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2022年01月07日

【非認知能力?】『私たちは子どもに何ができるのか ― 非認知能力を育み、格差に挑む』ポール・タフ


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私たちは子どもに何ができるのか ― 非認知能力を育み、格差に挑む


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、昨日の「Kindle月替わりセール」でも人気の1冊。

前作に当たる『成功する子 失敗する子』(これも今回のセール対象です)で「未解決」だった部分に切り込んだ意欲作です。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
ロングセラー『成功する子 失敗する子』著者 最新刊!
「やり抜く力」「好奇心」「自制心」……人生の成功を左右する力の育み方を、最新の科学的根拠(エビデンス)と先進事例から解き明かす!

送料を加算した中古よりは、Kindle版が500円以上お買い得となります!





Grit, London / danxoneil


【ポイント】

■1.非認知能力は環境の産物
 私の至った結論はこうだ。「非認知能力は教えることのできるスキルである」と考えるよりも、「非認知能力は子供をとりまく環境の産物である」と考えたほうがより正確であり、有益でもある。これが子供の乳幼児期に当てはまることには、有力な科学的根拠(エビデンス) がある。逆境が子供の乳幼児期の発達に与える影響については、近年非常に多くのことが知られるようになった。そして、中学生や高校生でも、非認知能力は、おもに彼らの属する学校を中心とした環境の産物なのだ。
 これは、子供の非認知能力を伸ばす方法を探す人々にとって大きなニュースだ。もっといえば、所得格差を要因とする成績の格差を縮め、逆境にある子供たちにより幅広いチャンスを提供しようと模索する人々にとって非常に重大なニュースだ。子供たちのやり抜く力やレジリエンスや自制心を高めたいと思うなら、最初に働きかけるべき場所は、子供自身ではない。環境なのである。


■2.ちょっとした放置でも悪影響がある
「慢性的な低刺激」と呼ばれる状態がある。親が子供にあまり反応せず、積極的に関心を寄せたり、きちんと向きあってやりとりをしたりといったことがない状態だ。子供は泣いても、話しかけようとしても無視され、連続して何時間もテレビのまえに放置される。
 神経科学者たちの発見によれば、この程度のネグレクトでも、脳の発達に対し、長期間にわたる深刻な悪影響を及ぼす。前頭前皮質への影響を通して、ネグレクトはストレス反応システムを損なう。それが子供時代だけでなく、のちのちまで感情や行動に問題を引き起こし、社会生活を困難にする。慢性的な低刺激を経験した子供は、上手に友達をつくれない傾向がある。認知力や言語の発達が遅れ、実行機能に問題を生じることもある。集中することが苦手になる。教師や親からは、不注意でおちつきがないとみなされる。学校で勉強に集中できないからだ。


■3.動機づけに効果のある環境を作り出すには?
 では、どうやったらそういう環境をつくりだせるのか? デシとライアンの説明によれば、生徒たちが教室で「自律性」を実感するのは、教師が「生徒に自分で選んで、自分の意志でやっているのだという実感を最大限に持たせ」、管理、強制されていると感じさせないときである。また、生徒が「有能感」を持つのは、やり遂げることはできるが簡単すぎるわけではないタスク──生徒たちの現在の能力をほんの少し超える課題──を教師が与えるときである。さらに、生徒が「関係性」を感じるのは、教師に好感を持たれ、価値を認められ、尊重されていると感じるときである。デシとライアンによれば、この3つの感覚には、机いっぱいの金の星や青いリボンよりも、はるかに動機づけの効果があるという。


■4.先生からのフィードバックは生徒の積極性や成績に影響する
生徒たちは、自分にとってのヒーローについて作文を書くようにいわれた。作文は担任によって添削され、普段どおり、余白に疑問点や提案が書きこまれた。
 その後、コーエンとガルシアは生徒を無作為に対照群と処置群に分けた。そして添削済みのそれぞれの生徒の作文に、教師の手書きの付箋紙をつけた。(中略)
 生徒たちは、添削されて付箋紙の貼られた作文を受けとり、成績をあげるためにコメントに応じて作文を書きなおすかどうか選ぶ権利を与えられた。クラスのなかで、白人の生徒たち──人種のステレオタイプによって教師から不利な判断をされる心配がない生徒たち──のあいだでは、「高い期待」の付箋を受けとって書き直した生徒はわずかに増えたものの、効果はごく小さかった。しかしアフリカ系の生徒たちのあいだでは、処置群と対照群のあいだに大きな差が現れた。ただの「フィードバック」の付箋を貼られたグループでは、書きなおした生徒は17%だけだったが、「高い期待」の付箋を貼られたグループでは72%にのぼった。


■5.サポートを受けながら、思い切ってやってみる
 EL提携校の教員と管理者たちは、性格についての話をたくさんする。「性格」は彼らにとって非認知能力と同義なのだ。ELの考え方では、性格は講義や教師からの直接の指示によってつくられるのではなく、やりがいのある学習作業を粘り強くやりとげた経験によってつくられる。バーガーはいう。「子供たちにもっと自信を持ちなさいとか、知的な胆力を持ちなさいと話すだけで狎格を教える瓩海箸呂任ません。子供たちが性格を学びとるには、サポートを受けながら、思いきってやってみることを継続的に強いられる必要があります。作業を親とともにこなしたり、グループで一緒に勉強をしたり、クラス全員のまえで話をしたり、完成したものを発表したり。このようなクラスへの参加を求められると、生徒たちは最初は緊張したり、わめいたり、助けを求めたりする。しかしやがて自信がついて、自分でやるようになる。そういうチャンスが性格をつくりあげるのです」


