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2021年06月16日

【アイデア】『クリエイティブ・シンキング入門』マイケル・マハルコ


B00EXODCQ8
クリエイティブ・シンキング入門


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「プライムデーセール」でも人気の高いアイデア本。

本書にはさまざまなアイデアの実例が収録されており、その豊富さから言ったら、当ブログでご紹介した中では1番かもしれません。

アマゾンの内容紹介から。
100を超える事例と豊富なトレーニング問題で、あなたも天才の発想力を手に入れる。

なお、絶版ゆえ中古価格が6000円超と高騰しており、結果このKindle版が5700円弱、お買い得となっています!







7 tenets of creative thinking by Michael Michalko / rebe_zuniga


【ポイント】

■1.コンセプトをかき混ぜる
 一例として、缶切りとエンドウ豆について考えてみよう。
 缶切りの機能は、缶を「開く」ことにある。ほかの領域にあるものは、どのようなやり方で「開く」のだろうか。自然界では、エンドウ豆が熟すと継ぎ目の部分が開きやすくなって、さやが「開く」。そこでエンドウ豆と缶切りを同じ思考の枠内で考えると、頭の中で、豆のさやの継ぎ目と缶切りをなんとか関連させようとする。
 これが契機になって、エンドウ豆の継ぎ目が開くように缶が開く、というアイデアが生まれた。このアイデアは、従来の思考法を用いていたら得られないものだ。
 これは「コンセプトをかき混ぜる」ということの、ひとつの具体例である。


■2.本質に注目し、コンセプトを融合する
 ある市民がスピード違反防止について話し合っているときに、次のことを思い出した。
 それは、ロサンジェルスを車で走っていて、倉庫の美しい壁画を見たときに、スピードを落としたことだった。それが、美しいものや珍しいものをつくるというアイデアにつながった。この街は地元のアーティストに依頼して、道路に巨大なポットホール(穴)を施して、だまし絵の技術で立体的な絵をつくった。この交差点の巨大ポットホールの立体画が見事にはまった。運転している人には道路に何かが見えるが、一瞬何だかわからず、自然とスピードを落とす。それが平面画だとわかると、そのままのスピードで進む。モニター計測では、時速30マイル帯で、平均45マイルから25マイルまで減速した。


■3.見方を変えると、感じ方も変わる
 オックスフォード大学の研究者たちが、双眼鏡を逆に使って怪我をしたときの痛みや腫れを減らす方法を見つけた。注目すべきは、怪我を双眼鏡の反対側から見ると、怪我がかなり小さくなったように思えることだ。この感じ方が痛み止めのように機能し、痛みを軽減する。
 研究者によると、これは、基本的な感覚ですら、ものの見方によって抑制されることを明らかにしている。
 このことを実験してみよう。雪かきや生け垣の剪定、庭の草むしり、大宴会のあとの皿洗いなどの面倒な仕事をしなければならないときに、双眼鏡を逆から見てみよう。面倒な仕事も、違った見方で見てみると、対象が変わったように感じられることに驚くだろう。


■4.対立するコンセプトからアイデアを生む
 鋳造所でつくられる金属部品は砂吹き工程で磨かれるものがあるが、あいにく金属面の小さな穴に砂が入りこみ、それを完全に落とすのには時間もコストもかかる。ここでのパラドクスは、金属類を磨くには砂の粒子が硬くなければならず、同時に、それを落としやすくするにはあまり硬いと困るということである。ある鋳造所で働いていた工員たちが、砂の代用品として理想的なものは「なくなってしまう硬さ」という特徴を備えた素材だと気づいた。
 こうして工員は「硬くて」、かつ「なくなってしまうもの」について考えることになった。2つのコンセプトを統合して、その工員は氷を思いついた。氷は硬いが、溶けてなくなる。ユニークな特徴は溶けることである。鋳造所がその課題について出した答えは、金属部品をドライアイスの粒子で磨くことだった。ドライアイスは金属部品を磨いたあと、気化して蒸発する。


■5.普通では思いつかないアイデアを形にする
 それは食器メーカーで、皿の梱包をするときに現実に起こった。皿は古新聞紙に包まれ、箱の中に詰められた。作業員はみんな新聞の記事や写真に気をとられてしまうので、どうしても作業が遅くなってしまう。数週間この仕事をすると、作業員の作業効率は30%落ちてしまった。
 メーカーは梱包に別の素材を使おうとしたが、無料で入手できる古新聞紙と比べると、コストがかかりすぎる。外国語の新聞を使おうとしたが、入手が難しかった。多く皿を梱包した作業員に給料の割り増しまでも実施したが、あまりうまくいかなかった。
 ある日の会議で怒った工場長は、新聞を読めなくするために作業員に目隠しをすると言った。このばかげた発言は大笑いされたが、そのとき工場長はひらめき、梱包に盲目の人たちを雇うというアイデアを思いつく。その会社は梱包作業の効率を大きく高めただけではなく、身体障がい者雇用によって税金の優遇を受けることになった。


【感想】

◆冒頭でも触れたように、事例が豊富な作品でした。

いちいち数えてはいませんでしたが、内容紹介に「100を超える」とあるのも違和感なし。

もちろん、ビリビリ剥がすマジックテープができた経緯や、ポストイット誕生のエピソード辺りの有名なモノは、類書でもおなじみですし当然割愛しております。

逆に上記でポイントとして挙げた5つは、個人的には初めてのモノ。

たとえば上記ポイントの1番目の缶切りのお話は、第1章の冒頭にあった事例なのですが、「関連性のない事項のコンセプトを融合させる」という、本書の前半部分である第1部を象徴するものでしょう。


