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2020年09月28日

【仕事術】『スタンフォード式 お金と人材が集まる仕事術』西野精治


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スタンフォード式 お金と人材が集まる仕事術 (文春新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」でも、個人的に興味のあった1冊。

睡眠本でおなじみである、スタンフォード大教授の西野精治さんが、「スタンフォード式」のさまざまな「やり方」を説いた作品です。

アマゾンの内容紹介から。
西野精治氏は、世界一と言われるスタンフォード大睡眠研究所の所長である。同大はシリコンバレーの中心にあり、西野氏が働いた30年余で学んだことの中から、本書で紹介するのは次のような事柄だ。個人主義に根差すシンプルな成果主義と能率主義とはいかなるものか。チャレンジする情熱と結果を出す能力はいかにして身につくのか。短時間で効率よく働くためのIT利用を含めた具体的な方法。お金とマネジメントが不即不離である理由。個人の生活と健康を犠牲にせず尊重するために大切なこと。

中古がほとんど値下がりしていないため、若干お得なKindle版がオススメです!





Stanford University / Sandip Bhattacharya


【ポイント】

■1.コスト計算に「時間」も組み込む
 何やら日本批判のようになってしまいましたが、日本を含めてどんな国の企業であろうと成果については意識しています。たとえば新製品を開発するなら、そのための設備投資、人件費、材料費、物流や在庫管理のコストは当然考えているでしょう。私の提案は、そこに「時間」を組み込んではどうかということに尽きます。
「いいものを作るのだから、慎重にやりたい」
「我が社の大切なプロジェクトなので時間をかけて取り組みます」
 こうした言葉をよく耳にしますが、10年かけて100億円の売上を作るより、3年で100億円売り上げたほうが利益率は高い。時間をかければかけるほどコストがかかると考えれば、スピードが上がるのではないでしょうか。


■2.情報のフリーライドを避ける
「睡眠の**について教えてください」
 こうした頼みごとを気軽にしてくるのも日本企業で、私も最初は日本人の一人として喜んで協力していましたが、プロジェクトとして成立しないことがほとんどでした。単なる情報交換ならまだましで、こちらが情報を提供して終わりというパターンも増えてきました。
 考えてみれば、営利目的で利益を出しているのが企業というものなのに、こちらに対して時間も情報も無料で提供しろというのは乱暴な話です。大学の研究者は浮世のことは考えず、ひたすら研究していると思っているのかもしれませんが、アメリカはそんな甘いところではありません。(中略)
 シリコンバレーでは、最初のミーティングで可能性が見えないと、次のミーティングはありません。その時点で縁が切れます。私もそれに倣い、一度目のミーティングが単なる表敬訪問だったり、一方的に情報を求めるだけのケースでは、次のアポはお断りするようにしています。


■3.HPDCAサイクルを活用する
 ビジネスの世界では、仕事は常に「PDCA(Plan計画、Do実行、Check評価、Action改善)サイクル」を繰り返していくことが大切だとされていますが、研究の世界では計画以前に重要な課題を吟味し、仮説を持つことが不可欠です。
 結果を材料に課題を発見して常に新たな仮説を持つ。PDCAに「Hypothesis仮説」を加えたHPDCAを回していくやり方は、研究者のみならず、自分らしく仕事をしていきたいビジネスパーソンにはぜひ試していただきたいと思います。無駄を省き、システムよりも人を優先してこのサイクルをスピーディに回していくうちに、よりスピードアップした仕事のペースが我がものとなるでしょう。
 アメリカの研究の場合は、HPDCAに人とお金のマネジメントが加わってくるので、より真剣に成果を出そうとします。


