2007年08月19日
【英語】「英語学習7つの誤解」大津由紀雄
【本の概要】
◆今日お送りするのは、慶応の先生でいらっしゃる大津由紀雄さんの、英語学習に関する大胆な提言。内容については、アマゾンの「商品の説明」にズバリ書かれています。
「こうすれば、努力しなくても英語がペラペラに!」「英語は幼児のときから始めればラクに身につく!」など、巷間には英語学習に関するさまざまな説が飛び交っています。
しかし、これらの説は本当なのでしょうか? 裏づけはあるのでしょうか?
最新の研究によると、これらの俗説のほとんどは根拠のないものであることがわかってきました。
著者は、英語を身につけたいと思っている人、子どもに英語を身につけさせたいと考えている親たちに、一刻も早くこの事実を知らせたいと、筆を取りました。俗説のどこが間違いなのかを明らかにし、逆に、英語学習はどうすればよいのか、分かりやすく紹介します。
◆ムスメにベネッセの「こどもちゃれんじEnglish」をやらせようか迷っていた私にはタイムリーなネタ(笑)!
ご自身で英語を学ばれている方にも一読をオススメしたい一冊です!
いつも応援ありがとうございます!
【目次】
第1話 母語・外国語・第二言語とは何か
第2話 誤解1「英語学習に英文法は不要である」
第3話 役立つ英文法を身につけるコツ
第4話 誤解2「英語学習は早く始めるほどよい」
第5話 早期英語教育は効果的か?
第6話 誤解3「留学すれば英語は確実に身につく」
第7話 誤解4「英語学習は母語を身につけるのと同じ手順で進めるのが効果的である」
第8話 誤解5「英語はネイティブから習うのが効果的である」
第9話 「英語で考える」を考える
第10話 誤解6「英語は外国語の中でもとくに習得しやすい言語である」
第11話 誤解7「英語学習には理想的な、万人に通用する科学的方法がある」
第12話 ことばを意識的に捉えることの重要性
第13話 達人たちの英語学習法に学ぶ
最終話 あとは動機づけと目標設定
【ポイント】
■英語学習 7つの誤解◆上の目次とかぶりますが、ここで列挙してみます。
誤解1「英語学習に英文法は不要である」
誤解2「英語学習は早く始めるほどよい」
誤解3「留学すれば英語は確実に身につく」
誤解4「英語学習は母語を身につけるのと同じ手順で進めるのが効果的である」
誤解5「英語はネイティブから習うのが効果的である」
誤解6「英語は外国語の中でもとくに習得しやすい言語である」
誤解7「英語学習には理想的な、万人に通用する科学的方法がある」
さて、「誤解」という立場を取られている以上、著者の大津さんはこれらの事項について、基本的に「反対」のお考えをお持ちです。
それぞれについて突っ込んで書くとまさにネタバレなので、モロではなく、思うところを中心に。
■「母語」と「第二言語」と「外国語」
◆まず前提として、用語の定義から。
「母語」とは、生まれてきて一定期間触れていて自然に身につける言語です。
「外国語」とは、母語を身につけたあと、学校での授業や教則本を利用した学習などによって身に付けた言語。
そして「第二言語」とは「日本語を母語とするような子どもが三歳の時にイギリスに移り住む」というような、母語と外国語の中間の形態を言います。
◆特に「第二言語」は、「その言語を身につけないと、生活がなりたたない」ようなケースで身につけられることが多いそう。
本書では具体例として「外国人力士」が挙げられています。
大リーグからやってくる助っ人は通訳もいて、あまり日本語がうまくならないことがほとんどなのに、外国人力士はほぼ例外なく日本語が上手。
それは彼らが、相撲部屋に寝泊りし、相撲以外のこと(例えば「ちゃんこの作り方」)まで教えられたりするからです。
つまり、日本語が喋れないと「生活がなりたたない」、と。
◆そして本書で大津先生が一貫して言われているのが、「外国語」の学習を、「母語」や「第二言語」の獲得と混同してはならないということ。
『赤ちゃんがことばを身につけるときのように英語を学ばなくてはなりません』などという宣伝文句を鵜呑みにしてはいけません。赤ちゃんに学ぶべき点はたくさんありますが、赤ちゃんとおなじようにするというのは、そもそもやろうとしても無理ですし、そのように努力しても報われるとは限らないのです。
■よい学習英文法書の選び方
◆ここだけはちょっと列挙で
⇒相性が大事(数ページ読んでみて「これならつきあえるかもしれない」と思えるか)
⇒内容は説明が丁寧で、わかりやすいこと
⇒例文がたくさん挙がっていること
⇒文法用語については、きちんとわかりやすい定義が書かれていること
■「英語漬け」は可能なのか?
