2007年07月20日
【オシム激白】「日本人よ!」イビチャ・オシム
|
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、ご存知サッカー日本代表監督、イビチャ・オシムさんの独占手記。今まで散々出回った、数々のオシム本(中には明らかな「便乗本」もありました)にうんざりして、まだ手に取られてない方も多いのではないでしょうか?
でも本書は一味違います(汗)!
◆何といっても、今回、翻訳を担当された長束恭行さんは、日本とボスニアにて6度に渡りオシムさんと会われたそう。
そのおかげで、従来のオシム本とは一線を画す、オシム氏のメッセージが満載です。
アジアカップの最中だからこそこの本を読まねば(汗)!
いつも応援ありがとうございます!
【目次】
第1章 日本人とサッカー第2章 代表が意味するもの
第3章 監督という仕事
第4章 進化するJリーグ
第5章 敵か味方か
【ポイント】
◆今回は全面的に引用で。■サッカーとは?
例えば、いまここにコップ一杯の水と一つの角砂糖がある。水が人生だとしたら、サッカーとは、一つの角砂糖のようなものであるとも言える。
固い立方体の角砂糖を水に落とした瞬間、角砂糖は溶けてコップ全体の水が甘くなる。これは、角砂糖が水に影響を与えたということである。サッカーが人生に与える影響も似たようなものだ。サッカーはそのままでは無味無臭である人生に、何らかの「味」をつけ加えるからだ。つまりサッカーは、70年80年という人の人生に対して、一つのとても大きな影響を与えるということになる。
■「リスペクト」という言葉の本当の意味
ところで、私は「リスペクト」という言葉を多用している。日本語に訳せば、「尊重する」とか「尊敬する」という意味のようだが、メディア報道を聞くと、誤解されている部分もあるようだ。ここで少し説明をしておく必要があるだろう。
私の言うリスペクトとは、「すべてを客観的に見通す」という意味である。すなわち、「客観的な価値を見極める」ということだ。
■自分の頭で考える
今の世界は、コンピューターもあれば、テレビもある。テレビの中で誰が何を言っているかを見聞きし、インターネットをみて何かを知る。他にも情報を得られるものはいくらでもある。それに慣れてしまうと、誰か知らない人に操られ、自分の考え方をもう持てなくなってしまう。他人の考えをオートマティックに受け入れ、過ごしてしまうようになるのだ。もし日本人にとってそのほうが楽ならば、人と異なることを考えようとすると疲れてしまうことになるだろう。そうなれば、新しいことを考える必要がなくなってしまうのは当然だ。
だから、まずは自分の頭で考えて欲しい。日本人は世界最高のものを模倣している。まずそれをやめるのだ。客観的に自分の力を見極め、そこから自分の道を探して欲しい。その先にのみ、栄光は待っている。
■ミスをする
サッカーでは、全員で問題を解決しなければならない。しかし、誰のサポートも受けられない状況下で、一人で責任を背負って解決しなければならない場面もある。
そこでミスするかしないかは重要ではない。日本の教育の問題は、長年に渡って罰を与えてきたシステムにあると、私は考えている。どんな小さなミスでも罰せられると考え始めた瞬間に、人は罰せられないように何もトライしなくなる。しかし、サッカーはトライとミスなしで進歩することはできないのだ。
■経験不足
人生において、経験は20年間あれば十分だと思う、サッカーではもっと短くなければならない。サッカーにおける経験は1年半あれば十分だというのが私の考えだ。なぜなら1度や2度なら同じミスや失敗や挫折を繰り返してもよいが、それらを3度繰り返したならば、それは実は悪い経験であるからだ、つまり、学習していないということになる。
起こってしまったことを起こらないようにするのが経験だ。あるいは、もしポジティブなことが起こったならば、どうしたらそうなるのかを知って先へと進む。もし日本人が「経験がない」と常に言い訳しているのならば、日本において何かがずっと上手くいってないということだ。さらに言えば、何も学習しなかった。すなわち「経験」を持つことすらできなかったという意味になる。
■走るということ
ロナウジーニョは他のチームメイトと同じように走ることはない。メッシもそうだし、ロナウドもそうだ。しかし、その代わりに別の選手が走っているのだ。誰がそうなのかは重要ではないが、走らない選手の陰には、実際そういう選手がいるということを知っておいて欲しい。
