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2021年06月26日

【マーケティング】『400年前なのに最先端! 江戸式マーケ』川上徹也


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400年前なのに最先端! 江戸式マーケ


【本の概要】

◆今日ご紹介するのも、昨日に続いて先日の「未読本・気になる本」の記事の中で人気の高かった1冊。

おなじみ川上徹也さんが、文字通り「江戸時代」に我が国で実践されていたマーケティング手法を紹介してくださっています。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
遊郭のガイドブックだった「吉原細見」はなぜ大ヒットしたのか? 越後屋はなぜ番傘をタダで配るのか? 豊島屋はなぜ酒を原価で提供できたのか? 江戸にいた12人の天才起業家たちが編み出した「400年前なのに最先端」のマーケティング戦略を1冊に集約!

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Vue du mont Fuji (Maison de la culture du Japon, Paris) / dalbera


【ポイント】

■1.「番傘」の無料貸し出しによる宣伝効果
 越後屋は、ロゴマークが大きく入った傘を常に大量に準備していました。そして、にわか雨が降ると、店頭でその傘を貸し出すサービスを実施したのです。顧客はもちろん、客以外の通行人にも貸し出しました。
 当時、傘は大変高価なものでした。現在のビニール傘のように安価で気軽にどこにでも売っている商品はありません。折り畳み傘も当然ありません。多くの町民は、濡れるか雨宿りしてやむのを待つしかなかったのです。雨に打たれて風邪をこじらせるなんてことも当然あったでしょう。
 そんな傘を無料で貸してくれるのですから、町人にとって、こんなにありがたいサービスはありません。


■2.「掛け売り」から「現金正価販売」へ
 掛け売りは、年に2回、盆と暮れの「掛け払い」のことで、江戸では一般的な手法でした。ただし、現金化が遅れるため呉服商にとっては資金の回転が悪く、貸し倒れなどのリスクがありました。そのリスクを負う分が価格に反映され、結果として呉服は庶民には手が出ない高価格商品になっていました。また、「掛け払い」のために顧客によって価格も異なるのが普通だったのです。
 三井越後屋は、この慣習を店舗の商品に値札をつけることで、「現金払い」に変えました。「現金払い」には貸し倒れなどのリスクがありません。そのため低価格での販売が実現できたのです。越後屋はその代わりに値引きはしない同一価格を打ち出しました。


■3.富山藩が官民一体で進めた「置き薬」
 富山の薬売りは、「置き薬」というビジネスモデルで販売を行なったのが特徴です。「置き薬」は、「無料で薬箱を置いて帰り、後日訪れた時に使われた分だけ集金する」というシステムです。決まった行商人が一年に1〜2回顧客のところを訪れて集金し、商品を補充します。
 お客さん側からすると、押し売りされるわけではなく、薬を置くのを頼まれるだけなので負担に感じません。無料で置いていくぐらいだから、薬効に自信があるのだろうと信頼もします。また万が一、病気の時に薬があるのは心強いわけで、断る理由はないと言えるでしょう。
 この「まず、お客さんの用に立ててもらって、利益はあとからもらう」という考え方は「先用後利」といい、富山売薬の基本理念です。「用を先にし利を後にし、医療の仁恵に浴せざる寒村僻地にまで広く救療の志を貫通せよ」という、正甫が示した方針から生まれました。顧客信用ビジネスの先駆けで、世界に類を見ない商法です。


■4.豊島屋の酒の原価販売の秘密とは?
 実は、この酒の原価販売にはからくりがありました。豊島屋は「酒」で儲けているわけではなかったのです。大量に出る空の酒樽で利益を出していました。空の酒樽は、酢・醬油・味噌などの樽にもリサイクルできるなど様々な用途で使われることから、仕入れ値の1割程度で売れたといいます。中身の酒を安く売ってお客さんが増えれば増えるほど、空の酒樽も多く出るので儲かるという仕組みです。
 また大量に酒を注文するので、仕入れ先に値段を下げるように交渉できました。つまり他店にとっては原価になる金額でも、豊島屋にとっては利益が出る仕組みを作ったのです。
 店頭では、酒を安く売る代わりにツケ払いは断り、現金しか受け付けないようにしました。仕入れ先への支払いは年に2回の節季払いが通例になっていたので、支払いまでの間、現金が手元に残ります。豊島屋はそれを原資に「金貸し業」も行ない、そこからも利益をあげていました。


