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2020年09月22日

【催眠とは?】『はじめての催眠術』漆原正貴


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はじめての催眠術 (講談社現代新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」でも意外に人気があった1冊。

著者の漆原さんは、東大卒にして大学院時にスマートニュース入社し、現在は出版社に勤務しながら催眠術師としても活動されている、というユニークな経歴の方です。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
言葉だけで、立てなくなったり、何かを好きになったり、笑いが止まらなくなったりする……。
そんな不可思議な「催眠」の世界へようこそーー。
人が知覚し体験している世界は、常に何らかの「暗示」の影響を受けている。
催眠についての知識は、自らが依って生きる世界の見え方を一変させます。
催眠とはつまるところ、言葉であり、コミュニケーションの技法です。その意味では誰にとっても知る価値があります。催眠の持つ特別なイメージを破壊して、素朴な面白さを知ってもらうには、「自分で体験する」以上に強力な方法はありません。

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Art the Hypnotist! / Schezar


【ポイント】

■1.催眠とは何か?
 それでは、催眠の「正しい理解」とは何なのか。先に挙げた誤解の裏を返せば、催眠とは以下のようなものだと言えます。
A:催眠は睡眠とはまったく異なる状態である  
B:催眠中も「催眠を体験する人(被験者)」の意思が失われることはなく、本人が嫌なことは実現されない
C:催眠によって思い出せるのは、本人の記憶のある範囲のことに限る
D:催眠中の記憶喪失は極めて稀である
E:催眠は心理学や医学などの学問領域で実践・研究されてきた現象である
F:催眠とは「催眠を体験する人」の備えた能力である
 催眠は、理論も実践も、まずは誤解を正すところから始まります。催眠を行うときには、最初に被験者の誤った信念を解くことが欠かせません。


■2.催眠誘導と暗示
 催眠誘導とは、催眠暗示を行うための準備であり、同じく米国心理学会の定義を引用すれば「催眠を引き起こすために設計された手続き」であるとされています。
 催眠誘導において施術者は、被験者のリラックスを言葉で促し、催眠のセッション中に達成すべきことに集中できるよう、手助けしていきます。
「それでは、身体から力を抜いてください」「掌の一点を決めて、そこを見つめてください」「今から数字を数えると、あなたは深くリラックスして催眠に入っていきます」といった言葉を与えながら、準備を行っていきます。(中略)
 暗示とは、体験や意識、行動の変性をもたらすような言葉です。
「あなたの手はだんだん重たくなってきます」「あなたはもう手を開くことができなくなります」といった言葉によって、被験者は実際に、そのような変性を体験します。
 暗示を理解するには、「手を開くな」という猝仁甅瓩筺崋蠅魍かないでください」という牋様雖瓩犯羈咾垢襪箸錣りやすいかもしれません。暗示では、命じたり頼んだりすることなく、何かの変性が起こることを示します。


■3.「威光」が暗示の効果を高める
 威光は、何も高圧的な態度や、奇抜な見た目によってのみ生まれるものではありません。「専門的なバックグラウンド」も威光になり得ます。
 施術者が「催眠を趣味でやっています」と名乗った場合と、「催眠を大学で研究しています」と名乗った場合とで、被験者の催眠への入りやすさが変わってしまうということが起こります。先に紹介した実験の中で「被験者を観察せず」とも催眠が行えていたのは、この効果も背景にあると言えるでしょう。
 このように考えると、ラポール形成が「人への信頼」を導く技法なのに対し、威光暗示は「コンテキストへの信頼」を導く技法と言えます。より身近な言葉で言い換えれば、相手にとっての第一印象をデザインする方法と捉えるとわかりやすいかもしれません。「この狄有瓩里海箸呂茲知らないが、狢膤悗埜Φ罎鬚靴討い覘瓩里覆蘓頼できるだろう」という意識に導くことで、それ以降のコミュニケーションのハードルを下げることができるのです。