サッカーは今、一つの方向に向かっている。対戦する相手はそのような走らない選手に付け込んでくる。なぜならば、彼が走らないために、相手は常に数的優位を作れるからだ。そうなると、相手が人数で上回ってしまうために、監督は頭が痛くなるのだ。常に相手は一人多く選手を持つことになる。逆説的だが、中心選手もしくは最高の選手が、実際には最も弱い選手となりうる。スタープレーヤーがウィークポイントなのだ。
■Jリーグの問題点
繰り返し言おう。Jリーグのクラブにおいての問題点は、普段から本気で戦える海外のチームとの大きな対戦がほとんどないことである。また大きな対戦があるとしても、夏にスポンサー絡みの試合があるだけだ。周知の通り、海外、特にヨーロッパから有名なクラブが訪れ、試合をしていく。全くのショーであるが、スタジアムは観客で埋め尽くされる。ベッカムがフリーキックを決めた、メッシがドリブルした、ロナウジーニョが舞った……。そんなことを人々は生き甲斐にする。
でも、それではいけない。本気で戦う本当の対戦がなくては、つまり親善性ではなく、競技性の部分がなければ、チームのレベルアップは難しいのだ。
代表もJリーグのクラブも、韓国や中国、アラブ諸国のチームとはよく本気の試合をしている。私はどこかを過小評価する気はさらさらないが、アジアという自分たちの枠の中だけで満足していては、私たちは常に同じところに止まってしまうのだ。
■メディアについて
チームの雰囲気において、外的要因は何倍も重大である。誰かが過大評価されたり、過小評価されたりしたら、チームをまとめる側としては本当に大変なのだ。人の手によって、特にメディアによって、悪い雰囲気が作られてしまう。とりわけチームが負けている時や、上手く行かない時には、本当の理由とは必ずしも関係なく、戦犯捜しが始められる。
もし一緒にサッカー界を生き、一緒にサッカーを追っていくのならば、メディアは正常に物事を伝える人になるべきである。必要ならば、メディアがサッカーを手助けするのだ。その仕事を愛し、サッカーを愛しているのならば、ジャーナリストはそのように書き、サッカーを手助けするべきなのである。それでこそ、素晴らしい仕事ではないか。
【感想】
◆大量に引用してしまいました(汗)。と言うのも、オシムさんの発言は、ひとつひとつに意味があることが多いので、下手に省略なんぞしようものなら、本人の意図と離れてしまいそうだったもので。
もっとも、ある程度ボリュームがある部分でも、このように断片的に引用するのも、オシムさん的には本意ではないでしょうけど。
◆本書は解説もなく、記者会見のようにとんちんかんな質問も出ない、オシムさんの言葉だけで構築された、完全なオシムワールドです。
しかも翻訳された長束さんは、「クロアチア・サッカーニュース」というブログ(一部のサッカーファンには超お馴染み)を運営されている、クロアチア在住のお方(参考までに、昨年のW杯前にクロアチアの新聞にオシムさんが語ったW杯戦士について―その1、その2)。
よって、オシムさんの発言は、ほぼ100%日本語化されていると思います。
・・・後は私たちがちゃんと理解できるかですね(汗)。
◆なお、本書では、2002年、2006年の2回のワールドカップにおける日本代表とそれを応援する日本国民について、言及がされています。
この部分については、中途半端な量で引用すると、意味が伝わりにくいと思ったので省略しましたが、これからの日本代表を応援する上でも、サッカーファンにはぜひ一読して頂きたいところ。
2002年、トルコ戦を前に、日本中を包み込んだ「陶酔感」、そして2006年、オーストラリア戦に際して、明らかに不足していた「リスペクト」。
オシムさんには、「勝つべき試合を落とした」(オーストラリアについては、実力的には「日本より上」と思っていたようですが)と見られていたようです。
この記事は、アジアカップのオーストラリア戦の前にあわてて投稿するので(笑)、今回のオシムジャパンの選手の方々には、ぜひとも相手を「リスペクトして」一矢を報いて頂きたい、と書いてみるテスト(笑)。
◆なお、今回の記事では、できるだけニュートラルな部分を抽出したつもりですが、本書は、「サッカー好きには戦術的なお話」(日本人選手の具体名が出まくり)、「サッカーに興味がない人には日本人論やコミュニケーション論のお話」(「叱咤激励の仕方」等)と、どちらのタイプの方でも楽しめる内容になっています。
私の場合はサッカー好き、かつ、ビジネス書好き、ということで、ダブルで美味しい一冊でした。
全ての日本人に!!