■4.利益の出る特許は2%
 失敗する割合は100件中で98件ですから特許出願をしただけのことを自慢している日本のアカデミアがおられることには驚きました。私は思うのですが、利益の出る2%に入っているならまだしも、費用をかけて出願して、元も取れていないのに自慢してどうするのかと。
 また、その出願費用は誰が担っているのかも問題で、国プロ(国家プロジェクト)であれば原資は税金です。自分で費用を出すのなら文句は言いませんが、たとえ、自費であっても50件から100件出願しても元が取れる保証がないのです。特許はアイデアだけで科学的データがなくても申請できますし、内容も簡易なものが多く、利益を生み出さないと科学的業績とは呼べないしろものです。結果的に使い物にならないで、その他大勢に分類された特許で、一体何を自慢できるというのでしょうか。


■5.日本はサイエンスライターを育成すべし
 科学者の話を伝える役割を果たすのはサイエンスライターですが、日本は新聞、テレビ、雑誌、全てのメディアにおいて科学の素養を持つライター(記者)がきわめて少ない。文系や理系の出身を問わず、専門外の人が科学記者をやっているという話も耳にしますし、私自身が取材を受けていても、「こんなことも知らない相手に伝わるだろうか?」と不安になることがあります。アメリカなら、自然科学分野で博士号を持ったサイエンスライターがほとんどで、突っ込んだ質問が出ることも珍しくないのに、日本人の記者はひたすら基本的なレベルの質問を繰り返すということもしばしばです。(中略)
 もちろん難しい研究は多くありますが、わかりにくいことをわかりやすく伝えるというのがサイエンスライターの役割です。最低でも理系の博士課程は修了したような専門知識を持った人であってほしいし、それがどのメディアにも複数人いて主導してくれないと困ります。さもなくば誤認からくるミスリードが生じ、偏った情報を鵜吞みにしたいい加減な報道が多くの人を惑わせることになってしまいます。


【感想】

◆予想以上に「スタンフォードネタ」が満載の1冊でした。

そもそも冒頭のプロローグにて、著者の西野先生は「スタンフォードの〜」「シリコンバレーの〜」といったタイトルの付いた書籍について、苦言を述べられています。

実際に西野先生は、日本に滞在する際に、それらの本を嬉しくて手に取ってみるものの、「短さ」が気になるとのこと。
「短さ」というのは、本の書き手がスタンフォードやシリコンバレーで過ごした期間のことです。数年ならまだしも、わずか数カ月、それもビジターとして過ごしただけで書かれた本があまりにも多くあります。ビジネスのあり方や根づいている起業家精神を理解するには、十分な滞在期間とは言えないでしょう。
同じように「遅さ」についても、「数年前に著者がシリコンバレーに滞在した時の最新情報が書かれた本は、出版された時点では過去の情報をまとめたものになっている」とバッサリ。

その点、1987年から米国に滞在し、未だスタンフォードで働かれている西野先生の書かれた本書であれば、どちらも楽々とクリアしていると言えるでしょう。


◆まず第1章は「働き方」について。

一般的にスタンフォードの教授たち(本書では「ファカルティ」と呼ばれています)は、国の予算を付けるか、企業の予算を付けるかのどちらかによって、研究を進めており、いずれにせよ「コスト意識」は非常に高くなっているとのだそうです。

それを踏まえると、上記ポイントの1番目にある「コスト感覚」はごもっとも。

予算の主要な部分を占めるのが人件費であり、人件費にはもちろん福利厚生費用もかかり、直接経費の約6割が人件費になるのだとか。
プロジェクトを迅速に短期間に終わらせなければ、人件費だけでも相当な経費です。シリコンバレーでは、そのことを認識していないビジネスパーソンには会ったことはありません。
それなのに日本の企業ときたら、「表敬訪問」のような単なる「ご挨拶」で時間を無駄にすることも多々。

また、せっかく具体的な話になっても、結局はその「上司」でないと話が進められず、「話を持ち帰る」だけでなく「そのまま立ち消え」になる……というのは確かに私たちにとって「あるある」な話だけに、非常に「耳イタイ」ところです。


