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2022年08月08日

【読書術】『「名著」の読み方』秋満吉彦


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「名著」の読み方


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「Kindle本夏のキャンペーン」のディスカヴァー分における注目作。

久しぶりに当ブログの定番ジャンルである、読書術の本を読んでみました。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
本書で紹介するのは、NHK「100分de名著」のプロデューサーが提案する「本を味わい尽くす読書術」です。
実は奥が深い「薄い本・定番の名著」から、読破が困難な「分厚い本・難解な本」まで。
「いつか読もう」と思いつつ、積ん読になったり、読みっぱなしになったりしていた本の「読み方」と「楽しみ方」が同時にわかります。
本には、いろんな楽しみ方がありますが、本書で紹介するのは、名著や古典を通して自分だけの読書体験を得られる方法です。
「速読」「インプットのための読書」も大切ですが、たまには自分本位に、ただただ身を委ねる読書で、本とじっくり向き合ってみてはいかがでしょうか?

出たばかりとあって中古価格が定価を大きく上回っていますから、このKindle版が800円以上お得な計算です!






This book is supposed to be a comic book. Mmmh. Mayyybe I got tricked into reading a fictional biography of Ada Lovelace and Charles Babbage? / dridde


【ポイント】

■1.「呼ばれた本」には素直に従う
 脳科学者の茂木健一郎さんも、小学5年生からの愛読書である『赤毛のアン』(モンゴメリ)との出会いについて「呼ばれた」と言っておられました。
 図書館で見かけたとき、背表紙がもう、キラキラ光って見えたのだそうです。そこから「アン」に熱中した茂木さんは、物語の舞台であるカナダのプリンスエドワード島を訪ねるまでになります。
 さらには、ある人に「実は赤毛のアンが好きで」と漏らしたのがきっかけで、アンについての本も出版。「100分de名著」の『赤毛のアン』の回にも、指南役として出ていただきました。
 そんなふうに、本との偶然の出会いが、人生を大きく変えることもあります。
 そして、その出会いを叶えてくれるのが、図書館であり書店なのです。


■2.「A(大事)」「B(気になる)」「Q(お手上げ)」を線で囲む
 読み進めながら、気になった部分をどんどん線で囲んでいく。そしてそこに、「A」「B」「Q」の3つの印をつけていくというものです。
 この3つには、それぞれ違った意味合いがあります。
 まず「A」は、これは誰が見ても大事な部分だろう、学ぶべき箇所だろうと思えるところにつけます。
 それに対して「B」はもう少し微妙な感じの部分。完全に理解できるわけではないけれど、なんとなく気になる、自分に対して問いかけられている気がするというところにつけていきます。
 そして「Q」はもうほぼお手上げ、さっぱり何のことだか分からないという部分につけていきます。分からないところ全部につけていくと「Q」だらけになって収拾がつかなくなりそうな場合は、「今はよく意味が分からないけれど、大事なことが書いてありそうだし、後でもう一度読み返したい」というところに絞るのがいいでしょう。


■3.本は「自分に届いた手紙」
 実は、ずいぶん後のことになりますが、「100分de名著」にも何度も出演いただいている批評家、随筆家の若松英輔さんに、まったく同じことを言われたことがあります。「秋満さん、本は自分に届いた手紙だと思って読んだらいいんですよ」と。
「自分に届いた手紙」だと思って読み始めると、どうなるか。そこに書かれているすべてが他人事ではなくなるのです。
 若松さんは「自分がもらったラブレターだったら、すごく真剣に読むでしょう。数行の短い文章だったとしても、この一言に実は深い意味があるんじゃないかって、必死で考えるじゃないですか」とおっしゃっていました。
 それと同じように、ただなんとなく読み飛ばすのではなく、一文一文が自分に向けた問いなのではないか、何か意味があるのではないかと考えながら読むと、より深いものが見えてくる。遠かった本の内容が、ぐっと自分のほうへと近づいてくる。
「本と対話する」というのは、そういうことです。


■4.異物は「きっと分かる日」のためにある
 たとえば、数学者のアンリ・ポアンカレは『科学と方法』という著書の中で、「インキュベーション(孵化)」について書いています。
 ある問題について徹底的に考え抜いた後は、1回そこから離れて別の作業をしたり、休んだりする。そうすると、何日か後に突然アイデアがひらめいたり難問が解けたりするというのです。(中略)
 だから、「本に委ねる」方法で読み進めていて、途中で「なんだこれは」と思うことがあっても、焦らなくていい。
 前述したように、異物は異物のまま飲み込んでおけば、いつか意味が解ける瞬間が来るかもしれません。
 それは1日後かもしれないし、1週間後かもしれない。私の『歎異抄』のように25年後かもしれないけれど、「きっと分かる日が来るだろう」 ということを胸に置いておくことが大事だと思います。


