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2020年08月03日

【仕事術】『その仕事、全部やめてみよう 1%の本質をつかむ「シンプルな考え方」』小野和俊


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その仕事、全部やめてみよう 1%の本質をつかむ「シンプルな考え方」


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事でも人気だった仕事術本。

著者である小野和俊さんのブログの愛読者であった私にとっては、待望の1冊とも言える作品でした。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
著者は、ITベンチャーの代表を10年以上務め、現在は老舗金融企業のCTO。2つのキャリアを通して、それぞれがどんな特徴を持ち、そこで働く人がどんなことに 悩み、どんな風に仕事をしているのかを見てきました。
その中で、ベンチャーにも大企業にも 共通する「仕事の無駄」を見出します。
本書は、具体的なエピソードを交えながら、仕事の無駄を排除し、生産性を高めるための「仕事の進め方・考え方」を解説するものです。

なお、版元がダイヤモンド社さんですから、Kindle版は「10%OFF」とお得になっています!





Drawing UML / joone4u


【ポイント】

■1.「谷」を埋めるな、「山」を作れ!
 欠点や弱点、不足している点。私はこれらを「谷」と呼んでいる。「谷」は強烈な引力を持ち、少しでも気を抜くと、人は欠点を補うことばかり考えてしまう。
 しかし考えるべきは「山」—— 自社製品の長所であり、ユニークな価値のほうだ。(中略)
「谷」に引き寄せられる理由は、「社内で話を通しやすい」「自分がラクだ」など、自社または自分都合がほとんどだ。
 しかし本当に重要なのは顧客視点で考えること。どれだけ「谷」を埋めても、「山」がなければ、その製品の特徴は見えない。(中略)
 最初にやらなければならないのは「山」を明確にすること。「山」がはっきりしていないのに「谷」を埋めることばかり考えるのは、ラクだが無駄な仕事だ。
 しかも、「谷」を埋めるにも各種会議や資料作成など、時間とコストがかかる。それに「山」の位置づけ次第で、「谷」を埋める戦略も変わってくる。「山」を明らかにしないと、「谷を埋める」プランも台無しになるのだ。


■2.PDCAではなくDCAPが向いている3領域
(1) 未経験・未知の領域
 これらの領域に対しては、サッカーの例のように、まずやってみることが理解の最短ルートだ。
(2) 既知だが不確実性の大きい領域
 経験したことのあるものでも、置かれた環境や顧客の特性によって、まったく違った結果になることがある。
 例えば、SNS登場前のマーケティングに慣れ親しんだ人が、SNSマーケティングに初めて挑戦するような場合だ。不確実性の高い領域にはDCAPが向いている。
(3) 途中で要件が変化していく領域
 建築物であれば、作り始める前に設計が確定するが、ソフトウェア開発では、作りながら望ましいあり方を模索し、あえて動的に設計を変更させていくことがある。それに伴い、内部の設計もどんどん変わっていく。こうした領域にはDCAPが向いている。


■3.「ラストマン戦略」で頭角をあらわせ
「ラストマン戦略」とは、グループ内で自分が一番になれそうな領域を決め、「あの人がわからないなら、誰に聞いてもわからないよね」という、いわば最後の砦とも言うべきスペシャリストを目指す成長戦略だ。
「グループ内で一番」というと尻込みするかもしれない。しかし「グループ内」は課や部といった小さい単位でいい。そこでラストマンになれたら、一段大きい組織でのラストマンを目指す。これを繰り返していく。逆に、もし小さなグループでさえラストマンになれなかったら、その領域は向いていなかったということだ。その場合はラストマンを目指す領域を変えていく。(中略)
 入社したばかりの新人であっても、チームに転属したばかりの人でも、ラストマンを目指すとなると周囲から頼られる。だから、「すみません、ちょっと調べてみましたが、わかりませんでした」と簡単には言わなくなった。
 次第にインターネットで調べてもわからないことを自分で解決するようになった。こうした姿勢の変化が、その人のレベルを引き上げていくだけでなく、チーム全体のレベルを引き上げていく効果もあるのだ。


■4.戦略的に「見せ場」を作る
 意図的に、そして戦略的に仕事の中で「見せ場」を作ろう。
 例えば、上司の指示で資料をまとめることになったとする。普通にやれば1か月くらいかかる資料を、ここぞとばかり全力で集中して終わらせる。もし3日か4日で驚くようなクオリティで完成させることができたらどうだろう。上司はアッと驚き、あなたを見る目も変わるはずだ。
 こうした「見せ場」を作ることは、自らを「ユニークな力を持つ人」に育てていくことそのものだと言える。「見せ場」を作るとは、言い換えれば「普通ではない成果を出すこと」だからだ。
 ちょっとしたことでも全力でとり組んで、相手の期待を上まわる成果を出す。こうした努力の積み重ねの結果、いつの間にか人より抜きん出た能力が身についていく。


