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2020年12月04日

【マーケティング】『築地本願寺の経営学―ビジネスマン僧侶にまなぶ常識を超えるマーケティング』安永雄彦


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築地本願寺の経営学―ビジネスマン僧侶にまなぶ常識を超えるマーケティング


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「東洋経済新報社125周年フェア」でも人気のマーケティング本。

舞台となる築地本願寺は、私の事務所の窓から遠くに見えるので、勝手に親近感を持って読んでしまいました。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
どんな企業も、時代の変化とともに変わらなければ生き残れません。
それは寺院にしても同じことです。
変わりゆく時代の中で仏教の教えという変わらない価値を伝えるには、その方法や手段も時代に合わせて変化する必要があり、さらには自らが変化することを恐れてはなりません。
元銀行マン僧侶が挑むビジネスモデル変革とリブランディングから、マネジメントの基本と「常識を超えるマーケティング」が学べる1冊です。

中古が定価を上回っていますから、Kindle版が900円弱、お得な計算です!






Tsukiji Honganji Temple / *_*


【ポイント】

■1.お寺が衰退する3つの要因
 経済的な面で考えると、お寺も安穏としてはいられません。「坊主丸儲け」という皮肉が通用したのは過去のことです。日本のお寺の数はおよそ 7万7000と言われていますが、今後20年で30%は消滅するとも言われています。
 その要因はこれまで述べてきた3点に集約されます。
 第一に人口の減少。人を相手にする爛咼献優広瓩如⊃邑減の影響を受けないものはありません。
 第二に核家族化。お寺の収入源である法要、葬儀が減っていけばそのぶん収入は減ります。
 第三の檀家制度の崩壊は、お寺の主な収入源であるお布施や葬儀がなくなることを意味します。お寺によっては学校法人や病院をつくったり、住職が教員や公務員といった他の仕事を持ちながらお勤めをしたりと、収入源を確保する工夫をしています。前者については規模も大きく、うまくいっているところもありますが、ごく少数です。


■2.インスタ映えした「『寺と』カフェ」「18品の朝ごはん」
 インフォメーションセンターが寛ぎと安らぎの空間になるには、心惹かれる楽しみもあって然るべきです。総合案内や総合相談窓口があるだけでは、いくら開放感あふれる建物であっても、お寺と縁もゆかりもない人は足を運んでくれません。
 そこでつくったのが「築地本願寺カフェTsumugi」。「『寺と』カフェ」というコンセプトで、法要やお参りにいらっしゃる方のみならず、「誰もが気軽に立ち寄れる場所」を目指しました。入り口には築地本願寺のロゴがあしらわれたTsumugiの表示。店内からは大きなガラス越しに本堂を眺めることができ、ゆったりと安心のひとときを過ごせるように設計されています。
 カフェは空間も大切ですが、メニューも重要です。和定食やパスタ、抹茶やほうじ茶を使ったお寺らしいスイーツなどを吟味して揃えましたが、何か、看板になるものがほしい……。
 そこでカフェ運営会社プロントの開発担当者とお寺とで知恵を絞って誕生させたのが、「18 品の朝ごはん」でした。


■3.サロンの僧侶が相談に応じる「よろず僧談」
「相談といっても、お墓は、葬儀は、という話ばかりだろう」という予想もあっさりと覆され、多くが人間関係のかなり深刻な悩みでした。職場や家族のいざこざ、中には悪質なパワハラや、「連れ合いの様子がおかしい。心の病気ではないか」という専門家でないと判断がつかないものもありました。
 僧侶は仏教の専門家であり、精神科医や臨床心理士ではありません。基本は「お坊さんがあなたのお話をお聞きします」というスタンスです。宗教上の答えを提供するというルールのもと、「親鸞さんの教えでは〜」「仏様は〜」と、仏教上の知識を紹介するようにしています。たとえば「嫁との関係がうまくいかない」という悩みに対して、「仏様はいつも皆さんと一緒にいらっしゃいます。憎いお嫁さんもあなたも、一緒に仏様に照らされているんですよ」と答えるという具合です。
 だいたい60分ほどですが、僧談の部分はごくわずかで、ほとんどは相談者がわーっと言いたいことを言い、ひたすら傾聴する。それでも皆さんが晴れやかな顔になって帰ることがほとんどです。


