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2021年06月24日

【音楽】『80年代音楽解体新書』スージー鈴木


B084FQY5DT
80年代音楽解体新書 フィギュール彩


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、今月の「Kindle月替わりセール」の中から、個人的に読んでみたかった音楽ネタ本。

音楽評論家であり、自らも音楽活動の経験もあるスージー鈴木さんが、80年代の楽曲を分析した1冊です。

アマゾンの内容紹介から。
あの曲は、なぜこうも聴き手の心をつかむのか―80年代音楽の魅力を徹底的に解体し分析する、話題の音楽評論家による80年代音楽サイト「リマインダー」人気連載の単行本化!

中古があまり値下がりしていませんから、送料を踏まえるとこのKindle版が800円以上お買い得です!






J-pop section at Sofmap Akiba / kalleboo


【ポイント】

■1.佐野元春の「発明」と追随したアーチストたち
 若き佐野元春が、音符の中に文字を詰め込み、日本語の歌詞でありながら、英語の歌詞のようなビート感を発生させる方法論を発明したというのが前篇の結論。
 そしてこの方法論は、佐野元春以降、渡辺美里やTMネットワーク、大江千里などに引き継がれていくのです。ぜひ、これらの曲の《 》の中を歌ってみてください。
■佐野元春『SOMEDAY』→♪《街》の唄が聴こえてきて
■渡辺美里『My Revolution』→♪《非常》階段 《急》ぐくつ音
■TMネットワーク『SELF CONTROL』→♪ 君を連れ去る《クル》マを見送って
■大江千里『GLORY DAYS』→♪《きみ》の目に映るぼくがいて
 すべて1つの(8分)音符の中に、2つの文字が詰め込まれています(言い方を変えれば16分音符に分解している)。  
 興味深いのは、これらのシンガーのレコード会社が、みんなEPICソニーだったということです。「EPICソニーのシンガーは音符を詰め込みたがった」という歴史的事実が判明します。やはり彼らにとって、先輩・佐野元春の影響力は大きかったのでしょう。


■2.オフコースの「Yes・No」は歌い出しからいきなり半音上転調
 で、今回のオフコースの『Yes・No』です。あの曲では実は、曲の途中ではなく、イントロから歌い出しに入るところ=「♪ 今なんていったの」のところで、いきなり半音上がっているのです(これもキーがB→C)。
「いきなり歌い出しで半音上に転調」の効果は絶大だと思います。歌い出しの歌詞が「♪ 今なんていったの 他のこと考えて〜」ですから、「他のこと」から「君」に意識が戻る感じと、キーが半音上がることによる空気感の転換が、ぴったりと合っていると感じるのです。(中略)
 あと、オフコースで言えば、『Yes・No』の前年=79年に発売され、世間的に彼らが認知されるきっかけとなった『愛を止めないで』における、「間奏で1音(全音) 上転調」(C→D) も効果絶大でした。こちらもおすすめです。


■3.山下達郎が多用したメジャーセブンス
バラエティ溢れる作風の松任谷由実、桑田佳祐に比べて、山下達郎の作品には、ある一貫した強烈な個性があります。
 それは「メジャーセブンス」というコード(和音)の徹底的な多用です。正確にカウントしたことはありませんが、特に80年代の作品に限れば、9割以上の楽曲でメジャーセブンスを使っていると思います。
 メジャーセブンス。記号では「maj7」「M7」「△7」。ごくごく簡単に(乱暴に) 言えば、「ド・ミ・ソ」という普通のメジャーコードに「シ」という、奇妙でクセの強い音を混ぜたコード=「ド・ミ・ソ・シ」という音の組み合わせです。(中略)
 え? 「山下達郎の作品のどこがメジャーセブンスなのか」ですって? いやいや、あれもこれもメジャーセブンスなのです。
 あのシュガー・ベイブ『DOWN TOWN』のイントロも、あの『RIDE ON TIME』の歌い出しも、そしてあの、やたらと印象的な『SPARKLE』のギターイントロも、あれもこれもメジャーセブンス。