■5.意見を傾聴して意思決定する
 意見が分かれたときはどうすればいいのだろうか。
 やり方は簡単だ。「今日は議論をするのではなく、みんなの意見を聞きたい。それをすべて聞いたうえで、チームとしての方針を決めたい」と宣言する。そして、意見がある人から順に手を上げて発言してもらう。発言中は神聖な時間として気軽に反論せず、全員でその人の話を最後まで聞く。
 全員の意見を聞いたあと、「みんなの意見はよくわかった。チームとしての結論はこれにしよう」とリーダーが決める。
 この方法にはモデルがある。大学生のとき、本で読んだか、授業で聞いたかはもう覚えていないが、「極端に争いが少ない、ある民族の会議の仕方」がベースになっている。紛糾しそうな会議で試しにやってみたところ効果てきめんだったので、その後ももめそうな議題についてはこの方法で意思決定している。


【感想】

◆なかなかに有益なTIPSに溢れた仕事術本でした。

著者の小野さんをご存知ない方のために簡単に説明しておくと、大学卒業後、いったんはサンマイクロシステムズに入社しますが、1年半後にご自身でベンチャーを立ち上げ、経営に携わります。

そのベンチャーの業績は好調でしたが、その後資本提携によりセゾン情報システムズのCTOに就任。

さらに2019年からはクレディセゾンのCTOを勤めてらっしゃるのですから、まさに超大企業の役員なわけです。

とはいえ、元はと言えばガチなプログラマーですから、ある意味真逆な経験をされてきた次第。

それは書かれる内容が奥深かかったとしても当然のことでしょう。

実際、下記の参考記事にもあるように、名の知れたプログラマーさんの手がけた仕事術本は、どれも汎用性が高い気がします。


◆そして本書でも、プログラマーさんらしく(?)比喩的表現が多々。

たとえば上記ポイントの1番目は、第1章のタイトルそのままなのですが、これこそ実社会における長所と短所の正しい考え方だと思います。

ちなみに小野さんもベンチャー時代に、自社主力製品とマイクロソフトの製品が競合した際、両者を比較して、自社製品の「谷」を無視し、「山」の価値を高めることに注力したとのこと。

……普通だったら会社規模から考えてお手上げだと思うのですが、よく戦い抜かれたものです。

また、この手の「山」を作るプレゼンも400回ほどされたそうで、プレゼンにおける「3つのコツ」を紹介されていますから、こちらもぜひご確認ください。


◆続く第2章では、「ハンマーと釘」が章題であり、さまざまな「ハマりやすい罠」についての警鐘が。

詳細は本書をご覧頂くとして、結局は「誰かの喜びに寄与しない」技術やアイデアは、意味がないんですよね。

またこの第2章からは、上記ポイントの2番目の「DCAP」に関する留意点をご紹介してみました。

ここでは「向いている3領域」を抜き出しましたが、実は本書では「不向きな3領域」も掲載されていますので、気になる方は要チェックで。

なお、今流行りの(?)「DX(デジタルトランスフォーメーション)」に関するエピソードで、小野さんたちのチームが、下記のAmazon Echoのコンペの法人部門で優勝したいきさつは、非常に興味深かったです。

Alexaスキルアワード2018受賞作品の発表 : Alexa Blogs


◆一方、第3章の「ラストマン戦略」も、上記ポイントの3番目に挙げたとおり。

仕事術というよりも、キャリア戦略に近いですが、出世するにせよ、ヘッドハンティングされるにせよ、重要なことだと思います。

また同じ第3章では、「『最強のワンノブゼム』になるな」というTIPSも腑に落ちまくりました。

これは上記ポイントの1番目とも関係するのですが、要は「すべての要素について満点をめざすことをやめる」と同時に、むしろ「マニュアルがないことに取り組む」べき、ということ(詳細は本書を)。

さらに上記ポイントの4番目も第3章からで、「ここぞ」という時に力をだすことを習慣化すると、抜きんでた能力になっていくのだそうです。

ただし「見せ場」は必ずしも大きなことではなく、ごく些細なこと(メールの即レス等)でも良いとのことですから、私も日々心掛けたいところ。


◆なお、第4章は飛ばして(すいません)、第5章はコミュニケーションやマネジメントのお話が登場します。

たとえば上記ポイントの5番目の「意思決定」のTIPSもその1つ。

相手の意見を徹底的に「聴く」ことにより、会議等も紛糾せずに済むようです。

また、これは1対1でも同様であり、社内外のキーマンの合意を取る際にも、「『相手の言い分』を徹底的に受け止める」必要があるとのこと。
 仮にキーマンの指摘がプロジェクトやそのメンバーに関するネガティブなものだったとしても、いったんは相手が思っていることを全力で理解するよう努める。
 キーマンの賛同が得られていない場合、最初にやるべきなのは相手をどう説得するかの作戦を考えることではない。相手の考えを全力で理解することなのだ。重要なのは説得テクニックではなく、相手を理解しようとする歩み寄りのスタンスだ。
もし誰かを説得したいことがあれば、ぜひ思い出してみてください。


仕事術本好きなら、必読の1冊!

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その仕事、全部やめてみよう 1%の本質をつかむ「シンプルな考え方」
はじめに:ITベンチャーと老舗金融企業で学んだこと
第1章 「谷」を埋めるな「山」を作れ ――市場で勝つ
第2章 「ハンマーと釘」の世界へようこそ ――正しく実行する
第3章 「ラストマン戦略」で頭角をあらわせ ――自分を磨く
第4章 「To Stopリスト」をいますぐ作る ――生産性を上げる
第5章 職場は「猛獣園」である ――チームで戦う
おわりに:山田先生の教え


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【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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