■4.緊急事態宣言下で生まれた「オンライン法要」
 オンラインでのお参りなんてあり得ない、というのがお寺の常識であり、暗黙の了解でした。しかしコロナ禍においては、誰もが「お寺に足を運べない人」になってしまいました。事態が好転することを願っていましたが、残念ながら膠着状態のまま、日は過ぎていきます。
 そこで築地本願寺としても、暗黙の了解を取り払い、「一歩踏み込もう、とりあえず、やってみよう」という流れが生まれました。
 こうして、オンライン法要の各種の準備を行い、築地本願寺のホームページで告知をすることになりました。(中略)
 具体的には築地本願寺にてご家族のご法事を行い、その様子をインターネット中継するもので、ご家族はZoom(テレビ電話アプリ)を使用して、約30分の法要(読経と法話)にご参拝いただくという仕組みです。
 私たちとしても手探りでスタートしたことでしたが、ホームページに掲載するなり、申し込みが立て続けにありました。オンライン法要を求めている人たちが、確実にいらっしゃったということです。


■5.CRM(顧客関係管理)のインフラを整備
 築地本願寺の大改革としてCRMのシステム成美製版を行いました。そうは言っても一般企業なら当たり前にやっている普通のものです。
 門徒さん、法要をお受けした方、そして築地本願寺倶楽部の会員について、お名前、連絡先、生年月日、家族構成、お葬式や法要についても記録しています。
 やがてデータが蓄積されていけば、年忌法要のご案内はしっかりとできますし、お祝い事のご案内もできます。「お孫さんが生まれたなら初参式のご案内」という具合に、七五三(めぐみの参拝式)、10歳で祝う二分の一成人式、成人式、結婚式、還暦祝い、終活と、ライフイベントに寄り添うコンシェルジュサービスがCRMシステムをベースに機能するのです。帰敬式を受けて浄土真宗の門徒になってくださる方が少しでも増えてほしい。その入り口として「築地本願寺は頼りになる」と思ってくださる方が増えれば、それは「新しい信者」(メンバー)さんです。


【感想】

◆なかなか楽しめたマーケティング本でした。

冒頭でも触れたように、この築地本願寺は私の職場から比較的すぐのところにあり、非常になじみの深いお寺でして。

実際、ムスコが小さい頃は、家族で盆踊りに出かけたことも何度かありました。

さすがに今年はコロナのせいで中止となったようですが。

築地本願寺納涼盆踊り大会中止について(7月・8月) | 築地本願寺

しかし水面下では、この本願寺も財政的には長年赤字が続いていたそうです。

その背景について触れられているのが、本書の第1章。

上記ポイントの1番目にもあるように、コロナ禍以前から、お寺を取り巻く環境は、厳しいものとなっていました。


◆そこで大胆な「構造改革」を任されたのが、本書の著者である安永さんです。

具体的には3つのステップからなる、5つの改革案を作成。

その改革案の一環で登場したのが、上記ポイントの2番目にある「築地本願寺カフェTsumugi」であり、その名物が「18品の朝ごはん」です。

18品の朝ごはんが話題。築地本願寺で1日の始まりに活力を|ことりっぷ

もちろんこうしたカフェを設置するのは、築地本願寺を多くの人に親しんでもらうため。
 インフォメーションセンターには、カフェのほかに、洒落た仏具や雑貨を900アイテム揃えたオフィシャルショップ、仏教の入門書、専門書、経典や精進料理のレシピ本などを販売するブックセンターが併設されています。開かれたお寺のイメージの中で仏教にも親しんでいただき楽しんでいただこうという工夫です。
 総合相談窓口には係員だけでなく僧侶も常駐しています。「自分が死んだら誰がお墓の面倒を見てくれるのか」「お葬式はどうしよう」「いなかのお寺にあるお墓を東京に移したいが?」といった都会に住む誰もが抱える悩みを、気軽に相談していただける拠点となっています。
朝ご飯を食べに来て、いきなりそこまで深い話をするかはさておき、きっかけにはなると思われ。


