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2022年08月06日

【多様性?】『多様性の科学 画一的で凋落する組織、複数の視点で問題を解決する組織』マシュー・サイド


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多様性の科学 画一的で凋落する組織、複数の視点で問題を解決する組織


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「Kindle本夏のキャンペーン」のディスカヴァー分でも人気の1冊。

前作『失敗の科学』(現在同じセールの対象ですね)が当ブログでも人気だったマシュー・サイドが、「多様性」というテーマに挑んだ作品です。

アマゾンの内容紹介から。
22か国刊行の世界的ベストセラー『失敗の科学』の著者による待望の新作!
経営者からメディア、著名人までもが大絶賛!
なぜグッチは成功しプラダは失敗したのか。
なぜルート128はシリコンバレーになれなかったのか。
オックスフォード大を主席で卒業した異才のジャーナリストが、C I A、グローバル企業、登山隊、ダイエットなど、あらゆる業界を横断し、多様性の必要性を解き明かす。
自分とは異なる人々と接し、馴染みのない考え方や行動に触れる価値とは?

中古があまり値下がりしていませんから、このKindle版が1000円弱お得な計算です!






Enigma machine / Thomas Guest


【ポイント】

■1.友人だけのグループと他人が入ったグループとの違い
 ほかにもこんな実験がある。米コロンビア・ビジネス・スクールのキャサリン・フィリップス教授は、被験者を特定のグループに分け、複数の殺人事件を解決するという課題を与えた。各グループには、証拠やアリバイ、目撃者の証言や容疑者のリストなどさまざまな資料が提示された。グループの半数は4人の友人で構成され、残りの半数は友人3人とまったくの他人――社会的背景も視点も異なる人物――が1人だ。本書をここまで読んだ方はもうおわかりだと思うが、結果は他人を含めたグループのほうが高い成績を上げた。彼らの正解率は75%。友人ばかりのグループは54%にとどまった。ちなみに個人で取り組んだ場合の正解率は44%だった。


■2.暗号解読に多様性が必要な理由
たとえば「Cillies」と呼ばれる暗号について見てみよう。これはドイツ軍のオペレーターがエニグマを使って通信する際、毎回通信文のヘッダーに入れる3文字の文字列の総称だ(文字列は通信ごとに異なる)。オペレーターはその文字列に恋人の名前や、罵り言葉の最初の3文字をよく使っていた。(中略)
 どうやら暗号解読は、ただデータを読み解くのではなく、人を読み解く作業でもあるようだ。ブレッチリー・パークのチームにいた若い女性暗号解読者の1人はこう言った。「オペレーターの心理について常に考えていました。戦争のさなか、司令官の通信文を暗号化する設定のため、エニグマの小さな画面に数文字の文字列を打ち込まなければならないとしたら、恋人の名前や罵り言葉でも使いたくなるでしょう。特に私はドイツ語の罵り言葉について、世界の誰にも負けません!」


■3.会議は壊滅的に非効率
 研究を始めた彼女がすぐに注目したのは順位制だった。1人か2人の人間が主導権を握ると、その集団(特に内向的なメンバー)の視点や意見は抑圧される。支配的な人間がリーダーになった場合はさらに抑圧が強まり、メンバーはリーダーの意見に無条件に賛同するようになる。反逆者のアイデアは表明されない。トンプソン教授は言う。「データによれば、一般的に4人のグループの場合、そのうち2人が発話の62%を担う傾向があります。6人グループなら、3人で70%。この支配傾向は、集団が大きくなればなるほど強くなっていきます」。これは日常的に見られる傾向で、「不均衡なコミュニケーション問題」という名前も付いている。


■4.シリコンバレーになれなかったルート128
ルート128周辺の企業は決して意図的に自分たちの未来をつぶそうとしたわけではない。みな創造的で頭のいい人間だったが、根本的な思考の枠組みから抜け出せていなかった。イノベーションの要因は創造性だけではない。人と人とのつながりもカギになる。彼らは前述の「天才族」に似ている。独創性はあったものの、社交性に欠けていた。多様性もあったのに、活用されることはなかった。そしてタスマニア島のように孤立した。サクセニアンは次のように指摘している。「ルート128の周辺地域では、シリコンバレーで慣例となっていたネットワーキングやコラボレーションが主要文化として根付くことは決してなかった。たとえ新たな経営方針を打ち出しても、従来の管理体制をごく一部変更するのみにとどまっていた」


