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2020年06月21日

【刑事力とは?】『「刑事力」コミュニケーション』佐々木成三


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「刑事力」コミュニケーション


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「ぴっかぴか小デジ!感謝祭 2020年夏」からの1冊。

3月の終わりの未読本記事にて取り上げていた、異色のコミュニケーション本です。

アマゾンの内容紹介から。
“刑事は究極のサービス業”落としのプロと呼ばれた元敏腕刑事が14年の現場経験から編み出した、相手の心を開き「この人に協力したい」と思わせる“優位に立てる”テクニック=「刑事力」はビジネスや日常生活でも使える!

なお、中古がそれほど値崩れしていませんから、Kindle版が実質400円弱お買い得です!





Northern Constabulary - Fallen Hero Centenary - PC Thomas King of Inverness-shire Constabulary / conner395


【ポイント】

■1.相手の主観で考える
 私たちは通常、自分がされて嫌なことは相手も嫌だろう、という感情の共有を基盤にコミュニケーションをとっています。でも犯罪者の思考は、一般的に考えられる人生経験や想像力のキャパシティーを超えていることが多く、そのため取り調べでは「自分はこう考えるから、相手も当然そう考えるだろう」という共有の予測は全くあてになりません。
 私は人を殺そうと思ったことは一度もありませんが、人を殺したいと思った被疑者の思考をたどらなくては、事件の真相に行きつくことはできません。ですから自分の主観ではなく、相手の主観でものごとを考える力が、どうしても必要なのです。(中略)
「なるほど、こういう経験をしてきたから、こう考えるのか」
 と相手の主観に立つようにしてみて、納得できることや発見があればしめたもの。苦手意識はかなり薄まるはずです。


■2.自己紹介で自己開示する
 日常生活でも、初対面の相手と少しでも親しくなりたければ、まず自己開示することが必要です。中でも自己開示力が試されるのは、大勢の前での自己紹介の時です。「自分から声をかけるのが苦手」という人ほど、自己紹介を簡単に終わらせてはいけません。上手な自己紹介は、相手から話しかけてくるきっかけになるからです。
 自己紹介は、2、3の長所と1つの短所を必ず入れるようにしてみてください。
「佐々木成三といいます。長所は明朗快活でポジティブ思考、趣味は野球で巨人の大ファンです。短所は忘れ物が多いことです」
 というふうに。そして、その理由も短かく入れます。もしその後で忘れ物をしても、「自己紹介でも言ってたよね、本当なんだな」とネタにさえなり、「巨人で好きな選手は?」なんて話しかけてきてもらえたりして、必ず話題が広がって距離が縮んでいきます。


■3.感謝を「見える化」する
 ある事件で、同僚の刑事が民間会社に協力依頼をしに行ったのですが、断られて帰って来ました。困ったなあ、と課で話していた時、上司から、「佐々木、おまえこういう交渉が得意だろう、行ってこい」と命じられて、私が再度、お願いに伺ったのです。
 前の刑事が断られた担当者に会って名刺交換をしたところ、
「佐々木成三さんって、いつも照会協力依頼書に付箋を貼って送ってくださる佐々木さんですか。おじいさんみたいな名前だから年配の方かと思ったら、こんな若い刑事さんだったんですね」
 と言われたのです。私がびっくりしていると、
「うちの会社では、佐々木さんは有名ですよ。全国の警察の中で照会協力依頼書にお礼の付箋をつけてくれるなんてめったにないですよ。どんな刑事さんなんだろうと、みんなでいつも話していたんです」
 とのこと。そこで改めて日頃の感謝を伝え、今回の協力を依頼したところ、快く受けていただけたのです。


