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2022年05月05日

【BSJとは?】『ブルシット・ジョブの謎 クソどうでもいい仕事はなぜ増えるか』酒井隆史


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ブルシット・ジョブの謎 クソどうでもいい仕事はなぜ増えるか (講談社現代新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、本日が最終日となる「講談社50%ポイント還元キャンペーン」からの1冊。

昨日の記事でランク入りしていたため、「これは読まねば!」と手に取ってみた次第です。

アマゾンの内容紹介から。
誰も見ない書類をひたすら作成するだけの仕事、無意味な仕事を増やすだけの上司、偉い人の虚栄心を満たすためだけの秘書、嘘を嘘で塗り固めた広告、価値がないとわかっている商品を広める広報……私たちはなぜ「クソどうでもいい仕事(ブルシット・ジョブ)」に苦しみ続けるのか? なぜブルシット・ジョブは増え続けるのか? なぜブルシット・ジョブは高給で、社会的価値の高い仕事ほど報酬が低いのか? 世界的ベストセラー、デヴィッド・グレーバー『ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論』の訳者による本格講義!

中古が高騰しているため、本日中であればこのKindle版が1200円弱お買い得となります!





Bull Shit / Jannie-Jan


【ポイント】

■1.ブルシット・ジョブ(BSJ)の種類(抜粋)
●取り巻き
ささいな仕事(small jobs)をおこなうことで大物や権力者をよろこばせようとする人間」という意味です。それをふまえたグレーバーによる「取り巻き」の最小の定義は、「だれかを偉そうにみせたり、偉そうな気分を味わわせるという、ただそれだけのために(あるいはそれを主な理由として) 存在している仕事」です。
●脅し屋
その仕事が脅迫的な要素をもっている人間たち、だが決定的であるのは、その存在を他者の雇用に全面的に依存している人間たち」です。要するに、人をなにか脅したてるような要素をもった雇われ人ということですね。
●尻ぬぐい
組織のなかに欠陥が存在しているためにその仕事が存在しているにすぎない被雇用者」のことです。
●書類穴埋め人
ある組織が実際にはやっていないことをやっていると主張できるようにすることが、主要ないし唯一の存在理由であるような被雇用者」です。


■2.ブルシット・ジョブの最終作業定義
最終作業定義:BSJとは、被雇用者本人でさえ、その存在を正当化しがたいほど、完璧に無意味で、不必要で、有害でさえある有償の雇用の形態である。とはいえ、その雇用条件の一環として、被雇用者は、そうではないととりつくろわねばならないと感じている。(BSJ27〜28)
 要するに、BSJは、みずから意図して他人をだましている詐欺師とはちがって、ウソをついて「とりつくろう」よう余儀なくされているというふうに感じられている、しかもそれが、雇用の条件のひとつとして「とりつくろう」よう余儀なくされているということです。
 かんたんにいうと「空気」です。ほとんどウソで成り立っていて、だれもがそれを知っているが「空気」でもってそれはいわないことになっている、というようにしてつくられた世界です。『ブルシット・ジョブ』を構成するさまざまの証言を読むと、空気を読むのはなにも日本に特有の文化なのではないことがよくわかります。


■3.官僚制という問題
 さて、このありうべき(まだましな)「ネオリベラリズム」という発想がどのようなことをみえなくさせるかについて、ひとつの視角をここで提出したいとおもいます。それは官僚制、官僚主義という問題の視角です。
 ネオリベラリズム改革という視角から日本のこうした現象をみるときに、官僚制というフレームからそれを把握するというものはあまりみません。(中略)
 ところが、実態としては、日本において大学改革で問題視されていることのほとんどは官僚制の問題です。上からの統制、管理の強化、ペーパーワークの増大、そして忖度、服従と面従腹背などです。そして、これは世界でも変わるところはありません。ところが、ネオリベラリズムがそれを促進しているところのリベラリズム総体に共通する「常識」、すなわち市場と官僚(そして国家) を対立したものとみなす常識が根深いと、このような市場原理が許容しないような現象、すなわち効率性とはかけ離れた手段の目的化といった「倒錯」の現象が、「市場原理主義」を掲げるネオリベラリズムのもとでは「本来ありえないはず」となり、その延長上でそれが日本独特の問題のようにみえてしまうのです。


