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2020年06月26日

【PDCA】『PDCAマネジメント』稲田将人


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PDCAマネジメント (日経文庫)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事にて、一番お求めいただいた1冊。

ご存知の方も多いと思いますが、「日経文庫」というのは、形態としては「新書」になりますので、あらかじめご留意ください。

アマゾンの内容紹介から。
本書は、PDCAを、職場や会社に、組織として導入するための実践的ノウハウを解説したものです。著者はトヨタの自動車工場でPDCAの作法を徹底的に学び、マッキンゼーを経て、様々な業界の事業再生に関わってきた経営コンサルタントです。ビジネスストーリー『戦略参謀』『経営参謀』の著者としても知られています。PDCAのそもそもの由来に始まり、なぜPDCAを生かせていない会社が多いのか、「組織のPDCA」を実践するための作法、P(挑戦)・D(実施)・C(学習)・A(進化)それぞれのプロセスの要諦まで、事例を挙げながら丁寧に解説していきます。PDCAという言葉や概念は知っているものの、会社や組織運営に生かせていないと感じているすべてのビジネスピープル、とりわけマネジャー、役員、経営者にとって必読の書です。

なお、中古に送料を加えると定価を上回りますから、若干お得なKindle版がオススメです!





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【ポイント】

■1.「丸投げ」が日本企業のPDCAの問題点
 よく、手間と費用をかけて作成した立派な「店舗オペレーションマニュアル」が、印刷したそのままの状態でしわひとつなく、バックスペースに置いてある光景を見ることがあります。
 マニュアルをまとめた本部側は「落とし込み」と称し、簡単な説明会を開催する程度でマニュアルを現場に送り付けます。そしてトップに「我々はマニュアルをつくりました。あとは、現場で使ってもらうだけです」と報告して、業務は完了。その後の実行は現場の責任であると「丸投げ」し、本音では、あとは「我、関せず」となります。
 これがまともな欧米企業であれば、トップから「この間作って、現場に渡したマニュアルの効果はどうだ」から始まり、少なくとも「主要な現場責任者からのヒアリングに基づく、効果と改善点をまとめて提出せよ」程度の指示は、当たり前のようになされます。そして、やったらやりっぱなしの仕事をしていることが発覚すれば、その時点で「その任に非ず、明日から来なくて良い」となります。


■2.簡単にできる「CからP」
 まず、各業務でPDCAを廻している担当者または担当マネジャーに赤ペンを持たせます。そして現在、月次、週次の定例会議で使っている帳票上の、重要だと感じた数字に丸印をつけてもらいます。
 その横に赤ペンで「新規顧客が取れていないため、客数の微減傾向が続いている」「売上の見込み違いによる欠品で機会損失が発生」など、各人が読み取った「意味合い」を記述します。
 さらに当週、当月どのようなアクションをとるのか、「対応」を書いてもらいます。会議の際にはこれらを記入した帳票のカラーコピーを配布させます。
「ドライバー」たる上長は、まず、丸印がついた数字が、全体観の中から注目すべき数字なのかどうかを確認することができます。上長として気になる数字に丸印がついていなければ、その理由を問うことができます。そして、数字について書かれた「意味合い」が適切と思うか、考えるべき優先順位が理にかなっているか、必要な裏取りを事実ベースで行っているかなどを確認したうえで、「対応」に書かれた打ち手についての議論をすることができます。
 これを行えば、明日からでも、各担当者が廻しているPDCAにおける、「CからPへの思考の流れ」を確認できるようになります。


