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2020年10月26日

【ベンチャー】『起業家の勇気 USEN宇野康秀とベンチャーの興亡』児玉 博


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起業家の勇気 USEN宇野康秀とベンチャーの興亡 (文春e-book)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「Kindle本ストア8周年キャンペーン」の中でも個人的に読みたかった1冊。

おなじみUSENの社長である宇野康秀さんを中心として、ITバブル期からの主要キャストがわんさか出てくる注目作です。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
起業家の資質とは何か、起業精神の本質はどこにあるのか。
壮大な事業に挑んだ宇野元忠、康秀父子の生き方を軸に、若き日の孫正義、三木谷浩史、藤田晋、村上世彰ら、錚々たるベンチャー創業者たちの興亡の歴史を鮮やかに描きます。

中古が値下がりしていませんから、このKindle版が900円弱、お得な計算です!






STARTUP CTO / ceonyc


【ポイント】

■1.原点である父の言葉
 元忠を父としては嫌悪していたものの、将来のベンチャー起業家を夢見る宇野にとっては、成功者のロールモデルに他ならなかった。
 宇野の経営者としての姿勢── 倦むことなく起業を続け、事業に飽こうとしない宇野の精神に決定的な影響を与えたのも、やはり父元忠のこんな一言だったのである。
 ある時、宇野の母が、夫にこんな言葉を投げかける。それは日曜であろうが、祝日であろうが当たり前のように仕事に出かける、夫に対してであった。
「あんた社長なんやろ? 社長のあんたが休みの日もなんで、働かにゃあかんの? 社員に任せたらえんやん?」
 元忠は、あのぎょろっとした目を妻に向けて言うのだった。
「何をアホなこと言うとるんや。ワシより働くもんがおったらそいつが社長や」
 宇野はいまもこの場面を鮮明に覚えているという。


■2.自分より優秀な奴を採用する
 バブル経済真っ只中の1986(昭和61) 年にリクルートに入社した小笹は、翌年、採用の担当になった。「地頭のいい学生」「自分で考え、自分で走れる学生」。小笹の目には、まさに宇野や峰岸などがリクルートが欲する人材に映った。
 小笹は直接面接をする担当者に、明瞭で具体的な指示を出していた。それは、
「お前自身よりも優秀な奴を採用しろ」
 だった。学生への面接が終わると、担当者は小笹に詰め寄られた。
「お前がいいって言うこの学生だけど、どこがお前より優秀なんだ? 説明してよ」
 これは非常に難しい採用方法だった。一見簡単に見えるが、相手の長所を見ようとしても、人間はどこかで自分を守ろうとし、自分より劣った人間を認めようとするからだ。
 ある種の心理学に裏打ちされた、リクルートの採用はよく出来ていた。自分よりも優秀な人間を採用しようとすると、否応なしに自分の弱み、強みに気づかされる仕組みになっていた。


■3.父の跡を継ぐことを決意
 深夜の一室に、創業メンバーが顔を揃えた。鎌田、島田。前田、武林。
 宇野が切り出す。
「実は……」
 すべてを話そうと思っていた。自らがすでに父の後継者となることを決断したこと、たとえ 罵詈雑言 を浴びようが、甘んじてそれを受けようと覚悟は決めていた。 「実は大阪に戻り、父から自分は末期がんで余命が3ヶ月しかないと聞かされた。その上で、僕に会社を引き継いで欲しいと言われたんだ」(中略)
爐笋辰僂蠏僂阿鵑犬磴覆い瓠1野はこんな言葉が返ってきても仕方がない、と頭を下げながら思った。しばらくの間があって、鎌田が口を開いた。
「お父様の遺言なんでしょう? 宇野さん、こんなチャンスはないよ。面白い会社にできるんじゃない? 僕たちは大丈夫だから、行ってください」
 皆、鎌田と同じ意見だった。
「宇野さん、やった方がいいよ。後は大丈夫だよ」
 こうした言葉を聞いて、宇野は泣いた。皆の前でボロボロ涙を流した。


■4.孫正義のADSLに足元をすくわれる
「宇野君、韓国のADSL(高速デジタル通信技術) の会社を買収したんだ。だから、もう一度一緒にやらないか」
 孫は数ヶ月前の一方的な破談などなかったかのように明るい声だった。けれども、宇野はもう後戻りはできなかった。また、するつもりもなかった。
「いや、孫さん、もううちは(光ファイバーを) 始めちゃってますから、一緒にはもうできないですよ」
 それからしばらくして、宇野は目を疑うような光景を目にすることになる。
 繁華街といわず駅といわずショッピングモールといわず、人が集まる場所に突然、白い傘を差し、揃いの白いジャンパーを羽織った人々が、こう声を張り上げるのだった。
「ただ今、無料でお持ち帰りが出来ます。無料でーす。ゼロ円でーす」(中略)
 採算を度外視するように、果てしなく続く無料キャンペーン。孫による絨毯爆撃のようなキャンペーンの前に、いくら品質は優れているといっても、光ファイバーは霞むばかりだった。


