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2021年09月06日

【対人スキル】『伝え方の作法 どんな相手からも一目置かれる63の心得』池上 彰,佐藤 優


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伝え方の作法 どんな相手からも一目置かれる63の心得 (SB新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「Kindle本 ビジネス書キャンペーン」の中でも、まだご紹介していなかった作品。

すいません、版元のSBクリエイティブさんは対象作品が8冊しかない、ということで、版元ごと割愛するか、取り上げるにしても一番最後になりそうなので、以前、未読本記事で取り上げたままになっていた本書だけでもレビューさせていただきます。

アマゾンの内容紹介から。
日本を代表する「伝え方のプロ」池上 彰と、「知の巨人」佐藤 優が教える、どんな相手からも信頼される、知的コミュニケーションの作法!

中古は値崩れしていますが、送料を加算するとKindle版に軍配が上がります!





Discussion avec / pierret_christian


【ポイント】

■1.リモートツールの使い分け
池上 私の場合は、大学の授業は基本的にZoomです。大学の大教室で「質問はありますか?」と聞いてもなかなか手が挙がらないのですが、Zoomのチャット欄だと質問しやすいようですね。授業中に質問が書き込まれたら「今、こういう質問があったので答えますね」ともっていくこともできるので、Zoomのチャット機能によって、より話し手と聞き手のやり取りが活発な授業が可能になっています。他方、テレビ局との打ち合わせはTeamsかGoogle Meetですね。

佐藤 SkypeやFaceTimeはどうですか?

池上 少人数の打ち合わせでSkypeを使ったこともありますし、佐藤さんとはFaceTimeでお話ししたこともありますよね。でも普段よく使うものというと、 大学の授業はZoom、テレビ局ではTeamsという使い分け です。

佐藤 私も大学関係は、大学側の指定でZoomを使っています。自分のゼミだけはTeamsを使っていますが、少人数ならば昔から使い慣れているSkypeを使うこともあります。FaceTimeもよく使います。Appleユーザー同士の閉鎖型ツールであり、セキュリティ関係で難しい設定をせずに、すぐに使えるから。基本的にはこの4つですね。


■2.普段から嘘をつかない
佐藤 もちろんビジネスの場も例外ではない。やはり噓をつかないことは基本中の基本として守るべきですね。私も外務省勤務時代には、よく部下にわざと「〇〇の件、ファックスを送っておいてくれた?」と聞いて、「すみません、忘れていました」と言えるかどうかで部下の誠実度を測っていました。とくに一部上場企業など、そこそこの会社で働いている人たちは、若いころからほめられるばかりで、あまり叱られるという経験をしていない人が多いのではないでしょうか。

池上 いわゆる「優等生タイプ」が多い印象ですよね。

佐藤 はい。そういう人たちは叱られたくないばっかりに、小さな噓をつく。たとえば上司から「例のファックス、先方に送ってくれた?」と聞かれて、本当は忘れていたのに「あ、はい、送りました!」と答えて、あとからこっそり慌てて送る。それで済む場合もありますが、しかし小さな噓が習性になると、いずれ大きな噓をつかざるを得ない状況に追い込まれかねません。だから、仕事でもプライベートでも、普段から噓をつかないようにすることが本当に大事なのです。


■3.「伝えたい一文」は驚くほど短く
池上 ただしダラダラ話すのは禁物です。どのレベルで説明するにしても、要点を端的に伝える。そのためには、一文一文を極力短くする。これは何かを口頭で説明するときにはとくに意識すべきことです。書かれた文章は、読み手が文章を行ったり来たりできます。つまり途中でわからなくなってしまったら、前に読んだ説明を自由に「読み直す」ことができる。しかし話し言葉はどんどん流れていってしまうから、聞き手の勝手で「聞き直す」ということができません。

佐藤 だから話し手としては、ひと発話ごとにしっかり相手の頭に入れていかなくてはいけないわけですね。内容をひとつひとつ相手の頭に刻みつけながら話を進める。一文が長いとそれが難しい。人が一度聞いただけで完全に飲み込める文章は、驚くほど短いと心得たほうがいいですね。

池上 そうですね。だから一文は短く。これに加えて、要点がわかるように話すには、事前の準備で「要するに」どういうことなのか、「つまり」これは何なのか、というふうに「要するに」「つまり」を枕詞のようにして組み立てて整理するといいでしょう。


