2007年08月22日
【DS&Wii】「ゲームニクスとは何か」サイトウ・アキヒロ
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、ゲームジャーナリストであるサイトウ・アキヒロさんが、自身の独自の理論、「ゲームニクス」について解説された一冊。私も今まで、任天堂の「DS」や「Wii」の大ヒットについては、他の書籍でマーケティング的視点で分析されているのは目にしていました。
ただ、純粋にゲームとしてのヒットの理由については、私がやったことがないせいか、今イチわかっていなかったのも事実。
というか、相変わらずゲーム音痴ではあるんですが。
◆アマゾンの商品説明より、本書の構成協力をされた小野憲史さんの言葉を。
わかりました!読ませていただきます!高度デジタル化社会なんて言ってますけど、どんなに高機能な製品でも、使い方がわからなければ意味がないんです。優れた製品やサービスを作るには、機能や技術も大事なんですけど、それよりも人との接点、つまりインターフェースが大事なんです。それが一番優れているのは、やっぱりテレビゲームなんですよね。だって子供からお年寄りまで、みんなが遊べるものだから。そこで生まれた操作のお約束が、今や全世界のゲーム世代の共通言語になっています。そんな「偉い人」たちが気づいていない、でもホントは大事なことに気づいてもらいたくて、本書が生まれました。
ホントに使いやすい製品、ホントに普及するサービスをデザインしたいと思っている方にぜひ読んでもらいたい本です。

【目次】
はじめに ゲームニクスとは何か第1章 なぜ、子供は食事を忘れるほどゲームに夢中になるのか?
第2章 ゲームニクス理論―総論
第3章 “任天堂一人勝ち”から分かること
第4章 iPod、グーグル、ミクシィ…本当のヒットの理由は?
第5章 ゲームニクスが医療・福祉・教育分野を救う
第6章 ゲームニクスが日本の未来を明るくする
おわりに 日本のもてなしの文化を見直すこと
【ポイント】
■ゲームニクス理論とは?
⇒ゲーム制作の現場でなんとなく不文律のようになっているヒットの法則●2つの視点
⇒「理屈抜きで、"直感的""本能的"に操作が出来る技術」
⇒「人を夢中にして、飽きさせない工夫」
■ゲームニクス理論を支える4原則
●直感的なユーザー・インターフェイス(=使いやすさの追求)⇒「スペースインベーダー」は、「画面を見ただけで操作が分かる」ので、ストレスなく遊べた
●マニュアルなしでルールを理解してもらう(=何をすればいいのか迷わない仕組み)
⇒「スーパーマリオブラザーズ」では、ゲームの基本アクションを遊びながら自然に理解できるように、第1ステージの冒頭(30秒から1分程度の間)に、チュートリアル(操作方法の練習)的な要素を持たせている
●はまる演出と段階的な学習効果(=熱中させる工夫)
「はまる演出」
⇒「ドラゴンクエスト」では、「探索」と「戦闘」の繰り返しが、「はまる演出」になっている
「学習効果」
⇒同じく「ドラゴンクエスト」では、呪文の名称が体系づけられていて、過去の経験から呪文の効果が感覚的に理解できる(「ホイミ」→「べホイミ」→「ベホマ」等)
●ゲームの外部化(=現実とリンクさせて、リアルに感じさせる)
⇒「プロ野球ファミリースタジアム」では、実在のプロ野球選手をモデルにした能力値が設定されている
⇒かつ、現実をうまく抽象化し、誇張することで、"現実よりもリアル"な「超リアル感」を演出できた
■任天堂DS(DS)
⇒40代から50代といったシニア層を開拓したことで市場が広がる
⇒発売当初は「プレイステーション・ポータブル」の方がヒットすると思われていた
⇒DSを生んだ任天堂の目標は「5歳から95歳まで楽しめるゲーム作り」
⇒その引き合いに出されるのは「ルービックキューブ」
■「脳トレ」
⇒「脳トレ」の主なユーザー層はシニア層や初めてゲームを体験する人だったため、パッと見て操作が分かり、おもしろさを理解してもらうことが必須だった
⇒いきなり画面にたくさんのメニューを表示するのではなく、「簡単な選択を繰り返して続けてもらいながら、操作に慣れてもらう工夫」がなされている
⇒「終了ボタン」を画面に表示することにより、「操作に迷ったら、このボタンを押せばいつでも最初に戻れる」という安心感を与えている
⇒脳年齢を毎日チェックできたり、成績記録ができたりするなど、「意欲を持続させる仕掛け」の盛り込み方も見事
■「Wii」
