2007年09月02日
【起業】「世界のどこにもない会社を創る!」飯田 亮
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、「セコムしてますか?」でお馴染み、セコム株式会社の取締役最高顧問、飯田 亮さんのご本。基本的に経営本は、このブログではあまり取り扱っておりませんが、ベンチャー企業の元祖である、セコムの創始者となれば、話は別(笑)。
果たして、起業の考え方から、経営方針までなかなか興味深いお言葉が並んでいます。
◆アマゾンの商品紹介でもこんなフレーズが。
確かにベンチャー精神に溢れてらっしゃいます!二十代で日本初の警備業を起業、一大産業にまで育て上げた著者の痛快な一代記。
つねに新業種を起こしていった、まさにベンチャー精神を体現する人物の人生の軌跡。
いつも応援ありがとうございます!
【目次】
プロローグ 変化を求め、未知に挑みつづける第1章 「ため息をつくな、しゃがむな」
第2章 仕事のことは父から教わった
第3章 日本ではじめての「警備業」
第4章 倒産を覚悟する
第5章 安全システムを「レンタル」する
第6章 すべては安全のために
第7章 つねに新たな業を起こす
エピローグ 九十歳まで現役で!
【ポイント】
■リスクを背負う
◆いかにも「ベンチャーっぽいな」と思ったのが、この部分。実際に飯田さんは、色々なリスクを背負われ、またいくつかの失敗も経験されています。新しいことをやらない企業に価値はありません。新しいことにはリスクがつきものですが、得られる利益も大きい。そのリスクと利益の両方を株主と分かち合うからこそ、株式会社は存在するのです。リスクを覚悟の上で新しいことに挑戦していかないのであれば、株式会社である必要はありません。社団法人でいいと思っています。
それらを含めた上での「株式会社」である、と。
◆そして、もう一つコレも。
もう典型的なベンチャー気質ですよね。私の考えの中に根強くあるのは、物事はやってしまわなければ、いつまでも頭に残るということです。だから、あるところまで考えたら、やってみる。
失敗したらしかたがない、と割り切ります。二度とやらなければいいし、何がダメだったのか、なぜダメだったのかがわかり、その経験が次に生きます。とにかく、何事もやってみないとわからないということです。
■独立の五条件
◆大学卒業後、父親の営む酒問屋・岡永商店に入社した飯田さんは、大学時代の親友である戸田寿一氏と将来の独立に向けて夢を語り合います。そんな中、二人が決めた独立の五条件とは、こういうものでした。
これは、やはり起業スピリットに溢れていた飯田さんのお父さんの教えに影響を受けているようです。まず、努力すれば大きくなる仕事であること。次に、誰もやっていない仕事であること。人から後ろ指を差されない仕事であること。大義名分のある仕事であること。そして、掛売りで苦渋をなめさせられていたから、前金も取れる仕事であることとし、それらの条件にあう仕事を探しました。
ちなみにお父さんの教えとは「まともな商売をしろよ」「人の真似をするなよ」「新しいことをやれよ」というもの。
これに神田昌典さんもCDで口を酸っぱくして言っていた、キャッシュフローが加わった感じですね(笑)。
■「警備業」との出会い
◆飯田さんと戸田氏が、「シアーズ・ローバックの日本版」のような通信販売事業に、事業進出を決めかった頃、海外旅行から帰ってきた友人から、外国における「警備専門の会社」の存在を聞かされます。当時の日本では、守衛がいたり、社員が交代で宿直して、会社の財産を守っていたのです。
これが後の日本警備保障(現・セコム)誕生の発端でした。その瞬間、ゾクゾクっとしました。まず、「誰もやっていない」と思った。次いで思ったのは「恥ずべき仕事ではない」ということでした。そして、「やれば、もしかしたら大きくなれるかもしれない」と思って、心が震えたんです。
その時飯田さんには、警備の知識も経験も、事業資金もない、というないないづくしの状態。
それでも独立を決めてしまうのですから、さすがとしか言いようがありません(汗)。
■「巡回警備」の打ち切り
◆その後、「ザ・ガードマン」のモデルになるなどして、会社は大きくなりますが、飯田さんは、ある決断をします。それは、当時の主力サービスであった「巡回警備」から、機械警備システム「SPアラーム」への移行。
飯田さんにはいくつかの目論見がありました。「巡回警備の契約先にはその旨を伝え、SPアラームに切り替えていただくようにお願いする。常駐警備の契約先には、契約料の55%アップをお願いする。了解をいただけない場合は、解約になってもかまわない」
◆1つはエネルギーの集中化。
さらに、人員を見直すことによる給与水準のアップ。
そして上場を見据えた、社員の臨時雇用の廃止。
結果、常駐警備の契約先の70%は料金アップに応じ、残り30%は契約解除になります。
ただし、売上の増と減はほぼ一致。
その後も「SPアラーム」は伸び続け、体質改善は成功するのでした。
■レンタルにこだわったワケ
◆「SPアラーム」が普及してくると、飯田さんの元には、大手電機メーカーから、業務提携の話が持ち込まれます(しかも5,6社)。これは、メーカー各社が機械を製造し、セコムはそれを通信回線で結んで、サービスの提供に徹したら、ということ。
しかし、各社バラバラの機械を取り付けると、メンテナンスは面倒ですし、品質のばらつき故の誤報の大量発生も考えられます。
また、それとは別に飯田さんにはこういうお考えがありました。
この辺の軸がぶれない考え方は、経営の参考になりますよね。第一、機械を売るのではなく、安全を売るために機器をレンタルすることにしたのではないか。その最も大事な考え方をみずから崩すことになるのではないか。これは間違ったやり方である。そう考えて、断りました。