■4.さりげない言い換えで訂正する
池上 そこで先ほどの佐藤さんの問いに戻りますが、相手が根本的な間違いを犯しているのを指摘するのは難しいものです。とくに目上の人が相手だと、「先生、イラン人とアラブ人はそもそも違う民族ですから、ひとまとめにして語るのは間違いです」なんて言ったら相手は不機嫌になるでしょう。そうなると、こちらが聞きたい話も引き出しにくくなってしまう。さて、佐藤さんだったら、どうしますか。

佐藤 「先生、まったくおっしゃる通りです。たしかにイランには一部アラブ系の人もいるわけですが、大半のイラン人はアラブ人とは違う民族でございますから、イラン人のことはアラブ人とはおっしゃらずにイラン人、もしくはペルシア民族とおっしゃったほうが、先生のご趣旨はより正しく伝わるかと思います」と、官僚だったらこんなふうに言うでしょう。

池上 まずは相手の発言を「まったくおっしゃる通り」などと、受け入れる。その後に続く言葉では、間違いを指摘したり訂正したりせずに、さりげなく「正確な言い方」を添える、ということですね。


■5.謝るべきときに謝る
佐藤 間違いを認めて謝ると自分の立場が危うくなるから謝らない、というケースも多いですね。その最たるものは政治家でしょう。たとえば「世間をお騒がせして申し訳ありませんでした」は、裏を返せば「騒ぐあなたたちが悪いのであって、私は間違っていない」、「誤解を招く表現をして申し訳ありませんでした」は「自分はそんなつもりで言ったわけじゃない。誤解をした人たちが悪い」ということです。このように謝罪の言葉は述べつつも、自分の間違いは認めない、つまり本当は謝っていないという、定番の言い回しがいくつもありますね。(中略)
 政治家は責任を取って辞めなくてはいけなくなるから、どうしても、こういう言い方になりがちです。他方、我々一般人の場合はもっと単純な話で、こちらがミスをしたらすぐに謝る。シンプルですが、これに尽きます。

 池上 基本中の基本ですね。 謝るのが遅くなれば遅くなるほど関係がこじれやすい というのは、どんなケースにおいても同じです。


【感想】

◆おなじみのコンビによる、手堅い内容でした。

そもそも当ブログでは、過去この2冊をご紹介しておりまして。

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知的再武装 60のヒント (文春新書)

参考記事:【知的生産術】『知的再武装 60のヒント』池上 彰,佐藤 優(2020年03月23日)

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僕らが毎日やっている最強の読み方―新聞・雑誌・ネット・書籍から「知識と教養」を身につける70の極意

参考記事:【オススメ!】『僕らが毎日やっている最強の読み方』池上 彰,佐藤 優(2016年12月16日)

版元はそれぞれ、文藝春秋さんと東洋経済さんと、今回のSBクリエイティブさんともいずれも異なるのですが、まぁ安定したクオリティだったワケです。

となれば、それはこのお2人を使って、スキルアップネタの本を出そう、と思うのも極めて自然なことかと。

実際、このコンビで、これ以外にも作品が出ていますし、時期があいたら同じネタで続編も書かれそうな感じです。


◆さて本書は、このコロナ禍ゆえリアルで同席することなく、ウェブ上で対談されて書かれたとのこと。

そうした状況での伝え方を指南したのが、冒頭のプロローグ「これからの伝え方の作法」です。

ここではいわゆるリモートにおける、アイコンタクトの重要性や、威圧的に見られない相手の見方等を伝授。

中でも個人的に気になっていたのが、上記ポイントの1番目のツールの使い分けでした。

……てっきり2人して「Zoomを使っているのはセキュリティ意識が低い証拠!」とか言い出すんじゃないかと思っていましたが、あにはからんやw


◆一方、1つ飛んだ第2章から抜き出したのが、上記ポイントの2番目にある「嘘をつかない」というお話です。

さすが佐藤さんは、外務省時代はこうやって「カマかけ」していたんですね。

ちなみに「最初についた小さな嘘がが大きくなって、収拾がつかなくなる様子が描かれている」のが、こちらの映画だそうで、つい嘘で逃げる傾向のある方は観ておくと良いかもしれません。