■5.サイバー藤田氏の宇野康秀評
 宇野に憧れ、今も宇野を尊敬してやまないサイバーエージェントの藤田にこんな質問をしたことがある。
「宇野さんはベンチャー起業家なのか、それとも二代目社長なのか?」
 藤田は当然とばかりに、
「そりゃ、ベンチャー起業家ですよ、宇野さんは」
 と即答し、その図抜けている部分として、生半可でない粘り強さ、持続的な構想力、冷めない情熱などをあげた。「起業家の総合力をチャートにするとすべてがマックスじゃないかな」と評価した後で、弱点としては、「優しすぎる所かな」と笑ってみせた。
 宇野が自他ともに認めるベンチャー起業家であるのは間違いない。しかしそのロールモデルは、やはり元忠にあったのではないか。有線放送の会社をブロードバンドを提供するインフラ会社に、また動画配信の会社へと新たな事業を決断し実行に移す時、その向こうに父親の気迫を、その徒手空拳の勇気を強く意識したのではないだろうか。


【感想】

◆本書はいわゆる「ビジネス書」として「TIPSを学ぶ」、というタイプの作品ではありません。

他人にざっくり説明するのなら、かつてのITバブル期において活躍した面々を、USENの宇野康秀さんを中心に丁寧に描き出したもの、と言って良いかと。

もちろん、宇野さんから見たら好ましい人やそうでない人もいるのですが、その辺は比較的フラットに描写されていると思います。

というのも、著者の児玉さんは、既にこのような著作を出されている方でして。

4822244547
幻想曲 孫正義とソフトバンクの過去・今・未来

4822222829
“教祖"降臨-楽天・三木谷浩史の真実

これらの作品を書くために行った取材も、本書のベースになっている次第です。


◆さて、その主人公である宇野さんが、多くのベンチャー起業家と異なるのは、USENの前身であり、日本の有線放送の大手であった大阪有線放送社の二代目であったこと。

その大阪有線の創業者である父親の元忠氏を、宇野さんは子どもの頃は苦手にしていました。

上記ポイントの1番目にあるように、元忠氏はコテコテの関西気質(?)であり、有線を許可なく張り巡らして警察に逮捕されても「法律が間違っとるんや」と意にも介さなかった、とのこと。
元忠の人を人とも、法律を法律とも思わぬ言動を宇野は嫌った。時に憎しみさえも覚えた。
ところが、高校時代に経営者を志すようになると、1人の「成功したベンチャー経営者のモデル」として宇野さんは元忠氏を意識するようになります。

もっとも、宇野さんの徹夜も辞さないハードワークや、会議の長さは、この元忠氏の働きぶりが原点だったと思うと、ちとフクザツなのですが。


◆また、当初はその元忠氏の跡を継ぐつもりはなく、学生時代の仲間たちと、インテリジェンスを立ち上げます。

上記ポイントの3番目に出てくる「鎌田」「島田」「前田」「武林」というのは、それぞれ鎌田和彦氏島田亨氏前田徹也氏武林聡氏のこと。

ちなみに前田氏や武林氏は、宇野さん同様、学生時代にイベント系サークルで活躍しており、彼らをリクルートに採用したのは、当ブログでも著作を何冊かご紹介している、リンクアンドモチベーションの小笹芳央氏。

その採用の秘訣を明かしたのが上記ポイントの2番目であり、鉄鋼王、アンドリュー・カーネギーの墓誌に刻まれた
「自分より優れた者に協力してもらえる技を知っている者、ここに眠る」
というフレーズを彷彿とさせます。

なお、今回の記事では触れていませんが、リクルートの江副浩正さんについても本書では1つの章を費やしており、上記の孫さんの『幻想曲』を執筆する際に、著者の児玉さんが江副さんに取材した際に驚いた、江副さんの「意外な一面」も、どうぞお見逃しなく!(ネタバレ自重)


◆その孫さんですが、上記ポイントの4番目にあるように、ADSLで宇野さんの行く手を阻みます。

しかも、引用部分の最初の方に「数ヶ月前の一方的な破談」とあるように、その直前にも、宇野さんは孫さんに苦渋を味わせられていました。

実は孫さん、宇野さんが持ち込んだ「光ファイバー事業」に、当初「500億出す」と即断即決します。

ところがヤフーの株価が低迷したことにより、この提案も破談になり、宇野さんはその出資で脱する予定だった債務超過問題に奔走することに(最終的に個人名義で80億円借りたそう)。

その件があったにもかかわらず、よりによってADSLを持ちかけられ、さらにあの大規模キャンペーンを目の当たりにした宇野さんの心中たるや……。


◆また、宇野さんといえば、藤田さんの本でも「兄貴分」として描かれていましたが、実際の藤田さんの宇野さん評は、上記ポイントの5番目にあるとおり。

その藤田さんが、サイバーエージェントの株価低迷時に、GMOの熊谷さんや、村上ファンドの村上さんに苦しめられた話も、本書には詳しいです。

そして、その藤田さんを救った井上智治氏を藤田さんの下に送ったのも、また宇野さんでした。

……この辺のいきさつは藤田さんの本よりも、裏側を知る分本書の方が詳しいのではないか、と。

いずれにせよ、そういう「優しさ」ゆえに、借金まるけだったUSENを継ぎ、結果的に手放すことになるものの、再度配下に収めた宇野さんは、「起業家」として秀でた方であることは間違いないかと。

起業を志す方や、ITバブル時のアツい状況を知るにも、本書はうってつけだと思います。


スタートアップ志望者なら読むべし!

B086TXHZ32
起業家の勇気 USEN宇野康秀とベンチャーの興亡 (文春e-book)
1 有線の鬼
2 カネの力
3 大阪戦争
4 江副浩正とリクルートの時代
5 お前より優秀な奴を採用しろ
6 インテリジェンス創業
7 新入社員、藤田晋
8 父、元忠の最期
9 血染めのわら人形
10 三木谷、堀江、村上 躍動す
11 孫正義の空手形
12 社長追放


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【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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