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2021年03月04日

【マーケティング】『「顧客消滅」時代のマーケティング ファンから始まる「売れるしくみ」の作り方』小阪裕司


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「顧客消滅」時代のマーケティング ファンから始まる「売れるしくみ」の作り方 (PHPビジネス新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事でも人気の高かったマーケティング本。

マーケターとして広く知られる小阪裕司さんが、久々にビジネス書を書かれた(8年ぶりだそう)ということで、さっそく読んでみました。

アマゾンの内容紹介から。
コロナ禍により、街から人が消えた。だが、そんな中でも、売上を倍増させた店や会社があった……。絶望的な時代を乗り切る、コロナ時代の新・マーケティングバイブルが登場! コロナショックの影響を最も受けたのは、リアルな顧客を相手にする小売・サービス業だ。だが、1,500社を超える企業が参加する会を主宰するマーケティングのカリスマ・小阪裕司氏のもとには、「コロナ禍でも売上が落ちなかった」「むしろ売上が伸びた」という声が多く届いているという。「顧客消滅」という非常時にこそ、「一見よりもファン作り」「フローからストックへ」といった小阪流マーケティングの真価が発揮された形だ。「営業自粛でも前年比150%を達成したレストラン」「深夜営業NGでも売上を維持したバー」「取引先を次々とファンにしたBtoB企業」など豊富な事例をもとに、マーケティングのニューノーマルを説く。

中古が定価を大きく上回っていますから、お得なKindle版がオススメです!






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【ポイント】

■1.人々が買わなくなったのは「中途半端なもの」
「心の豊かさ」の消費とは、人がより良く生きるためのエネルギーチャージだ。
 たとえば「ハーレーダビッドソン」という大型バイク。コロナ禍で「不要不急」という言葉がやたら使われているが、ハーレーもまさに不要不急のものだろう。これがなければ生活に困るわけではなく、移動するだけならスクーターでもいい。では、ハーレーライダーたちはなぜハーレーに乗るのか。私の友人にも数名いるので聞くと、「元気になるから」。(中略)
 コロナ禍でもいわゆる「心が豊かになる商品」の売上はほとんど落ちなかった。あるいは、落ちてもすぐに回復した。一方、生活必需品はちょっとしたコロナ需要さえ起きた(もっともその多くは需要の前倒しに過ぎなかったが)。
 問題は、そのどちらにも属さないものだ。つまり、「心が豊かになるわけではないが、生活必需品でもないもの」。今回、売上が戻らなかったものの多くは、このカテゴリーに属するものであった可能性が高い。


■2.コロナでフローとストックの差が歴然と
 一気に売上が回復してきた店は、図らずも顧客がストックされていた店。そうでない店はフロー型になっていた店だった。ここで「図らずも」という言葉を用いたのは、同社は顧客を大事にしてきたとはいえ、「顧客をストックする」ことを会社として強く意識し、計画的に何かを行ってきたわけではなかったからだ。
 では、「図らずも」ストックされていたのは誰だったのか。大まかに言えば、それは地元住民。そして当地に別荘などを持つ方々。フロー型の店の主なお客さんは、伊豆に行ったときは立ち寄るという程度の観光客だ。
 彼はフローとストックのあまりの差に愕然としたというが、それを物語る数字がある。
 6月に入ると、新たなフェアも功を奏して売上は伸びた。しかし伸びたのはすべて、同社が「ストック型になっている」とした店ばかり。ストック型5店舗の売上は、トータルで前年比154%。しかしフロー型5店舗は前年比46%。言うまでもなく、同じフェア、同じ商品、同じサービスである。


■3.ニューズレターとセールスレターを区別する
 自分が顧客の立場だったらどうかと考えてみてほしい。数年前に一度商品を買っただけの会社から、ある日突然DMが来て、それで何かを買おうと思うだろうか。
 順序が逆なのだ。まず、温める。「仲良くなる」と言い換えてもいいだろう。たとえば有益な情報を定期的に提供したり、無料イベントに招待したりする。そうして仲良くなったあとに、「実はこんな商品があるのですが」とお勧めする。それによってやっと、ごく一部の人が購買行動を起こしてくれるのである。
 私が主宰する「ワクワク系マーケティング実践会」では、顧客とのコミュニケーションのためのDMを「ニューズレター」と呼び、何かを販売するための「セールスレター」と区別している。ニューズレターではとにかく、コミュニケーションを重視する。商品の紹介をしてもいいが、あくまで「お役立ち情報」くらいに留めておくのがポイントだ。


■4.価値のパッケージとは?
 岐阜県にある割烹料理店「千杓」では、コロナで通常営業ができない中、店自慢の鰻料理を真空パックにしてテイクアウトと通販で売っていた。当初は真空パックにたれなど一般的なものだけを同封しており、お客さんには十分満足いただいていたのだが、女将の長縄利佳子氏らは何か足りないと感じていた。
 この「足りない」感覚は、「自分たちの提供する価値は何か」の問いに通ずる。そこを改めて考えると、自店は料理を提供するだけでなく「心の豊かさ」を売る店。テイクアウトでも顧客の「心豊かな食卓」を提供する必要がある。それこそが、自分たちが提供すべき価値だと考えた。では、どうしたらその価値を具現化できるか。
 そこで行ったことは、「笹」の同封だ。笹とは、普段お店で焼き物を出すときに盛り付けにあしらわれている熊笹。それにさらに店主手書きのメッセージなどを同封するようにしたところ、お客さんに大絶賛された。こういう取り組みを私たちは「価値のパッケージ化」と呼んでいる。