■5.「近江蚊帳」のデザインチェンジ
 寛永3(1626)年の夏、甚五郎が蚊帳の荷を背負って近江から江戸に下る箱根越えにかかった時のことです。あまりの暑さと疲れに大樹の蔭で横になっているうちにうたた寝をしました。夢の中で、甚五郎は 萌黄 色(若草の緑)のつたかずらが一面に広がる野原にいました。若葉の色が目に映えてそれは涼やかな気持ちで仙境にいるようだったといいます。
 夢から覚めた甚五郎は「これだ!」と思いました。蚊帳を萌黄色に染めるというアイデアを思い付いた瞬間でした。それまでの蚊帳の色は原料そのままの茶色でした。「寝る時も、目覚めた時も涼しさを感じる新緑の中にいると思えば、蚊帳を使う人の気持ちを和ませ、爽快な気持ちにさせることができる」と考えたのです。
 こうして、 蚊帳は萌黄色に染められ、紅色の縁取りがされて売り出されました。 すると、爆発的にヒットし、「近江蚊帳」と呼ばれるようになりました。


【感想】

◆なかなかユニークなマーケティング本でした。

本書の「はじめに」によると、著者の川上さんは今から7年前に「大ヒットしたコピーの元祖というべきものが何か」を調べたことにあったのだそう。
その時、三井高利という天才商人が生み出した「現金安売り掛け値なし」というフレーズに行き当たりました。さらに調べてみると、三井高利は、かの経営学者ピーター・ドラッカーがその著書の中で「マーケティングの元祖である」と絶賛したぐらい、凄腕のマーケターだったことがわかったのです。
 そこから川上さんは、江戸時代の商人について興味を持ち、調べるようになったのだとか。すると、江戸時代には「革新的なビジネスモデル」を作り上げ、「イノベーションを起こした」起業家たちが他にもたくさんいることが判明します。
 しかもそのほとんどは、日本史の教科書に名前すらも出てこない。おそらく知らない人も多くいるはず。だとしたら、それら人物の偉業をわかりやすくまとめて、楽しく読める本を出版することには意義があり、自分の役割だと考えるようになりました。それが本書を執筆するに至った経緯です。
確かに下記目次を見ていただくとお分かりのように、誰でも知っているような有名人と言えるのは、最後の伊能忠敬くらいではないか、と。

その一方で、本書に登場する人物たちの行った施策は、今でもほぼ同じだったり、形を変えたりして、私たちの身の回りに現存しています。


◆さて、本書の初っ端に登場するのは、上記でも川上さんが名前を挙げた三井高利。

あのドラッカーが「マーケティングの元祖である」というだけあって、本書の中でも際立った活躍をしています。

たとえば彼の考案した、上記ポイントの1番目の「『番傘』の無料貸し出し」は、「町人を『歩く広告塔』」にするという、当時としては画期的なアイデアでした。

実際その様子は、「江戸中を越後屋にして虹が吹き」「呉服屋の繁昌を知るにわか雨」といった川柳にもうたわれているくらいだったのだそう。

そして本書では、各施策が現在において、どのように受け継がれているかを検証しています。

たとえば中国では「Sharing E Umbrella」等、いくつかの同じようなサービスが生まれたものの、ほとんど傘が戻ってこずに破綻したとのこと。

日本でも同じように、傘の返却率が悪く、打ち切りになってしまうケースが多かったものの、今現在注目を浴びているのが「アイカサ」なるサービスです。

これは、LINEアプリを使用することにより、ユーザーの決済情報が登録されていることから、「返却率99%」を誇っているのだとか。

アイカサ | 傘のシェアリングサービス


◆続く上記ポイントの2番目の「現金正価販売」も、同じく三井高利が生み出したもの。

というか、今ではそんなの当たり前だと私たちは思っていますが、当時は違っていたんですね(もちろん扱う商材次第だったと思いますが)。

ちなみにこのサービスを訴えた「現金安売り掛け値なし」というコピーは、お店である越後屋が隣町に引っ越して再オープンする際に、引札(現在のチラシ)に書かれていたものです。