■4.東京五輪とブルシットの力学
 巨額の資金が動くとき、その分配にかかわるシステムにすきまがあれば寄生者のレイヤーがつくりだされる。この力学は日本でも、即座におもいうかぶ事例がないでしょうか? 現在の政権あるいは政府と電通とかパソナとの関係ですね。政府はかつて公共あるいは行政に属していた機能を「市場原理」の導入によって「効率化」するとの名目で、大手広告代理店などに委託しています。たとえば今回の東京五輪です。そこでは数兆円という巨額の資金が、こうした代理店などを通して大量にばらまかれました。準備期間中に日給数十万の謎のポストがあることが発覚して、ちょっとしたスキャンダルになりましたよね。おそらく、そこではほとんどなんの意味もないポストがつくられ、そこに資金がばらまかれていたのではないかと想像されます。


■5.社会的価値と市場価値の反比例
『ブルシット・ジョブ』を通して、印象深い証言を残している、「エリート」BSワーカーのハンニバルは医療現場での経験をこう表現しています。「仕事をしてえられるお金の総額とその仕事がどれだけ役に立つのかということは、ほとんどパーフェクトに反比例している」(BSJ 273)。社会的価値に乏しければ乏しいほど、実入りはよくなり(市場価値は上がり)、社会的価値に富んでいれば富んでいるほど、実入りは悪くなる(市場価値は下がる)。要するに、だれかがきつくて骨の折れる仕事をしているとすれば、その仕事は、世の中の役に立っている可能性が高い。つまり、だれかの仕事が他者に寄与するものであるほど、当人に支払われるものはより少なくなる傾向にあり、その意味においても、よりきつい仕事となっていく傾向にある。この逆説を、グレーバーは以下のように定式化しています。
その労働が他者の助けとなり、他者に便益を提供するものであればあるほど、そしてつくりだされる社会的価値が高ければ高いほど、おそらくそれに与えられる報酬はより少なくなる[強調引用者](BSJ 271)


【感想】

◆新書の割には、かなり読みごたえがある作品でした。

と言いますか、冒頭でも触れた本書のベースとなる、デヴィッド・グレーバーのこちらの作品なのですが。

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ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論

出た当時に一応チェックはしていたものの、お値段4000円超&ページ数420ページ超、ということで、普通にスルーしておりました(恥)。

ただこの本は、著者の酒井さんいわく「分量もあり、また密度も高いので、途中で挫折したという声も多くうかがいました」とのこと。
 そこで、ここでは翻訳者の一人が、じぶんなりにかみ砕き、また補助線をひいて、なるべく多くの人がわかるような筋道をえがきだしてみたいとおもいます。
ということで、本書はこの『ブルシット・ジョブ』の「解説書」という位置づけになると思います。

なお、上記ポイントの引用部分に「(BSJ27)」のようにあるのは、出典がこの『ブルシット・ジョブ』で、翻訳本のページ数をあらわしておりますので、あらかじめご了承ください。

もちろん本書自体は、『ブルシット・ジョブ』を読んでいなくても理解ができ、かつ、
まだ読んでいないが内容については気になっている、これから読もうとおもっている、あるいはとても読めそうにないがなにをいっているか知りたい、といった読者にも、なるべくわかるよう、要するに、『ブルシット・ジョブ』を読まなくてもかなりの程度は理解できるように構成したつもり
だそうですから、ご安心を。


◆さっそく第1講から見ていきますと、まずは、ブルシット・ジョブ(BSJ)の種類を列挙したのが、上記ポイントの1番目です。

ボリュームの関係上、最低限の解説しか載せられなかったのですが、たとえば「取り巻き」の具体例として挙げられていた中でも分かりやすいのが「ドアマン」。

他にも「あきらかに必要のないところにおかれている受付やフロント係」も同様です。

続く「脅し屋」の例だと、ロビイストや企業弁護士、さらには「買わねばならない」と人を欺くCMを制作する広告代理店をも包含する模様。

一方、「尻ぬぐい」については、こんな補足を。
社内のネットワーク設備の欠陥がいつまでも修正されることなく、それゆえにウェブベースと紙ベースの二つの作業が並行して存在しながら、仕事が倍加するといった経験など、多くの人がざらに経験しているのではないでしょうか。まさにそれは構造的欠陥の「尻ぬぐい」なのです。
まさに「あるある」ですね。

