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2021年06月12日

【論点?】『自分の頭で考える日本の論点』出口治明


B08NJYHGFY
自分の頭で考える日本の論点 (幻冬舎新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「プライムデーセール」でも人気の高い1冊。

当ブログではおなじみである出口治明さんが、現時点における日本の諸問題について、検討した作品です。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
玉石混淆の情報があふれ、専門家の間でも意見が分かれる問題ばかりの現代社会。
これらを自分で判断し、悔いのない選択ができるようになるには、どうしたらいいのか。
ベンチャー企業の創業者であり大学学長、そして無類の読書家である著者が、私たちが直面する重要な22の論点を解説しながら、自分はどう判断するかの思考プロセスを開陳。
先の見えない時代を生きるのに役立つ知識が身につき、本物の思考力も鍛えられる、一石二鳥の書。

中古は値下がり気味ですが、送料を考えるとKindle版が300円以上お買い得です!






Question / Clarkston SCAMP


【ポイント】

■1.LGBTQの問題は多数決で決めてはいけない
 日本は世界の先進国ということになっていますが、先進国中の先進国の集まりであるG7でLGBTQの扱いがどうなっているかというと、5つの国で合法的に結婚ができ、1つの国で正式な結婚でなくてもフランスのPACS(連帯市民協約)のようなパートナーシップ(シビルユニオン)が認められています。
 それに対して日本では法的な結婚は認められておらず、パートナーシップも60ほどの自治体でかろうじて結べるだけの状況です(2020年10月末現在)。このような国はG7では日本のみです。(中略)
 LGBTQは基本的人権の問題で、多数決の問題ではありません。
 同様に夫婦別姓問題も、ほとんどの場合は女性が姓を変えているので女性に対する人権侵害だという理解が国連でもなされており、やはり多数決の問題ではありません。ですから、国連は3回にわたって、夫婦別姓を認めるよう日本に勧告を行っているのです。ちなみに法律婚で夫婦同姓を強制しているのはOECD加盟国の中では日本だけです。
 社会問題について考えるときは、数の論理で判断できるのか、それとも数の論理とは関係のない人権に関わる問題なのかを、分けて考える必要があります。


■2.日本はもともと移民がつくった国
 日本人の遺伝子を分析すると、きれいに3つのタイプの混血だとわかります。この3つのグループの中では、南方系の人々が主流を占めていたようです。日本語はどうやらオーストロネシア語族(台湾から東南アジア 島嶼 部、太平洋の島々、マダガスカルに広がる語族)に属するようであり、縄文人のDNAは東南アジアの人々に酷似しているとの見解が出されています。
 中国や韓国は特定の遺伝子を持つグループが5割以上を占めているので、単一民族国家はむしろ中国や韓国のことであって、日本は生物学上は明らかに多民族国家です。
 そのような経緯を踏まえると、もともと移民がつくった日本という国で、どうして移民を否定するのだという話になります。日本人は単一民族だからという明らかに事実に反する理由で移民や難民は日本社会にそぐわないなどという人は、不勉強というほかありません。


■3.いまから何を勉強したらいいか
「将来の仕事がAIに奪われるのなら、いまから何を勉強しておいたらいいですか」と尋ねられることがよくあります。そんなときは、将来のよくわからないことを心配するより、いまの仕事を一所懸命やって実績を上げるとか、英語を勉強してTOEFL iBT(TOEFL Internet-Based Test)で90のスコアを取るなどして実力をつけたほうがいいですよと、アドバイスしています。
 今後、どの仕事がなくなり、どんな新しい仕事が出てくるかは誰にも予測できませんが、「考える力」や「探求する力」「問いを立てる力」がもっと必要になるのは確かです。数字(データ)とファクトを使って、自分の頭でロジックを考え、自分の言葉で説得力のある情報発信を行う力はオールマイティです。そのような力を身につけるほうが、「AIの進化でなくなる仕事」のリストを見て右往左往するよりはるかに役に立ち、人生もずっと楽しくなるはずです。