■4.80年代に「sus4イントロ」が増えた理由
(1)「sus4」は明るい。
 こちらも難しい理論は省きますが、「sus4イントロ」は、「ミ」というメジャー(長調) コードを決定付ける音を強調することで、明るい感じが強くなり、それが(陰鬱な70年代に対する)80年代の気分に合っていたのではないか。
(2)「sus4」は弾きやすい。
 コードにもよりますが、特にギターにおいて、「sus4」はとても弾きやすいのです。オープンの「D」「E」「G」「A」など、あらゆるコードで、「sus4」=「ファ」の音が簡単に弾けることで広まって、多用されたのではないか。
(3)つまり、「sus4」はニューウェーブだ。
 明るくて弾きやすい「sus4」。それが、軽佻浮薄で軽薄短小な、80年代の新しい波=「ニューウェーブ」の感覚の音楽に、ピッタリ合ったのではないか。


■5.百花繚乱となった「カノン進行」
■KAN 『愛は勝つ』(1990年9月1日) 201.2万枚 「♪ 心配ないからね〜」 【C】→【G/B】→【Am7】→【Em7】→【F】→【C/E】→【Dm7】→【G】
■槇原敬之『どんなときも。』(1991年6月10日) 167.0万枚 「♪ 僕の背中は自分が〜」 【C】→【Em/B】→【Am7】→【Am7】→【F】→【C/E】→【Dm7】→【G7】(中略)
■岡本真夜『TOMORROW』(1995年5月10日) 177.3万枚 「♪ 涙の数だけ強くなれるよ〜」 【C】→【G/B】→【Am7】→【Em】→【F】→【C/E】→【Dm7】→【G7】
 さぁ、どうでしょう。例えば、純正の「カノン進行」に一工夫加えようとしていた村井邦彦や財津和夫に対して、こちらのコード進行はかなり、純正の「カノン進行」をそのまま使っています。また、その上に乗る歌詞のテイストの実に均一なこと! そして70年代には考えられなかった莫大な売上枚数──。
 このような百花繚乱状態になった最も大きな理由は、この時期、雨後のタケノコのように突然増えだしたカラオケボックスにあると思います。ベースの音程が1つひとつ下がっていくのを聴きながら歌うことの、あの妙な安心感。まるで羊水の中で浮いている感じに近い感覚があると思うのです(羊水の記憶などありませんが)。


【感想】

◆音楽好き、特に80年代J-POPに親しんだ方には、本書は非常に楽しめる1冊だと思います。

……逆に言うと、40代以上の方でないと、リアルタイムでは本書に登場する楽曲は聴いたことがないハズ。

ただ曲は知らなくとも、80年代には画期的だったものが、今ならばある意味「当たり前」のアプローチだったりします。

たとえば上記ポイントの1番目にある佐野元春さんの「発明」というのは、彼のデビュー曲『アンジェリーナ』の冒頭で、「♪シャンデリアの〜」初っ端の音符が「♪シャン」になっていたというもの。



これ、今までの邦楽の常識だと、2音節ですから「♪シャ♪ン」と2音に分かれていましたし、さらに続く「デ」と「リ」も本来なら1音ずつ当てていくところ、実際には「♪デリ」と1音で歌われています。

同様に、ポイントの1番目で挙げられた楽曲群も同様で、要は日本語の歌詞でありながら、英語の歌詞のようなビート感が表現できている次第。


◆また、上記ポイントの2番目のオフコースの『Yes・No』は、曲自体は知っていましたけど、歌い出しからいきなり転調しているとは、本書を読むまで気が付きませんでした。



似たようなパターンとして「最も有名で、かつ最もクレイジー」と、本書で評されているのが、デレク・アンド・ザ・ドミノスの『いとしのレイラ』。

下記リンク先はサビの後からのAメロ部分ですけど、冒頭のイントロからのAメロでも同様で、「いきなり歌い出しで半音『下』に」転調されています。



ちなみに普通転調というと、それまでの曲調から一変させたり、ドラマチックに盛り上げるために、ある程度曲が進んでから転調することが多いと思うので、こういう歌い出しでの転調は新鮮でした。

……もちろん最近の曲でも、歌い出しでの転調は絶対あるハズなのですが、知識が乏しくて挙げられませぬ(すいません)。


◆一方、上記ポイントの3番目のメジャーセブンスは、著者の鈴木さんが、ご自身で『RIDE ON TIME』の該当部分を弾いたものを、YouTubeにアップして下さっています(10秒ほどのものですが)。



