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2021年04月26日

【バイアス?】『アンコンシャス・バイアス―無意識の偏見― とは何か』パク・スックチャ


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アンコンシャス・バイアス―無意識の偏見― とは何か


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事の中でも、個人的に読んでみたかった1冊。

過去何冊も「バイアス」をテーマにした作品を取り上げてきましたが、本書はその中でも「無意識下のバイアス」をテーマにしています。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
「オーケストラには男性演奏者が多い」「女性管理職が増えていかない」——これにはアンコンシャス・バイアスが影響していた!
アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)とは、自分自身が気づかずにもつ偏った見方や考え方のこと。グーグルが社員教育に導入したことから広く知られるようになったが、この影響は組織に限ったことではない。個人の「キャリア」「収入」「成果」「人間関係」にまで影響してしまうのだ。本書では、数々の事例と調査結果とともに、バイアス(偏見)の真実、生じる理由、その影響と対策までを徹底解説する。個人が「本来もっている能力」を発揮したい/させたい人、必読。

なお、オンデマンドのせいかページ数の割に単行本は高い一方で、Kindle版は「46%OFF」の「891円」という激安設定ゆえ、800円弱お得な計算です!







【ポイント】

■1.オーケストラのブラインド・オーディションで明らかになった「無意識の偏見」
 スクリーンを取り入れた前後で男女の合格率が大きく変化したことから、「男性を有利に」「女性を不利に」するという無意識の偏見の影響が明らかになりました。審査員は自分の意識では楽器の音色のみで応募者の選考をしていたと思っていたのですが、実は演奏以外の要素が、無意識的に判断を左右し、選考に影響を及ぼしていたのです。
 オーケストラの審査員たちは、公平に演奏だけで評価していると信じていました。ところが、男性の演奏の方が優れている、と気づかぬうちに身につけた思い込み(無意識の偏見)が、彼らの判断に影響を与えていたのです。
 スクリーンによってアンコンシャス・バイアスの影響を排除し、審査の公平性を確保できることがわかり、ブラインド・オーディションを採用するオーケストラはどんどん増えていきました。


■2.Googleでも改善されたアンコンシャス・バイアス
 グーグル検索の際、グーグルロゴがアレンジされていることがありますね。グーグル・ドゥードゥルといって、祝日や記念日などにその日にあわせたデザインに変更されるロゴのことで、さまざまなジャンルの偉人や著名人が登場することがあります。
 2013年に、このグーグル・ドゥードゥルに登場する著名人について調査すると、2010年〜2013年にグーグル・ドゥードゥルに登場した男女比率は、男性が82.5%、女性が17.5%で、明らかに女性が少なかったのです。
 もちろんグーグルでは、グーグル・ドゥードゥルに女性を採用したくない理由などありません。無意識のうちに、偉人=男性などと思い込んでいたのでしょう。
 グーグルはこれを自社のアンコンシャス・バイアスの一つと認識し、すぐさま改善に着手します。それにより、2014年にはグーグル・ドゥードゥルに登場する男女比率はちょうど50%になりました。


■3.国によって異なるバイアス
 日本では、性別、国籍によるバイアスが強くもたれています。
 現代では女性活躍社会を推進してはいますが、「男性は仕事」「女性は家庭」といった性別での役割の決めつけや思い込みが、社会全体の根底に流れています。
 また、国籍のバイアスも強く、「在日」といった言葉でバイアスをもっている場面も多く見受けられます。
 アンコンシャス・バイアスは往々にして立場の強い「多数派・主流派を優遇」し、その結果、立場の弱い「少数派・非主流派が不利」に扱われます。
 誰が多数派、主流派のマジョリティになるかは、国や所属する集団、状況等によって異なります。一般的に米国の組織では、「白人男性」がマジョリティ。日本では「日本人男性」がマジョリティですね。
 米国では、英国民をはじめとした アングロサクソン系が上位と捉えられ、イタリア人やポーランド人、ギリシャ人等は下位に見られる傾向があります。
 日本人にはそのような白人の序列バイアスはないので、どの白人も同じ白人として捉えます。しかしながら、白人の属性内では、序列が存在し、それが明確なバイアスとなって社会生活に影を落としているのです。


■4.苦手意識で能力が出せない「ステレオタイプの脅威」
 黒人心理学者であるクロード・スティール教授は、ステレオタイプの脅威に関する研究で著名です。スティール教授が行った実験では、数学のテストにおいて同等の学力である男子学生と女子学生に「女子は数学が苦手だ」と事前に意識させてテストを受けさせたところ、女子学生の得点が低くなった、という結果になりました。
 また、黒人の学生に、「黒人」と意識させると、やはりテストの点数が低かったという結果もあります。
「女子は数学が苦手」「黒人は白人よりも学力が低い」というステレオタイプを意識し、自身の属性に偏見をもったことで、能力が発揮できなくなるのです。スティール教授はその他にも数多くの実験研究を行い、ステレオタイプの脅威があることを証明しました。
 どのケースも、自分の属性を改めて認識させただけで、本来の能力が発揮できず、能力が低下しました。固定観念(思い込み)が、無意識に個人の能力の発揮を阻害しているのです。


