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2021年01月10日

【脳科学?】『ブラックマーケティング 賢い人でも、脳は簡単にだまされる』中野信子,鳥山正博


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ブラックマーケティング 賢い人でも、脳は簡単にだまされる


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「KADOKAWA ビジネス実用書 年末年始フェア」でも個人的に読みたかったマーケティング本。

おなじみ中野信子さんが、マーケティングの専門家である鳥山正博さんとともに、従来のマーケティング手法とは違う、脳科学や行動経済学に基づく、グレーゾーンのマーケティング手法について掘り下げてらっしゃいます。

アマゾンの内容紹介から。
「送料無料」で得をした気になってはいけない。愛情や帰属意識を利用する「オキシトシン商法」とは?ギャンブル依存や悪徳商法にハマらないためのナレッジ。

中古が値崩れしていますが、送料を踏まえるとKindle版の方がお買い得となります!






AKB Cafe Singapore / kalleboo


【ポイント】

■1.霊感商法・悪徳商法が儲けられるわけ
 冷静に考えれば、霊感商法や開運商法で売られる商品やサービスに、たいした価値がないことはすぐに見当がつきます。「怪しさ」は簡単に見抜くことができるはずです。にもかかわらず、悪徳業者は暗躍し、その言葉を信じてお金を巻き上げられる人がいます。
 なぜなら、消費者には「不安になりやすい人」「神秘的なものを信じやすい人」といった個体差があり、その中でもとりわけ不安になりやすい個体をターゲットにすることで、多くの悪徳商法は成り立っているからです。
 なぜそのようなターゲティングが現実に可能なのでしょうか。霊感商法にだまされやすい人が、仮に1000人に1人という極めて低い割合だとしましょう。それでも1万人の中から10人のカモを効率よく見つけ出し、1人のカモから大金をむしり取れば、悪徳業者は大儲けをすることができるのです。1億人いれば、10万人はターゲット市場なのです。
 これは言い換えれば、悪徳業者はだまされない消費者を最初からまったくターゲットにしていないといえます。


■2.ソシャゲを支える「もったいない」と「みっともない」
 ソシャゲには、タダ乗りでは切り抜けられない困難がたくさん設定されています。お金を払ってさまざまなアイテムを手に入れることで、ゲームはどんどんおもしろくなっていくようにプログラムされています。課金によって自分のキャラクターが少しずつ魅力的に進化している途中で、ゲームから手を引いたり、お金を払うことをやめたりすれば、それまでの努力が無駄になってしまう……、と思えば、「もったいない」という心理が働きます。(中略)
 さらに言えば、ソシャゲには不特定多数のユーザーが参加し、ユーザー同士が協力しながら敵を倒すようなシチュエーションが数多くあります。バーチャルな世界ではありますが、ユーザーはある種のコミュニティで行動している感覚に陥りやすい。つまり、ゲーム中は「誰かに見られている」ということを常に意識させられます。そういう状況ですから、魅力に乏しいキャラクターでは「みっともない」という心理も少なからず働くことでしょう。


■3.消費者余剰を収益化したAKB商法
 AKB商法を支えているのは、一部の熱狂的なファンです。 従来のビジネスモデルであれば、たとえば2000円のCDを100万人が買うことで20億円の稼ぎになった。一方、AKB商法が20億円を稼ぐ構図は、100万人という買い手を必要としない。極端な話をすれば、CD購入に20万円使う人が1万人いれば、100万人規模の市場と同等の収益を上げることが可能になるわけです。
 参考までに、AKB商法は経済学的にいうと「消費者余剰を収益化した」と言うことができます。ファンは自分の好きなアーチストの音楽からはものすごい効用(満足)を得ていて、本来はもっともっと支払ってもいいと思う熱烈なファンもいるわけですが、ほぼ定額であるところのCDとコンサート以上の支出をしようとしても手段が無かったのです。
 好きであればあるほど得ている効用は大きいのに、支払っているコストは他の人たちと同額で、その差の価値は熱烈なファンのものという意味で「消費者余剰」という概念で経済学者は捉えています。その部分を売上に繰り入れてしまおうというのがAKB商法なのです。