⇒2大特徴・・・「リモコン型ゲームコントローラー」「情報端末としての性質を初めから備えている」⇒「みんなで投票チャンネル」は、スタート直後の2日間で、全世界から約50万票ものアンケート結果が寄せられた
⇒初めて使う際の「初期設定」(結構手間がかかる)でも、「やらされてる感」ではなく、「わくわく感」を演出
■「PS3」&「PSP」 vs 「DS」&「Wii」
⇒従来からあるPS3やPSPのコントローラーでは、「似たようなゲームしか作れず、ゲームの広がりに限界が」⇒PS2時代の大作ゲームの開発費の平均は10億円だったのが、PS3では20〜30億円に
⇒「脳トレ」の開発人員は10名以下、実質的な開発期間は3ヶ月
⇒Wiiのソフトも、PS3に比べれば、明らかに短期間かつ低予算で作られている
⇒PS3の機能を使いこなすためには、まずマニュアルを読むことが大事なので、ゲームニクス的には落第点
■ゲームニクス的視点から見たヒット商品など
●iPod⇒iPodヒットの陰にはiTunesがあり、iTunesが画期的だったのは、音楽ファイルを「転送」させるのではなく、「同期」させることにある
⇒階層メニューの画面レイアウトとボタン配置を対応させて、直感的な操作を可能にしている
⇒基本的なボタン操作を統一して、モードが変わってもボタンの意味を変化させていない
⇒タッチホイール式の操作ダイアルが、「操作の心地よさ」を演出
●ミクシィ
⇒サイトの操作性や情報の閲覧性といった、ユーザー・インターフェイスの完成度が当初から高かった
⇒SNSのような、不特定多数のユーザーが利用するウェブサービスこそ、一度使いにくいと思われたら二度とアクセスしてもらえないので、パッと見て誰もが使えるユーザー・インターフェイスが重要
●使いにくいユーザー・インターフェイスの代表例、銀行ATM
⇒使われる回数が多いボタン(「引き出す」「振込み」等)と、それ以外のボタン(「ローン申し込み」「キャッシング」等)の大きさが同じで、まず「引き出す」ボタンを探す必要がある
⇒「進む」「戻る」ボタンがなく、操作を間違えたら、「取り消し」ボタンでメニュー画面に戻るしかない
⇒「振り込み」「入金」などの各種操作で、自分が今どの状態にいるかも分からない場合が多い
⇒ATMの横に、使い方を教えている従業員がついていることも、多いが人が教えないと使い方がわからないというのは、操作性の悪さを証明しているようなもの
【感想】
◆初めに申し上げておかなければならないのが、私のゲーム遍歴。社会人時代に、ずい分前に流行済みの上記の「ドラクエ1」を後輩に借りて始め、1回最後まで行ったところで、「これは社会人にとっては時間の浪費なのでは(汗)??」と思って即、返却。
その後、ゲームセンターのゲームを除いて、テレビゲーム等に触った事もありません(汗)。
あ、インターネットを始めた当時、ネットのマージャンゲームに一時はまったか(←ヒマ人(笑))。
とにかく、基本的にゲームのことはほとんどわかっておりませぬ(汗)。
◆そんな私の感じたことですから、普通のゲーム経験者から見たら、当たり前だったり、ちょっとずれている可能性大
そういう意味では、むしろ、DSやWiiのユーザーさんの方が、上記のポイントに共感できるのかもしれません。
まぁ、生温かく見守って下さい(汗)。
◆逆に一番納得できたのが、「悪例」として登場した銀行のATMの件。
ボタンの大きさが同じだったり、色を変えたりしていないのも、何か意図(「できることならローン申し込みをして欲しい」等)があればまだわかるのですが、下手したら、素でわかっていない予感が(汗)。
少なくとも、「ユーザーが今現在いる状態」くらいは分かりやすくして欲しいもの。
月末あたりに銀行に長蛇の列ができているのを見ると、今までは「月末だからしょうがない」と思っていましたが、操作性を良くすることでもっと改善できるハズですよね。
「ATMに列ができにくい銀行」って、結構アピールポイントになりそうなもんですが。
特にシニア層とかに・・・。
◆いずれにせよ、「DS」や「Wii」のヒットは、ある種のパラダイムシフトを生み出したという意味で、ビジネスを志すものとしては、大変勉強(という表現が正しいのかどうかは別として)になりました。
私たちの身の回りにあるものでも、それが当たり前と思っていても、実は当たり前ではないのかも。
「初心者を取り込み、いかに飽きずに続けさせるか」、という壮大なテーマに、本書はヒントを与えてくれているのではないでしょうか?
