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2020年05月19日

【思考術】『考え続ける力』石川善樹


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考え続ける力 (ちくま新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、前作に当たる『問い続ける力』が、当ブログでも大人気だった石川善樹さんの最新作。

前作同様、テーマに沿った「創造性の達人」との対談によって、テーマを深く掘り下げてらっしゃいます。

アマゾンの内容紹介から。
前著『問い続ける力』は、「考える」ためには「問う」ことが不可欠だという一冊だったが、この本ではいよいよ「考える」ことそのものを追求していく。まずは著者自身が目標とする「創造性のスタイル」を明らかにする。さらに、安宅和人、濱口秀司、大嶋光昭、小泉英明、篠田真貴子との対談を通して、「考え続ける賢人」たちの頭の中を見せてもらう。知的刺激に満ちた「思考シリーズ」新書の第2弾。

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thinking / jean-louis zimmermann


【ポイント】

■1.三種類の思考モード
 実は「男女の間に友情は成り立つのか?」といった世の中で考え尽くされた問題と、「人工知能はファッションにどう役立つのか?」といった誰もあまり考えたことのない問題では、解決に適した思考法は異なります。というのも、分析すべき情報量が違うからです。何も調べずに考え始められるような新しい問題には「直観」が有効です。一方で他人の思考をある程度調べなければ解決に結びつかない問題では、「論理」を使って情報を整理する必要があります。一方で、あらゆる人に考え尽くされた問題を解くには、「大局観」が必要になってきます。なぜなら、大量の情報を新しい切り口で考え直して、誰も考えていない空白地帯を見つけなければ、答えにはたどりつかないからです。


■2.まず新しくしてから質を高める
 たとえば、東京で生まれたサービスは質が高くなってしまっているから、地方展開が難しいでしょう。こういう言い方をしては失礼かもしれませんが、ニトリにしろ、ユニクロにしろ、地方発のロークオリティのもののほうが、いろんなターゲットに響きやすい。彼らが質を上げるのは最後です。
 ですから、芭蕉に私たちが学べることがあるとすると、「まずは質の高さはどうでもいい。1回新しくした後に質を高める。これが日本流のThink Differentなんじゃないか」ということが言えるわけです。逆に、先に質を高めてしまうと、いわゆる「イノベーションのジレンマ」に陥ってしまう。既存顧客なり既存市場に過剰適応してしまって、新しく現れた「質は低いが新しいもの」に駆逐されてしまうのです。


■3.今の時代における「あたらしい教養」
安宅 教養というものを、ローマ、ギリシア時代の自由人とそれ以外の人を切り分けるリベラルアーツ、人間を自由にするための学問だと考えると、今は、当時の自由七科(文法学・修辞学・論理学の三学、および算術・幾何・天文学・音楽の四科) とは少し異なってきていることはほぼ明らかです。
 ではなにかと言えば、第1に、母国語、第2に世界語、そして第3に問題解決能力だと思います。母国語と言っているのは、文章や相手の言っていることが理解でき、明確に考えを表現し、伝え、議論することができる力。世界語、現在は英語、と言うのは母国語と同様な能力に加え、情報のタイムリーな収集能力、言うべきことを敬意を持って的確に伝える力です。問題解決能力は、問題設定力であり、課題や対象を切り分け、整理する力、意味合いを出す力、以上を踏まえ、実際に結果につなげる力です。
 ここにデータやAIの持つ力を解き放つ力、データリテラシー、が4つ目の軸として加わって来ているというのが僕の基本的な見解です。