■5.自分の人生と重なる本と出会う2つの方法
 1つは、新しく人と出会うたびに、「人生の中で出会った本の中で、大きな影響を受けた本って何ですか」と聞いておくという方法です。さらに親しくなったら、その本がどんなふうにその人の人生の支えになったかも聞いてみます。その上で、その本のタイトルや人生への影響についてメモを取っておく。
 これは、まさに「生きた情報」ですから、その人と同じ困難に自分がぶつかったときにその本を読んでみると、かなり高い確率で自分の人生の支えにもなってくれます。
 もう1つは、新聞や雑誌に掲載されている書評を読む習慣を身につけるという方法。書評される本のジャンルは幅広いので、自分の人生とダイレクトに接続するような本は少ないのですが、見つけたら、スクラップしておくなどしてストックしておくと、何か起きたときの「常備薬」になってくれます。
 

【感想】

◆冒頭の内容紹介にもあるように、本書の著者である秋満さんは、NHK「100分de名著」のプロデューサーさん。

それもあってか、本書に登場する「名著」も「100分de名著」シリーズで取り上げたものが多く、このシリーズになじみのある方なら、第1章から引用した上記ポイントの1番目にあるようなエピソードを知ることができて、より楽しみも増すかもしれません。

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モンゴメリ『赤毛のアン』 2018年10月 (100分 de 名著)

……茂木先生がなぜ『赤毛のアン』に呼ばれたのかは、本書では分かりませんでしたが。

また本書は、単に「名著」を紹介するだけでなく、秋満さんなりの「名著」に対するアプローチを学べる点も秀逸。

「名著」の多くが必ずしも読みやすいとは言えない(むしろ難解な事が多々?)ため、この心遣いはありがたいです。

たとえば秋満さんは、プルーストの『失われた時を求めて』を「1日5分読む」と決めて、現時点でも継続中なのだとか(「この調子なら読了できそう」という手応えアリ、とのこと)。

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失われた時を求めて 1〜第一篇「スワン家のほうへI」〜 (光文社古典新訳文庫)

……全6冊とも「Kindle本夏のキャンペーン」で「50%ポイント還元」になってますがw


◆同じく秋満さんの読書法がいくつか登場するのが、第2章の「本を汚す」。

上記ポイントの2番目の「A」「B」「Q」の印をつけるやり方は、齋藤 孝先生の「三色ボールペン」を髣髴とさせます。

なお本書では、具体的にこの「ABQ方式」を使って、『人生論ノート』を読んでいく過程を紹介。

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人生論ノート(新潮文庫)

……こちらも「50%ポイント還元」ですね(アサマシ)。

本書では実際に囲った部分が引用され、そこに秋満さんの考えや感想も記されているのですが、最初「Q」だった部分が「B」になったり、腹落ちする流れには、臨場感がありました。

長くなるので割愛しましたが、ここは本書の読みどころの1つだと思うので、ぜひご確認ください。


◆続く第3章のタイトルは「本と対話する」。

先ほどの「ABQ」よりさらに深く、精緻に読んでいくために、本に対して「問いを立てていく」ことが提案されています。

一方、上記ポイントの3番目にあるように、「本は『自分に届いた手紙』」と考えると、どの文にも「意味がある」と考えられる次第。

私もたまに、「この本、自分に向けて書かれたのでは?」と思うほど、たまたま読んだ本が「自分ごと」になることもありますが、正直まれなケースです。

ちなみに秋満さんは、カフカの『変身』を読んで、いくつもの「問い」が浮かんだそうなのですが、ある「メタファー」だと考えたところ、ことごとく腑に落ちたのだそう(詳細は本書を)。

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変身(新潮文庫)


◆逆に第4章では「本に委ねる」という章題にもあるように、「テクニックや手法はいったん置いておいて、素のままで本と向き合い、すべてを受け入れてしまおう」とのアドバイスが。

これは読者にとって「太刀打ちできない本」に有効な読書法で、たとえば秋満さんは、『カラマーゾフの兄弟』において、そうせざるを得なかったようです。

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カラマーゾフの兄弟(上中下)合本版(新潮文庫)

さらに、委ねようとしても「消化しきれない異物」があったのが、『罪と罰』なのだとか。

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罪と罰 1 (光文社古典新訳文庫)

しかし、こうした「異物」でさえも、「きっと分かる日が来る」と受け入れようと提案しているのが、上記ポイントの4番目なワケです。

確かにある日突然、唐突に理解できることってありますよね。


◆なお、上記ポイントの5番目のTIPSは、本書の第5章からのもの。

オススメ本を聞くことは、多くの読書術本でも推奨されていますが、さらに「その本がどんなふうにその人の人生の支えになったかも聞いてみる」のがミソでしょう。

逆に、新聞や雑誌の書評は、情報入手のルートとしては有益ですが、選者や媒体を厳選しておいた方が良い気がします。

本来なら「ウチもぜひ!」と言いたいところですが、「自分の人生と重なる」ような重い本は基本的に取り扱っておらず(スイマセン)。

むしろ、当ブログが目指すのは、本書で言うところの「キーストーン(「これぞ」という心臓部のような文章)」を見つけることでしょうか。

私の感想部分はともかく、5つに絞った「ポイント」(のどれか)が、読者の皆様のお役に立ちますように……。


「名著」に立ち向かう心構えができる1冊!

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「名著」の読み方
第1章 本を読む準備
第2章 本を汚す
第3章 本と対話する
第4章 本に委ねる
第5章 読み終わった本との付き合い方


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【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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