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2022年05月26日

【論理的思考】『論理的思考のコアスキル』波頭亮


B07QB1YD39
論理的思考のコアスキル (ちくま新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、今月の「Kindle月替わりセール」でも人気の1冊。

日本のトップコンサルタントの1人である波頭亮さんが、ビジネスパーソンにとっては鉄板のテーマである「論理的思考」について書かれた作品です。

アマゾンの内容紹介から。
論理的思考力を確実に強化するには、論理とは何か、思考とはどのような頭脳行為かを原理的に理解したうえで、核となるスキルをトレーニングしていくことが最も有効である。本書では必須となる3つのコアスキル「適切な言語化」「分ける・繋げる」「定量的な判断」について、習得のためのプログラムを具体的に、体系的に示してある。

新書だけに中古も値崩れしていますが、送料を考えるとこちらのKindle版の方がお買い得です!





Engineering flowchart: Does it Move? Should it? #WD40 vs. Duct Tape (original artist unknown) / dullhunk


【ポイント】

■1.演繹法と帰納法の結論の違い
 先に、演繹法は純粋論理的、帰納法は実証科学的という説明をしたが、この基本的性質の違いはそれぞれの論理展開を行うことによって得られる結論の性質の基本的な違いを生み出している。どのような違いかというと、演繹法によって得られる結論は狄燭偽か瓩婆晴に判断することが可能であるのに対して、帰納法によって得られる結論は、その正しさの程度が犇い/弱い瓩波獣任気譴訐質のものなのである。
 具体的に説明しよう。
 帰納法において論理展開の判断の対象とされるのは個別具体的な現実事象の集合であり、またその集合も網羅的全数ではなく一部の事象をサンプリングによって集めたものである。したがって、純粋論理や公理の世界を判断の基準とすることができる演繹法と異なり、現実の世界に特有の様々な矛盾や例外を否が応でも扱わなければならない。たとえば、「哺乳類は胎生である」が、カモノハシという哺乳類は卵生であるという例外があったり、「人間は男か女のどちらかである」という分類にも両性具有者という例外がある、という具合いである。


■2.論理的思考の3つのコアスキル
 1つ目のコアスキルは、思考している意味内容を的確に言葉で表すための「適切な言語化」スキルである。(中略)
 2つ目のコアスキルは、事象を構成要素に「分ける」スキルと、ある事象と別の事象を意味やイメージの連関性によって「繫げる」スキルである。(中略)
 3つ目のコアスキルは論理的思考に現実的有効性を与えるための「定量的な判断」スキルである。(中略)
 そして以上の3つのコアスキルを十全に発揮するためには、知識と経験というアセット(蓄積されたもの・資産) が必要になる。「適切な言語化」は事象の意味内容を正確に表す言葉を知らなければ正しく行えないし、「分ける・繫げる」も事象と照らし合わせるべき有効な知識や経験を持ち合わせていなければ何もできない。また「定量的な判断」も現実の事象の定量性や確率・統計の概念を知らなければ不可能である。このように、全てのコアスキルの母胎となるものが、広い知識と様々な経験というアセットなのである。


■3.MECEな体系の2つのメリット
 1つは、新しい要素が出てきた時に、その要素特性をクライテリアに照らし合わせることによって、体系の中に必ず位置づけることができるということである。先の動物の体系の例では、爐修譴何か疂からない「動物」に関して、セキツイがあり、体温変化が無く、卵を産むということが分かれば、その動物が鳥類であると分かるのである。
 そしてMECEな体系のもう1つのメリットは、新しい要素が体系内のどこに位置づけられるかを判断できれば、その要素の属性全体を把握できるということである。具体的には、目の前の動物がアマダイ(魚類) であると分かっていれば、セキツイ動物でエラ呼吸の変温動物であるということが分かるという具合いである。


■4.「なぜなぜ5回」の問題点
 とはいえ、「なぜなぜ5回」には、論理的思考力を向上させるための因果関係の捕捉の手法としては不十分な点もある。
「なぜなぜ5回」のアプローチは、ある1つの事象の背景にある原因を探り、またその原因を、そしてさらにまたその背後の原因をという具合いに、因果関係をタテに深掘りしていく思考スタイルである。  
 しかし、いくつかの並列的な原因によって引き起こされた事象の因果関係を捉えるためには、タテの因果連鎖だけでなく、並列して存在する複数の原因を把握するというヨコの因果関係の捕捉も必要である。現実の事象間の因果関係は、1つの原因から1つの結果が生じているという単純な一対一対応の関係ではなく、複数の原因が相まってある1つの事象が生起していることがほとんどなのだ。
 つまり、実際の事象の因果関係は「タテの因果・ヨコの因果」で成り立っていることに留意しておかなければならないのである。


■5.手を使って考える
 それでは、どのようにすれば人間は複雑な情報処理や正確な論理的思考を行うことができるのかというと、倏召亮蟒け瓠△垢覆錣訴源通り「脳を手で助けること」が有効である。具体的には、紙に書き出しながら考えることによって、つまり情報や知識を紙面上に載せて、これらを繫げたり分類したり、一時的にホールドしておいたりすることによって、脳の処理容量を超えた情報を扱うことが可能になるのだ。
 単に犹廚Ν瓩世韻任覆犹弭有瓩垢襪燭瓩砲蓮⇒彖任藩彖任髻繫げる」作業が必要になるし、猩斥的に畛弭佑垢襪燭瓩砲蓮嵎ける」作業も必要になる。頭の中だけで完結できる思考はごく単純な範囲にとどまり、多くの場合、手を使って考えることではじめて十全な思考が成立するのである。
 さらに紙面に書き記すことによって、「繫げた・分けた」プロセスを自ら客観的に確認することができ、より妥当な論理的思考を追求することも可能になる。まさに「論理的思考は手によって為される」といっても過言ではないのである。


