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2020年11月11日

【文章術?】『書くことについて』野口悠紀雄


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書くことについて (角川新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、昨日の「未読本・気になる本」の記事でも人気だった、野口悠紀雄先生の最新作。

タイトルから想定していた内容よりも、かなり幅広く、まさに野口先生の「最新知的生産術」だと感じました。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
この方法なら「誰でも」「魔法のように」本が書ける!
「文章を書く」とは、「自分の考えを伝える。意見を言う。主張を述べる」ことに尽きる。
長年にわたりベストセラーを多数書き上げた作家・野口悠紀雄が、自らの「書くことについて」を解き明かした新時代の文章読本。
書くために必要となる基本的なスキルからアイディアの着想法まで、書く全技術を初公開。
「日々の継続」を「驚くべき成果」に変える文章法がここに…

まだ中古が値崩れしていませんから、定価販売のKindle版もアリだと思います!






monique's typewriter / jetheriot


【ポイント】

■1.仕事を続けていればテーマが見つかる
 テーマを見いだすための最も確実な方法は、「 仕事を続けること」です。仕事を続けていると、その中から新しい疑問が生じ、新しいテーマが見つかるのです。
 これを「クリエイティング・バイ・ドゥーイング」ということにしましょう。(中略)
 多くの人は、テーマが見つかってから動きます。その順序を逆転させることが必要なのです。「とにかく何か書いてみる」、「すると成長する」。このことを、私は、毎日実感しています。
 仕事の中で一番難しいのは、出発することです。出発すれば進みます。そして完成します。
 多くの人は、テーマが見つからないから始めないのですが、そう簡単にテーマが見つかるはずはありません。そして、仕事を始めないと、そのことに頭が向きません。しかし、仕事をとにかく始めることなら、誰にでもできます。


■2.アイディアが生まれやすい2つの環境整備
 アイディアが生まれやすい環境整備の第1は、関連する情報を頭に詰め込んでおいて、歩くことです。
 ただ漫然と歩くだけでは何も浮かんできませんが、事前にいろいろな情報が詰め込んであると、歩きながらそれについて考えることになるので、頭に詰め込んでおいた情報がいろいろに関連付けられ、そこから新しいアイディアが生まれます。
 いわば、「問題意識を持って歩く」のです。これは、きわめて有効です。(中略)
 第2に、寝入りばなに、あるいは朝起きたときに、アイディアが浮かぶことがよくあります。この場合も、寝る前に情報を詰め込んでおくことが必要です。寝ている間にも脳は活動していて、詰め込んでおいた情報のさまざまな組み合わせを試みているのでしょう。
 昔から、「朝起きたときに素晴らしいアイディアを思いついた」といっている人がたくさんいます。人間の脳は、そうしたメカニズムを持っているようです。


■3.「たね」から「作物」を作る
 考えの断片である「たね」は、150字程度のものです。これらの多くは、体系付けられておらず、バラバラで孤立的なものです。それだけでは、完成された1つの論考にはなりません。
 それを「作物」に、つまり、1つのまとまった考えに成長させるには、どうしたらよいでしょうか?
 それは、アイディアの素である「考えの断片」を関連付けることによります。
 アイディアは、考えの断片の結び付けと関連付けから生じます。この作業は、基本的には、頭の中で行なうしかありません。このプロセスを自動化し定式化することはできません。
 しかし、頭の中に置いておくだけでは、忘れてしまいます。それらをうまく記録して残し、他の断片と関連付けることによって、新しいアイディアが生まれる仕組みを作ることが必要です。


■4.グーグルドキュメントで全体を2層または3層構造に
(1)3層構造
第1の方法は、全体を3層構造にすることです。第1層は章の区別を示すファイルです。「目次ページ」と呼ぶことができます。ここに、7個程度の章区分が示されています。ここから、第2層である各章のファイルにリンクが張ってあります。各章ファイルに4つの節を示してあり、そこにリンクを張っておきます。第3層である各節には、3〜4個の項(ブロック)が含まれています。書き始めの頃は、あまり関連性のないブロックがあるだけなので、このようにまとめていくのがやりやすいでしょう。
(2)2層構造
しかし、これだと、章全体の一覧性が確保できません。そこで、第2の方法として、各章ファイルにブロック10個程度をまとめる方法があります。この場合は、全体は2層になります。各章は、2万字強になります。


■5.「超」メモ帳に押し出しファイリングの手法
 グーグルドキュメントのファイル一覧ページでの並べ方を、「編集順」にしておけば、頻繁に編集しているファイルは、つねに先頭近くに表示されることになります。
 したがって、リンクを張ったり、検索語を設定するなどの特別の操作をしなくても、ファイル一覧ページで、すぐに見いだすことができます。
 つまり、MTF(move to front:使ったものを先頭に置く)の原則に従ったファイル配置が可能になるわけで、「超」整理法 の「押し出しファイリング」と同じようなことが実現されます。
 グーグルドキュメントの一覧ページでの並べ方を、「閲覧順」にすることもできるのですが、この設定にしておくと、あまり重要でないものが先頭にきてしまう可能性があるので、MTFにはなりません。


【感想】

◆当初気軽に「文章術本」だと思って読み始めたところ、意外にも「壮大な目標」を持った作品でした。

本の帯に「この方法なら"誰でも""魔法のように"本が書ける!」とあるのですが、まさか本当に「本」を書くことを目指す内容だったとは!?