■4.先入観を捨て去る
 刑事として捜査活動を行う中で、「先入観を持たずに事件現場を見る」ということの重要性を、何度も思い知らされました。「自分は特別な先入観は持っていない」つもりでいたのですが、それはただ、自分の先入観に無自覚なだけだったということにも気づかされました。
 特に若い頃は、現場の報告書を書いては上司に「これではだめだ」と何度も突き返されていました。
「テーブルに、ペットボトルに入った水が置かれていた」
 と、見たままを書いたつもりでも、これではダメ出しをされます。
「なぜ水だとわかる。実際に飲んでみたのか」
 と聞かれるでしょう。ペットボトルの容器に入っている透明な液体=水、という先入観があるからこう書いてしまうのです。「見たまま」を書くのなら、
「テーブルに、ペットボトルの容器に入った透明な液体が置かれていた」
 と書かなくてはならないのです。水だと決めつけて報告書を書くと、その液体が鑑定に提出されず、誤った情報が独り歩きし、誤った結論に結びついてしまうこともあります。常に「これは何だろう」という疑問を持って現場を見ないと、重大な見落としをしてしまうおそれがあるのです。


■5.嘘には「鍵」が隠されていると思う
 被疑者を取り調べていると、「これは嘘ではないか」と疑念を持たざるを得ない供述に出合うことも少なくありません。そういう時に私は「警察を馬鹿にしているのか」と頭にくるよりは、むしろ嬉しくなります。嘘にはその人にとって重要な鍵が隠されていて、そこから真実をひもとく糸口が見つかることが多いからです。
 ですから、嘘だとこちらがわかっている状況でも「そんな話は嘘だろう」と聞き流すのではなく、相手の話を一度、全部聞いて受け止めてみます。その後に「この人はなぜ、こういう嘘をつくんだろう」 と考え、嘘をついた理由を推察して、そこからアプローチをかけるようにしています。


【感想】

◆刑事らしからぬ(?)佐々木さんの活躍ぶりが印象的な作品でした。

まず上記ポイントの1番目は、第1章の「日常コミュニケーションに活かせる『刑事(デカ)力』とは?」からのもので、この1番目は刑事さんらしい、と言えなくもありません(普通はもっと自分の主観で考えているイメージが強いですが)。

ところが、第2章は章題からして「第一印象アップに全力を注げ!」とまるでビジネスシーンのお話のよう。

割愛した「目先の小さなプライドよりも大きなプライドを持つ」という節では、捜査で話を聞いた少年に横柄な態度を取られつつも、下手に出て貴重な情報を引き出すことに成功するのですが、同行していた若い巡査に「佐々木さんにはプライドがないんですか?」と悔しがられます。

それに対して佐々木さん曰く、「俺のプライドは、この事件を解決することだ」と。
 横柄な態度をとられたからといって「おまえになんか情報もらわなくていいよ、出ていけ」とキレたら、重要な情報がもらえず、事件の真相が解明できないかもしれません。「相手に見くびられたくない」なんて、小さなプライドです。目先の小さなプライドよりも、もっと先の「事件を解決する」という大きなプライドのために仕事をするべきなのです。
なるほど「刑事は究極のサービス業だ」と言われる佐々木さんらしいお言葉です。


◆同じく「刑事らしからぬ」お話が上記ポイントの3番目。

警察は民間会社に調査の協力を依頼する際、「照会協力依頼書」なる公文書を送るのですが、警察内では長年の慣習で「警察からの照会依頼があったら、民間会社は回答して当然」という感覚の人が多かったのだそうです。

そんなところに
「お忙しいところ申し訳ありません。○○事件の犯人検挙のため、ご協力お願いします。よろしくお願いします。佐々木成三」
なんてメモが付いた依頼書が届いたら、それは「どんな刑事なんだろう」と疑問に思います罠w