実はこのお話の回と、次の回は、どちらも山下達郎さんのメジャーセブンスがテーマなのですが、音の構成を分かりやすくするために、鍵盤図が活用されているんですよね。

無理を承知で文章で書くと、たとえば代表的なコードである【C】(Cメジャー:ド・ミ・ソ)と、【Em】(Eマイナー:ミ・ソ・シ)が合体したのが、【Cmaj7】(Cメジャーセブン:ド・ミ・ソ・シ)である、と。

これは要は「メジャーコードの上に、マイナーコードが乗っている」状態であり、その逆(マイナーコードの上にメジャーコードが乗っている)がマイナーセブンスになります。

そして、マイナーセブンスの代表曲として、これまた鈴木さんが弾いてくださっているのが、はっぴぃえんどの『12月の雨』という曲(これは私も知りませんでした)。



なるほどメジャーセブンスに比べると、ちょっと暗めになってますね。


◆なお、上記ポイントの4番目の「sus4イントロ」というのは、「sus4コードを用いたイントロ」のことで、鈴木さんが代表例として挙げているのが、沢田研二さんの『TOKIO』。
 これを階名(ドレミ) で書くと、
♪ ミッ・ミミ・ッミ・ッミ・ッミ・ッミ・ファミ・ー・レッ・レレ・ッレ・ッミ・ー
 となります(本当はもう少し色んな音が鳴っていますが)。で、この音使いのポイントは「ミ」と「ファ」です。この、「ミ」との関係における「ファ」のことを、専門用語で「sus4」(サス・フォー。suspended4の意味) と言います。難しい音楽理論のことは一旦措いておきつつ、この「ミ」と「ファ」を使ったイントロを、ここでは「sus4イントロ」と呼ぶことにします。
そして80年代には、この「sus4イントロ」が非常に増えたのだとか。

ご本人の動画がオフィシャルでないので、こちらのカバーをw

本書では他にも、楽曲が色々と列挙されているのですが、公式レベルであるのがこの辺だけでして。





ちなみに本書では、80年代以前からの「sus4イントロ」の歴史も分析していますので、こちらもぜひご覧ください。


◆そして上記ポイントの5番目で触れた「カノン進行」のお話は、本書では4回に渡って展開された力作部分です。

この「カノン進行」とは何ぞやというと、
これは厳密には、ある作曲法を意味する音楽用語なのですが、ここでは作曲法ではなく、17世紀に作られた、未だに人気の高いバロック曲=『パッヘルベルのカノン』のこととします。そして「カノン進行」とは、あの曲の(ような) コード進行とします。
とのこと。



……実際に聴くと、「はいはい、こういうのね!」と非常に分かりやすいタイプの曲調といいますか、いかにもバロック風ですね。

上記ポイントでは、キーをすべてCに移行した上でのコードが書かれているのですが、どれも「カノン進行」と言えるかと。

個人的には、本書内でも挙げられていたプロコル・ハルムの『青い影』が一番しっくりきますけどね。




80年代サウンドを通じて、音楽知識が身につく1冊!

B084FQY5DT
80年代音楽解体新書 フィギュール彩
1.デビュー曲のどアタマの音符に込められた佐野元春の大発明(前編)
2.デビュー曲のどアタマの音符に込められた佐野元春の大発明(後編)
3.効果絶大! オフコースの「Yes・No」は歌い出しからいきなり半音上転調
4.米米CLUB「浪漫飛行」を印象付けた傑作ベース・リフの〈ファ〉
5.尾崎豊をスターダムに押し上げた「卒業」、その秘密は〈哀愁のソ ♯〉

他、全46項目


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【音楽】『ヒットの崩壊』柴 那典(2016年12月01日)

【Amazonキャンペーン有】『すべてのJ-POPはパクリである (~現代ポップス論考) 』マキタスポーツ(2014年02月01日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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文芸オタクの私が教える バズる文章教室

当ブログでも下記のようにレビュー済みの文章術本は、中古が値崩れしていますが、送料を加味するとKindle版がお買い得。

参考記事:【文章術】『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』三宅香帆(2019年06月14日)

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「今、ここ」に意識を集中する練習 心を強く、やわらかくする「マインドフルネス」入門

こちらのマインドフルネス本も、中古が値下がりしていますが、やはり送料を加えるとKindle版に軍配が上がります!


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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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