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2022年05月20日

【オススメ!】『ERROR FREE 世界のトップ企業がこぞって採用した MIT博士のミスを減らす秘訣』邱強


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ERROR FREE 世界のトップ企業がこぞって採用した MIT博士のミスを減らす秘訣


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事でも一番お求めいただいている作品。

「失敗学」「ミス撲滅」といったテーマは、当ブログでも人気なので、発売後さっそく読んでみたところ、この手の作品の中ではピカイチの内容だと思いました。

アマゾンの内容紹介から。
Apple、Microsoft、ディズニー……超一流企業に共通する「ビジネスで絶対に負けない秘訣」があった。
弱冠25歳でMIT博士号を取得した危機管理のスペシャリストが放つベストセラー!
専門家チームが30年の研究とビッグデータから導き出した、ビジネス必勝のための「エラー・フリー」戦略を徹底解説。
アレキサンダー大王の死からアップルの成功まで、さまざまな重大局面のケーススタディから「エラーを減らして成功率を高める」3ステップを伝授する。
デカルトの『方法序説』をベースにした「エラー・フリー・メソッド」で、ミスを起こさない組織をつくりだす。

中古がやや値下がりしていますが、上記記事の時点では定価だったKindle版が値下げされましたので、こちらがお得となっています!





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【ポイント】

■1.制度の確立によってエラーを防ぐ方法
 3つのヒューマンエラーのタイプの中で発生率が最も高いのは知識型エラーで、その次が規則型エラー、最も低いのはスキル型エラーだ。よって、エラーフリーを実現するために最も適切な方法は、仕事のタイプを転換することだ。知識型の仕事を規則型の仕事に転換し、規則型の仕事をスキル型の仕事に転換すれば、エラー率は大幅に低下する。
 とはいえ、知識型作業を規則に従って行う作業に落とし込むのは非常に難しい。変数が多すぎるからだ。(中略)
 だが私たちのチームは、知識型作業を規則型作業に変えるフローを開発した。このフローは少し複雑なところもあるが、ここで簡単にその方法を説明しよう。
 まず、知識型作業を複数の小さなブロックに分割する。範囲が狭まると変数もそれに伴って減少するからだ。次に、変数の少ないブロックから規則型作業に変えていく。規則型に変えても作業でのエラー率が1%を超える場合は、規則型への変更の仕方に問題があることの表れなので、変更方法を見直す。


■人が犯しがちなエラーのタイプは、その人の性格や思考パターンに関わっている
 一般的には、左脳思考に長けた人のほとんどが右脳思考に不慣れなため、全体的な局面に関連するエラーに簡単にひっかかってしまう。これに対し、右脳思考を好む人は左脳的パターンのスイッチが入ることが少ないので、細部に関連するエラーを起こしやすい。2011年に工程管理担当者、品質管理・品質保証担当者、根本原因分析の調査担当者など1140人を調査したところ、右脳思考の人は左脳思考の人よりも誤処理エラーを起こしやすく(3.4倍)、左脳思考の人は右脳思考の人よりも省略エラーを起こしやすいことが分かった(4.5倍)。


■二者択一ではなく五者択一にする
子どもから大人まで、たった2つの中から1つを選ぶことが習慣化している。だが、二者択一の決定モデルは、こっちが好きであっちが嫌いだという好き嫌いの意思表示に過ぎない。(中略)
 意思決定の際には好きか嫌いかを表明するだけではだめだ。好きか嫌いかだけでものごとを判断するのはもっと好ましくない。MITの調査で分かったことだが、すぐれた意思決定を行うためには少なくとも5つのしっかり吟味された選択肢から答えを選ぶ必要がある。二者択一で決定した意思決定の成功率は30%にとどまるが、五者択一の場合は成功する確率が90%に向上する。


