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2022年03月14日

【マーケティング】『コロナ危機を生き残る飲食店の秘密〜チェーン店デザイン日本一の設計士が教える「ダサカッコイイ」の法則〜』大西良典


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コロナ危機を生き残る飲食店の秘密〜チェーン店デザイン日本一の設計士が教える「ダサカッコイイ」の法則〜 (扶桑社BOOKS)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、マーケティング好きの方なら興味を持たれること必至の1冊。

「チェーン店デザイン数日本一」を誇る大西良典さんが、飲食店のみならず小売全体に通じるテクニックを指南してくれる作品です。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
コロナ禍で黒字を出す店の理由は? なんとなく入りたくなる店の秘密は? 行列ができる店の「ダサカッコイイ」法則とは? 牛丼屋の看板はなぜオレンジ色なのか?――その答えが本書にあります!

キンセリさんに教えてもらったのですが、公式セールではないのに「73%ポイント還元」という値引のおかげで、このKindle版が実質「396円」でお求めいただけます!

……ただしいつまでポイント還元しているのか分からないので、お求めはお早めに!






Yoshinoya rewards card / Zengame


【ポイント】

■1.メニューのデザインを手描きに
 自粛中は娯楽が減るので、アミューズメント性のあるメニューが喜ばれるのではないかと考え、手巻きずし感覚で楽しめるテイクアウトのタコスパーティーセットを作ったのです。いずれもSNS映えする盛り付けを工夫し、サイドメニューも追加できるようにしました。
 ここでポイントになるのが、メニューのデザインを手描きのイラストで見せているという点です。写真よりも、手描きのほうが生々しさが抑えられて美味しそうなイメージになるのです。
 人はリアルな写真を見るとイメージが固定されてしまい、実物が写真と少しでも違うと、「写真よりソースが茶色い」などと違和感を覚えます。
 しかし、メニューが絵だと、あくまでも「こんな感じなんだろうな」と脳内でイメージするだけなので、イメージと実物が同一でなくても心理的に許容できるのです。
「フレッシュネスバーガー」も以前はメニューが手描きでしたが、同じ心理効果がありました。


■2.「入りやすい店名」と「入りにくい店名」の違いとは?
 たとえば、あなたが空腹を抱えながら車を運転していたときに次の2つの看板が並んで見えたら、どちらの店に入ろうと思いますか?
(1)「おおにし屋」
(2)「うどん大西」
 おそらく、ほとんどの人は「うどん大西」に入るのではないでしょうか。
 理由は、何の店かが一目瞭然だからです。
 知名度がなければ、固有名詞の店名だけでは何の店か検討がつきません。人はパッと見てよくわからないものを、無意識に避ける傾向にあります。何の店であるかが一目でわかるほうが、集客という観点では圧倒的に有利なのです。
 その意味で、横文字だけのカフェやフランス語やイタリア語がずらずらと並んだ店名も、集客という意味では不利です。横文字だけの店名は一見おしゃれな印象ですが、お客さまに何の店か伝わらなければ来店は望めません。
 カフェはせめて「Cafe」とか「coffee」という表記を入れましょう。そうでないと、看板だけではバーなのか雑貨屋なのか美容院なのか、まったくわかりません。


■3.行列はできるものではなく、作るもの
 行列ができる店にするには、自然発生的に並んでもらうのを待つのではなく、店側から仕掛けることが大事です。
 たとえば、ショッピングモールのフードコートでは、なぜか「丸亀製麵」だけに並んでいるという光景がよく見られます。
 はたから見ると、「丸亀製麵」だけが他店より突出して人気があるように見えます。
 そもそも「丸亀製麵」はお客さまがうどんに好きな具材を自分でトッピングしてレジで精算するキャッシュ&キャリースタイルなので、お客さまが並ぶのが当たり前の業態です。
 つまり、「行列ができる仕組み」になっている「丸亀製麵スタイル」の業態を取り入れれば、行列店を作って流行っている人気店に見せることができるのです。
 トリドールホールディングスがフードコートで展開する「豚屋とん一」「肉のヤマキ商店」も、お客さまをベルスターで呼ばず、並んでいただく丸亀製麵スタイルを取り入れています。
 お客さまも、自らカスタマイズを楽しめる店では並ぶことにストレスを感じません。


