2021年05月27日
【自己啓発】『人間の器』丹羽宇一郎
人間の器 (幻冬舎新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、昨日のセール終了前日ランキングの記事で、「幻冬舎分第2位」となった丹羽宇一郎さんの自己啓発書。丹羽さんの作品は、ほぼほぼ10年ぶりくらいに拝読しましたが、なかなか骨太内容だと思いました。
アマゾンの内容紹介から。
「器が大きい人」というと、どんな人をイメージするだろうか。著者は「自分に何の利益がなくとも、他人のために行動できる人」だという。私欲を封印し、他人のために何かを成すのは、そう簡単ではない。器を大きくしようと無理をすると、かえって器は小さくなってしまう。ならば、どうすればいいのか? 「自分にしかできないことを、やる」「何が起きても〈それがベスト〉と考える」「ときに積極的に諦める」等々、本当の意味で器を大きくするための心のありようや生き方について詳述。
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Niwa / karaage831
【ポイント】
■1.自分を捨てたとき、人間の器は大きくなる人間の器が広がる瞬間があるとすれば、それは自分を捨てるときではないかと思います。もちろん、命まで捨ててしまうわけではありませんが、それくらいの覚悟を持って何事かにあたるという意味での「捨てる」です。
私が人生において自分を捨てるという本気の覚悟をしたのは、伊藤忠商事の社長に就任した際です。
当時、私は自分が社長になるとは思っていなかったし、またなりたいとも思っていませんでした。
ところが、そのときの社長から、存亡の危機にあった会社を君が先頭に立って立て直してほしいと 白羽の矢が立ったのです。(中略)
最終的な決断ができたのは、自分を捨てられたからだと思います。
もし、どこかに私情や欲が絡んでいれば、私は別の途、周囲の多くの意見に従って少しずつ不良資産を処理するという平穏なやり方をとっていたと思います。
しかし、この選択をしていたら、おそらく利益はいつまでも不良資産に吸い取られ、給料は増やせず、新規事業への投資もできず、株主への配当もできなかったはずです。そして、会社は縮小を余儀なくされ、もっとも貴重な多くの社員まで手放さざるをえなかったでしょう。
■2.いかに自分を律するか
自分に勝てる人と勝てない人の分かれ目はどこか?
それは、ふだんから自分を律しているかどうかの差ではないでしょうか。人間には動物の血が色濃く流れています。理性でそれを律しなければ、人は欲望の赴くまま、自分勝手で奔放な振る舞いをし続けることになる。
さまざまな欲に対して「〜しない」「ほどほどにする」という姿勢を持つことが、自分を律することにつながります。己の中にある荒ぶる動物の血を手なずけられる人ほど、自分に勝つ力を備えています。
ふだんから自分をいかに律するか。上手な律し方を身につけていれば、それは仕事や人生の危機において必ずや役に立つはずです。
■3.仕事で「悟る」などありえない
1しかわかっていない人から見れば、10わかっている人は途方もない存在に感じられて、あたかもすべてを悟っているように思えるかもしれない。でも、10わかっている人のさらに上には、20や30わかっている人だっていたりするわけです。
人はどこまでいっても、「わかる」部分が増えていくだけです。それが成長ということです。
人よりも「わかる」ものが圧倒的に多いから自分は悟った、と思うようなことがあれば、そこで成長がストップしてしまいます。
日々、ベストを尽くす。できることを精一杯やる。生きている限り、そうした努力を続ければ、成長が止まることはありません。
1つの山に登ったら、それで終わりではありません。そこから、また目の前にそびえているさらに高い山に登る。登るべき山は、死ぬまで際限なくあるのです。
■4.「何もしない」ときの質を上げる
人は起きているとき、絶えず何かを「する」状態にあります。こういうことをしよう、ああいうことをしようと常に目的を持って動いている。寝ることは「する」ことを一切止め、自分を何も「しない」状態に置くことです。
少し前からビジネスマンの間で 流行っているマインドフルネス(瞑想)なんかも、あえて「する」ことを一時中止し、「しない」状態をつくることで、深い休息を得たり能力を活性化させようとするものです。(中略)
「しない」ことは、「する」ことのための充電方法であり、「する」ことを生かすための条件です。ですから、「しない」ことの質を上げることは、「する」ことの質を上げることにつながるはずです。だからこそ、いい睡眠や休息が求められるのでしょう。
■5.「いいね」を求める時間を他のことに費やす
ある社会学者が、今の日本人には他人の目線を気にして「いい人」として振る舞う「いい人」願望を持つ人が増えているといっていましたが、実際そうなのだと思います。
ですから「いい人」と思われたい人の「いい人」とは、自ら善を求めてではなく、傷つきたくない自己保身の欲求から成り立っている。
もっと突き詰めれば、「いい人」願望のさらに奥にあるのは虚栄心です。人から格好よく思われたい、自分を実力以上に見てもらいたい。こうした虚栄心は少なからず誰にでもあるものですが、「いい人」と思われたい人にも、根底には虚栄心があるのです。