■4.「五感」を刺激して買い物モードへ誘導する
 たとえば、印象的な香りを嗅がせることで客の購買意欲はアップすることがわかっています。最近では日本でもよく香りマーケティングがなされていますが、アメリカの有名百貨店には、売り場ごとに異なる香りを使って販売実績を向上させた事例があります。これは、水着売り場にココナッツオイルやトロピカルフルーツの香りを漂わせるといった手法でした。
 嗅覚は、人間にとってもっとも原始的な感覚といわれています。その感覚を刺激することで、ショッパーが思考や理性を働かせる前に、先手を打って脳を買い物モードに引き込もうというわけです。
 読者のみなさんの中には、ハンバーガーショップでオーダーをしたときに、店員から「ご一緒にポテトはいかがですか?」と聞かれたことがある人もいるかと思います。そのときに、思わず追加で頼んでしまった経験があるとしたら、その決定を後押ししたのは店内に漂っていた揚げたてのポテトの匂いだったかもしれません。


■5.日本人は意思決定が苦手
 日本人には自ら意思決定するタイプが少ないことを示唆する研究もあります。欧米人に比べて日本人は、COMTというドーパミン分解酵素の活性が高いタイプの人の割合が多いことがわかっています。このタイプの人は脳内で放出されたドーパミンを速やかに分解する働きが強く、「自分で決めた」という快感が生まれにくいのです。そのため、意思決定が「楽しい」と感じにくくなり、他者が決めた方向性やルールに従う傾向が強くなるわけです。
 この遺伝子に着目すると、ヨーロッパでは約60%の人が自分で意思決定を楽しみたいタイプになります。一方、日本人には意思決定を楽しめるタイプが27%しかいません。7割以上の人が、意思決定を「苦痛」に感じているといえます。
 意思決定するタイプが狎犬にくい畆匆颪蓮⇔△鯤屬擦舒媚弖萃蠅鬚靴覆なが狎犬やすい畆匆颪覆里任后こうした社会を標的にしたとき「ウケる」マーケティングは、「まず『××は売れている』というレピュテーションを流布してしまうこと」になるでしょう。


【感想】

◆冒頭でも触れたように、いわゆる普通のマーケティングよりも、行動経済学や脳ネタに近いお話が充実した作品でした。

著者のお1人である鳥山さんは、「STP」等の一般的なマーケティング理論を熟知しつつも、消費者を動かしているのはそれだけではない、と断言。

たとえば、上記ポイントの1番目の「霊感商法・悪徳商法」では、「不安になりやすい」という特徴の層をターゲティングしており、これはむしろ「脳の個体差」に起因するものです。

このお話は、第1章の「焦りをかき立て判断力を奪う商法にご用心」から抜き出したものであり、この章では他にも「タイムセール」や「コンプレックス商法」、「点検商法」といった、「損を避けたい」という「プロスペクト理論」に基づいた商法が登場。

ポイントカードやスタンプカードは、意識したことはなかったのですが、「せっかくのポイント(やスタンプ)を活用しないのは損だ」という「損を避けたい」欲求に働きかけていたんですね。

実はこうした「不安になりやすい」傾向は、脳内ホルモンの1つ、「セロトニン」が少ないと頻繁に起こりうるのだそうです。


◆続く第2章は、「ドーパミン」に関係した報酬系のお話がわんさか。

たとえばギャンブルや宝くじも、当たったときの快感によってハマっていくものです。

……ただし宝くじにハマって破産した人、というのは聞いたことはありませんがw

さらには上記ポイントの2番目のソシャゲもその1つ。

ソシャゲは本来、タダで遊べるものなのですが、ここでも指摘されているように課金しないと満足にプレイできなくなっていき、結局「もったいない」「みっともない」とさらに課金沼に落ちていくとのことです。