私も一応、書類を送付する場合には、手書きの付箋を付けていますが、今後も続けた方が良さそうですね。

……もっとも今後は、書類もPDFでメール送付するのが主流になるでしょうけど。


◆続く第3章は、「あらゆる情報を疑う『目』を持て」という、こちらは刑事さんらしいスキルのお話が登場。

さっそく上記ポイントの4番目にある、「ペットボトルに入った水」ではなくて、「ペットボトルの容器に入った透明な液体」という指摘もなるほどです。

あまり見たことはありませんけど、何もパッケージのない透明なペットボトルの中身が、日本酒である可能性もあるでしょうし。

他にも放火現場にライターが落ちていたら、当然これが証拠物件と思いそうですが、佐々木さんは先輩に
「これが点くかどうかをまず確認しなきゃだめだろう」
と言われたのだとか。

ここを読んで私が思い出したのが、結構有名なこのクイズです。
父親とその息子がドライブの途中事故に遭い、父親が死亡してしまいました。息子は救急車で病院に運ばれ、手術を受けることになりましたが、担当医は「彼は私の息子なので、手術できない。」と言いました。父親は死亡しているのに、こんな話はあり得るのでしょうか。
【頭の体操】 問題31

ビジネスシーンでも、似たような思い込みには注意すべきでしょうね。


◆また、第4章から抜き出した上記ポイントの5番目は、刑事さんらしい考え方だな、と。

ただ、確かに「嘘をつく」という行為には、隠したい何かがあるワケですから、そうしたい理由からアプローチすると、真実が見えてきそうです。

ちなみにその「嘘」を突き崩す方法として紹介されていたのが、「何度も同じことを聞く」というTIPS。

というのも、「嘘の記憶は薄れやすい」からだそうです。
 本当のことであればしっかり記憶に残っていますが、 嘘の記憶は薄れやすい ので、3日後に同じことを聞くと詳細を忘れてしまっていることが多いのです。嘘をつき続けている人には、自分の記憶の矛盾を追及され続けることは大きなプレッシャーになります。
お子さんに嘘をつかれていると思ったら、お試しアレ。


日常生活に「刑事力」を取り入れるために!

B086JT5PGW
「刑事力」コミュニケーション
第1章 日常コミュニケーションに活かせる「刑事力」とは?
第2章 第一印象アップに全力を注げ!
第3章 あらゆる情報を疑う「目」を持て
第4章 取り調べの極意 相手と同じ着地点を探れ!
第5章 今日からできる「刑事力」アップ・トレーニング
第6章 捜査で知った人が犯罪者になる理由


【関連記事】

【観察眼】『警視庁捜査一課長の「人を見抜く」極意』久保正行(2014年05月26日)

【99%?】『FBIトレーナーが教える 相手の嘘を99%見抜く方法』から選んだ嘘つき の7つの特徴(2012年09月09日)

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【読心術】『心を上手に透視する方法』トルステン・ハーフェナー(2011年09月05日)

知らないと損する『嘘の見抜き方』(2013年05月17日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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21世紀落語史〜すべては志ん朝の死から始まった〜 (光文社新書)

雑誌「BURRN!」の編集長が落語好きとは存じませんでしたが、中古があまり値下がりしていないこの本は、Kindle版が500円以上お得。

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植物はなぜ動かないのか ──弱くて強い植物のはなし (ちくまプリマー新書)

過去のセールで何度か見たことのある植物本は、Kindle版が500円弱、お買い得。

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今日から行動力を一気に高める本―――自分を効率的に動かす「やる気」マネジメント (知的生きかた文庫)

下記のように当ブログでもご紹介済みである小山龍介さんの作品は、「299円」というお値段ゆえ、Kindle版に軍配が上がります。

参考記事:【モチベーション】『今日から行動力を一気に高める本―――自分を効率的に動かす「やる気」マネジメント』小山龍介(2018年04月03日)


【編集後記2】

◆今日レビューしたご本も対象となっている、「ぴっかぴか小デジ!感謝祭 2020年夏」で人気があったのは、この辺の作品でした(順不同)。

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昨日も22時に寝たので僕の人生は無敵です〜明日が変わる大人の早起き術〜

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「刑事力」コミュニケーション

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まんがでわかる ECビジネス

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あなたの味方が増える 魔法のToDoリスト

宜しければ、ご参考まで!


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