◆また、続く第3章では、さらなる施策もあれこれ登場しています。

私が驚いたことに、昨年の今ごろにはシンガーのAIさんを招いて、ゴスペルライブを行っていたこと。

デビュー20周年のAI、築地本願寺でゴスペル隊とパフォーマンス(ライブレポート) - 音楽ナタリー

まぁ確かにアメリカでは、教会でゴスペルが歌われているのは広く知られていますが、お寺でやってしまえば、それは話題になりますよね。

そして上記のカフェやこうしたライブに行ったカップルが、築地本願寺に親しみができて、生まれた子どもを稚児行列に参加させることもあるかもしれません。

はなまつり 人形町大観音寺と築地本願寺に行ってきました。 by saru | 中央区観光協会特派員ブログ

もちろん、こうした表立ったイベントだけではなく、市民とより密接な関係を築くための催し物もいくつも用意されました。

その1つが、上記ポイントの3番目にある「よろず僧談」です(この辺も教会の神父さんとの関係に近いような)?

他にもグリーフケアの個人カウンセリングをスタートさせたり、損保や新聞社とコラボして「終活サービス」を提供したり、と幅広い活動が行われているとのことでした。


◆さらに、コロナ禍によって結果的に実施されることとなったのが、上記ポイントの4番目の「オンライン法要」です。

安永さんはかねてからオンライン法要を提案してきたものの、「インターネットで法要なんてありえない」と却下され続けていたのだとか。

ちなみに、当初ホームページで「お布施額は3万円から」と明記したところ、「お布施はお気持ちが原則で、金額を明示するのはおかしい」と宗門内で波紋が広がったのだそうです。

そこで「冥加金」と表現を改めて記載した、とのことなのですが、こういうところがアタマが堅いというか何というか……。

ただ、今ではYouTubeにチャンネルまでできて、ネット配信を行っているくらいですから、かなり改革も進んでいると言えるでしょう。




◆とはいえ、民間企業では当たり前のようにできている部分が弱いのは、「お寺」(宗教法人)という独特の価値観ゆえなのかも。

たとえば築地本願寺でも複式簿記が行われていなかったり(いいのか?)、そのせいなのか出金しても、それが「経費」なのか「資産」なのかの区別がついていなかったのだそうです(お金が出ていくのは同じだから)。

また、上記ポイントの5番目にあるように、CRMも整備したとのこと。

なんでもこういう顧客情報は、普通は住職の奥さんがアナログでやっていたそうなのですが、上記の簿記の件も含め、良くも悪くも改革しがいがありそうです。

なお、今回は割愛してしまいましたが、安永さんが、いかにして築地本願寺に関わり、このような改革を行うようになったかの経緯については、第5章に詳しいので、そちらもぜひご確認を。


マーケティング本として非常に楽しめた1冊でした!

B08L3W3538
築地本願寺の経営学―ビジネスマン僧侶にまなぶ常識を超えるマーケティング
第1章 新たな時代に変わらない価値をつくる――築地本願寺のサバイバル戦略  
第2章 開かれたお寺の「顧客創造」――築地本願寺のリブランディング
第3章 お寺は「人生のコンシェルジュ」――顧客とつながるマーケティング
第4章 目標を共有できる仕組みをつくる――人材マネジメントとリーダーシップ
第5章 なぜ働くのか、なぜ生きるのか――ビジネスマン僧侶のキャリアのつくり方、考え方
終 章 なぜ「新たな時代」に仏教が必要なのか――死を恐れず、「一日一生」を生きる


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【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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「鬼滅の刃」の折れない心をつくる言葉

ちょうど本日最終巻が発売になった鬼滅の名言本は、中古価格が定価を超えていますから、Kindle版が1000円強お得(なので私も買いましたw)。

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やりなおし高校日本史 (ちくま新書)

オトナの教養としても読んでおきたい日本史本は、中古が値下がりしていますが、それでもKindle版の方が200円ほどお買い得。

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アルゴリズムトレードの道具箱 ──VBA、Python、トレードステーション、アミブローカーを使いこなすために

定価が1万円超えなのに、今回「499円」で販売されているこの本は、理解できる方にこっそりオススメしたく……。


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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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