■4.運動暗示:「腕があがっていく」
(1)被験者に利き手で握り拳を作ってもらい、そのまま腕をまっすぐ前に伸ばしてもらいます。
(2)「これから、あなたの腕を私が下に押し下げますので、上に押し返してください」 と伝えます。「触れてよいですか」と許可をとった上で、相手の握り拳を上から両手で包み、下方向に軽く力をかけます。
(3)「今あなたの手は、石のように重くなっていると想像してください。私が力をかけているので、実際に重く感じるはずです」と伝えながら、10〜15秒程度、下向きに力をかけます。(中略)
(4)下方に加えている力を緩め、被験者にも手を押し上げるのを止めてもらいます。「力を抜いて結構です。私が手を離したら、今度はあなたの手が風船のように軽くなると想像してください。そうすると手が上にふわっと上がっていきます」と伝えて、両手をそっと被験者の握り拳から離します。
(5)被験者の手が上がってきたのを確認したら、すかさず「どんどん軽くなります。ふわーっと上に上がっていきます。風船のように軽く軽く上に持ち上がっていきます」と暗示を与えていきます。


■5.エリクソンの「間接暗示」
 被験者を肯定するということを突き詰めて意識すると、そもそも「腕が重くなっていきます」というような暗示自体も見直す必要が出てきます。そのような暗示を伝えた時点で、「腕が重くならない」人にとっては、現実と一致しない言葉になってしまうからです。
 そこでエリクソンは、常に被験者に肯定されるようなスクリプトを心がけます。たとえばこの場合であれば、「腕の重さを感じることもできます」ないしは「腕の重さが感じられるかもしれません」と間接的にいえば、もし腕が重くならなくとも、噓にはなりません。誰にとっても当てはまるスクリプトであり、被験者のどんな反応をも許容することになるのです。
 エリクソンによる催眠の話法は「間接暗示」 と呼ばれます。直接的な暗示をさらにオブラートに包むように、より深いところに意図を忍ばせていきます。
 どうやったら、暗示を否定されないのか。少しハードルの高いことを、いかに飲み込んでもらうのか。コミュニケーションの中で相手の「無言の肯定」を引き出すこの考え方は、日常や仕事への応用も利くでしょう。


【感想】

◆イメージとしては何となく知っていたものの、今般改めて「催眠術」なるものをイチから学べた作品でした。

まず第1章では「催眠とは何か」と題して、基礎的な部分をレクチャー。

著者の漆原さんは、世間的に言われる「催眠」のイメージを、以下のように列挙しています。
a:催眠にかかると眠ってしまう  
b:催眠中は自由意思がなくなり、「催眠術師(施術者)」に操られてしまう
c:催眠によって前世の記憶が思い出せる  
d:催眠中に起こったことはすべて忘れてしまう  
e:催眠とはオカルトや超自然的な現象の類である  
f:催眠とは催眠術師の備えた能力である
しかしこれらは、いずれも「間違ったものである」と断言。

逆に「正しいもの」として、これらに1対1で対応しているのが、上記ポイントの1番目です。

この中では特に最後の
F:催眠とは「催眠を体験する人」の備えた能力である
というものが意外だったのですが、それは後から解説されていますので、詳細は本書にて。


◆さらに「催眠」のプロセスとして挙げられるのが、上記ポイントの2番目にある「催眠誘導」と「暗示」です。

今まで両者のセリフだけ聞いていると、違いが特には分からず、同じ1つの過程のように感じていましたが、このように区別されているとのこと(諸説あるらしいのですが)。

これらを踏まえて、本書における「催眠」の定義を、漆原さんはこのように言われています。
「知覚や感覚、感情に関して、何か変化が起こるという期待があったときに、実際にその変化が実現する現象」
以降、この第1章では、催眠の歴史や方向性等についても触れられており、非常に興味深かったのですが、ボリュームの関係からとりあえず割愛しました。


