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2022年02月14日

【音楽と脳】『音楽する脳 天才たちの創造性と超絶技巧の科学』大黒達也


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音楽する脳 天才たちの創造性と超絶技巧の科学 (朝日新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の未読本記事からは漏れたものの、つい最近発売になってきになっていた新書。

「音楽」と「脳」の興味深い関係について、エビデンスベースで掘り下げた力作です。

アマゾンの内容紹介から。
クラシックはなぜこれほど人の心を動かすのか?
傑作を創り出したバッハ、ベートーベンなどの作曲家たち、超絶技巧を繰り広げ独創的な表現をするグレン・グールドなどの演奏家たち。
天才ともいえる彼らの脳はどうなっているのか。
創造的な音楽とは何なのか?
音楽には、宇宙・数学との意外な関わり、そして科学の発展との密接なつながりがあった。
深い論理的思考で作られているクラシックをとことん味わうための「音楽と脳の最新研究」を紹介。

中古が定価の倍以上する一方、Kindle版は「25%OFF」の「660円」と大変お求めやすくなっています!





Pianist's Dream / Ian Bloomfield


【ポイント】

■1.1オクターブの中には音が無限に存在する
 12平均律の発明によって、1オクターブを12個の音の高さに均等に分け、音楽を扱いやすくすることができました。しかし、ここで忘れてならないのは、1オクターブの音の中には本来、12個だけでなく無限に音が存在しているということです。
 例えば、ピアノの鍵盤における真ん中のドの下のラは220Hz、その1オクターブ高いラは440Hzですが、この1オクターブの中には、単純計算でも220個(440Hz‐220Hz)の音の高さが存在しています。12平均律では、その中のほんの12個しか採用していません。12平均律に支配された現代の音楽からは、他の200以上の音の高さを聴くことができないのです。現代の人間の聴覚機能も、12平均律によって発達してきたため、12平均律発明以前の人間の聴覚より衰えていると考えることもできるでしょう。


■2.作曲に影響を与える「手続き記憶」と「プライミング記憶」
 簡単に述べるなら、手続き記憶は、いわゆる「行動や運動の癖」であり、演奏しながら作曲したり、楽譜を書いたりするときに影響を与えます。その反面、プライミング記憶は「思考パターンの癖」といえます。音を聴いたら自然と次の音を予測したり、「〜っぽさ」を感じたりするように、曲や作曲者自身の特徴に影響を与えているといえるでしょう。
 逆に、作曲者が、聴取者のプライミング効果を上手く利用して曲を創っている例もあります。例えば、Aメロ─Bメロ─Aメロのような構造の曲において、最初のAメロと最後のAメロは、大まかなテーマやフレーズが同じでもほんの少し変え、後半では前半の発展型のようなメロディーであることが多く見られます。これは、聴取者の予測をいい意味で裏切り(プライミング効果が起こる音とは逆の音を使う)、曲を飽きさせない構造にしていると考えることもできます。


■3.演奏家はワーキングメモリーが発達している
 もちろん、音楽も例外ではありません。例えば、演奏中はワーキングメモリーが大変活躍しています。ピアニストは楽譜や指を同時に見ながら、自分の演奏の音を聴き、そして感情豊かな表現を行っています。あらゆる情報を黒板に書き留め互いの情報を連結させ、曲が進むと同時にどんどん削除していくような作業です。この点で、演奏家は作業記憶(ワーキングメモリー) のスペシャリストともいえるでしょう。これは研究によって示されており、演奏家や音楽家では、そうでない人に比べて脳のワーキングメモリーが発達していることがわかっています。


■4.ピアニストの脳のネットワーク
 スウェーデンのカロリンスカ研究所はプロのピアニストを対象に、ピアノトレーニングが脳のネットワークをどのように変化させるのかをMRIを用いて調べました。ピアニストは、自身の総練習時間を、小児期、青少年期、成人期に分けて答えました。その結果、ピアニストでは小児期では1000〜2000時間、青少年期では2000〜4000時間、成人期では1万5000〜3万時間でした。そしてMRIを用いて全実験参加者の脳を計測した結果、小児期における練習時間が多ければ多いほど指の運動に重要な脳部位の拡大が見られました。
 さらに、小児期と青少年期の練習時間が多いほど、「脳梁(左右の半球を結ぶ束)」も大きくなっていることが示されました。脳梁の一部は、両半球の聴覚野を神経線維によって連携します。この神経線維の連携により、より高度な音楽処理ができるようになりスピードも上がります。