◆外国語獲得の方法として、俗に「英語漬け」と言われるものがあります。
そこで、大津先生の結論。母語として英語に触れている人の場合、仮に、1日10時間の英語を耳にしているとします。母語の獲得が何歳までに完了するかは意見が分かれるところですが、ここでは母語の骨格は3歳までに構築されると考えることにします。すると、10時間×365日×3年で、1万950時間という答えが出てきます。もちろん、この数字はかなり控えめに見積もったものですが、英語の学習者がこの1万950時間分の英語に触れるということですら、かなり大変なことです。
仮に、1日3時間ずつ英語を学んだとしても3650日、つまり10年かかります。
(中略)
こうして考えると、「英語を母語として獲得するのと同じやり方」で英語を外国語として身につけるという方法は、現実的でないことがおわかりいただけたのではないでしょうか。
つまり「聞き流しているだけ」ではなく、「能動的に聴け」、ということですね。大量の英語に触れるといっても受身の姿勢で、ただ聞き流しているだけではだめなのです。英語を身につけるために聴いている(「聞いている」のではないことに注意してください)のだという意識的な学習態度が肝心なのです。
■「英語学習には理想的な、万人に共通する科学的方法がある」のか?
◆ここで言っているのは「この方法でやればだれでも英語学習に成功する」という「王道」のこと。
ただ、そんな上手い方法があれば、すでに広く知られているはず(笑)。
実際に、膨大な資料(文献調査、面談調査、質問紙調査など)を駆使して書かれた竹内 理さんのコチラの本でも、結論として「秘術などやはり存在していなかった」という結論に達しているそう(笑)。
そしてこの本の結論としては、英語習得の達人たちの方法について
と評しているのだとか。「その多くが比較的単純なものであり、どちらかといえば、ありふれたものであることに驚く。秘術的な要素とはほど遠く、ありふれたことを挫折せず、きちんとこなしておれば、相当に高いレベルまで外国語を習得できるというのが結論なのである」
それを受けての大津先生のお言葉。
うーん、どうやら抜け道はなさそうですね(汗)。学習の方法はひとそれぞれ異なるのです。要は努力であり、結局は、その努力をいかにして継続させることができるかということに行き着くことになります。
■達人たちの英語学習方に学ぶ
◆上記の「より良い外国語学習法を求めて」とは別に、大津先生も、お知り合いの「主に日本国内で英語を学び、英語使いの達人になった人たち」(帰国子女等を除く)12人に質問をされています。
質問内容は次の3つ。
気になった部分(の「ごく一部」)をご紹介します。Q1 ご自身にとって、これが決定的だったと思われる学習法を1つ挙げてください。
Q2 英語学習者に勧めたい英語学習法を一つ挙げてください。
Q3 英語学習者に助言したいことを一つ挙げてください。
上野俊彦さん
Q1 発音が綺麗な歌手が歌う英語の歌を意味を理解しながら覚えて歌う
柳瀬陽介さん
Q1 学習法ですが、とにかく「英語モード」に浸ることに徹しました。「英語モード」に浸るとは、英語の音で考えることです。
(中略)
とにかく英語の音がそのまま意味であるような「英語モード」に自分をもってゆき、音の変化が即意味の変化、意味の変化が即音の変化になるようにしていたことが大きかったような気がします。
Q2 精聴と多読をすること。そして最初のうちは、英英辞典を徹底的に使いこなすことでしょうか。
(中略)
多読に関しては、日本の学校では考えられないぐらいの量の英語を読んでください(本を重ねたら自分の身長になるぐらい読めとよく言われます)。
田尻悟郎さん
Q2 シャドーイングです。
大津由紀雄さん(著者)
Q3 単なるあこがれでは長続きしません。外国語を身につけるということは一大事業なのだという自覚が大切です。そこまでは無理というのであれば、英語はあきらめた方がよいと断言できます。
【感想】
◆うーん、ネタバレに注意しないように書いてみたら、ちょっと不親切(?)な記事になってしまったカモ。このブログは、結構がっつり書き込むのが特徴とはいえ、本の主題的な「問い」には答えないようにしております(一応)。