【感想】

◆新書とはいえ、なかなか歯ごたえのある作品でした。

新書サイズでページ数が265ページですから、ボリューム的にはそんなにある方ではありません。

しかし、無駄な説明や余計なポンチ絵がない一方で、必要に応じて適切な事例や解説図が添えられているソリッドなページ構成は、さすがトップコンサル、と言ったところ。

実際、本書をテキストにして、社会人大学の授業やセミナーが開かれていてもおかしくないと思います。

もっとも本書の第3章には、論理的思考力をそれなりのレベルに仕上げるのに要する時間が記されているのですが、とても片手間では身につかないような(詳細は本書を)。


◆そんな中身の濃い本書ですから、ハイライトは当然引きまくっており、どこを抜き出すのか迷いました。

そこで基本的には、本書を読むまで知らなかったTIPSを中心にご紹介している次第。

たとえば上記ポイントの1番目の「演繹法と帰納法の結論の違い」というお話は、言われてみたら納得なのですが、そういう見方があったのか、と。

要は、帰納法の結論というのは、あくまで「強い/弱い」の問題であり、絶対的ではない、ということ。

実際、「哺乳類は胎生である」という結論も、「カモノハシ(哺乳類)は卵生である」という例外があったりしますしね。

ですから、結論を支える根拠は厳選して集める必要があるわけです。


◆同じく上記ポイントの3番目の「MECE」のお話も、個人的には「目からウロコ」でした。

すいません、サラッと「クライテリア」という単語が出てきていますが、これは「思考対象を分ける時の狎擇蠍=分類基準瓠廚里海函
 今日のランチに何を食べようかと考えているとしよう。「料理」を分類するクライテリアとして、和食、中華、イタリアン、フレンチといった分け方になる「料理の国籍」や、麵類、丼物、定食、パン・サンドイッチといった「メニューの種類」や、野菜料理、肉料理、魚料理といった「素材の種類」などがすぐに思い浮かぶであろう。
本書では具体的にツリー図を掲載して解説しているのですが、たとえば「動物」からスタートして「セキツイの有無」というクライテリアで分けると「セキツイ動物」と「無セキツイ動物」に分けることができます。

このうち「セキツイ動物」を「体温変化の有無」で分けると、「恒温動物」と「変温動物」に。

さらに「変温動物」を「エラ呼吸or両方or肺呼吸」で分けると、「魚類」「両生類」「爬虫類」に……といった具合に、当てはめていくことで、「それが何なのか」が分かるんですね。

そしてこのツリーでもう1点、それが何の生き物かが分かっていれば、今度はツリーを遡ってクライテリアごとの特徴が判明するという。

いや、「MECE」なんて、単なる「漏れなく無駄なく」という話だけかと思っていましたが、あにはからんや。


◆さらには上記ポイントの4番目では、トヨタでもおなじみの「なぜなぜ5回」にも不備があると指摘。

これもまた言われてみたらある意味当然なのですが、何かしらの結果に対する原因が単独とは限らないんですよね。

本書では「風邪をひいた」ことの原因が、たとえ「寒い日に薄着ででかけた」としてもそれだけに限らない、とし、「睡眠不足」や「人が大勢集まる場所に行った」といった原因が複合的に合わさっている場合が多いのではないか、と言われており、なるほど納得。

……もっとも一応これは「なぜなぜ5回」の不備に関する事例としては、分かりやすくていいのですが、細かいことを言うと、風邪はあくまでウィルスによってもたらされるので、風邪のウィルスに接触していなければ、たとえどんな原因が他にあっても基本的にはかからないんですよね。

私も、今までだったら絶対熱をだしていたような体調(過労や睡眠不足)でも、ここ2年間一切発熱しておらず、結局コロナ禍でマスクしっぱなしであることが、風邪のウィルスを遮断しているからという。


◆なお、「知らなかったTIPSを中心に」と言いつつ、上記ポイントの5番目の「手を使って考える」は、類書でもおなじみのお話。

ただ、こうして波頭さんが「多くの場合、手を使って考えることではじめて十全な思考が成立する」と断言してくださると、やはり手を使わねば、と改めて決心しました。

ちなみに波頭さんいわく「論理的思考力強化という面からは、紙を使うことを勧める」とのことですから、一応ご留意を。

また、今回割愛した第4章では、認知バイアスやクリティカル・シンキングについてもページが割かれています。

「4枚カード問題」(「ウェイソン選択課題」)や、「3囚人問題」等々も、丁寧に解説されていますから、この手の問題系がお好きな方はぜひご覧ください。


「論理的思考」を身につけたい方なら、要チェックです!

B07QB1YD39
論理的思考のコアスキル (ちくま新書)
第1章 論理的思考とは
第2章 論理的思考のコアスキル
第3章 コアスキル習得の具体的方法
第4章 クリティカル・シンキング:それは本当に正しいのか


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【論理思考】『「超」入門!論理トレーニング』横山雅彦(2016年08月17日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

B00KD2IK4S
チーズはどこへ消えた? (扶桑社BOOKS)

翻訳系自己啓発書としても名高い1冊。

残念ながら送料を加味しても中古の方が100円弱お得なのですが、未読で興味のある方はご検討下さい。


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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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