■4.自由貿易か保護貿易かは時間軸の問題
 市民戦争が4年もの長きにわたり、60万人以上という、アメリカの戦争史上最大の死者を出したのは、日本でよくいわれる奴隷制度存続をめぐる対立だけではなく、その根底に、自由貿易 VS.保護貿易という、明確で妥協が難しい対立図式があったからでした。
 結果は、北部が勝利し、アメリカは保護貿易を行うことになりました。それによってアメリカは工業国としてテイクオフを果たします。ところが、話はそれで終わりません。ひとたび大工業国になったら、今度はアメリカが自由貿易を主張し始めます。日本とも自動車をめぐって1980年代にシリアスな交渉を行っています。そして、いまは中国と貿易戦争を行っています。
 つまり、自由貿易か保護貿易かは、必ずしも主義主張だけの問題ではなく、その国の発展段階に応じた時間軸の問題だということが見えてきます。ある産業を育成しようとする黎明期には保護貿易を訴え、その産業が成熟して競争力を持つようになったら自由貿易を主張するというのが、アメリカに限らず世界の歴史に共通して見られる現象です。


■5.「投資か貯蓄か」とは違う視点で考える
 つまり私たちは、将来や老後について抱いている現在の漠然とした不安を解消したいという心理で貯蓄を行っているわけです。
 そうであれば、このテーマは、「投資か貯蓄か」とは違う視点で捉えることができます。すなわち、「将来や老後に対する不安を少しでも減らすにはどうすればいいのか」と、問いを立て直せばいいのです。
 その問いであれば、ドルコスト平均法よりもっと簡単で効果的な方法があります。「働くこと」です。
 働けば何がしかの収入が得られるので、確実にお金を殖やせます。働いていれば体力の低下も防止できます。
 毎日ウォーキングやジョギングをして健康に留意しようと思っても、雨が降ったら「今日はやめておこう」となりがちです。しかし、仕事であれば「今日は雨が降っているから行きません」ではすまされないので、我慢して出かけるしかありません。それが体力維持に役立ちます。健康寿命が延びます。


【感想】

◆出口さんらしさが炸裂した作品でした。

まず内容的には、下記目次にあるものを含めて、全部で22個の論点それぞれについて、まずは「基礎知識」と題した前提部分が展開され、その後に「自分の頭で考える」という本編が続く仕様になっています。

ちなみに22個の論点は、そのすべてがアマゾンの本書の詳細な内容紹介部分に掲載されていますから、気になる方はそちらをご確認ください。

……正直、ここで取り上げることで、多少なりとも炎上しかねないテーマもありますが、そちらは謹んで自重しております(小心者)。

また、初っ端が新型コロナのお話だったのですが、これについては、出版当時と今、さらには最終的にどうなるかで、また評価も変わってくるのかもしれません(ゆえに今回は避けました)。


◆さて、まず上記ポイントの1番目から見ていくと、論点のタイトルは「日本社会のLGBTQへの対応は十分か」というもの。

これについては、ここでも抜き出しているように「不十分」ということになります。

ただ、「多数決で決めてはいけない」という指摘は、今まで私は意識したことがありませんでした。

これはすなわち、現在の民主主義のシステムで、そのまま白黒を付けるのが望ましくない、ということ。

ちなみに、出口さんお得意の「タテ」の視点(過去の歴史)から見ていくと、室町時代の足利義満をはじめとして、日本はそもそも同性愛については寛容だったのだとか。

むしろ厳しくなったのは、家父長制の国民国家を作ろうとした明治以降のことだそうですから、「日本古来の文化」を理由に、LOBTQを否定するのは誤っていることになります。


