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2021年12月10日

【戦略?】『戦略質問―短時間だからこそ優れた打ち手がひらめく』金巻龍一


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戦略質問―短時間だからこそ優れた打ち手がひらめく


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「Kindle本冬のキャンペーン」での人気作。

タイトルで「質問」とは銘打っているものの、答えが知りたいのではなくて、相手に考えさせることを目的としており、それがゆえに「戦略」へと結びつくようになっています。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
「3カ月、1億円」かけてつくる予定調和の戦略計画
「1時間、10の質問」からつくる”とがった”戦略コア
あなたはどっちを選ぶ? 短時間だからこそ優れた打ち手がひらめく
質問が「思考のスイッチ」を入れる

中古がほとんど値下がりしていませんから、このKindle版が800円以上お買い得となります!






2015-02-05 How can I organize my questions - and why -- index card #questions #organization #pkm / sachac


【ポイント】

■1.「Q:現在の組織にある課題がすべて解決したとしましょう。あなたの会社は何が実現できているのでしょうか?」
 さて、前述の私のボスの話に戻る。ご自身が卒業された大学の改革プロジェクトに招聘されたときに、この「何をもって」を発動されたという。
 50名くらいの有識者が劇場方式のレイアウトで座っている会場で、ファシリテータが「この大学で何をするべきなのか、順番にお話しください」と話し、左から右、1列目から2列目へとそれぞれが「とるべきアクション」を発言していたという。さて、ご本人の出番になり彼は何をいったか。
「ここに50名の方がいらして、ひとつずつアクションを伝えると合計50個になります。この50個のアクションを漏れなくすべて完璧に実行したとします。この大学は何を手に入れるのでしょうか。たとえば大学の東南アジア留学生の志願者ランキングで現状の10位から3位になるとか」(中略)
 それを聞いた筆者は、その場の凍りつくような雰囲気と参加者の心情が、痛いほど理解できた。この問いかけ(とその後の沈黙)によって、「何をもって大学改革の成功といえるのか」共通の認識がない50名が、それぞれの「とるべきアクション」を語っていることが明らかになってしまったわけだ。


■2.「Q:あなたの会社は新しい戦略を策定されましたが、それにより、どこが弱くなりますか?」
 実際には立案された戦略が、本当に戦略(選択と集中)になっているかを自問自答するものであるが、そこからディレクションの設定に不整合がないかを確認している。
 この問いかけをすると、「(何を失礼なことをいうのか)今回の戦略は完全無欠であり欠点などない」とお叱りを受けるリスクはある。が、たいていの場合においては、「えっ、どういう意味かな?」と質問の意図を確認される。でも、それが理解できると、経営者の方々は、「選択と集中」の犠牲になった領域を楽しそうに説明する。まずはそこで、その会社が「選択と集中」をおこなう風土がある(受容度が高い)とわかる。ただこれは、戦略が戦略として成立しているかを確認するための問いかけであり、ディレクションの明確さを直接確認できるものではない。


■3.「Q:あなたの会社が『世紀の大番狂わせ』をするとしたら、それはどんなものでしょうか?
 ちょっと芝居がかった問いかけだとは思う。でも、この問いかけをすると、経営者は楽しそうにされる。立場上、軽はずみあるいは無邪気にはいえないようなワイルドアイディアを結構おもちだったりするからだ(本当にワイルドで椅子から転げ落ちそうな場合も時々ある)。(中略)
 問いかけに戻ると、経営者の方々からは、意外なくらいスムーズにいろいろなお話が出てくる。おそらくそれは、今、ふと頭に浮かんだのではなく、過去、仲間内でのちょっとした会話で出てきた半分冗談めいた妄想だったり、ある日、誰かが思いつき、社内で真剣に議論した末、結局はお蔵入りしてしまったスーパーアイディアだったり、いろいろだと思う。
 あとは、ご自身が常々、心に描いていたものの、なんとなく社内の雰囲気や政治等々からそれを議論することを躊躇したと正直に告白していただいたこともあった。


■4.「Q:あなたの会社を退職した人が、また戻ってくるといった場合、あなたの会社はそれを歓迎する風土がありますか?」
 グローバル企業は、この出戻りを大歓迎する。自社では開発できなかった能力を他社、他業界で磨いてきた人間であり、その人物を把握しているので、「優秀な人材が研修を終えて戻ってきた」ということになる。こうした退職したり、戻ったりに嫌悪感を抱く人たちもいるだろう。また、キャリアを磨くとはいいつつも、実はどこに行っても定着できず、すぐに転職を繰り返すジョブホッパーもいるだろう。ただ、かつて自社にいた人材なら再雇用時のリスクは少ない。必要なのは、「経営戦略としての人事の考え方」がそこにあることである。
 プラスの今泉嘉久会長にこの問いかけをさせていただいた。「出戻り大歓迎!」と即答された。「自社で人材を開発しようとしても限界がある。だけど転職した人は新天地で頑張り、そこには大きな学びがあったはずである。お金を払ってもいないのに、そのような人が手に入るなんてこんなうまい話はない」とそんなことをいわれたように記憶している。