◆この「組み合わせ思考」とでもいうべきアプローチ法の事例は、第1章以降も数多く登場します。

たとえばグーテンベルクの活版印刷機は、ぶどうの圧搾機と、従来の木材ブロックによる写しのプロセス(濡れた木材ブロックに絵や字を刻み付けて、その上に細かい粉末で覆った濡れ紙を載せてこする)を組み合わせたもの。

また、タイプライターは、ピアノ演奏と「書くこと」を融合させたものでした。

ちなみに上記ポイントの2番目のスピード違反防止のアイデアは、その問題と「物体の動きを遅くする方法とその理由」を結び付けて生まれた次第。

こうした人の「思わずやってしまう習性」を活かしたものとしては、階段を活用させるために作られた「ピアの階段」が有名ですね。



これなどは動画内にもあるように、「改造前より階段を使う人が66%増えた」そうですから、見事目的を達成しています。


◆また「見方を変えれば、見え方が変わる」という本書の第7章から抜き出したのが、上記ポイントの3番目の「双眼鏡を逆に使う」というアイデア。

草むしりや皿洗いが「双眼鏡を逆に使う」ことでラクになるとは、パッと考えてもそう思えないのですが、そういう固定観念が新たなアイデアを生む妨げになっているんでしょうね。

同じく「見方を変える」というアプローチとして挙げられていたのが、コピー機普及のエピソードです。

当初、企業側の言い分は「カーボン紙が安価で豊富に入手できるから、高価なコピー機を購入する必要はない」というものでした。

これはコピー機とカーボン紙を見比べて、「カーボン紙のほうがコストが安い」というバイアスにより固定されていたからなのですが、そこにゼロックスは「コピー機レンタル」という手段で「見方を変えさせた」ワケです。


◆一方、上記ポイントの4番目は、「対立するアイデアを融合させる」ことをテーマにした、第8章からのもの。

この「硬くて」、かつ「なくなってしまうもの」という対立する概念を両立させるアイデアは、一見なかなか思い浮かびませんが、「ドライアイス」という解決策はまさに「目からウロコ」。

まぁ、ミステリー辺りでは、証拠隠滅するために、氷やドライアイスが凶器になっていそうですがw

個人的にこの「なくなってしまう」という特性で思い出したのが、マンガの下書きにおなじみフリクションボールが使えるというお話でした。

ドライヤーを使って完全消去!下描きに使えるフリクションボールペン - crepo(クリポ)|クリエイターの為の情報・制作まとめサイト

鉛筆で下書きをして消しゴムで消すやり方だと、ペン入れをして乾くのを待ってからでないとできませんが、フリクションで描いてドライヤーで熱を加えれば、一気に消えてしまう……というのは、もはや常識だったのが、今や漫画家さんたちもデジタルなので、既に古いお話でしたかねw


◆そして「目からウロコ」という意味でご紹介したかったのが、上記ポイントの5番目の古新聞の包装のお話。

そもそも、新聞紙だと作業効率が遅くなる、という現象自体が意外だったのですが、その解決策もユニークです。

さらに「障がい者雇用」というメリットも生まれたのですから、一石二鳥。

以前、この本で任天堂の宮本さんが言われていたという、「アイデアとは複数の問題を一気に解決するもの」という考えを、まさに実践するものだと思いました。

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岩田さん: 岩田聡はこんなことを話していた。 (ほぼ日ブックス)

参考記事:【オススメ】『岩田さん: 岩田聡はこんなことを話していた。』ほぼ日刊イトイ新聞(2019年08月24日)

……実はこの辺までで、まだ本書の半分ちょっとしかカバーできておりません(スイマセン)。

現在の中古価格はちょっと異常だと思いますが、事例を数多く知りたい方なら、セール価格のKindle版でぜひ!


アイデア事例集としても秀逸な1冊!

B00EXODCQ8
クリエイティブ・シンキング入門
INTORODUCTION イントロダクション
PART1.クリエイティブ・シンキングとは?
CHAPTER01 誰もがクリエイティブだった
CHAPTER02 なぜいつも同じアイデアばかりなのか
CHAPTER03 天才のように考えるには?
CHAPTER04 初めてのアイデア
CHAPTER05 なぜ、私はそれを思いつかなかったのか?
CHAPTER06 レオナルド・ダ・ヴィンチの秘密
CHAPTER07 見方を変えれば、見え方が変わる
CHAPTER08 「チックタック」か「タックチック」か
CHAPTER09 考えつかないことを考え出す
CHAPTER10 神が与えるアイデア

PART2.クリエイティブ・シンカーとは?
CHAPTER11 意志はクリエイティブ・シンキングの種子
CHAPTER12 話し方を変えれば考え方も変わる
CHAPTER13 フリをしていると本当にそうなる
Conclusion まとめ 雨の中で踊れ

Appendix 付録 ランダムワード


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【思考術?】『天才の閃きを科学的に起こす 超、思考法――コロンビア大学ビジネススクール最重要講義』ウィリアム・ダガン(2017年11月25日)

【天才の思考法】『超ロジカル思考 ―「ひらめき力」を引き出す発想トレーニング』高野研一(2015年08月25日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

B08L3BTX1P
ペルソナ 脳に潜む闇 (講談社現代新書)

おなじみ、中野先生の「初の自伝」は、中古が値崩れしていますが、送料を足すとKindle版がお得。

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妻は見えるひとでした (扶桑社BOOKS)

レビュー平均が「4.6」という高評価本は、Kindle版が700円弱お得な計算です!


人気blogランキングご声援ありがとうございました!

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