【関連図書】
◆本書の著者であるサイトウ・アキヒロさんが、同じ時期に出された本書の姉妹本。
実は、上記の小野憲史さんの「商品説明」の続きのフレーズがこうなってます。
な、なんだって〜(汗)!ちなみに、そのための具体的なテクニックについて知りたい方は、ぜひ姉妹書「ニンテンドーDSが売れる理由」(秀和システム)をご覧ください。こちらも絶賛発売中、です。
【関連記事】
◆今回選んだ記事は、結構本書に関連性が強いと思いますので、ご参考まで。「ヒット商品を最初に買う人たち」森 行生(2007年04月13日)
「ライフハックのつくりかた」小山龍介(2007年04月09日)
「ウェブユーザビリティの法則」スティーブ・クルーグ(2007年03月19日)
「ゲームシナリオのドラマ作法」川邊(川辺)一外(2006年03月15日)
【編集後記】
◆今日はこれから家族旅行です。とは言うモノの、高熱が続いていたムスコは大事をとって自宅待機。
当然ヨメも行くことができません、
結局ムスメを連れて、私が年老いた母と行くことになりました。
大丈夫か、smooth一行(汗)?
◆なお、明日の記事は久しぶりに予約投稿でいかせてもらいます(汗)。
頼むで、ライブドア〜!
というわけで、コメントのレスはしばしお待ちを・・・。

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この記事へのコメント
smoothさん、こんにちは!
それは、親孝行ですね。
わたしは、ゲームは、ブロック崩し、インベーダーから入ってますから、もともとは筋金入りです。
でも、途中で、母より「ゲームをする人でなく、ゲームを作る側にまわりなさい」という言葉で、リタイア(笑)。
それは、親孝行ですね。
わたしは、ゲームは、ブロック崩し、インベーダーから入ってますから、もともとは筋金入りです。
でも、途中で、母より「ゲームをする人でなく、ゲームを作る側にまわりなさい」という言葉で、リタイア(笑)。
Posted by ニタ@「教えて会計」 at 2007年08月22日 07:51
ゲーム市場すごいですよね。
今は種類も豊富ですし、
ハード選びから大変そうですが、
これからもさらに技術向上していくんでしょうね。
応援くりっく!ぽちっ
今は種類も豊富ですし、
ハード選びから大変そうですが、
これからもさらに技術向上していくんでしょうね。
応援くりっく!ぽちっ
Posted by 笑顔整体 健康の知恵袋:院長 at 2007年08月22日 09:12
smoothさんこんにちは。家族旅行ですか!いいですね。奥様と息子さんがご一緒でないのは残念かとは思いますが、楽しんできてください!
