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2021年02月28日

【非対称性?】『「無理」の構造 この世の理不尽さを可視化する』細谷功


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「無理」の構造 この世の理不尽さを可視化する


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、当ブログでもおなじみである細谷功さんの思考術本。

昨夜の前日ランキングの記事のうち、今月の「Kindle月替わりセール」の方で1位になっているのを見て、慌てて読んだ次第です。

……すいません、セール記事書いた時点では読む気でいたのですが、すっかり忘れてました。

アマゾンの内容紹介から。
思考系ビジネス書の著者の新境地、哲学書ともいえる『具体と抽象』に続く第二弾です。 理系出身の著者らしく、考え抜かれたシンプルな図と1コマ漫画によって、「世の中」と「頭の中」の構造を解き明かしています。 高校生から大人まで、世代を超えておすすめします。

中古がほとんど値下がりしていないため、「68%OFF」のこのKindle版が1200円以上お得な計算です!






Asymmetry / TMAB2003


【ポイント】

■善と悪の非対称性
 例えば「善と悪」との関係について考えてみましょう。これらは小学生でもすぐに答えられるような「反意語」であり、同等かつ反対の概念のように思えますが、実はこれらの間にもさまざまな非対称性が存在しています。「良いことでニュースに出るのには何年もかかるが悪いことなら一瞬で出てしまう」ということや、「一つの善事で世の中はなかなか変わらないが一つの悪事で世の中は一瞬で変わる」(テロのあとのセキュリティ対策など)、といったことです。
 このように、善と悪は明らかに同等のものではないのですが、その非対称性を普段我々が意識することはありません。


■2.具体レベルは誰にも分かりやすいが、抽象レベルは「見える人にしか見えない」
 一つの例をあげれば、学生時代に歴史や地理など、具体的な事象の「暗記もの」の授業に「ついていけない」人はあまりいなかったと思いますが、数学の授業、とくに単純計算ではなく高校や大学で学習するような抽象度が高い内容には「ついていけない」人が出てきたと思います。これは物理や哲学といった抽象度の高い学問でも同様です。
 またネットの議論などで、メッセージをシンプルにして「○○すべきだ」と言い切っている人に対して細かな例外事項をあげて、「こういう場合もある、こういう人にも会ったことがある」という形で「そうとばかりは言えない」と反論する人……という対立構図が見られます。これもたいていの場合、発信者は具体レベルの詳細については十分承知した上で単純化した抽象レベルでメッセージを発しているわけですが、具体レベルでしか物事を見られない人が反論をしているという構図になっており、そういう人は構図自体に気づいておらず、「あの人は現場をわかっていない」といった発言になるわけです。


■3.組織の上流と下流では必要なことが違う
 上流と下流では、要求される価値観やスキルは「正反対」といってもよいほど違っているのです。例えば、
・「個人の個性」が重要な上流、「組織の規律」が重要な下流
・「個人技」で進める上流、「仕組み化」が重要な下流
・「理想」が重要な上流、「現実」が重要な下流
・「フラットな関係」が重要な上流、「階層関係」が重要な下流……
 このように上流と下流では特性が異なり、必要とされる価値観やスキルも大きく異なるのに、それをごちゃ混ぜにして「どちらが正しい」といった議論が行われています。前提を共有していない議論は、実は議論にすらなっておらず、ここでも「不毛な議論」と「無駄な努力」と「理不尽な思い」に膨大な時間が使われているのは残念なことです。


■4.自分と他人の非対称性
 「自分と他人」の非対称性を示すいくつかの例を見てみましょう。
・他人にいちばん話したいのは愚痴と自慢だが、いちばん聞きたくないのもまさにその2つ
・中途半端に覚えたことを他人にアドバイスしたいが、中途半端に覚えたことを上から目線で人から言われるのは最高に「むかつく」
・自分のことは特別だと思うが、他人のことは一般化して考える
・自分の成功は実力だと思うが、他人の成功は運がよかったと思う。失敗は逆で、他人の失敗は実力だと思うが、自分の失敗は運が悪かったと思う
 このほか、人間「いかに自分がかわいいか」の例はいくらでもあげられるでしょう。問題は、そのことへの自覚がないか、あるいはあったとしても、実態とはかけ離れて超過小評価されている点にあります。「そうは言っても、自分は客観的、理性的な考え方をしている」と錯覚していることです。


■5.「見えてない人」のやっかいさ
「見えていない人」は最強です。「根拠のない自信」を持っており、「自分に見えている世界」が世界の中心であり、すべてそれが「正しい」という信念に揺るぎがありません。新しい概念や理解できない概念を提示されても真っ向から否定し、決して譲ることはありません。したがって、見えていない人にはあまり悩みはありません(たぶん)。
 これに対して「見えている人」は、自分がわかっていることとわかっていないことの区別がつき、理解できないことについては「間違っているのは自分のほうかもしれない」という疑いを常に自分に対して向けています。
 皮肉なことに、見えていない人はいつも「わかった、わかった」と言っていますが、見えている人はいつも「わかったかどうかはわからない」というスタンスです。だから一見、見えていない人のほうがわかっているように見えてしまいます。本当に「見えている」とは限らないのですが。


【感想】

◆本書のサブタイトルにある「理不尽」。

これが何に対するものかというと、たとえば物理的に否定されている「永久機関」に挑戦するかのように、「勝手に思い込んだ幻想」を「理」だと勘違いすることで頻発するようなケースを指しています。
 人間は暗黙のうちに身の回りのものを(実際には非対称であるのに)対称であると勘違いしています。これが本書で取り上げる「根本的な勘違い」であり、無駄な努力の根本的な原因と考えます。
そしてここで言う「非対称性」とは、「時間経過の非対称性」、「『自分と他人』の間の非対称性」、「『部分と全体』との非対称性」、「『見えているもの』と『見えていないもの』との非対称性」といったもの。