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テイラー・オブ・パナマ [DVD]

続く第3章は、「話し方」がテーマのため参考になるお話が目白押しで、ハイライトも多々引きました。

その中でも意識しておきたかったのが、上記ポイントの3番目の「一文一文を極力短くする」というTIPS。

文章術本では良く見かけますが、確かに書かれた文章と違って口頭での説明は、行ったり来たりができませんから、文章以上に意識する必要がありそうです。


◆再度1つ飛んだ第5章は「相手をのせる上手な聞き方」ということで、これまたお2人の得意とするところでした。

そこから引用したのが、上記ポイントの4番目にある言い換えの手法。

池上さんはテレビ等で、佐藤さんも外務省時代は日常的に内外の政治家等のお偉いさんと、日常的にやり取りしていましたから、この辺は得意とされているのでしょう。

ちなみに佐藤さんは、このように「趣旨は変わらないけれども、細部にちょっとした認識違いがあっただけ」の場合には、「相手が自分の間違いを訂正できるような『処方箋』を出すように伝えれば、問題ない」と言われていて、なるほど、と納得しました。

他にも、相手が数字的な間違いをしたときには「約」で丸める、というのも、ちょっとした誤りなら使えそうです。
たとえば相手が「中国の人口は12億7000万人にも上る」なんて言ったら、こちらは、何か古いデータを見ているんだろうなと思う。しかし、そこでぴったりした数字を言うと露骨に間違いを指摘することになるので、「そうですね。おっしゃる通り中国の人口は莫大で約14億人ですからね」と伝える。
もちろん、桁が違ったりしたらどうしょうもないですが。


◆続く第6章も「修羅場を乗り切る伝え方」ということで、これまたお2人らしさが全開。

上記ポイントの5番目の「政治家の謝らない答弁」は、本当によく目にしますよね。

ちょうど先日も、こんな記事がホッテントリに上がっていましたし。

窮地に陥った首相に政権延命の策を指南した記者がいた 21年を経て元NHK記者らが語った「指南書問題」(立岩陽一郎) - 個人 - Yahoo!ニュース

政治家は揚げ足を取られないように、このような受け答えを意図的にしていますが、私たちは謝るべきときには、すぐ謝っておくのが吉、ということ。

さらに最後のエピローグでは、店内で待ち合わせする場合に、「下座に座っても出入口が見渡せる席があるような店、もしくは下座に座っても出入口が見えるように鏡張りになっている店を選ぶ」という、私自身考えたことのないアドバイスがありました。

いつもキョロキョロ入口を振り返っていた私、涙目の巻……。


「伝え方」の極意が詰まった1冊をぜひ!

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伝え方の作法 どんな相手からも一目置かれる63の心得 (SB新書)
プロローグ これからの伝え方の作法
第1章 初対面で好印象を与える伝え方
第2章 ほしい情報を引き出す伝え方
第3章 わかりやすく伝える話し方
第4章 交渉を有利にすすめる伝え方
第5章 相手をのせる上手な聞き方
第6章 修羅場を乗り切る伝え方
第7章 誠意を伝える書き方
エピローグ 「言葉以外」で伝える力


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【ビジネスコミュニケーション】『仕事は人間関係が9割』宮本実果(2017年01月10日)

【言い換え】『一生使えるポジティブ言い換え言葉 - 好感度も運気もあがる魔法の言葉選び』えらせん(2021年07月16日)


【編集後記】

◆一昨日の「電本フェス2021秋 本祭」の記事で人気が高かったのは、この辺の作品でした(順不同)。

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シリコンバレーの一流投資家が教える 世界標準のテクノロジー教養 (幻冬舎単行本)

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自分の頭で考える日本の論点 (幻冬舎新書)

参考記事:【論点?】『自分の頭で考える日本の論点』出口治明(2021年06月12日)

B08NJYQJB9
勉強の価値 (幻冬舎新書)

参考記事:【勉強?】『勉強の価値』森 博嗣(2020年11月27日)

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成功ではなく、幸福について語ろう (幻冬舎単行本)

参考記事:【幸福?】『成功ではなく、幸福について語ろう』岸見一郎(2018年06月14日)

よろしければご参考まで!


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