■5.最小限に止めるには(抜粋)
●自分が偏見をもっていると認める
 まず、自分がバイアスをもっていると認めます。
 私たちは、自分は偏見をもっておらず、人を公平に評価して平等に対応している、と思いがちです。しかし、第3章で解説したように、人間である限り、必ず生じてしまうことなのです。
●「思い込み」を疑う
 次に無意識で判断していたことを意識的に考えるようにしましょう。他人を判断するとき、他人や自分に対して何か思うとき、そこにバイアスはないか、思い込みではないのか、自問するようにしてください。
●得意なこと、やりたいことへ
「自分には無理」と思ったとき、自身のことを特定の属性や特質によって判断していないか、よく考えてみてください。「若いから」「学歴が低いから」「韓国人だから」「英語ができないから」「太っているから」などと思っているとしたら、それを取り除いて、「個」の自分の気持ちや能力で判断しましょう。


【感想】

◆昨今、世間でも問題になりつつある「無意識のバイアス」について、理解が深まる作品でした。

と言っても、登場する事例は、過去何度か目にしたものが多かったかも。

たとえば第1章から抜き出した、上記ポイントの1番目の「ブラインド・オーディション」のお話は、どこかで聞いたことがある方も多いと思います。

……「ブログ内検索」をかけてもヒットしなかったので、当ブログではご紹介していないようなのですが。

これが、昨年話題になった医大の合格者の操作のように、意図的にされたものならまだしも、問題なのは「無意識」のうちに男性奏者を優遇して採用していたということ。

それが上記のようにブラインド・オーディションを採用するようになってからオーケストラの女性比率は高まっていき、今日ではおよそ40%の楽団員が女性になったのだそうです。


◆逆に初めて知った事例が、上記ポイントの2番目の「グーグル・ドゥードゥル」の件。

昔は男性が多かった、という記憶はあまりないのですが(それこそアンコンシャス・バイアス?)、約8:2だったら、かなりの差です。

てなことを書いていたら、たまたま今日のグーグル・ドゥードゥルが女性だったので、上記サムネイルに使用してみました。

お恥ずかしながら知らなかったのですが、この方とのこと。

アン・マクラーレン - Wikipedia

一応上記をクリックしてもらうと、こちらのYouTubeに飛ぶようになっております(英語ですが)。




◆一方、上記ポイントの3番目の国や民族によるバイアスは、本書の第2章からのもの。

私たちから見たら「同じ白人」でも、米国ではアングロサクソン系が上位になるんですね。

……そのアングロサクソン系でも、あまり裕福でない層が「米国第一主義」を支持したのではないか、と。

また、同じ白人の間でも、やはり男性と女性では男性が上位なのですが、では「白人女性」と「アジア人男性」とでは、どちらが上か?

本書では「IT企業・X社(ホントに社名が出てきません)」が公表している社員割合を紹介しているのですが、それによると、「白人女性」の方が、「アジア人男性」よりシニアリーダーになる割合が高かったのだそうです。

逆に「アジア人女性」は、2つのマイノリティ属性を持つ「ダブルマイノリティ」ということで、最もネガティブな影響を受けているのだとか。


◆また、第5章から抜き出したのが、上記ポイントの4番目の「ステレオタイプの脅威」です。

今までのバイアスが、他人に対するものであったのに対して、こちらは自分自身に対するもの。

ただの「属性」に過ぎないにもかかわらず、それを認識するだけで、「本来の能力が発揮できず、能力が低下する」というのは、かなりの影響力と言えるかと。

単なる思い込みに過ぎないとはいえ、こういった自分に対するバイアスは、自分自身で払拭していきたいものです。

さらに続く第6章では、個人と組織に分けて、アンコンシャス・バイアスを最小限に止める方法を指南。

上記ポイントの5番目は、このうち個人の方から抜き出してみました。

ボリュームの関係で半分ほどしかご紹介できませんでしたので、できれば本書にて残りをご確認を。


「無意識の偏見」から逃れるために読むべし!

4295307203
アンコンシャス・バイアス―無意識の偏見― とは何か
第1章 どのように問題意識は高まったか
第2章 バイアスはあらゆるところに
第3章 どうして生じるのか
第4章 無意識であることの危険性
第5章 もたらされる悪影響
第6章 最小限に止めるには


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【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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