■5.標準規格化されたコックピットの問題とは?
 ところがダニエルズ中尉の測定結果では、「10カ所すべてが許容範囲に収まったパイロット」の数はゼロだった。4000人超の中で1人もいなかったのである。ダニエルズ中尉の考えは見事に的中した。問題は1926年以降にパイロットの体格が大きくなったことではない。真の問題は、平均値にすべてピタリと当てはまるパイロットなど存在しないのに、平均値を採用していたことにあった。前述の心理学者トッド・ローズは次のように考察する。「腕は平均より長いのに足は平均より短いパイロットもいただろう。胸囲は大きいのにお尻は小さい場合もある」。実際、ダニエルズ中尉が10カ所のうち3カ所――たとえば首、太もも、腕まわりの長さ――だけを抜き出して比較してみても、3カ所とも許容範囲内に収まるパイロットは全体の3.5%に満たなかった。


【感想】

◆冒頭でも触れた、前作である『失敗の科学』同様、興味深い事例と確かな切り口によって、問題をあぶりだした作品でした。

さて、その『失敗の科学』なのですが。

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失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織

参考記事:【失敗?】『失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織』マシュー・サイド(2016年12月28日)

ちょうどKindle移行期で、この本は単行本で読んでしまった関係上すぐには読み返せないという(どの段ボールに入っているのか不明)。

ただ、印象に残っているのが、上記レビューのポイントの1番目にある、「飛行機事故と医療事故の共通点」である「上下関係」のお話でした。

そして実は本書でも、第3章の「不均衡なコミュニケーション」にて、こちらの登山事故についてフォーカス。

1996年のエベレスト大量遭難 - Wikipedia

そこで今回は、この3章からは上記ポイントの3番目の会議の問題点を挙げてみました。

……いや、「遭難事故」は頻繁には起きませんけど、会議の「事故」は日常茶飯事ということで、指摘しておきたかった次第です。


◆また第1章においても、あの「9.11」事件の裏側について、かなりの深掘りがされていました。

発生を予期させるような情報が、いくつもいくつも断片的に上がってはいたものの、それらを結び付けたり、正しく意図を解釈する事ができず、不幸にも起きてしまったあの大事件。

「防ぐことはできたはず」という意見と「後知恵バイアスだ」という意見は、どちらも一理ありますが、「もしCIAの職員構成がほぼ白人男性のみでなかったら、違った結果になったのでは?」というのが著者であるマシュー・サイドの考えです。

実際、上記ポイントの1番目にあるように、たった1人「他人」が加わっただけで、正解率が大幅にアップ!

ただし興味深いのは、それぞれのグループの体験で、「他人が加わったグループ」はストレスがあったのに対して、「画一的なグループ」は気持ちよく話し合いができた、と感じていたのだそうです。

でもそれで間違った結論を出していたら世話がないので、読者の皆さんも仲間内で楽しく話し合いができた際にはご注意を。


◆また第2章から抜き出した上記ポイントの2番目に登場する「エニグマ」とは、第二次世界大戦でナチス・ドイツが用いたローター式暗号機のこと(本記事のサムネイル参照)。

エニグマ (暗号機) - Wikipedia

もちろん、暗号解読陣には、世界的な数学者は当然選ばれていましたが、他にも言語学者や歴史学者、さらにはクロスワードパズルのコンテスト出場者にも声がかかったのだそうです。
「暗号解読は、ごく単純なものでも(中略)エニグマのように複雑なものでも、文字列や単語からなんらかの関連性を見出す作業であることに変わりはない」とスミスは言う。「クロスワードパズルはちょうどそれに似た水平思考を要する」
そういえば、こちらはイギリスのお話でしたが、HONZさんで知った下記の本によると、アメリカはアメリカで女性を大々的に活用して成果を上げていたようですね。