■3.仮説思考により、「解」の方向性を探索する
 仕事のできる方が部下と話しているのを聞いていると、
「この数字はどうなっている?」
「それは、○○が起きているのではないのか?」
 ほぼこの2つの問いを繰り返しながら問題点を特定し、答えを導き出しています。
 1つ目の問いは、「差異」や「変化」が起きていそうな事実の確認。
 2つ目の問いは、その数字を見て想定した「仮説」です。
 そして、仮説が正しいかどうかを確認するために、さらに次の数字を確認し、これらの2つの質問を繰り返しながら、成功や失敗の因果を解きほぐし、成功確率の高い打ち手を導き出します。本書で使っている表現を使うと、1つ目の問いが、適切な切り口の確認、つまり事実の「見える化」。2つ目の問いかけが「意味合い」の抽出です。
 この2つを繰り返す、「解」を探索するアプローチを「仮説思考」 と言います。


■4.ドン・キホーテのPDCA運営法
 日本の多くの小売業チェーンが抱えている課題に対し、解決策となる組織運営方法を見い出し、堅調に事業を伸ばしているのが、皆さんおなじみのドン・キホーテです。
 一見、乱雑極まりない売り場ですが、PDCAを廻す売り場の単位を、160分類×店舗数に細分化したセル(マトリクスのマス目)に分けて、責任を持させる部門別の管理体系になっています。それぞれのセルには責任者がいて、売上、粗利率、回転率の伸長を評価指標として、日々それらの数字を最大化すべき知恵を使い、権限、責任、そして報酬、処遇も連動させています。
 これが、安田鷲彁瓩「権限委譲」と呼ぶ組織運営であり、担当セルについては、社長と同じ「権限」を持ち、商売人としての腕を磨きます。現場の社員たちが日々の業務として自分で考え、PDCAを廻します。彼らの業務時間の効率を最大にするためのITシステムが必要になります。


■5.ITによりカイゼンを効率化する
 たとえば商品バイヤーが、システム上のデータを加工し、見たい切り口から見る分析をひとつ行うのに10分かかるとします。これがもし20秒で結果を見ることができるシステムになっていれば、単純計算すれば、バイヤーは同じ時間で30倍の分析結果を得ることができます。経営視点で考えれば、このバイヤーと同じレベルの人材をあと29人雇ったのと同じ効果が得られたことになります。仮に、システムにバイヤー20人分の人件費相当の費用が掛かったとしても、投資は正当化できることになります。
 具体的な進め方としては、小売業の場合であれば、まず現システムを使って、優秀なバイヤーとともに分析のあり方のプロトタイプを作ることから始まります。どのような帳票が最適なのか、どのデータが必要なのかを明らかにし、システムの与件を明らかにしていきます。


【感想】

◆かなり堅めな内容の「剛速球一直線」(?)な作品でした。

元から日経文庫さんの作品は、どれも「いかにもビジネス書」風な感じですが、本書の場合、今まで読んできたPDCA本と比べても、ややハードルが高い感じ。

1つには、当ブログでご紹介してきたほとんどすべてのPDCA本が、「個人向け」であったのに対して、本書は「組織向け」だからかもしれません。

そしてこの「組織のPDCA」というのは、実践も難しい印象を受けました。

そのせいなのかどうなのか、たとえば本書の第1章から抜き出した、上記ポイントの1番目にあるように、多くの日本企業の場合「丸投げ」で済ませてしまっているのだそうです。