出版社や著者さんにしてみたら、消費者がその部分の「答え」が知りたくて手に取ったり購入したりするところを、ブログで書いてしまったら、機会損失になりかねませんから。
今回も他書を引用している「科学的な学習法」のところ以外については、できるだけ避けるように書いたつもりです。
◆さて。
私の場合、高校が大学の付属だったため、英語は高校受験(つまり中学3年)で終わり(あれ?高校大学は(汗)?)。
そして大学4年の時に、短期語学留学をした際に、8年ぶりだかに英語に挑戦しました(笑)。
イギリスでの3ヶ月間のホームステイ期間中、「まったく日本語を喋らない」(他の日本人とも英語(笑))というアプローチの結果、「そこそこ」喋れるようにはなったので、一応「成功」(笑)。
まぁ「そこそこ」のレベルをどう考えるかにもよりますが(汗)。
◆なお、この時は、「いったん日本語で考えたものを高速で英訳」するのではなく、とにかくハナから英語で考えていました。
この試みの結果、一番大きく変わったのは、「モノの考え方」。
英語でモノを考えると、普段日本語で考えている結果と微妙に違ってきたと言いますか。
向こうにいる時は「それなら日本語だったらどう考えるだろう」と試す余裕もなく(日本語で考える習慣がなくなっていたので)、「何かが違う」と漠然と思っていただけなのですが。
結果、帰国後に「比較言語学」の本を読み漁ってみたり(笑)。
本書では、目次にあるように『第9話 「英語で考える」を考える』のところで、この問題について深く掘り下げております。
ここも是非お読みいただきたいところ。
◆ちなみにそうやって、苦労して(?)身に着けた英語も、帰国後数ヶ月でキレイさっぱり飛んでいきました。
厳密には、成田空港で列に並んでいる時に、前にいたおばさんから日本語で話しかけられた瞬間に「何かが音を立てて壊れた」んですけど(大げさ(笑))。
そういう意味では留学等の手段の場合、英語力「獲得」よりもその後の「維持」の方が大変なような。
某社海外グループ時代、「英語で何をやるかじゃなくて、とにかく英語が使いたいんだ」と言っていた、あまり有能ではなかった(暴言)帰国子女の先輩がいらっしゃいましたが、今にして思えばそういうことだったのかも。
◆なお、今、英語を学習されている方には、本書の最後に登場される「国内で英語力を高めた達人さんたち」のやり方をぜひ参考にして頂きたく。
・・・記事ではほんのさわりだけしかご紹介できませんでしたが(汗)。
その方々が英語を学習した頃と現在とでは、メディアも本もツールもかなり違うので、ちょっと面食らう可能性もあるものの、本質的な部分については、非常に的を射ていると思います。
結局「『抜け道』はない」ということで、「効果的に」努力をしていかれるのが一番かと。
今現在、英語を学ばれている方へ!
【関連図書】
◆本書の著者である大津先生の英文法のご本。
こんな本を出されている以上、「誤解1」の「英語学習に英文法は不要である」なんて通説は聞き捨てならないワケですよ(笑)。
マーケットプレイスでお買い得なのは、実は少しだけなのでお早めに。
【関連記事】
◆今回は、「英語学習」に関する記載がある本の記事を集めてみました。【勉強】『「1日30分」を続けなさい!』古市幸雄(2007年07月26日)
【クリティカルエイジ】『頭の回転が50倍速くなる脳の作り方』苫米地英人(2007年06月26日)
「アタマが良くなる合格ノート術」田村仁人(2007年05月21日)
「無理なく続けられる 年収10倍アップ勉強法」勝間和代(2007年04月11日)
「できる人の勉強法」安河内哲也(2007年01月19日)
【編集後記】
◆昨日は、ムスコがウィルス性の風邪で熱を出し、訪れた小児科で手に負えず、結局紹介状を書いてもらって大学病院へ。生後半年以内の子供は免疫が強く、普通、風邪等は引かないハズ。
ところが風邪引いて鼻水垂れまくりのムスメが、顔に向かって咳やクシャミをするものですから、どうもそのとばっちりのよう。
来週は夏休みをとって小旅行に行くつもりなので、何とか治ってもらわねば・・・(汗)。
ご声援ありがとうございました!