■4.「チラ見せ効果」の活用術
 たとえば、シェフがキッチンで調理している様子が見えると、まるで料理ショーを見物しているようなライブ感があって、お客さまはわくわくします。
 ただ、厨房の様子が客席から一望できる「オープン・キッチン」にする必要はないと私は思っています。
 なぜなら、料理人は調理の過程で肉や魚の内臓、野菜の切りくずなど、あまり見た目のきれいでないものも扱うので、オープン・キッチンですべてを生々しく見せると、お客さまにかえってマイナスイメージを与える可能性があるからです。
 料理人がてきぱきと動いている雰囲気を客席に伝えることが目的なら、料理人の手先まで見せなくても、ひじぐらいまで見せるだけで十分です。
 たとえば、料理人の手元に食材をディスプレイしたり、半透明なスモークガラスの間仕切りを設置すれば、手元をさりげなく隠せます。
 そうすれば、お客さまはディテールまで見えなくても、
「今、魚をさばいてるみたい。さすがプロは動きにムダがないな」
「なんかフルーツをトッピングしてるみたい。どんな盛り付けなのか楽しみ!」

 などと勝手に脳内イメージを膨らませてくれます。


■5.照明が暗いほど客単価が上がる
 店の照明の明るさは、人の心理に大きな影響を与えます。
 空間が煌々と輝いていると、人は「入りやすさ」と「安心感」を感じます。
 逆に暗めだと、人は「特別感」や「高級感」を感じます。
 お客さまは店内に入った瞬間、無意識に照明の明るさを感知しているので、店の照明が明るいと「ここはなんとなくリーズナブルな店」という心理になり、店の照明が暗めだと、「ここはなんとなく高級な店」という心理になるのです。
 つまり、照明の明るさの違いによる心理作用は、「客単価」に影響を及ぼします。
 一般に、店の照明が明るいほど、客単価が下がります。
 逆に、店の照明が暗いほど、客単価は上がるのです。

 たとえばファストフード店のように客単価が安価な店は、照明が1000ルクス以上で明るめになっています。
 しかし、同じファストフードでも「スターバックスコーヒー」のように客単価がやや高めの店は、照明も暗めになっています。


【感想】

◆タイトルに「コロナ危機を生き残る」とうたっているのに、そちらに関連したネタをあまりご紹介できずに申し訳ございませんでした。

ただ本書において、コロナ禍に特化しているのは、基本的には第1章の「あの店はなぜコロナ禍で黒字になったのか」が中心です。

そしてその柱の1つが「テイクアウト」。

ポスターやのぼり、チラシについてのアドバイスが掲載されていますので、実際にお店をなさっている方ならここは押さえておいていただきたいところです。

また上記ポイント1番目の「メニュー」というのも、テイクアウト用メニューのお話でして、確かに手描きだと、多少の違いでも何となく納得してしまいそうな。

……さすがにかつてのグルーポンのおせち事件のように極端に違ったら別ですけど。

ちなみにチラシがモノクロの場合、写真だとかえって分かりにくいので、手描きイラストの方が良いと思います。


◆続く第2章のテーマは「入りたくなる店」について。

さっそく上記ポイントの2番目では、「店名」を検討していますが、「分かりやすさ」というのは結構大きいと思います。

また、「何の店か」以前に、そもそも読めないような店名もいかがなものかと。

読めないと口コミもしにくいですし、友達と一緒にいても誘いにくいんじゃないでしょうか。

以前、下北でチラシをもらって入ったことのあるこのサラダ専門店も、結局店名が読めないまま閉店していたのですが(店名から「サラダが食べられる」ことが分かるのは良いとしても)。