またほかにも、ワンマントップが自分の頭の中で構築した「個人のPDCA」を、後続(2代目等)が引き継げなかったケースも、低迷状態へとつながる模様。


◆一方本書の第2章では、改めて「PDCA」とは何たるかが解説されています。

本書ではPDCAそれぞれについて触れられているのですが、じゃあ実際になにをどうやるか、について具体的に触れられているのが、上記ポイントの2番目。

ここでは、今現在使っている帳票を用いた、「チェックからプランへの思考の流れ」を確認する方法が明らかにされています。

……ちょっと引用部分が長くなってしまいましたが、本書でこの部分が、一番具体的なTIPSの1つなのでご紹介したかった次第。

本書では、実際の帳票の写真も掲載して説明がなされていますので、ぜひご確認ください。


◆さて、第3章からは、PDCAのそれぞれをテーマにした章割りが展開されています。

まず第3章は「P」のプランを。

上記ポイントの2番目にあるように、最初の「P」は「C」から始まるのですが、そもそもの「解の方向性」を見い出す必要があります。

そこで「押さえどころ」が3つ紹介されているのですが、そのうちの1つが、上記ポイントの3番目の「仮説思考」。

本書で紹介されていた例では、ある企業で、過去数年間の店の売上を伸長率順に並べ、売上を伸ばしてきている店と不振状態にある店を区分したところ、チームメンバーの1人が、
「伸ばしている店と不振状態の店名を見ると、しっかりマネジメントができている店長の店と、そうではない店長の店に分かれている感じがします」
と口にしたのだそうです。

そこで詳細を調べてみると、実際に不振店では、店長とスタッフの間のコミュニケーション不足が判明。

このように何らかの「ファクト(事実)」から仮説を立てて、それを検証していくワケですね。


◆続く第4章は「D」ということで、言及されていたのが、上記ポイントの4番目のドン・キホーテ。

ここで登場する「権限委譲」に関しては、以前ご紹介したこの本でも触れられていました。

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安売り王一代 私の「ドン・キホーテ」人生 (文春新書)

参考記事:【夜の行動経済学?】『安売り王一代 私の「ドン・キホーテ」人生』安田隆夫(2015年12月10日)

ちなみに、アメリカ最大手の小売業であるウォルマートでは、店舗ではなく本部の商品部が、諸々の数値の責任を負うのだそう。

違う形とは言え、日米の安定的な成長を果たしている小売業2社は、このようにPDCAを廻す責任が明確に定義されているのが興味深いです。


◆なお、第5章の「C」については、上記ポイントの2番目でも登場したので、1つ飛んで第6章の「A」へ。

本書では「A」をカイゼンとしており、上記ポイントの5番目では、IT導入によるカイゼン推進を検討しています。

実際、ウォルマートではシステム投資に熱心であり、米国ペンタゴンの有する容量を超えるとも言われるITシステムにより、PDCAサイクルを1日で修正できるとのだそう(一般的な小売業だと1週間)。

そこまではいかなくとも、本書では、年間1億円以上の料金を払って、加盟するチェーンからのデータをExcelに落とし、営業会議のデータとしている国内企業も紹介されていました。
 当初は、数字が並んでいるだけの帳票でしたが、毎月、帳票に「カイゼン」を重ね、進化させました。その結果、数か月で図表23のような月次帳票になり、週次の打ち手で、売上が上がったのか、客数が増えたのか、成約率が上がったのか、粗利高はどのくらい増えたのかが一目瞭然の帳票になりました。
引用部分にある「図23」はここでは掲載できませんが、エクセルシートをグラフに加工して、動きや特徴がひと目でわかるように!

それをもとにPDCAを廻した結果、見事に成長軌道入りを果たすことができたのだそうです。


組織のPDCAを基礎から学べる1冊!

4532114241
PDCAマネジメント (日経文庫)
第1章 PDCAとは何か? 何のために使われるのか?
第2章 PDCAの基本作法
第3章 P:取り組むべき課題の定義と施策の決定
第4章 D:確実な実施のために行うべきこと
第5章 C:結果から「意味合い」を読み取り、次の打ち手につなげる
第6章 A:カイゼン PDCAの精度向上とバリュー・チェーンの進化


【関連記事】

【仮説検証】『売れる仕組みをどう作るか トルネード式 仮説検証(PDCA)』永井孝尚(2019年02月11日)

『鬼速PDCA』が想像以上に凄い件について(2016年10月24日)

【PDCA】『自分を劇的に成長させる! PDCAノート』岡村拓朗(2017年01月16日)

【夜の行動経済学?】『安売り王一代 私の「ドン・キホーテ」人生』安田隆夫(2015年12月10日)


【編集後記】

◆1本日の「Kindle日替わりセール」から。

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泣くなら、ひとり 壇蜜日記3 (文春文庫)

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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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