Posted by 週末起業サラリーマン at 2007年08月22日 09:36
こんにちは。
『ニンテンドーDSが売れる理由』
メルマガや昨日のブログで、紹介しました。
『ゲームニクスとは何か』よりも、個人的にはおもしろかったです。
UIを考えるのに良いですね。
『ニンテンドーDSが売れる理由』
メルマガや昨日のブログで、紹介しました。
『ゲームニクスとは何か』よりも、個人的にはおもしろかったです。
UIを考えるのに良いですね。
Posted by 独立起業家:こばやし at 2007年08月22日 10:43
smoothさん、こんにちは。
ゲームをなさらないsmoothさんがゲームネタでここまで書けるとはすごいですね。
インタフェースのお話は妙に納得。
直感的にわかる、というのはiPhoneにつながるところでしょうか。
ゲームをなさらないsmoothさんがゲームネタでここまで書けるとはすごいですね。
インタフェースのお話は妙に納得。
直感的にわかる、というのはiPhoneにつながるところでしょうか。
Posted by LuckyUS@フォトリーダー at 2007年08月22日 21:23
smoothさん、こんばんは!
最近DSといふものを手に入れて英語に漬かっています(某氏の影響を受けております)。
ゲーム好きの人間としては、読むべきなようですね…積ん読を消化しだい買ってみます(いつになるんだろうorz)
最近DSといふものを手に入れて英語に漬かっています(某氏の影響を受けております)。
ゲーム好きの人間としては、読むべきなようですね…積ん読を消化しだい買ってみます(いつになるんだろうorz)
Posted by 淺田 義和@創造マラソン at 2007年08月23日 00:47
こんばんは。
今回もなるほど、なお話でした。本当ためになりますです。
今回もなるほど、なお話でした。本当ためになりますです。
Posted by 樽井 at 2007年08月23日 01:12
>ニタさん
素晴らしいお母様ですね!
私は世代的にはハマっててもおかしくないのに何故かセーフ(?)。
でもモバゲーにはちょっと興味アリ(笑)。
>院長サマ
ここでは触れられてなかったケータイゲームが、これからはヤバいのだと思います。
どちらにせよ、私は蚊帳の外なんですが(涙)。
>hikaruさん
帰ってきました。
ヘトヘトです(涙)。
>こばやしさん
そっちの本も面白そうなんですけど、いずれにせよ待たされるんですよね(涙)。
自分が読みたいか以上に、紹介しても買ってもらえないのはキツイ。←アサマシ
素晴らしいお母様ですね!
私は世代的にはハマっててもおかしくないのに何故かセーフ(?)。
でもモバゲーにはちょっと興味アリ(笑)。
>院長サマ
ここでは触れられてなかったケータイゲームが、これからはヤバいのだと思います。
どちらにせよ、私は蚊帳の外なんですが(涙)。
>hikaruさん
帰ってきました。
ヘトヘトです(涙)。
>こばやしさん
そっちの本も面白そうなんですけど、いずれにせよ待たされるんですよね(涙)。
自分が読みたいか以上に、紹介しても買ってもらえないのはキツイ。←アサマシ
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2007年08月23日 22:46
>LuckyUSさん
知ったかぶるのは私のお手の物でございます(?)。
ご指摘のように、iPhoneもその系列だと思います(まだ実物見たこと無いですが)。
>淺田さん
DSでそのまま「どうぶつのもり」にはまり込まないように(笑)。
この本は当分アマゾンで買えないんで、東大でチェックしてみてください。
>樽井さん
ゲーム持ってない人間の書いた記事なんで、その辺は割り引いて(?)考えていただけるとありがたいです(笑)。
知ったかぶるのは私のお手の物でございます(?)。
ご指摘のように、iPhoneもその系列だと思います(まだ実物見たこと無いですが)。
>淺田さん
DSでそのまま「どうぶつのもり」にはまり込まないように(笑)。
この本は当分アマゾンで買えないんで、東大でチェックしてみてください。
>樽井さん
ゲーム持ってない人間の書いた記事なんで、その辺は割り引いて(?)考えていただけるとありがたいです(笑)。
Posted by smooth@マインドマップ的読書感想文 at 2007年08月23日 22:49
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