■4.「アイデア&マス」を対で考えるクセをつける
濱口 たとえば、「ロジックとアイデアは必ず対にすること」が重要だと思います。アイデア&マス(idea & mathematics)の交点が、大切だからです。アイデアだけやるコンサルティング会社はいっぱいあります。でも今はみんな賢いから、「アイデアはおもしろいけど、それしかないの? どうやって機能するの?」ということを説明できないことがある。その一方で、マスマティックをやるコンサルティング会社もたくさんある。でも彼らにはアイデアがないわけです。両方できる会社が少ない。
 その理由はなにかというと、ツールがないからです。アイデア好きのヤツらが集まればアイデアは作れる。論理好きなヤツらが集まれば論理はできる。でも、ツールがないから、融合しない。だから教養として重要なのは、「アイデアがあったら、必ずそれをマスマティックにする」「マスマティックを思いついたら、必ずそれをアイデアにする」というクセを身につけることです。


■5.イノベーションには出口が大事
大嶋 最初の1クールでは「ゼロからイチ」を生み出し、次は「イチから10」をやり、3クール目で「10を1000や1万」にする、つまりは事業化するという流れです。そうやって9年単位でものごとを考え、9年先を見据えていくことがイノベーションにつながります。
 その際重要になってくるのが、出口戦略です。入口のイノベーションは、時期はいつでもいいんです。偶然生まれるから、タイミングというものはない。でも、出口はタイミングが大事です。早くても遅くてもダメ。これからイノベーションを起こそうという人は、入口と出口の見極めを心がけた方がいいと思います。
 もちろん、入口の素性がいいことが大事です。入口の素性が悪い場合は、出口も大きくなりません。


【感想】

◆当初私は、本書が『問い続ける力』の続編だとはまったく気が付かず、著者名でブログ内検索をして、初めて前作をレビューしていたことに気が付きました。

……本来であれば、定例の未読本記事に当然載せてしかるべきところ、申し訳ございませんでした。

さて、その前作では、当ブログではおなじみの出口治明さんや二村ヒトシさん、BCGの御立さんほか、合計9名の方が登場していたのに対して、本書では約半分の5名に厳選。

ただし、その5名のいずれもが「全く異なる複数分野で創造性を発揮された」ことのある方であり、著者の石川さんは、それを「直に観る」機会があったのだそうです。


◆第2章以降では、著者の石川さんが前作同様、各章一人ずつ対談していくのですが、それに先立ちまず第1章では、「思考の方法」についての言及が。

上記ポイントの1番目にあるように、思考は「直感」「大局観」「論理」の3つに分類されるとのことです。

なお、「直感」は「アイデアの量をとにかく出す」ときに活性化し、「大局観」は、それを3つくらいに絞り込むときに使われるとのこと。

そして 絞られた3つを「論理的」にひとつに決める必要があります。
直観で発想しているときは「あれ、ちょっと待てよ?」、大局観は「そもそも、これはどういうこと?」、論理は「ということは、こう?」というセリフが口から出てくるようなイメージです。
このうち、「大局観」が得意なのが、我々日本人である、というのが、石川さんのお考え。

世界の文化圏を「共同体的/個人主義的」と「主張が強い/謙虚」の2軸で切って分析されていますので、詳しくは本書にてご確認ください。

また、横軸に「新しさ」、縦軸に「質の高さ」を取って「Think Different(=創造的に考える)」を定義したのが、上記ポイントの2番目。

芭蕉の「古池や……」の句から、ここまで考察されているのが、非常に興味深かったです(こちらも詳しくは本書にて)。


◆というわけで、第2章からは上記で触れたように「達人」たちとの対談が。

まず第2章では、『イシューからはじめよ』でもおなじみの、安宅和人さんが登場されています。

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イシューからはじめよ――知的生産の「シンプルな本質」

参考記事:【考えるということ】『問い続ける力』石川善樹(2019年04月29日)

安宅さんいわく、知的生産の本質は「何らかのイシューに答えを出すこと」とのこと。

この件に関して、安宅さんは『ハーバード・ビジネス・レビュー』の2017年5月号の巻頭論文で書かれているそうなのですが、簡単に言うと、課題解決には2種類あり、それは「目指す姿が明確か否か」。