そのために野口先生が本書で掲げたテーマは3つあります。

その中の1つが、上記ポイントの1番目にある「クリエイティング・バイ・ドゥーイング」。

とにかく書き始めることが重要であり、そのために先生は、スマートフォンを取り出して、メモのページを開き、音声入力で何かを話してみるのだそうです。

そういえば結構前に、こういう本をご紹介していましたっけ。

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話すだけで書ける究極の文章法 人工知能が助けてくれる!

参考記事:【音声入力】『話すだけで書ける究極の文章法 人工知能が助けてくれる!』野口悠紀雄(2016年05月22日)


◆とはいえ、何か書くためには「問題」なり「テーマ」が必要です。

そこで参考にしたいのが、上記ポイントの2番目の環境整備のお話。

とりあえず頭に情報を詰め込むのはいいとして、「歩く」ということの効能は、多くの本でも触れられていました。

同じく「寝る」というのも、その間に脳がデフラグして、アイデアが浮かぶ、というのもやはりおなじみの現象かと。

ただし注意点として、先生は「寝る前にテレビなどを見て、余計な情報を頭にためておかないこと」と言われており、これは意外に盲点かもしれません。


◆さて、こうして思いついたことをメモしたものを、どうするのか、について述べているのが上記ポイントの3番目です。

「たね」を結びつけて「作物」にするために、「メタキーワード」と「キーワード」を組み合わせて検索をかけるのですが、これが結構目からウロコ。

例えば「ブロックチェーン」というキーワードで検索をかけても、関連するメモが大量にヒットしてしまいます。
 そこで、「あああ ブロックチェーン」という検索をします。ここで、「あああ」とは「アイディアメモ」についてのメタキーワードで、後で使えそうな文書に付けているものです。
 こうすると、ヒットする文書の数はずっと少なくなります。そこには、新しいアイディアの素になりそうな考えが書かれている可能性が強いので、それらをいくつか関連付けることによって、新しいアイディアが出てくることが期待されます。
ちなみに先生のほかのメタキーワードは、「いいい」が「保存すべき記録」で、「ううう」が「メタインデックス」なのだそう。

要は絶対に普通の文章に出てこない語句を「メタキーワード」として用いるワケです。

そしてこの仕組みこそが、本書のテーマの2番目である「アイデア農場」に該当する次第。


◆さてこうして「作物」が出来上がるとして、それを本にまで仕上げるにはどうするのか?

先生は上記ポイントの4番目にあるように2層もしくは3層構造にして、全体を構成することを主張されており、これは上記のテーマの3番目である「多層構造で本を書く」に該当します。

なお、多層構造にするだけなら、テキストエディタでも可能なのですが、それらにリンクを張るために先生はグーグルドキュメントを利用。

この辺は本書の図をご覧いただくと、より分かりやすいと思います。

ただし上記ポイントの5番目でも、グーグルドキュメントの使用を前提としているので、環境的にグーグルドキュメントが使えないと、本書の内容を実践するのは少々キツイかもしれません。


◆ちなみに本書は、こうした「仕組み作り」を中心として展開されているのですが、少々毛色が違うのが第6章の「わかりやすく正確に力強く伝える」。

ここではそれまでの内容とは一転して、いわゆる「文章術本」で触れられているようなテーマ(「複文問題と戦う」「ねじれ文を根絶しよう」等)が収録されています。

ただ、私たちもよく目にする「さらなる」(「さらなる発展」等の)という「誤った表現」に関してかなりページを割いているのが謎。

実際、こういう本のタイトルにすらなっているのですが、先生はどうしてもこの表現が許せないのだそうです。

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ティム・クック-アップルをさらなる高みへと押し上げた天才

参考記事:【もう1人の天才?】『ティム・クック−アップルをさらなる高みへと押し上げた天才』リーアンダー・ケイニー(2020年04月07日)

「え?自分も使ってるよ?」という方は、ぜひこの部分もご確認ください。


野口流「知的生産術」が学べる1冊!

4040823923
書くことについて (角川新書)
第1章 文章を書くための仕組みを作る
第2章 テーマをどう見つけるか?
第3章 アイディアの材料を集める
第4章 アイディア農場:アイディアのタネを育てる
第5章 アイディア製造工場:アイディアを組み立てる
第6章 わかりやすく正確に力強く伝える
第7章 ブレインストーミングをもっと活用しよう
第8章 「外部脳」を活用して脳を解放する


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【スゴ本】『いますぐ書け、の文章法』堀井憲一郎(2011年09月09日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

B01A82RK1Q
好奇心を“天職”に変える空想教室

TEDXでも話題になったという植松さんの作品。

中古の方が若干お得なのですが、興味のある方はご検討ください!


人気blogランキングご声援ありがとうございました!

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