これらが下記目次にもあるように、全5部、22の章で解説されているわけです。


◆実際、「非対称性」と言われても、指摘されるまで意識していないものが多々ありました。

たとえば「善と悪」は、字面では対象のようですけど、上記ポイントの1番目にあるように、実質的には「同等」とは言い難いかと。

同じように挙げられたものとして、「変える」と「変えない」は、「変えないのは楽で無難だが、変えるには膨大なエネルギーが必要」ですし、「知っている」と「知らない」でいうなら、「一度知ったら知らない状態には戻れない」でしょう。

要はこうした「錯覚」の積み重ねが、「理不尽さ」の根本にある、というのが、本書の主張です。


◆また、上記ポイントの2番目は、第3章の「『具体と抽象』の非対称性」からのもの。

ここにある「抽象レベル」の発信をしている人は、「具体レベル」の詳細は承知している、というお話は、本書の「前作」的な位置づけにある、この本でも触れられていましたっけ。

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具体と抽象

参考記事:【抽象化?】『具体と抽象』細谷 功(2017年04月03日)

実際、ネットの議論やアマゾンレビュー等で、こういった非対称性はよく見かけますね。

同じように「不毛な議論」の原因となっているのが、第10章から抜き出した上記ポイントの3番目にある「上流と下流」のお話。
 重要なのは「どちらが正しい」ではなく、対象とする議題が上流の問題なのか下流の問題なのかを前提として共有することです。その上での議論ができれば、どれだけの時間が創造的に使われるようになるかは計り知れません。
もっとも、なかなかその「共有」ができないから、皆、苦労しているのですが……。


◆一方、「『自分と他人』の非対称性」について触れているのが、上記ポイントの4番目。

これは第15章からのものなのですが、それこそ私たちは結局「自分を中心」にしてしか、ものごとを考えられません。

「私は違う!」と思っている方でも、こんな「自己矛盾」はないでしょうか?
・「ネットで他人の批判ばかり言っているやつは許せない」というSNSの投稿
・「代案を出さずに反対するのはやめろ!」という「反対への反対」
・「人の言うことは 鵜呑みにするな」というアドバイス
・「かけ声だけじゃなく行動がすべてだ!」というかけ声
つまりこうした「非対称性」に気づき、「自分」という「宇宙の中心」を離れて「メタ認知」することが大事なわけです。


◆とはいえ、もっともやっかいなのが、上記ポイントの5番目にある「『見えている人』と『見えてない人』の非対称性」でしょう。

最近問題となっている、ネット上でのデマの類も、おそらくこれに起因するもの。
 見えていない人の思考回路で代表的なのが、「思い込みの激しさ」です。思い込みの激しい人とは、例えば「被害者意識」の強い人、感情的に怒っている人、「自分の正しさ」を露ほども疑っていない人です。すべて悪いのは他人と環境のせいという「他責」の人も同様です。
ただし、これを読んで納得した方は、第19章の最後にある、この一文もご覧アレ。
 本項を読んで「まったくあの人がそうだよなあ……」と周囲の「他の誰か」のことのみ思い浮かべた人は、自分自身が他の人から見たらまさにその人になっている危険性があります。「見えていない人が生み出す理不尽さ」を作り出しているのは「あのわからずや」ではなく「自分自身」なのです。
まさに自戒を込めて、本書をオススメしたい所存です。


お求めになるなら、セール最終日である今日中にぜひ!

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「無理」の構造 この世の理不尽さを可視化する
第1部 対称性の錯覚
第1章 錯覚の積み重ねと「三つの非対称性」
第2章 「知識」の非対称性、「思考」の非対称性
第3章 「具体と抽象」の非対称性
第4章 「言葉」という幻想
第5章 「人間心理」の非対称性
第6章 1:9の「ねじれの法則」

第2部 時間の不可逆性
第7章 気づきにくい社会や心の不可逆性
第8章 社会・会社の劣化の法則
第9章 具体化・細分化の法則
第10章 上流・下流の法則

第3部 ストックの単調増加性
第11章 「微分と積分」と現実
第12章 のこぎりの法則
第13章 折り曲げの法則とストックのジレンマ
第14章 大企業「病」という幻想

第4部 「自分」と「他人」の非対称性
第15章 宇宙と「人間の心」
第16章 コミュニケーションという幻想
第17章 「公平」という幻想
第18章 「対等」という幻想

第5部 「見えている人」と「見えてない人」の非対称性
第19章 決定的な非対称性
第20章 「全体像」という幻想
第21章 「経験則」という幻想
第22章 「啓蒙」という幻想


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【編集後記】

◆一昨日の「Kindle本キャンペーン」におけるPHP研究所の追加分の記事で人気が高かったのは、この辺の作品でした(順不同)。

B07KWRPBP9
なんで、その価格で売れちゃうの? 行動経済学でわかる「値づけの科学」 (PHP新書)

B07H2SHTXP
マルチ・ポテンシャライト 好きなことを次々と仕事にして、一生食っていく方法

B078H5655S
明治維新で変わらなかった日本の核心 (PHP新書)

B07KWQLBK3
心を磨く 中村天風講演録

宜しければご参考のほどを。


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Posted by smoothfoxxx at 10:00
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