さらにはそこから踏み込んで、「そもそも思考とは何か」についても本書では触れられています。

最終的には上記ポイントの3番目にある「『あたらしい教養』とは何か?」まで到達しており、その濃密さに私なんぞはお腹いっぱいですよ(ヘタレ)。


◆続く第3章でお話してくださる濱口秀司さんも、ただ者ではありませんでした。

石川さんは、何か話す機会があれば、この濱口さんに言及されているそうで、石川さんによると、デカルトの「演繹法」、ベーコンの「帰納法」に続くのが、濱口さんの「ストラクチャード・ケイオス」なのだそう。

本書では他にも「ディシジョン・マネージメント」や「バイアス・ブレイク」といった、濱口さんの思考法が紹介されているのですが、その生み出された経緯等まで触れないと分かりにくいので、泣く泣く割愛(すいません)。

そこで端的にTIPSが述べられている、上記ポイントの4番目を抜き出してみました。

正直、濱口さんの書かれたこの本も、極めて評価が高い(42あるレビューの平均が「4.9」!)ので、ぜひ読んでみたいところ(お値段がアレですが)。

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SHIFT:イノベーションの作法


◆さらに、第4章で登場する大嶋光昭さんも、イノベーターとして突出した方であり、なんと「登録特許数1300件」!?

これらの特許は所属するパナソニックに巨額のライセンス収入をもたらしており、大嶋さんの研究が元になったプロダクトによる営業利益は3000億円にも上るのだそう。

代表的なのが、ビデオカメラやデジカメの「手振れ補正」技術に用いられている「振動ジャイロ」。

他にもわんさか列挙されていたので引用すると、
海外大手半導体メーカー製CPUに採用されている「2クロック方式省電力CPU」、日米欧の地上波デジタルTV放送の基幹部を担う「規格必須特許」、コピー・ワンスやダビング10といった犖ディスクへのコピー瓩鮗存修気擦拭峺ディスク規格(BCA CPRM)」、同じく光ディスクソフトの「ゲーム用光ディスク海賊版防止技術」、3D放送の「3D符号化技術」、スマートフォンで可視光通信が受信できる「光ID技術」、そして3G携帯を大幅に高速化した適応変調技術や、最近話題となっている5G携帯の特徴である「超低遅延」を実現する基幹技術など、数多くのデジタル通信技術の基本特許を発明していらっしゃいます。
という方なワケです。

ちなみにその「振動ジャイロ」も、当初「カーナビ用センサー」として開発したものの、カーナビ自体の市場がまだなかったので、いったんは失敗されています(15年後GPSが民生用に開放されて花開く)。

そこで思いついたのが「手振れ補正」に用いることで、これが営業利益にして1000円億円以上になったとのこと。

この「いったんは失敗した」というところからも、上記ポイントの5番目にあるように、「出口が大事」という話になるんですね。

……すいません、ここまででボリューム的には一杯になってしまったので、残りの小泉英明さんと篠田真貴子さんについては、本書にてお読みいただきたく。


前作以上に「考える」ことについて掘り下げた力作です!

4480073167
考え続ける力 (ちくま新書)
第1章 イノベーションの技法―Think Different
第2章 考えるとは何か?(安宅和人×石川善樹)
第3章 バイアスを壊せば、イノベーションは一発で生まれる(濱口秀司×石川善樹)
第4章 出口の思考力(大嶋光昭×石川善樹)
第5章 基礎研究、社会実装、倫理(小泉英明×石川善樹)
第6章 人生は私に何をしてほしい?(篠田真貴子×石川善樹)


【関連記事】

【考えるということ】『問い続ける力』石川善樹(2019年04月29日)

【問題解決】『イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」』安宅和人(2010年11月30日)

【発想法】『ハーバード・スタンフォード流 「自分で考える力」が身につく へんな問題』狩野みき(2019年05月23日)

【スゴ本】「20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義」(2010年04月06日)

【7つのコツ】『未来を発明するためにいまできること スタンフォード大学 集中講義II』ティナ・シーリグ(2012年05月31日)


【編集後記】

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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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