そして「書類穴埋め人」は、「穴埋め」というと語句を入れるのと誤解されそうですけど、書類のチェック欄に「レ点」を入れる(=チェックする)ということから、いわゆる「お役所仕事」が該当します。

なお、最後に「タスクマスター」なる「不要な上司」&「不要な仕事を作り出す上司」があったのですが、こちらはやはりボリュームの関係上割愛しておりますので、本書にてご確認ください。


◆さて、こうしたBSJについて「最終作業定義」なるものをうたったのが、第2講から抜き出した上記ポイントの2番目。

BSJに従事する人は、おしなべて自分の仕事は「本来いらなくね?」と思っていても、「そうではないととりつくろわねばならないと感じている」のだそうです。

確かに上記にあった「尻ぬぐい」や「書類穴埋め人」という仕事は、とある立場の人からは「必要」とされているからこそ存在するわけで、ぶっちゃけるわけにはいきません罠。

また、本書の特徴として、『ブルシット・ジョブ』が洋書であるのに対して、本書の著者の酒井さんは日本人であることから、日本の現状を踏まえていることが挙げられます。

第5講の「ネオリベラリズムと官僚制」から引用した、上記ポイントの3番目もその1つでしょう

ちなみにその官僚の、国会における政治家の答弁のための原稿や想定問答集作りなども、ぶっちゃけBSJではないか、と思うワタクシ……。

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キャリア官僚の仕事力 秀才たちの知られざる実態と思考法 (SB新書)

参考記事:【仕事術】『キャリア官僚の仕事力 秀才たちの知られざる実態と思考法』中野雅至(2012年12月15日)


◆さらには第6講では、上記ポイントの4番目にあるように、酒井さんは東京五輪についても言及されていました。

こうした「中抜き」の構造があるからこそ、必要のないBSJ的な仕事に対しても賃金が支払われるわけで、逆に本当に必要な仕事に対して、十分な対価が支払われたとは言えません。
その膨大な富を、かれらは仲間内にばらまき、そしてより土台にあたる必要不可欠な仕事は、なるべく無償でそして医療従事者にもなけなしの報酬しか払いませんでした。まるでこうした必要不可欠な仕事は報酬はいらないだろ、とでもいわんばかりです。
そして、こうした「必要な仕事=エッセンシャルワーク」とBSJについて触れているのが、第7講から引用した上記ポイントの5番目。

まさに社会的価値と市場価値が反比例しているわけなのですが、実際、『ブルシット・ジョブ』の中でグレーバーは、高収入と低収入の職業を3つずつ選んで、いかに社会的価値と市場価値が乖離しているかを示しているのだそうです。

全部は載せきれないので最初と最後(稼ぎの最多と最少)だけ引用しますと
・シティの銀行家──年収約500万ポンド、1ポンドを稼ぐごとに推定7ポンドの社会的価値を破壊。
・保育士──年収約1万1500ポンド、給与1ポンドを受け取るごとに推定7ポンドの社会的価値を産出
とのこと。

少しでもこの差を縮めて、社会的価値を高めていくべきなのですが、自由主義社会ではなかなか難しそうです……。


ブルシットな仕事やその仕組みを理解するために読むべし!

B09N3KHQVZ
ブルシット・ジョブの謎 クソどうでもいい仕事はなぜ増えるか (講談社現代新書)
第0講 「クソどうでもいい仕事」の発見
第1講 ブルシット・ジョブの宇宙
第2講 ブルシット・ジョブってなんだろう?
第3講 ブルシット・ジョブはなぜ苦しいのか?
第4講 資本主義と「仕事のための仕事」
第5講 ネオリベラリズムと官僚制
第6講 ブルシット・ジョブが増殖する構造
第7講 「エッセンシャル・ワークの逆説」について
第8講 ブルシット・ジョブとベーシックインカム
おわりに わたしたちには「想像力」がある


【関連記事】

【仕事術】『キャリア官僚の仕事力 秀才たちの知られざる実態と思考法』中野雅至(2012年12月15日)

【仕事術】『その仕事、全部やめてみよう 1%の本質をつかむ「シンプルな考え方」』小野和俊(2020年08月03日)

【ネタ?】『会議でスマートに見せる100の方法』サラ・クーパー(2016年12月20日)

【仕事術】『マッキンゼーで25年にわたって膨大な仕事をしてわかった いい努力』山梨広一(2016年07月25日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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Posted by smoothfoxxx at 10:00
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