◆続く第2章では、第1章同様に「準備編」として、催眠を具体的に行う前の「ラポール」と「威光暗示」についての解説が。

このうち「ラポール」については、セールス本やらコミュニケーション本で何度も言及されているので、初めて目にした「威光暗示」を上記ポイントの3番目に挙げてみた次第です。

実際、エンタメ系で目にする催眠術師が、奇抜な格好をしているのも、この「威光暗示」を意図しているからとのこと。

まさにポイントにもあるように、「コンテキストへの信頼」を目指しているワケですね。

なお、この第2章の後半部分では「催眠の解き方」が丁寧に説明されており、この辺も親切設計だな、と。


◆そしていよいよ第3章から第5章までは「実践編」として、各カテゴリごとに、催眠のかけ方を指南。

ちなみに催眠には3つのカテゴリがあるそうで、それぞれのカテゴリとその反応率(「スクリプトやタイミングを間違えずに伝えた」前提で)は以下のとおりです。
運 動 暗 示: 70%〜 90%程度の被験者が反応
禁 止 暗 示: 30%〜 50%程度の被験者が反応
感覚・記憶暗示: 10%〜 30%程度の被験者が反応
驚くべきは最初の「運動暗示」の反応率の高さなのですが、これは実は「身体のメカニズムを利用したトリックを暗示と組み合わせることで、『ほぼ確実に現象が起こる』」ように作られているからなのだとか。

また、催眠にかかりやすい人の特徴として、「喫茶店等で隣の人の会話が耳に入ってこない」「考え事をしていて電車を乗り過ごすことがよくある」といったあたりが挙げられていましたから、身近にそんな人がいたら、ぜひ被験者になってもらいましょうw


◆ということで、第3章の「運動暗示」の初っ端に登場していたのが、上記ポイントの4番目の「腕があがっていく」。

実際に自分自身で同じように手を押さえても、手が上がっていくのが分かると思います。

実はこれ、上記で触れた「身体のメカニズムを利用したトリック」であり、筋収縮を利用した「コーンスタム現象」と呼ばれるもの。

コーンスタム現象とは - コトバンク

こうした「勝手に手が動いていく」感覚は、「催眠によって意識せず身体運動が引き起こされるとき」と非常に近いのだそうです。
催眠では、このような感覚を「解離」 と表現します。解離的な感覚を擬似的に体験してもらうことによって、催眠についての被験者の理解を促すことができます。
なるほど、最初にコレを体験してもらうと、上記で触れた「威光暗示」的な効果も期待できそうな。


◆他にもさまざまな暗示をご紹介したかったのですが、一番シンプルな上記の「腕があがっていく」でこのボリュームでしたから、泣く泣く割愛。

どんなことをやらせるかについては、アマゾンのページの「続きを読む」の部分に詳細な目次として列挙されていますので、そちらをご覧ください。

もっとも第5章の「感覚・記憶暗示」は、上でも触れたように反応率が「10%〜 30%程度」ですから、ほとんどダメ元かと。

さらに最後の第6章では、NLP本やモテ本等でも何度か名前を見たことのある、「現代催眠の父」ミルトン・エリクソンについても言及されています。

上記ポイントの5番目でも、そのエリクソンのお話を引用していますが、有名な「イエスセット」や「ダブルバインド」もエリクソンのメソッドだった模様。

なるほど、私たちも知らぬ間に、エリクソンの教えを実践していたのですね。


催眠を理解し、活かすために!

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はじめての催眠術 (講談社現代新書)
はじめに -なぜ「催眠」を学ぶのかー
第1章 【準備編1】催眠とは何か
第2章 【準備編2】催眠を行う前に
第3章 【実践編1】運動暗示
第4章 【実践編2】禁止暗示
第5章 【実践編3】感覚・記憶暗示
第6章 【応用編】催眠を自由に使いこなす
おわりに ー催眠のない世界ー


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【科学的自己啓発書?】『人も自分も操れる! 暗示大全』内藤誼人(2020年01月28日)


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Posted by smoothfoxxx at 10:00
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