■作業負担を軽減することでミスを減らす
 米国のある大手薬局チェーンは、このことで頭を抱えていた。薬剤師が薬の使用期限切れに気づかずに処方してしまうケースが頻繁に起きていたからだ。そのようなエラーは患者の命に関わる恐れがあるだけでなく、訴訟問題に発展する可能性すらある。(中略)
 経営者は私に「先生、どうやって解決したらよいでしょうか」とたずねた。私は「簡単です。彼らの負担を減らせばいいのです」と答えた。私は新しい標準作業フローを作成し、薬の分類システムを変更した。まず、それまでは効能別に分類されていた薬を使用期限別に分類し、使用期限が同じ薬を同じ棚に置くことにした。こうすれば使用期限が棚ごとに一目で分かるため、その都度確認する必要がない。次に、使用期限が切れると危害を及ぼす可能性のある薬にはリマインダーを設置し、期限切れが生命に関わるような薬については容器にタイマーを取り付けて、期限が近づいたら警告音が鳴るようにした。そうすることで、期限切れの薬を間違いなく廃棄することができた。


■狙撃手のための注意力回復方法「SLLS」
これは私たちが特に軍の狙撃手のために考案した方法だ。狙撃手は自分の命を守るため、敵に見つからないように潜伏しながら、注意力を長時間集中させなければならない。そのような状況下でもSLLSを使えば注意力を直ちに回復させることができる。
(1)停止(Stop):任務を中断して心を落ち着かせる。
(2)周囲を見渡す(Look around):注意力を周囲の環境に向け、あたりに目をやる。
(3)聞く(Listen):頭を空っぽにして周囲の音を聞く。頭が本当に空になるまで鳥の鳴き声や塵が落ちる音などに耳を澄ませる。
(4)においを嗅ぐ(Smell):今、ここのにおいを嗅ぐ。
 狙撃手は、この4つを1セットとして1分間で行う。これを何セットか行い、頭を空っぽにして注意力を徐々に回復させ、ふたたび2時間の狙撃任務に集中する。


【感想】

◆冒頭でも触れたように、非常に充実した内容でした。

そもそも著者である邱強博士は、「30年にわたりMIT専門家を主軸とするチームを率いて、エラーフリー思考とエラーを防ぐ14のメソッドの研究開発に携わっている」とのことで、「これまでに世界各地で発生した5000件を超えるヒューマンエラーと設備に起因する重大事故の処理を手掛けている」方なのだそう。

また、「フォーチュン500社の8割をサポートし、ウォルマート、BIVI、電力・ガス会社のエクセロン、AEP、フランス原子炉メーカーのフラマトム、TVA、米国海軍の軍艦メーカーなど世界トップ企業の成功を支援している」とのことですから、机上の空論ではなく、実務レベルでも活躍されているのは明らかです。

ちなみに、我が国の東日本大震災の際には、米国政府が博士のチームを福島第一原子力発電所の事故対応に送り込んだそうですから、米国政府お墨付きとも言えるかと。

そんなプロ中のプロが、ありとあらゆるパターンのエラーを俎上にあげて分析し、その対処法を指南しているのが本書なワケです。


◆それだけにハイライトも引きまくっており、上記ポイントでご紹介する際も、細かい用語説明等はとりあえず割愛しました。

その結果、たとえば第2章から抜き出した、上記ポイントの1番目などは、いきなり「知識型エラー」「規則型エラー」「スキル型エラー」といった用語が説明もなく登場しているのですが、これらは「ヒューマンエラーの3つのタイプ」であり、簡単に説明するとこんな感じになります。

●知識型エラー⇒知識を要する仕事(意思決定、問題解決、計画等)で発生

●規則型エラー⇒規則に従って行う作業で発生

●スキル型エラー⇒規則的な定型作業の繰り返しや熟練した作業(皿洗い、車の運転等)で発生

もちろん本書では、こうしたフレーズはきちんと解説されていますので、ご安心を。

ただし、この3つにさらに「省略エラー」と「誤処理エラー」というエラーの2つの形式を組み合わせると、全部で6つのタイプになるという。

……すいません、さすがにごっちゃになるので、本書に収録されている表を再現しました。



この6タイプについても、当然細かく解説されていますから、詳細は本書にてご確認ください。


◆続く第3章では、エラーのタイプではなく、エラーする私たち人間の側からの分析が登場。

その中の1つが、上記ポイントの2番目にある「右脳思考」と「左脳思考」です。

皆さん、自分がどちらか何となく分かっているかもしれませんが、本書では「ある画像」が収録されており、それをぱっと見た瞬間にどう判断するかで、右左が判定される仕様。

……この画像、私は今まで見た記憶がないんですが、有名なものなのでしょうかね?