■5.「Q:今回の戦略の実現を、既存の組織分掌を考えずにとにかく最適な人間に任せるとした場合、誰にやらせたいですか?」
「本当は◯◯」と、私が知っているか知らないかは別としてズバッと固有名詞がくる場合もある。「ではなんでその人にしないんですか?」と尋ねると、「なるほど、そりゃそうだな。話をしてみるか」となるケースを何度も見てきた。
 一番おもしろかったのは、「ちょっと待っててくれる」といって経営者が席を立ち、数分後、ある管理職の方が本当に袖を摘まんで連れられてきたことだ。こんな感じでアサインされれば、本人のモチベーションは最高潮だし、何か相談があったらその経営者とのホットラインがある。コミュニケーションプランとかチェンジマネジメントプランとかをせっせと紙にまとめているよりも、よほど現実性があるように思える。もし新しい戦略の実行体制が確定していないなら、ぜひこれをおすすめしたい。


【感想】

◆冒頭の内容紹介で、何と何とを比較しているのかが、少々分かりにくかったと思います。

これに関しては、そもそも著者の金巻さんのような戦略コンサルタントが、クライアントに呼ばれて戦略策定を行うと、通常数か月(とそれに伴う費用)がかかるのに対して、そのコアとなる部分はトップとの1時間程度の会話で生まれるらしく。

もちろん、顧客が経営企画部のようなところであれば、「求める戦略の文書化、そのための情報収集、ディスカッションの準備と実施、そして何よりも社内の意見調整」に、おびただしい時間がかかるのはしょうがありません。

しかし、顧客が経営者であれば、もっとシンプルな「決断」がうながせればよいのではないか……。

そのような仮定に基づき、10個の「セントラルクエスチョン」と呼ばれる、本質的な質問と、それに付随するいくつかの質問によって、「戦略」を生み出そうとする一連の作業過程が、本書のテーマになります。


◆具体的な質問については、上記ポイントの小見出しにていくつか列挙してみました。

たとえば上記ポイントの1番目の「課題がすべて解決したら、何が実現できているのか?」という質問は、重要課題の解決策を戦略としてまとめた場合に、その先に何があるか、という「そもそも」のお話を問うものです。
 たとえば組織中の課題をすべて解決すると、その会社は業界3位から1位ないしは2位になることができるのだろうか。あるいは世の中にまったく存在していなかった事業が忽然と立ち上がるのだろうか。
それを踏まえたのが、上記ポイントの1番目のエピソード。

50名の有識者たちは、「何をもって大学改革の成功といえるのか」を考えないまま、それぞれの「とるべきアクション」を述べてしまったワケです。

これは本書の第2章から抜き出したものなのですが、この章は他にもこうした「セントラルクエスチョン」がいくつか収録されており、せめて質問だけでもご紹介したいところなのですが、一応ネタバレ自重しておこうかと……。


◆とはいえ、たとえばアマゾンの詳細な内容紹介にも掲載されていた、
「あなたの会社は新しい戦略を策定されましたが、それにより、どこが弱くなりますか?」
という質問も、その「セントラルクエスチョン」の1つです。

これは実は、上記ポイントの2番目とまったく同じ質問であり、いわゆる「選択と集中」が行われているかを問うもの。

この質問によって、「戦略が戦略として成立しているかを確認する」ことを確認し、「何をやって何をやらないか」というディレクションまで踏み込んでいくそうです。

なお、このディレクションのほか、ミッションとバリューを合わせた3つが、「ビジョン」の構成要素であり、本書ではそれぞれについて解説されていますから、「ビジョン」について今ひとつ分からない、という方はそれぞれお読みいただくと理解が深まるかと。

さらには、閉塞した状態を打ち破るのが、上記ポイントの3番目の質問です。

これは第5章の「ジャイキリへの挑戦」から抜き出したものなのですが、ジャイキリ(ジャイアントキリング)を起こすためには、確かに凡庸なアイデアでは難しいでしょう。

その点、こうした仮定の話からもっていくと、「バカげた考え」として封印されていたものが、表に出てくるのかもしれません。


◆また、続く第6章では人材問題がテーマです。

上記ポイントの4番目の質問は、「セントラルクエスチョン」ではないものの、その会社が社員に「市場価値」をつくり出させる仕組みや文化を有しているかがわかる次第。

マッキンゼーやリクルートは、確かこうした出戻りを受け入れる土壌があると聞いた記憶があります。

そして、最後のポイントの5番目は、実行力をテーマとした第8章から抜き出したもの。

エピソード自体はほほえましいものですが、なるほどこのような形で抜擢されたら、本人のモチベーションも高まるでしょうね。

なおこうした「質問」は、相手にするだけでなく、自問自答することでも同じ効果が得られるとのこと。

たとえご自身がコンサルタントでなくても、ぜひお試しください。


斬新かつ秀逸な戦略アイデアを思いつくために読むべし!

B09DYJ9S3N
戦略質問―短時間だからこそ優れた打ち手がひらめく
第1章 戦略立案には本当に3カ月かかるのか
第2章 ウォールーム−−少人数、短期間で実施
第3章 ビジョンの意外な戦略性を知る
第4章 人材獲得戦略を「南極探検」「建築家の素養」に学ぶ
第5章 ジャイキリへの挑戦
第6章 経営戦略としての人材を語ろう
第7章 DXはIT化の名称変更か、それとも戦略か?
第8章 戦略に「実行力」を注入する


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【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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