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コード・ガールズ――日独の暗号を解き明かした女性たち

参考記事:『コード・ガールズ 日独の暗号を解き明かした女性たち』を読む - HONZ

これこそまさに「多様性」のなせるワザと言えるでしょう。


◆なお、冒頭の内容紹介にも出てきているのが、上記ポイントの4番目の「ルート128」。

ルート128 - Wikipedia

お恥ずかしながら、私は全然知らなかったのですが、かつては「マサチューセッツの奇跡」とまで呼ばれた、ハイテク産業が隆盛を極めたところだったんですね。

ただ、結局ここでは、巨大産業がいわゆる「垂直統合」をしており、製造効率は高かった反面、他社との交流はなかったわけで。

極端な話、自社のアイデアを守るための探偵を雇う企業もあったそうですから、それはシリコンバレーとは違います罠。

私も話は聞いたことがある、あの「ホームブリュー・コンピュータ・クラブ」も登場しますから、この部分はぜひお読みいただきたいところです。

ホームブリュー・コンピュータ・クラブ - Wikipedia


◆今のお話は第4章で、1つ飛んだ第6章から抜き出したのが、上記ポイントの5番目。

ジェット機の黎明期である1940年代末に、事故が多発したことを受けて調査が行われたものの、機械系統や電気系統には問題がありませんでした。

そこで上記引用でも登場するダニエルズ中尉が目を付けたのが、コックピット。

パイロットの体格の平均値で設計されているコックピットですが、それこそほぼ全員がどこかしらフィットしていませんでした。

そこで設計を変え、座席やレバーの位置を各人が調節するようにすると、事故は激減したという。

また、この章で個人的に驚いたのが、血糖値のお話です。

よく「〇〇を食べると、血糖値が上がる」とか「上がらない」と言いますが、実は人によってその血糖値の動きが全然違うのだとか(詳細は本書を)。

これはもう、ダイエットする方は、血糖値センサーで食材ごとに全部確認すべきでしょうね。


知的好奇心が満たされる1冊!

B0957B1LD5
多様性の科学 画一的で凋落する組織、複数の視点で問題を解決する組織
第1章 画一的集団の「死角」
第2章 クローン対反逆者
第3章 不均衡なコミュニケーション
第4章 イノベーション
第5章 エコーチェンバー現象
第6章 平均値の落とし穴
第7章 大局を見る


【関連記事】

【失敗?】『失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織』マシュー・サイド(2016年12月28日)

★『「みんなの意見」は案外正しい』 ジェームズ・スロウィッキー (著)(2006年02月28日)

【自己矛盾?】『自己矛盾劇場: 「知ってる・見えてる・正しいつもり」を考察する』細谷 功(2021年06月19日)

【仕事術】『超速で成果を出す アジャイル仕事術 プロフェッショナル2.0という働き方』坂田幸樹(2022年06月30日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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賢さをつくる 頭はよくなる。よくなりたければ。

当ブログでもレビュー済みの思考術本は、Kindle版が800円以上お得。

参考記事:【思考術】『賢さをつくる 頭はよくなる。よくなりたければ。』谷川祐基(2020年01月01日)

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「自己肯定感低めの人」のための本

タイトルどおり、自己肯定感が低くてお悩みの方向けの作品は、Kindle版が300円強お買い得。

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たった1人からはじめるイノベーション入門 何をどうすればいいのか、どうすれば動き出すのか

当ブログ初登場となるイノベーション本は、Kindle版が700円ほどお得な計算です!


【編集後記2】

◆一昨日の「Kindle本夏のキャンペーン」のディスカヴァー分の記事でも人気が高かったのは、この辺の作品でした(順不同)。

B0957B1LD5
多様性の科学 画一的で凋落する組織、複数の視点で問題を解決する組織

B0B49G69YF
超効率耳勉強法

B0B49C9X67
呪いを、科学する (ディスカヴァー携書)

B0B49G85V3
99%の人がしていない たった1%のリーダーのコツ 決定版

よろしければ、ご参考まで!


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Posted by smoothfoxxx at 10:00
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