もちろんネタバレになる以前に、著作権の関係でご紹介できないのですが、もし本書をお求めになったら、これはぜひご確認ください。

ただし、この2分割にさらに「内向型」「外向型」という性格が加わり、全部で4つのタイプに分類できるのだそうです。

この4タイプそれぞれで、犯しやすいエラーが違うそうなので、こちらもご留意いただきたく。


◆一方、上記ポイントの3番目は、知識型エラーをテーマにした第5章から引用したもの。

この章では「知識型エラーを犯す5つのマインドセット」なるものがあり、その中の1つである「二者択一の意思決定」に該当します。

それにしても、「二者択一で決定した意思決定の成功率は30%」って、要はどっち選んでもダメってことじゃないですか(涙目)。

ただ、確かに
選択肢を5つに広げてその中から1つを選択できて初めて、好き嫌いの表明ではなく、正しい選択を行うことができる。 五者択一であれば、好き嫌いではなく、何が正しいのか、何が最適かを考えなければ選べないからだ。
という指摘はもっともだと思います。

なお、この5つのマインドセットは、子どもの頃にどのように育てられたかにもよるらしいので、我が家の子育ての際にも参考にしようかと(手遅れ気味ですが)。


◆また、規則型エラーを扱った第6章から抜き出したのが、上記ポイントの4番目。

本書ではこのような事例がたくさん収録されているのですが、ボリュームの関係で、このエピソードくらいしかご紹介できませんでした。

もっともここでもバッサリ割愛している部分で、博士たちはこの会社の5000人の薬剤師にアンケートを取り、8割余りの薬剤師が、薬の使用期限の確認が負担になっていることを明らかにしています。

また、このような対処法を提案しつつも、すぐには導入せずに、エラーの発生率が最も高かった5つの薬局でテストをし、そのエラー率が激減(1/15に)したのを確認してからにしているという。

もちろん、このような規則型エラーを防ぐには、基本的には適切な「標準作業フロー」を作成することが大事であり、その代表格がディズニーランドやマクドナルドなのだそうです。


◆そして最後のポイントの5番目は、第7章の「スキル型エラー」から抜き出しました。

このスキル型エラーが起こるのは、頭を使わない作業がメインなのですが、その大敵が注意力の欠如。

そこで注意力が生死に関わる(?)狙撃手が実践している注力回復法ならば、効果も絶大だと思います。

……もっとも、身動きがとれない狙撃手と違い、自由に動ける私たちにとっては、歩くだけでも十分効果があるらしく。

もう1つの効果的な方法が「音楽を聴くこと」だそうなので、私も引き続き藤井風氏の曲を愛聴したいと思います。

いずれにせよ本書は、類書と比べても秀逸であろうことは間違いないかと。


これはオススメせざるを得ません!

4866515090
ERROR FREE 世界のトップ企業がこぞって採用した MIT博士のミスを減らす秘訣
PART 1 エラーフリーとは何か
第1章 エラーを起こさないことこそが成功のカギ
第2章 エラーフリー思考
第3章 人間の性質を理解する
第4章 エラーフリーがもたらす幸福と成功

PART 2 人間はエラーを起こす
第5章 知識型エラー――意思決定者の悪夢
第6章 規則型エラー――企業が最も犯しがちな過ち
第7章 スキル型エラー――こんなことがなぜ起こる!?
第8章 設備はなぜ事故を起こすのか

PART 3 エラーフリー・マネジメント
第9章 エラーフリー企業を創造する


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【マニュアル術?】『成功したければマニュアルどおりにやりなさい。』工藤正彦(2015年03月13日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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