これは「どんなお客さんにも値札通りの安い値段で提供します」という意味であり、これを江戸中に5万枚以上配布したのだそう(当時の江戸の人口は約50万人)。

しかも越後屋は、この広告効果を測定しており、その売り上げは「3カ月間にわたって60%増を記録」したのだとか。

なお、このような広告測定は、「世界初」と言われてますから、それはドラッカーも「マーケティングの元祖」というのも納得です。


◆一方、上記ポイントの3番目の「置き薬」は、今でもおなじみのビジネスモデルかと(ウチの隣の事務所にもあります)。

もともとは富山藩主だった前田正甫が、「反魂丹」という腹痛薬に助けられたことから、自ら薬の調合するほど薬学に興味を持つようになったのがきっかけです。
 正甫は、松井屋をはじめとする城下の薬種商に「反魂丹」を大々的に製造させました。さらに、富山藩から出て全国どこででも薬を売り歩くことができる「他領商売勝手」を発布。松井屋の手代・八重崎屋源六に諸国行商を取り仕切らせました。
この、「他の藩で商売してもいいというお墨付き」は、当時としては画期的な政策だったのだそう。

そしてそこから「置き薬」というビジネスモデルが生まれたワケですね。

ちなみに、現在に受け継がれたサービスとしては、てっきり「オフィスグリコ」が登場するのかと思いきや、挙げられていたのが「オフィスおかん」なる、社食サービスでした。

【公式 | オフィスおかん】健康的なお惣菜をオフィスにお届けする置き型社食!

薬のように使用期限(賞味期限)が比較的長いおやつではなく、社食というある意味「生もの」で同じことをやる、というのがユニークですね。


◆また、上記ポイントの4番目の「豊島屋の酒の原価販売」の秘密は、想像だにしないものでした。

大量販売に伴い、その容器の売り上げで利益を出す、というのは「目からウロコ」。

ただしこれは特殊事例であり、汎用性があるとは言い難い気がします。

なお本書では、現代に受け継がれたサービスとして「ほぼ原価販売」のアマゾンKindleを挙げていますけど、むしろそれは広い意味での「ジレットモデル」に近いのではないでしょうかね?

さらに上記ポイントの5番目の「近江蚊帳」の色変更は、いわゆる「デザイン」に注目したものです。

ここで登場する西川甚五郎は、それまで家督として、武家相手に畳表を売るお店を経営していました。

しかしその不安定さから、商売相手を町人にシフトし、その商材として蚊帳を販売することにしたものの、売上不振に。

そこで思いついたのが、このデザインチェンジであり、見事ヒットにつながった次第です。

他にもユニークなマーケッターが数多く登場する本書。


マーケティング好きなら一読の価値アリです!

4163913858
400年前なのに最先端! 江戸式マーケ
第1章 三井高利「三井越後屋」
 ドラッカーも絶賛! マーケティングの元祖
第2章 蔦屋重三郎「耕書堂」
 日本初! 本格的コンテンツ・マーケティング
第3章 富山藩二代目藩主前田正甫&越中富山の薬売り
 200年以上続く「顧客信用ビジネス」を確立
第4章 大丸 下村彦右衛門正啓
 京・大坂発の「ビジョナリーカンパニー」
第5章 材木商・河村瑞賢
 江戸の「ソーシャルビジネス」とは?
第6章 豊島屋十右衛門 「酒屋豊島屋」
 「原価販売ビジネス」で大繁盛店に!
第7章 二代目西川甚五郎「 西川家山形屋」
 「デザイン経営」でV字回復!
第8章 山本山 五代目山本嘉兵衛 
 お茶の「産地ブランディング」
第9章 にんべん 六代目眥徹吠識辧
 「前払いビジネス」の先駆け
第10章 紀伊国屋門左衛門
 「ストーリーブランディング」で江戸一の豪商に
第11章 佐賀藩 十代藩主 鍋島直正 
 徹底した「組織改革」でどん底から最強藩へ
第12章 伊能忠敬 
 歴史に残る「シニア起業」のロールモデル


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【編集後記】

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Posted by smoothfoxxx at 10:00
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