「Herbivorous Salad」が閉店しました | 下北沢に住みたい人のためのWEBサイト

また、この章で指摘されて気が付いたのが、「ららぽーと」や「イオン」等のショッピングモールのお店は、ドアそのものがないということ。

これもドアを開けるというストレスを無くすことで、入店を促しているのだそうです。


◆一方第3章は「行列ができる店」の法則がテーマ。

ここで著者の大西さんが「建築デザイナー」ということで、「ダサカッコイイ」というキーワードが登場しているのですが、具体的にどのようなものかに関しては、こちらの大西さんご自身の記事をごらんいただきたく。

「ダサカッコいい」中国ローソンでFC加盟が2割増 計算しつくされたデザインの秘密 _小売・物流業界 ニュースサイト【ダイヤモンド・チェーンストアオンライン】

ただ私たちビジネスパーソンには、店舗デザイン等は難しいので、上記ポイントの3番目のような「工夫」を抜き出してみました。

確かに丸亀製麺はいつも「並んで」いますけど、実際には社員食堂の小皿を取る行列みたいなもので、人気とは関係ないのですが、「人気店に見える」なら従業員が配膳する必要もないですし、一挙両得だな、と。

同じくこの章では、店のBGMについても触れられており、「あるミシュランの星付き高級そば店ではジャズを流している」のだそうです。

また流す音は音楽に限らず、
ある天ぷら屋さんの店頭で「パチパチ!」という天ぷらが揚がる効果音 を流す演出をしたことにより、売り上げが20%アップした事例もある
のだとか。


◆なお、上記ポイントの4番目と5番目は、第4章の「牛丼屋の看板はなぜオレンジ色なのか?」からのもの。

冒頭の内容紹介でも触れていたオレンジ色の看板の件は、ここでヘタに書いて「ネタバレ」と非難されてもつらいので、とりあえず自重させてください(すいません)。

ちなみにポイントの4番目は、無理にオープン・キッチンにする必要はない、と言われていますが、実はこの本の著者が、そのオープン・キッチンのさきがけらしく。

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外食の天才が教える発想の魔術

参考記事:【オススメ!】「外食の天才が教える発想の魔術」フィル・ロマーノ(2008年03月20日)

15年も前の本なのに、中古があまり値崩れしていない「名著」でして、あまりに凄すぎて当時付箋を貼りまくりました。

さらにポイントの5番目の「照明の明るさが及ぼす影響」は、確か心理学的にも証明されていたと思います。
 ランチタイムに照明が明るい「マクドナルド」で100円のコーヒーを飲み、夕方に照明が暗めの「スターバックスコーヒー」でコーヒーに300円以上払っても違和感がないのは、味もさることながら、照明の違いによる心理効果があるからです。
こういう部分も踏まえた上で、お店も経営していくべきでしょうね。


この手の工夫に興味のある方なら一読の価値アリ!

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コロナ危機を生き残る飲食店の秘密〜チェーン店デザイン日本一の設計士が教える「ダサカッコイイ」の法則〜 (扶桑社BOOKS)
第1章 あの店はなぜコロナ禍で黒字になったのか
第2章 なんとなく入りたくなる店の秘密
第3章 行列ができる店には「ダサカッコイイ」の法則がある
第4章 牛丼屋の看板はなぜオレンジ色なのか?
第5章 ダサカッコよく生き残れ!


【関連記事】

【オススメ!】「外食の天才が教える発想の魔術」フィル・ロマーノ(2008年03月20日)

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【夜の行動経済学?】『安売り王一代 私の「ドン・キホーテ」人生』安田隆夫(2015年12月10日)

【スゴ本】『トマトが切れれば、メシ屋はできる 栓が抜ければ、飲み屋ができる』宇野隆史(2011年05月12日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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日本史に学ぶ リーダーが嫌になった時に読む本

日本史の偉人に学ぶというリーダー本は、Kindle版が700円以上お得。

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精力的に電子書籍を出されている長倉さんの時間術本も、Kindle版が700円以上お買い得。

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1週間でGoogleアナリティクス4の基礎が学べる本

私もいいかげんちゃんと学びたいGoogleアナリティクス4の解説本は、Kindle版が1700円弱もお得なので、買うだけ買いました(レビューは難しいですが)。


人気blogランキングご声援ありがとうございました!

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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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