◆また上記ポイントの2番目は、「日本は移民・難民をもっと受け入れるか」という論点から。

こちらも「日本は単一民族国家だから」と受け入れを否定する考えをぶった斬っています。

それを受けて出口さんが提案しているのが、留学生の受け入れ。

出口さんが学長を務めるAPU(立命館アジア太平洋大学)は、学生の半分近くが外国人の正規留学生だそうで、まさにそれを実践なさっています。

ただし、その留学生がそのまま日本に残りたいと考えても、たとえば株式会社を設立するのに、日本人なら1円でできるところ、外国人の場合は500万円必要なのだそう。

これは私も知らなかったのですが、日本の永住者でないと、「事業規模要件としての資本金500万円」が求められるとのことです。

……関連情報を検索したところ、片っ端から「外国人向け起業サポート」のようなサイトがヒットしてしまったので、詳細は割愛しますが。


◆さらに上記ポイントの3番目は、ちょっと分かりにくかったかもしれませんが、「人間の仕事はAIに奪われるのか」という論点からのもの。

この件に関しては、出口さんご自身が「楽観論者なので、AIに仕事を奪われて人間のすることがなくなるという悲観論には与しません」と言われており、その前提でのアドバイスでした。

実際、AIは囲碁や将棋のような「論理の積み重ね」なものには強い反面、ファジーなものにはてんで弱い(服が変わると人を識別できない等)ので、当分は大丈夫らしいです。

また、上記ポイントの4番目は「自由貿易はよくないのか」という論点からでしたが、ここで述べられているように、「時間軸の問題」だとは知りませんでした。

ちなみにこの論点の後半部分では、日本で保護が訴えられている「農業」について触れられています。

出口さんいわく、企業にやらせればよいとのこと。
 企業が事業主体になれば、高齢化や後継者難は関係なくなります。農地が全国のどこにあっても、また農業従事者がそこに住んでいなくても問題はありません。一経営単位あたりの農地面積が大きくなれば、大型機械を投入できて生産性も上がります。
クリアしなければならない問題は多そうですが、検討する価値はあると思います。


◆そして最後のポイントは「投資はしたほうがいいか、貯蓄でいいか」という論点から。

ここでもまた「どちらがいいか」という二元論を超越して、「働く」というある意味「斜め上」の提案がなされています。

なんでも医師の言(日本老年学会と日本老年医学会による2017年1月の提言)によると、現在の75歳はかつての65歳より元気なのだとか。

私も会社勤めではありませんから、動けなくなるまで働くつもりですが、今後人口減にともない、必要な労働人口が不足することが予想されますから、定年の延長等、働く期間が長くなるのは、自然な流れだと思います。

なお本書は、その巻末に「付録」として「自分の頭で考えるための10のヒント」なるTIPSも掲載。

ここだけでぶっちゃけ記事が1本書けるくらいの充実ぶりですから、ぜひご覧ください。


思考停止から免れるために読むべし!

B08NJYHGFY
自分の頭で考える日本の論点 (幻冬舎新書)
論点1 日本の新型コロナウイルス対応は適切だったか
論点2 新型コロナ禍でグローバリズムは衰退するのか
論点3 日本人は働き方を変えるべきか
論点4 気候危機(地球温暖化)は本当に進んでいるのか
論点5 憲法9条は改正すべきか
論点6 安楽死を認めるべきか 他全22題


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【日本の実態】『日本の構造 50の統計データで読む国のかたち』橘木俊詔(2021年03月18日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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イスラム教を知りたい方にうってつけのこの作品は、Kindle版が500円以上お得。

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【編集後記2】

◆一昨日の3社分の「プライムデーセール」の記事で人気があったのは、この辺の作品でした(順不同)。

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「自分」を殺すな、武器にしろ

参考記事:【強み?】『「自分」を殺すな、武器にしろ』瀬戸和信(2020年12月18日)

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あなたはあなたが使っている言葉でできている

参考記事:【自己啓発】『あなたはあなたが使っている言葉でできている Unfu*k Yourself』ゲイリー・ジョン・ビショップ(2018年11月15日)

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僕が大切にしてきた仕事の超基本50

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クリエイティブ思考の邪魔リスト

よろしければ、ご参考まで!


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Posted by smoothfoxxx at 10:00
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