そうですね。

応援くりっく!ぽちっ
Posted by 笑顔整体 健康の知恵袋:院長 at 2007年09月07日 12:32
               
>飲食店に関する情報は、基本的に「雑誌」が源

そうなんですね。飲食店経営のツボを教えてもらえる本みたいで、読んでみたくなりました。
シンプルな装丁も知性を感じさせてGOO。

先日のガネーシャが出てくるミズノンノさんの本読みました。笑いが止まらず一気に読めて感動もできて面白かった〜。
あれ、ドラマ化してほしいなぁ。



Posted by ビルダーナース at 2007年09月07日 13:53
               
いまamazonで見ましたが、「お店のドライバーズマニュアル」とありました。
早速読んでみます。


Posted by マチスケ at 2007年09月07日 16:57
               
割烹料理屋の板前の叔父が「お酒が売れないと困る(=飲む人が来ると売り上げが上がる)」と言っていました
原価率だけでなく、手間暇も考えればその通りですね
Posted by さやすず at 2007年09月07日 21:30
               
>ニタさん

成毛さんがそんなことおっしゃってましたか(笑)。
全然畑違いのような感じですけど、そうなんですよねー。

>院長サマ

この内容ですと、逆張りみたいな印象を受けがちですよね。
でも、かなりためになりました。

>ビルダーナースさん

あ!ビルダーナースさんに関係ありそうな部分もあったんですけど省いちゃいました(笑)。
「有名インテリアデザイナーに頼むな」とか(汗)。
水野さんの本は確かにドラマ化しやすそうですね!

>マチスケさん

台風の中、セミナーお疲れ様です。
この本、マチスケさんなら有効に生かせそうな(笑)。

>さやすずさん

そうなんです、私みたいな客ばかりだと、商売上がったりラシイです(汗)。
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2007年09月07日 21:44
               
smoothさん、こんにちは。

店のコンセプト作りと、それに合わせた戦略が大事ってことですね。
+オンリーワンになるためのアイディアでしょうか。
雑誌の力ってまだまだ健在なんですね。

Posted by LuckyUS@フォトリーダー at 2007年09月08日 01:42
               
>LuckyUSさん

私もこの本を読むまで、雑誌をちょっと過小評価しておりました(汗)。
未だに飲食店にとっては、大事なメディアなようです。
これが各人がブログ等に新しい店の情報をバンバン載せて、それらをRSSリーダーでスキミングして必要に応じて読むようになれば、また違ってくるとは思いますが。
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2007年09月08日 12:57