|
【関連記事】
「イビチャ・オシムのサッカー世界を読み解く」西部謙司(2007年05月22日)「オシムジャパンよ!」フィリップ・トルシエ(2007年05月17日)
「敗因と」金子達仁,戸塚 啓,木崎伸也(2007年01月05日)
「オシムの言葉」とオシム語録の抜粋(2006年06月26日)
【号外】「日本代表に巻選手選出」と「オシムの言葉」(2006年05月15日)
【編集後記】
◆昨日の夕方、アマゾンからお急ぎ便で大きめの箱が送られてきました。通常であれば、単行本3冊以上の時などに使われる、真ん中開きのヤツです。
それにしてはエライ軽いなー、と思ったら、中から出てきたのはコレ!
・・・昨日注文した新書1冊(汗)。
ヤマトで普通にこの大きさの箱送ったら、この新書の値段より高いような気がするんですが。
恐るべしアマゾン!
ご声援ありがとうございました!
この記事のカテゴリー:「サッカー」へ
「マインドマップ的読書感想文」のトップへ
おすすめの本 - livedoor Blog 共通テーマ
スポンサーリンク
この記事へのトラックバックURL
●スパム防止のため、個別記事へのリンクのないトラックバックは受け付けておりません。
●トラックバックは承認後反映されます。
オシム本、紹介ありがとうございます。
長束さんって、あの人ね。
やべっちFCに出演していたときに
あっと思ったのだが、本は覚えていても
翻訳者は覚えていなかった。
クイズマニア界では有名な方です。
マスコミが取りあげてほしいですね。特にスポーツ紙あたりに。
P.S.新書1冊の開き箱でのお急ぎ便は
ビックリ。ま、単三電池入れ160円でも
立派なお急ぎ便ですからw
オーストラリア戦前には、絶妙ですね。
確かに、数的優位をいかに作るかが、戦略・戦術の基本原則だと、勉強すればするほど分かります。
お急ぎ便契約、わたしも、しようかと、オートマチックに惹かれます。
良いタイミングですね。
中学でサッカー部だった僕ですが、最近は戦術云々よりも
ここで紹介されてるようなことのほうが興味があります。
アジアカップは「リスペクト」しますよ。
こういう本も注目ですよね。
日本もいい感じで勝ってますし、
これから楽しみですよね。
今までこのアジアカップみたいに
点取ったことってあんまりないですしねぇ。
応援クリック!ぽちっ
ジレットの髭剃りが入ってきて驚きました。(ジレットキャンペーンで申し込んだのさえ忘れてた。)ww
配送をまとめるのが面倒で携帯から
ガンガン買っていくと同じ日
5箱位届くことも。(・ω・)/
でも確実に購入数が増えて
いるんですよね。
アマゾンのマーケティング力恐るべし。
え?長束さんってそんなに有名な方だったんですか(汗)。
全然知りませんでした。
お急ぎ便は、やはり輸送効率を考えた結果なのかと。
ならせばペイしているんでしょうね。
>ニタさん
いよいよ今夜オーストラリア戦ですよ(汗)。
タイミングはともかく、本書はアクセス的にはイマイチでした(爆)。
>LuckyUSさん
あら、ニタさんだけじゃなくて、LuckyUSさんも経験者でしたか。
私は相変わらず「テレビだけ」のサッカー好きです(汗)。
本書は、「100%オシムの言葉」という意味で価値ありますね。
アジアカップ最中の割には、本は売れませんでした(爆)。
ていうか、「3〜5週間待ち」なんで当たり前ですけど(涙)。
いよいよ今夜なんでちょっとドキドキ。
>中里さん
中里さんも「アマゾンプライマー」でしたか(笑)。
大きな箱に中身がないと、拍子抜けしますよね(笑)。
>ヨシザワさん
いつもお買い上げありがとうございます。
ケータイから買っていただいた場合に、アフィリが付くのかよくわからないんですが(笑)。
昨日のサッカーの試合を見てオシム監督に興味を抱いたのですが、自分なりの哲学を物凄く持っている人なんですね。
サッカーをする人でなくても、ためになりそうな一冊ですね。よんでみます。
応援ぽち!
コメントありがとうございます。
オシムさんは、ホント哲学者みたいな感じですよね。
この本もアマゾンでは今は入手困難みたいなので、リアル書店でぜひどうぞ。
応援ありがとうございました!