【感想】

◆冒頭でも触れたように、本書は『成功する子 失敗する子』の続編に該当するもの。

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成功する子 失敗する子 ― 何が「その後の人生」を決めるのか

こちら、読んでないので恐縮なのですが、著者であるポール・タフは、この前作を執筆してからというもの、講演後にきまって「話はわかりました。それで、結局どうすればいいのですか?」という質問をされたのだそうです。

そこでタフは2014年の夏に新しい取り組みをスタート。

『成功する子 失敗する子』のなかで書いた調査や研究について再検討し、新しい科学的発見や、新しいモデル・スクール、教室の外でも子供たちを支援する新しいアプローチなどに、調査の範囲を広げることにしたのだとか。
本書はそれをまとめたものだ。現場と政策立案者の双方に実践的なガイドを提供することを目的としている。「それで、結局どうすればいいのですか?」という質問に答えようとするひとつの試みである。
となると、その『成功する子 失敗する子』を読んでいると、より一層本書の試みが理解できそうですが、未読の私でも得るものは多々ありました。


◆たとえば上記ポイントの1番目は第3章から抜き出したのですが、そもそも非認知能力(ひとつのことに粘り強く取り組む力や、内発的に物事に取り組もうとする意欲等)自体が、スキルというより、環境の産物である、という点からして「目からウロコ」。

これは逆にいうと、環境を整えずして、非認知能力は伸ばせないということでしょう。

特に幼児期における「親」や「家庭環境」の果たす役割は重要です。

たとえば本書の第4章では、虐待やネグレクトといったトラウマが、どのような悪影響を及ぼすかを明示。

子供時代にこうした逆境の対象となる経験を4つ以上受容していると、「がんになる確率は2倍、心臓病にかかる確率は2倍、肝臓病にかかる確率も2倍、肺気腫や慢性気管支炎になる確率は4倍」なのだそうです。


◆また、そこまでいかなくとも、マイナスの影響を受けることを示したのが、第7章から引用した上記ポイントの2番目。

でも「泣いても、話しかけようとしても無視され、連続して何時間もテレビのまえに放置」というのは、昨今の一部の家庭ではそこそこありそうで心配です。

そこまでいかなくとも、子どもをあやしている間、ずーっとスマホ見っぱなしだったりとか。

……私自身、子どもがある程度大きくなってからスマホを持つようになったのですが、当時からスマホがあったとしたら、子守りしながら見ないでいられる自信はありませぬ。

実際にロシアのある地域の孤児院では、子供たちの食事や着替えや入浴は機械的に行われ、笑いやおしゃべり、アイコンタクトがなかったのが、米露の科学者チームの指導により、「心のこもった世話」をするようになったところ、認知能力や社会性の発達、運動技能に相当の伸びが見られたのだそうです。


◆一方、上記ポイントの3番目は、第15章の「モチベーション」からのもの。

ここにある「デシとライアン」とは、ロチェスター大学の心理学者、エドワード・デシとリチャード・ライアンのことです。

2人は「人間は生まれながらの学習者で、子供たちは生まれつき創造力と好奇心を持っており、『学習と発達を促進する行動を取るよう、内発的動機づけがなされている』」と定義。

しかし、内発的動機づけでは不十分な場合、何らかの「外発的動機づけを自分のうちに取りこむようにうまく仕向けられた子供は、モチベーションを徐々に強化していける」のだそうです。

そこで重要なのが、ここで挙げられた「自律性」「有能感」「関係性」という3つの項目で、これらを促進する環境を教師が作り出す方法を明らかにしたのが、このポイントの3番目の部分ということ。

ところが、大抵の学校(特に貧困層の子供が通うような学校)は、こうした「モチベーション」ではなく、インセンティブや罰という「飴と鞭」に頼っているんですよね……。


◆とはいえ、第18章から抜き出した、上記ポイントの4番目でも明らかなように、ちょっとしたフィードバックの違いで、その結果は大きく異なります。

しかも、元から期待されていないであろう生徒(ここでは特にアフリカ系の生徒)だと、その効果も絶大なもの。

日本においては人種的な違いはないですが、貧困層が多い地域の学校では、特に検討すべき価値が十分あると思います。

また、上記ポイントの5番目は、第20章の「学習指導」から引用したもの。

初っ端の「EL」とは、アメリカの全国的な非営利団体「ELエデュケーション」のことなのですが、本来、この学校の指導スタイルから説明しないと分かりにくい部分でしたね。

いずれにせよ、ここで挙げたような「サポートを受けながら、思い切ってやってみる」ことを継続して行うのも、非認知能力改善に役立つ次第。

この部分については、前後の解説も含めて、お読みいただきたく思います。


非認知能力向上を目指すために読むべき1冊!

B0753XSFYN
私たちは子どもに何ができるのか ― 非認知能力を育み、格差に挑む
1 逆境
2 戦略
3 スキル
4 ストレス
5 親
6 トラウマ(心的外傷)
7 ネグレクト
8 幼児期の介入
9 アタッチメント(愛着)
10 家庭への介入
11 家庭を超えて
12 学習のための積み木
13 規律
14 インセンティブ
15 モチベーション(動機づけ)
16 評価
17 メッセージ
18 マインドセット(心のありよう)
19 人間関係
20 学習指導
21 課題
22 ディーパー・ラーニング(より深い学習)
23 解決策


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【科学的自己啓発書】『やり抜く人の9つの習慣 コロンビア大学の成功の科学』(2017年07月01日)

【GRIT】『GRIT(グリット) 平凡でも一流になれる「やり抜く力」』に学ぶ「GRIT養成法」7選(2016年11月16日)

【実行機能?】『自分をコントロールする力 非認知スキルの心理学』森口佑介(2019年11月14日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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