「もったいない」はいわゆるサンクコストなので、抜けられない理由として分かっていましたが、「みっともない」という観点は「目からウロコ」。

ちなみに中野先生によると、DNAの塩基配列を見ることで、依存症の割合が高くなるか否かが分かるのだそうですが、詳細は本書にてご確認ください。


◆一方第3章では「オキシトシン」にまつわる商法が登場しています。

高額布団を買わせるような「催眠商法(SF商法)」や、「ネットワークビジネス」も、「オキシトシン」によって、相手を信じるからこそ成立するもの。

また、上記ポイントの3番目の「AKB商法」は「CD」という「本体」ではなく、「握手券」や「投票券」という「おまけ」にファンは価値を見出しています。

その「おまけ」に資金投下できるのも、「消費者余剰」があるからこそ。

今やコロナのおかげで握手会等のイベントができず、「AKB商法」自体も成立しにくくなってきましたが、AKBに限らず熱狂的なファンを抱えているのであれば、「消費者余剰を収益化」することは可能なのだと思います。


◆なお、第4章では脳内ホルモンではなくて、「五感」に訴えかけるマーケティングについての解説が。

上記ポイントの4番目の「嗅覚」は有名ですし、私も「焼き立てのパンの香り」には弱いです。

また、ちょうど先日、こんなお話がはてブホッテントリ入りしていましたし……。

浅倉大介さん「スーパーマーケットでチープなBGMが流れるのは、チープな音楽を聞くと値段を安く感じるから」#音楽の心理学 - Togetter

私は未読なのですが、この本に詳しいらしいです。

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ドビュッシーはワインを美味にするか? 音楽の心理学 (早川書房)


◆また上記ポイントの5番目は、第5章の「だまされやすさは遺伝子で決まる?」からのもの。

当ブログでも何度かご紹介している、「セロトニントランスポーター」のお話も当然触れられています。

セロトニントランスポーター遺伝子 - Wikipedia

これは不安を感じやすいか否か、というお話であり、ぶっちゃけ「日本人不安感じすぎ」ということなのですが(アメリカ人に比べて)。

ただしポイントの5番目の「COMT」の件は、私は初耳でした(リンクしてもいいのですが、読んでも普通の人だと分からないと思うので割愛)。

日本人がこんなに意思決定が好きでない(快感が生まれにくい)のであれば、確かに「ランキング」に働きかけるのが有効なのも分かりますね。


「人間の欲求」に基づくマーケティング理論を知るべし!

B07Y9LLR5R
ブラックマーケティング 賢い人でも、脳は簡単にだまされる
序章 「悪のマーケティング」はなぜはびこるのか    
第1章 焦りをかき立て判断力を奪う商法にご用心     
第2章 「ハマりたがる脳」を刺激する罠の数々     
第3章 理性を麻痺させ「欲しい」と思わせる仕掛け     
第4章 五感を使って他者を操る手法とは   
第5章 だまされやすさは遺伝子で決まる?    
終章 「よい子のマーケティング」を脱し、サイエンスへ


【関連記事】

【ファスト&スロー?】『意思決定の心理学 脳とこころの傾向と対策』阿部修士(2017年06月05日)

【オススメ】『人を操る説得術 ──7ステップで誰でもあなたの思いのまま』ニック・コレンダ(2017年09月15日)

【行動経済学】『なぜ、それを買ってしまうのか』加藤直美(2014年07月06日)

【地位財?】『幸せとお金の経済学』ロバート・H・フランク (著),‎ 金森重樹 (翻訳)(2017年12月28日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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【編集後記2】

◆一昨日の「教育・学参関連本キャンペーン」の記事で人気だったのは、この辺の作品でした(順不同)。

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宜しければご参考まで!


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Posted by smoothfoxxx at 10:00
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