■5.音楽の訓練で言語能力が向上する
 音楽の訓練により、言語そのものの能力も向上すると多くの研究により報告されています。例えば、音楽家は非音楽家よりも、発話音の違いを詳細に認識できるそうです。(中略)
 他の研究では、「イントネーション」に関しても音楽家は非音楽家よりも精度よく認識できるそうです。研究者らは、実験参加者(音楽家・非音楽家)らに、標準中国語で響きがよく似た3つの単語を聴かせました。中国語は声調言語であり、例えば「mi」の母音「i」がどのような調子(音の高さ)で発音されるかによって単語「mi」の意味が変わります。「i」の音の高さが変わらなければ「目を細める」を意味しますが、上昇するように発音すると「迷う」という意味になります。また、いったん下がってから上昇すれば「米」を意味します。このように「i」の周波数を微調節することで言葉の意味がまるっきりかわってしまうのです。3つの「mi」を聴かせたときの脳の電気的反応を調べた結果、音楽家では、声調の微小な差を正確に識別した反応を見せたのです。


【感想】

◆以前から脳ネタ本や、スキルアップ本を読んでいた自分ですが、それを「音楽」という分野で展開した本書は、非常に得るものが多かったです。

いえ、一応自分自身、子どものころから楽器は習っていましたし、今でも音楽を毎日聴いているものの、上記ポイントの1番目にある「12平均律(平均律)」なるものは、初めて知った次第。

まず本書の第1章では、ピタゴラス(あの「ピタゴラスの定理」のピタゴラスです)が、「音程」を発見し、「ピタゴラス音律」を制定するあたりから、丁寧に描写しています。

ただしこの「ピタゴラス音律」では、和音にすると微妙にズレがあるため、やがて完全な「倍音」に基づく「純正律」が誕生。

ところがこの「純正律」は、転調を行うと音程に違いがあるため、元の曲とは違ってしまうという欠点がありました。

そこで音程比を統一してできたのが、現在一般的に使われている、前述の「12平均律」なんですが、この辺の経緯や音の違いを解説している動画があったのでご紹介。



ちなみに本書によると、バッハやモーツァルトの時代は「純正律」が用いられていたので、今、私たちが聴いている曲とは若干違うかもしれないそうです。


◆また、上記ポイントの2番目に出てくる「手続き記憶」を作曲の場面で考えると、いわゆる「手グセ」みたいなものでしょうか。

作曲とはやや違うかもしれませんが、アーチストがライブでアドリブ演奏する際には、こういう「手グセ」的なフレーズが出やすいと思います。

一方もう1つの「プライミング記憶」とは、「以前の事柄が後の事柄に影響を与えるような記憶」のこと。

たとえば作曲家は過去の膨大な曲を統計学習し、音楽の一般的な統計モデルなるものを脳内で作成しているのだそうです。
これにより、はじめて聴く曲でも、脳は「この和音の次はこれ」と常に予測しながら聴いています。この予測の強さが、作曲家ではとても強くなります。音楽の一般的な統計モデルの無い脳では、正確な予測ができません。
実際、「この和音の次はこの和音」みたいな定石はいくつもありますし。

本書では特に触れられてはいませんが、有名なところでは「丸サ進行」(「Just The Two of Us進行」)ですとか。

J-POPを席巻する「Just The Two of Us」コード進行を読み解く | nippon.com

なお、このポイントの2番目の後半で出てくる「Aメロを少し変える」というのは、藤井風氏の楽曲ではおなじみですね。


◆さらに本書の第4章では、演奏家たちの技術と脳との関係について言及されています。

まずしょっぱなに登場するのが、上記ポイントの3番目の「ワーキングメモリー」。

以前、ムスコの中学受験に際して、脳力開発の本もいくつか読んだのですが、ワーキングメモリーを鍛えるのが正解だと感じました。

たとえばこちらの本によると「7歳から11歳の約70人の生徒を2年間調査したところ、『読解』『スペリング』『算数』の3教科において、これらの成績とIQはほぼ無関係だったにもかかわらず、ワーキングメモリは強い関係があった」のだそうです。