◆また、日本人にありがちなのが、上記ポイントの2番目の「情報のフリーライド」。

上記で触れたように、米国の大学では「企業や個人からの投資を得て研究費を獲得し、ようやくラボを存続させている」のですから、とてもそんな余裕はありません。

この辺は「情報はタダ」的な日本人の感覚、特に企業ではなく研究者相手だと、あえてお金の話を絡ませない風潮(?)が問題なような気が……。

さらにもう1つ、西野先生が苦言を呈している「頼みごと」が、「スタンフォードの**の先生を紹介してください」のような「紹介依頼」です。

「表敬訪問だけして進展がなかったりすると、紹介した相手にも迷惑をかけてしまう」という指摘は、なるほど確かに。
米国の生活で身についた「give and take」は、日本の「持ちつ持たれつ」とは違って、「公平にやり取りする」という意味であると理解しています。
これは何も、米国だけでなく、日本国内でも意識すべきことでしょう。


◆なお、第1章はほかにも「会議は事前にアジェンダ共有」や「会議の開始時刻と終了時刻を厳守する」といった、類書でもおなじみのTIPSがありましたが、これらは割愛。

また、「メールは4行以内」と言われつつも、特にビジネスチャットを活用されていないようなのは、セキュリティ等の問題なのでしょうか(「仕事では公式のアカウントでのメールでのやり取りが主流」とのこと)?

そして、上記ポイントの3番目にある「HPDCA」というフレーズは、ググってみたのですが、「PDCA」に「Hypothesis(仮説)」を加えた、という文意ではどこにも見当たらず。

上記ポイントの最後に「アメリカの研究の場合は、HPDCAに人とお金のマネジメントが加わってくるので、より真剣に成果を出そうとします」とはあるのですが、ひょっとしたら西野先生の造語かもしれません。

実際、この「仮説」というのは、研究費申請でもよく問われるそうで、西野先生が審査に加わった研究費申請の査読でも、明確な仮説がない場合は、門前払いなのだそうです。


◆さて、当ブログ的には非常充実した第1章に対して、第2章は西野先生がスタンフォードに来たきっかけから、その後の研究生活の日々の描写等を収録。

この辺は、「スタンフォード大学」という大学の仕組みや、特に「組織の作り方」について関心のある方には、非常に興味深く読むことができると思います。

また続く第3章では、「研究」と「お金」の関係について言及。

上記ポイントの4番目にあるように、特許は取ればいいものではないようです。

ただ、他社の特許で先に抑えられちゃうことを考えると、「とりあえず取る」という考え方も分からないでもないのですが……。


◆そして上記ポイントの5番目は、エピローグにある「日本の科学がグローバル化するために必要な3つのこと」の中の1つ。

過去の「STAP細胞問題」は当然として、昨今のコロナウィルスについても西野先生は
 こうした基本ステップも認識できていないサイエンスライターや評論家やコメンテーターが、サイエンスに関わり意見を述べるということはあってはならないことで、「素人の感想」と「プロのアドバイス」には耳を傾けてもよいですが、「プロの感想」と「素人のアドバイス」には耳を傾けるべきではありません。
と言われています。

この辺は日本の報道バラエティはもちろん、ブログやSNSでも気を付けるべきでしょうね。

なお、他の2つは本書にてご確認ください。


最新王道の「スタンフォード式」を基礎から学べる1冊!

4166612808
スタンフォード式 お金と人材が集まる仕事術 (文春新書)
第1章スタンフォード式 「自分のペース」をつくる働き方
第2章スタンフォード式 成果が出る組織の作り方
第3章スタンフォード式 お金のセンスの育て方
第4章スタンフォード式 個人主義の育て方


【関連記事】

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【発想法】『ハーバード・スタンフォード流 「自分で考える力」が身につく へんな問題』狩野みき(2019年05月23日)

【スゴ本】「20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義」(2010年04月06日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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