■失敗した事業
◆今となってはあまり知られていないものの、飯田さんは多くの(?)失敗を経験されています。特にネットワーク関係で顕著(汗)。
●ビデオテックス
●コンピュータセキュリティ(NTTとプライスウォーターハウスと3社共同で会社設立)
●VAN
●コンピュータ学習システム etc・・・
ここで飯田さんのお言葉。
それにしても、上記のビデオテックスの購入額って、当時の金額で12億5千万円ですってよ(汗)?セコムは挫折知らずの幸運児のように見られていますが、実際は始終試行錯誤を繰り返してきているんです。ただ苦労がシミにならないようには気をつけてきた。いつも大らかにやっているような風情を保とうとしてきました。
【感想】
◆久々に「ベンチャー・スピリット」全開のお話を読むことができました(笑)。ここでは取り上げませんでしたが、開業時から「常識破りの3ヵ月前金」にこだわったり、「SPアラーム」の仕組み自体が当時の「公衆電気通信法」に反していて電電公社と折衝したり、と波乱万丈。
しかもすでに代表権は返上して、一線を退いているのに、ある年の企業家賞の授賞式で、司会に「ベンチャーの父」と紹介された際には、
なんて思ってらっしゃいます(笑)。なんだか過去の人になったようで抵抗を覚えました。自分ではまだまだ現役のつもりですから。
・・・とは言っても、今年で74歳でいらっしゃるんですが(汗)。
◆また、上でも書いたように、お父様の影響を強く受けてらっしゃるのが印象的でした。
戦後、闇商売で儲けて羽振りのいい人を見て、飯田さんがうらやましがったのを見て、お父様が、
とおっしゃったのは、飯田さんにとっても、忘れられない思い出だとか。「間違った商売はそのうち必ずダメになる。見てなさい。」
ただ、このお父様、「曲がったことが嫌い」なのはいいとしても、
というのは、いかがなものかと(汗)。先っぽが曲がっているという理由で、キセルでたばこを吸わなかった
◆セコムの最近のセキュリティ事業で有名なのが、ココセコム。
「海外に比べたら日本は安全」とノンビリできたのも今は昔です。
昨今の凶悪犯罪等を見るにつけ、自分もムスメがいる以上、いつかはお世話になる可能性は高いような。
また、カバンをよくお忘れになる方には、「ココセコム 荷物・貨物用サービス」なんてものもあります(笑)。
読み物としても面白いデス!
【関連記事】
ジャック・ウェルチの「私なら、こうする!」(2007年05月11日)「頭のいい人が儲からない理由」坂本桂一(2007年04月02日)
「リクルートのDNA」江副浩正(2007年03月22日)
失敗に学ぶ「起業」 300万円で起業する【Part2】神田昌典(2006年06月12日)
『MBAコースでは教えない「創刊男」の仕事術』 くらたまなぶ (著)(2006年04月11日)
【編集後記】
◆先日退院したムスコ。病院では看護婦さんたちに「アノ子、モヒカンよ」とウワサされていたとか。
これはムスメの同じ頃のイラストなんですけど、まさにこんな感じ。
ちなみに、ヨメが赤ちゃんの時も、やはり同じ髪型だったそう(笑)。
ご声援ありがとうございました!
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お久しぶりです。
飯田さんのベンチャー精神が満載の本ですね。
読んでみたくなりました。
大手でそういう考えって珍しいものですね。
そういう精神大事ですよね。
応援くりっく!ぽちっ
キャッシュフローの話は、本田健さんのCDでも、原則前払いにすることを言っていました。その時に出た例が、セコム。
若造が生意気に、とか言われつつも、前払いにすることが自信の現れと受け取られたりもしたそうですよ。
話は変わって、昨日の記事を参考にしてうちでも早速上半期売上ランキングをやってみました。ありがとうございます。
この本は物語としても面白そうです。
業界2位の警備保障さんに関してこういう物語を聞いたこともないので、セコムがずっと業界をリードしているのは、飯田さんの信念が受け継がれているのですねー。
セコムってCADソフトも出していて、建築業界ともつながりがあるんですよぉ。
『独立の五条件』を見つけられる人が
起業して成功するんですね。
常に意識していても中々見つかりそうにないですが。
それを見つけた飯田さんだからこそ
成功したんでしょうね。
挙げられているベンチャー気質というのはプロジェクトを進めるときに良いとされているものに重なるなぁと思いました。
私の娘が新生児室で並んで寝ているときに髪型で分かりました!
大変ご無沙汰しております。
本書は藤間IMさんにはピッタリかもしれません。
読みやすい本なのでお手にとってみてはどうでしょうか?
>院長サマ
セコムも最初は中小だったんですよね(当たり前ですけど)。
今でもその精神を受け継いでいるのがスゴイというか。
>LuckyUSさん
本書を読むとわかるんですが、飯田さんの心も何度も揺れ動いてるんですよね。
結局そこで初志を貫き通せたのが凄いんですけど。
売上ランキングは今日これからうちでもやります〜(笑)。
2位は綜合警備保障さんですかね?
ウィキペディアによると、この業界で上場しているのは3社だけのようです。
本書では、いかにこの業界が飯田さんによって作り上げられたかが描かれています。
会社ではなく、それまでなかった業界が生まれていく過程はなかなか面白かったです。
>長谷川さん
この5条件は、絶対的なものではなくて、会社設立前に飯田さんたちが考えたものです。
でも、確かにもっともと思える点が多いですよね。
>手文庫さん
自分は会社どころかプロジェクトもやってないのですが、言われてみて、なるほど、と思いました(笑)。
手文庫さんの娘さんも、変わった髪型なんですねー(笑)。
ナカーマ(*・∀・)人(・∀・*)