「いいね!」がつかないと落ち込んだり不安になるという人は、一度よく自分の内面について考えてみるといいと思います。「いいね!」を求める時間を他のことに費やしたほうが、自分の器を大きくすることに間違いなくつながるからです。
【感想】
◆非常にまっとうな内容の自己啓発書系働き方本でした。なお、著者の丹羽宇一郎さんの経歴については、ご存知の方も多いと思うのですが、2010年に中国の特命全権大使になられています。
丹羽宇一郎
下記の関連記事としてレビューした2冊の著作については、いずれも中国大使になられる前のモノ。
それ以降も本を出されていたのですが、どうしてもその中国絡みの発言(上記Wikipediaご参照のこと)もあってか、アマゾンレビューが荒れたりしていました。
一方本書は、登場するエピソードもその前の伊藤忠時代のものがほとんど(中国関連は、アリババの本社に日本の財界人と見学に行った話くらい)ですから、ご安心ください。
◆たとえば上記ポイントの1番目も、第1章にあった伊藤忠時代のお話。
他の著作でも言われているように、丹羽さんご自身は、伊藤忠が「存亡の危機」の際に、立て直しを請われて就任してらっしゃいます。
その際丹羽さんがふるった「大ナタ」とは、バブル時代の後遺症である不良債権3950億円を一気に処理するというものでした。
そしてそれは、上記にもあるように「自分を捨てる」ことができたからこその決断だったということ。
なお、こうした覚悟を持てるようになるためには、「仕事や組織に対するふだんからの愛情が要る」と丹羽さんは言われています。
たとえば、常日頃から他人の問題を自分ごととしてとらえ、人のため、社会のためという意識を持って行動する。そうしたことが、ここぞというときに自分を捨てる覚悟をつくるのだと思います。ここも心得ておいていただきたく。
◆続く第2章は「仕事」がテーマとあって、ハイライトを引きまくりました。
たとえば上記ポイントの2番目の「自分を律する」というのは、いかにも丹羽さんらしいストイックな教えだと思います。
……ただし他の章にあったのですが、自分の上司である専務が会食中に社長におべんちゃらばかり言っているのに腹を立てて、自分も役員とはいえ「貴様」呼ばわりで非難したというエピソードを読んで「自分は全然律してないじゃん!」と思ったのは、ここだけのヒミツです(言いまくり)。
同じく上記ポイントの3番目も第2章からで、知人から「丹羽さんは大ベテランですから、仕事に対して一種の悟りのようなものを持たれているんじゃないですか?」 と言われたことを受けてのもの。
ここにある
人はどこまでいっても、「わかる」部分が増えていくだけです。というクダリは、さすが大企業のトップに立たれた方だな、と感じ入りました。
なお、この章には他にも、「最善を尽くすために『力を抜く』」「目標は低めに設定する」「美しさと結果は比例する」といったTIPSがありますので、ぜひあわせてご確認ください。
◆一方第3章は「老年」を主題に据えており、若い方にはまだピンと来ないと思います。
確かに丹羽さんご自身は現在82歳ということで、まさに老年真っ只中。
「余命宣告」(されたわけではありません)や「終活」について、考えを述べられています。
ただ、上記ポイントの4番目に挙げた「『何もしない』ときの質を上げる」というTIPSは、若い方にも意識してもらいたいところ。
「いい睡眠や休息」とは、このブログをやっている限りおそらく無縁の私ですが、本業が多忙な5月が終わったら、有休をとって1日くらいゆっくり休みたいと思います(フラグみたいですがw)。
◆なお上記ポイントの5番目の「虚栄心」のお話は、第4章の「自分の『善なる部分』を生かす」から抜き出しました。
ここで言っている「いいね」とは、もちろんTwitterやFacebook等のSNSにおけるものです。
確かに過剰に「いいね」を求めるあまり、自分を偽ったり、話を盛ったり、他人の投稿をパクったりする、というのは結構頻繁に起こりうること。
他人のツイートをパクって、たくさんの「いいね」をもらったとしても、それにどんな価値があるのかと、老年に片足を突っ込んでいる私は思うのですが、今の若い人は違うみたいです。
認められるためならパクツイも--10代の歪んだ自己顕示欲とは - CNET Japan
もっとも私も、ブログのアクセス数やブクマ数(最近はほとんど付かないので気にしようがないのですが)を気にしたりもするので、他人のことは言えませんね(大汗)。
人生の先輩の諫言に耳を傾けるべし!
人間の器 (幻冬舎新書)
第1章 「人間力」を高める
第2章 「人間の器」は仕事で変わる
第3章 老年をいかに生きるか
第4章 自分の「善なる部分」を生かす
【関連記事】
【仕事論】「若者のための仕事論」丹羽宇一郎(2010年05月14日)【仕事術】「人は仕事で磨かれる」丹羽宇一郎(2008年07月25日)
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【働き方】『未来から選ばれる働き方』神田昌典,若山陽一(2016年04月21日)
【編集後記】
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