この記事のカテゴリー:「私と100冊の勉強本」へ
「マインドマップ的読書感想文」のトップへ
おすすめの本 - livedoor Blog 共通テーマ
スポンサーリンク
この記事へのトラックバックURL
●スパム防止のため、個別記事へのリンクのないトラックバックは受け付けておりません。
●トラックバックは承認後反映されます。
英語に奇策はないように思います。
というか、勉強法は、ほとんどそうだと思いますが。
文法をきちんと覚えると、あとは単語と発音なので、まったく話せないということはなくなるような気がします。
今は、ネットでいろいろと英語に触れられるので、良いですね。
結局、いくら練習しても
この成果しか話せないし、
少なくともコミュニケーションは
とれますよね。ヾ( ´ー`)
話せない原因の大半は単語力不足。
それなのにそれはやらずに、
秘術探しじゃはなせる訳がありません。
「外国では3歳から英語で会話するのが常識なんだよ」
って冗談を言ったら
「へー」
と感心しました・・・
アメリカの話だって・・・
外国語学習の最大の奇策は
「外人の恋人を作る」。
恋人は極端ですが、外国文化の中に興味があるものを見出だすことは重要だと思います。
ちなみに自分は「ことわざ(proverb)」。
検索とかでも結構情報集まります。
やはり一番良いのは英語無しでは生活が
なりたたなくなることなんですね。
いくつになっても必死になれば英語を
身に付けられる力は誰にでもあるってことでしょうね。
書くの難しいでしょうね^^;
英語も基本はなれることからなんでしょうけどね。
応援くりっく!ぽちっ
私も「奇策」はないのではないか、と感じてます。
語れるほど、英語できないんですが(涙)。
確かに昔に比べて、英語に接する環境はよくなりましたよね。
後はやる気だけか(汗)。
>ヨシザワさん
さすがプライベートレッスン受けてる方は違いますね(笑)。
フレーズもある程度場数こなさないと、使いこなせなさそうな予感(汗)。
単語については「中学レベルでOK」みたいな風潮があるのがまた問題かと。
>ha0さん
コメントありがとうございます。
「恋人」の話は実は「達人さん」の中にあります(笑)。
私のいた語学学校の日本人女性は、ほぼ全員外人の彼氏ができて、個別レッスン(笑)してました。
「ことわざ」というのはナルホドですね〜。
今後ともよろしくお願いします。
理想を言えば、確かにそういう環境がベストなんでしょうね。
私の場合、好きでそういう環境に自分を追い込んでみたんですが(笑)。
ただ、今の自分は英語を身につけたいというモチベーションがないんで、やっても効果がないと思われ。
>院長サマ
著者さんによっては「ガンガン書いて下さい」って方もいるんですけど、必ずしも皆さんそういうわけではないので(汗)。
それと昨日の「影響力の武器」はスゴくアクセスが集まりました。
これも院長サマのおかげです!
一昨日2時間かけて未読記事を拝見しましたぁ(^^)
語学学校に二年通学しましたがネイティブスピーカーの先生方とは日本語禁止だったお蔭かほんのちょっぴりだけですが職場の外国人女性達とふと英語で話してます。NHKの英会話番組を毎晩観てたら夢の中で英語で物を考え、英会話をし、自分の英語の寝言にびっくりして飛び起きてました(^^;
日本語より英語の方が気持ちが伝わるなーとか、英語の方が短くて速いぞ♪と判断した時英語で話す事がありマス。
熟読ありがとうございます(笑)。
「英語の寝言」はある程度「英語脳」になると起こるようですね(私も留学時にはなりました)。
ちなみに今の私の頭にはその「カケラ」すらない感じですが(涙)。