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脳のワーキングメモリを鍛える! 情報を選ぶ・つなぐ・活用する

参考記事:【オススメ!】『脳のワーキングメモリを鍛える! ―情報を選ぶ・つなぐ・活用する』トレーシー・アロウェイ,ロス・アロウェイ(2014年01月14日)

上記ポイントによると、演奏をさせるとワーキングメモリーが発達するのは間違いなさげなので、子育て中のご家族の方はご検討ください。


◆ちなみに、楽器演奏の中でも、もっとも多くの指を使うであろうものがピアノ(鍵盤楽器)です。

中でもプロレベルともなると、その運指は半端なく複雑であり、その結果該当する脳の部位が発達する、というお話が上記ポイントの4番目。

もちろん音を聴き分けるために、聴覚野もそれ相応の発達をするでしょうし、それは脳梁も大きくなりますわな。

また、プロの凄さは、こういう指の動きだけではないのだとか。

たとえば楽譜を見て演奏する場合でも、ピアノ初心者は1音1音確かめながら弾く一方、ピアノ経験者は、音符をある程度の塊(チャンク)で認識して弾くことができます。

これがプロになると、さらに大きな塊として認識できるため、脳への負担も少なく、素早く正確に演奏が可能ということに。

なおこうしたチャンクによる情報取得も、当ブログの読者さんにとっては、「速読」でおなじみかもしれませんね。


◆そして上記ポイントの5番目の言語能力のお話は、本書の第5章からのもの。

確かに音楽をする以上、日ごろから音程の違いや音の響きに注目しているんですから、ヒアリング能力が高くても不思議ではありません。

また、幼いころから音楽トレーニングをしていると、脳の「統計学習」機能も向上すると言われているのだそう。
なぜなら、言語や音楽を処理するための脳内ネットワークと聴覚統計学習のための脳内ネットワークが非常に似ているため、音楽訓練で相乗的に統計学習能力に影響を与えるからです。
さらには「音楽訓練を受けたグループではそうでないグループに比べ、語彙の記憶が向上した」という研究結果もあるとのことですから、章題にもあるように「音楽を聴くと頭がよくなる?」というのも、ある意味正解でしょう。

……もちろん音楽の練習ばかりして、勉強自体をしなかったら、テストの成績が悪くても当然ですけど。

なお、上記ポイントではすべて割愛しましたが、本書は各章末に注釈と参考文献がびっしり付され、エビデンス等も確認することが可能です(文献はほぼすべて英語ですが)。

さすが著者の大黒さんが、医学博士(で専門は音楽の神経科学と計算論)でいらっしゃるだけのことはあるな、と。


音楽家の脳の仕組みを垣間見れる1冊!

402295163X
音楽する脳 天才たちの創造性と超絶技巧の科学 (朝日新書)
第1章 音楽と数学の不思議な関係
第2章 宇宙の音楽、脳の音楽
第3章 創造的な音楽はいかにして作られるか
第4章 演奏家たちの超絶技巧の秘密
第5章 音楽を聴くと頭がよくなる?


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【オススメ!】『脳のワーキングメモリを鍛える! ―情報を選ぶ・つなぐ・活用する』トレーシー・アロウェイ,ロス・アロウェイ(2014年01月14日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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セールではおなじみのこの作品も、過去最安値ということで、Kindle版が1100円弱お得。

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こちらのダイエットレシピ本もあまり値下がりしていないため、Kindle版が800円以上お得な計算です!


【編集後記2】

◆一昨日の「KADOKAWA 冬の読書フェア」のビジネス書分の記事で人気が高かったのは、この辺の作品でした(順不同)。

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世界のエリートが学んでいるMBAマーケティング必読書50冊を1冊にまとめてみた

参考記事:【マーケティング】『世界のエリートが学んでいるMBAマーケティング必読書50冊を1冊にまとめてみた』永井孝尚(2021年03月22日)

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世界のエリートが学んでいるMBA必読書50冊を1冊にまとめてみた

参考記事:【名著満載!】『世界のエリートが学んでいるMBA必読書50冊を1冊にまとめてみた』永井孝尚(2019年04月25日)

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