■5.パターンをとらえてモデル化する
 ある事象を見て、そこから普遍的なパターンを見出す能力、そしてそれを「モデル化」する能力である。この能力があれば、どんな経験も学びに変えることができる。
 私が講演会をした際、それを聞いた人にしばしば言われるのが、「今日の話はとても面白かった。しかし、業種が違うからうちではできない」といった話だ。これがまさに「モデル化」ができていないということだ。どんな事例であっても、その奥にある普遍的な要素を抽出すれば、自社に応用できることが必ずあるはずなのである。
 なぜかと言えば、結局、ビジネスで起きていることのほとんどは、「人の行動」によって生まれたものだからだ。だから大企業だろうと中小企業だろうと、たった数名の店だろうと、同じことが起こり得る。だからこそ、あらゆる事例が学びになる。


【感想】

◆かねてから「ワクワク系マーケティング」を標榜する、小阪さんらしい作品でした。

まず序章にて、昨今のコロナ禍によって街からお客さんが消えたことを指摘。

ただし、そんな中でも売上を落とさなかったり、むしろ伸ばしている企業があることに触れています。

それを受けた第1章では、「勝ち組」と「負け組」の違いを検証。

上記ポイントの1番目にあるように、「中途半端なもの」が苦戦している、という分析はなるほどな、と納得しました。


◆さらに興味深かったのが、同じ企業でも昨年4月の緊急事態宣言解除後に、売上が回復した店舗とそうではない店舗があったという、上記ポイントの2番目のお話です。

これは伊豆にある和菓子店10店舗を展開する企業なのですが、各店、同じ商品、同じサービスであるとのこと。

異なるのが、上記で触れられているように「ストック型かフロー型か」という違いでした。

一般的に立地が良いと、フロー型でも商売になりますが、昨今のコロナ禍のように人の流れが止まってしまうと、あっという間に危機に陥ってしまいます。

ただしだからといって、「立地が悪い方が良い」というわけではなく、フロー型で商売できる人の流れがあったとしても、日頃からストック型を目指せば良いわけで。

ちなみに本書では、ストック型ならではの施策が色々紹介されていますが、そのベースとなるのが「顧客リスト」の存在でした。


◆ではその顧客リストがあれば、それだけでいいのか、というと決してそうではありません。

その点を指摘しているのが、本書の第2章から抜き出した上記ポイントの3番目。

多くの企業が顧客リスト集めにお金をかけても、小阪さんがいうところの「温める」ことをしていません。

具体的な「温め方」も、本書では色々と紹介されているのですが、興味深かったのが、愛知県にある「炭棟梁」というハンバーグレストラン。

人口8万人の街で、1万人の会員を集めたというこのお店では、「炭棟梁大使」というファンクラブのような制度があり、来店のたびにバッヂがもらえ、12種類をコンプリートするとカードがもらえる特典があるのだそうです。

さらに店内には「炭棟梁大使」のみ使うことが許される器があったり、「炭棟梁検定」なる資格認定制度(要「小論文提出」w)まで立ち上げているのだとか。


◆また、本書の第4章から抜き出したのが、上記ポイントの4番目の「価値のパッケージ」というアプローチです。

単なる通販と「心の豊かさ」を売る商品の違いとは何か?

結局のところそれは、「自分たちの提供する価値は何か」を考えた先にあります。

ですから当たり前ですけど、どこの店でも「笹」を入れればいいわけではなく、小阪さんの会のイタリアンレストランでは、弁当に手書きのメニューを付けるとともに、フィレンツェの風景が描かれた特製ランチョンマット同封して好評だったそう。

さらには、この弁当セットを頼んだお客さんが、再び来店するようになったそうで、「価値のパッケージ化」を通じて、「自分たちの提供する価値」が伝わったということが言えるでしょう。


◆また、上記ポイントの5番目の「パターンをとらえてモデル化する」というTIPSは、本書の第5章の「今日のビジネスに必要な『感性』を鍛えるための4つの視点」の中の1つ。

確かに「ウチは特殊ですから」みたいな「言い訳」は、よく言われがちですよね。

ほかにも
「部分ではなく、システム全体を見る」
「因果全体を見る」
「メタレベルとベタレベルを自由自在に行き来する」
という、いずれも重要な「視点」が挙げられていますから、こちらもぜひ本書にてご確認ください。

いずれにせよ、今現在、売上が落ちている企業・お店であっても、きっと何かしらできることはある、と思わせられた次第です。


コロナ時代の「今」だからこそ読みたい1冊!

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「顧客消滅」時代のマーケティング ファンから始まる「売れるしくみ」の作り方 (PHPビジネス新書)
序─2020年4月、顧客が消えた
【第1章】「顧客消滅」時代のマーケティングとは
【第2章】「ファンダム」をどう作るか─「顧客消滅時代のマーケティング」実践編
【第3章】BtoBビジネスも「ファンダム」がカギを握る
【第4章】感性と価値で創られる市場とは
【第5章】組織を変える、自分を変える
【終 章】「アフターコロナ時代」に必要なもの


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【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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英文法をこわす 感覚による再構築 (NHK出版新書)

ムスコの英語勉強のために、とりあえず私も買った1冊。

中古は値崩れしていますが、送料を考えればKindle版に軍配が上がります。


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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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