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2020年04月17日

【お金論?】『お金の減らし方』森 博嗣


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お金の減らし方 (SB新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、3月末の「未読本・気になる本」の記事だけでも既に何人かの方にお求めいただいている1冊。

リッチな印税ライフを送られる森先生にお話聞くなら、「お金の増やし方」だろう、と思われた方、まさにそのとおりなのですが、一筋縄ではいかないのも森先生らしいところです。

アマゾンの内容紹介から。
「お金がないから好きなことができない」
人はお金を理由にしがちです。
一方、お金持ちは「お金は使えば使うほど増える」といいます。
人生や価値観を左右する「お金」とは一体なんなのか。
どうすれば、お金の不安が消えるのか?
本書は、著書『作家の収支』でその収入を明らかにするなど、忌憚なく本質を突く作家・森博嗣が「お金の減らし方」と題し、人生とお金の付き合い方を解き明かします。
投資家やFPでは決して語ることのできない。
「お金」への思い込みをひっくり返す1冊!

なぜか中古価格が、定価の倍近くしますから、お得なKindle版がオススメです!





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【ポイント】

■1.お金に価値があるわけではない
 お金は、目的ではない。お金を得ることが目的であるわけではない。目的を達成するための手段として、お金があるのである。これは、お金に価値があるのではなく、目的に価値がある、という意味でもある。
 多額のお金を持っていても、なにも良いことはない。そのお金を、自分が欲しいもの、やりたいことと交換しなければ、価値は生まれない。お金を失うことで、価値が得られるのだ。
 これを勘違いしていると、貯金が沢山あれば嬉しい、高給であれば偉い、高価なものを持っていれば立派だ、という間違った価値観に支配される。これは、お金に支配された状態だといっても良いだろう。
 そして、最も多いのは、高い値段がついたものに価値がある、という思い違いである。それでは、他者が勝手につけた数字で、自分の価値観が左右されていることになってしまうだろう。


■2.自分が買ったものは、自分で消費する
 そもそも、その品物に価値を見出したから、自分のお金と交換することを決意し、購入するのである。そうではなく、また将来売れるだろう、値が上がるだろう、と見込んで買う、というのは、「自分にとっての価値」とは違うものに、判断が囚われている結果といえないだろうか。
 買って自分の持ちものにする価値とは、それに触れること、それをいじること、それで遊ぶこと、あるいは、壊したり改造したり、違うものに加工すること、新たなものを作り出すことである。それは、自分の所有物にしなければできない行為だ。そのために買うのである。
 眺めるだけという品物もあるかもしれないが、純粋に見た目だけに価値があるのならば、写真を撮れば、その見た目が自分のものになる。わざわざ物体を所有しなくても良いのでは?


■3.好きなことを仕事にしない
 仕事の基本は、自分が好きなものを作ることではない。「良いものを作れば売れる」というのも嘘だと思う。買い手が欲しいもの、社会が求めているものを、先んじて作るしかない。
 買い手にとって価値があるもの、つまり需要に目掛けて投入するものが、良い商品となる。また、仕事をする能力とは、自分の好き嫌いではなく、自分が他者よりも優れていることで価値を有する。多くの人がここを間違えているようだ。
 たしかに、好きなものが得意になるかもしれないが、僕が観察したかぎりでは、かなりずれている場合が多いと思う。好きだから、得意だと本人が信じきっているだけで、むしろ自分を客観的に見ていない人がほとんどだ。自分がそれに向いているかどうかは、自分の満足度で測ってはいけない。そういう主観的な見方しかできない人は、人の意見をもっとよく聞いて、修正をする必要があるだろう。


■4.「お金がないから」は「それほどまでして欲しくない」のと同じ
 では何故、普通の人はポルシェを買わないのか。もちろん、第一の理由は、それほど欲しくないからだろう。僕は欲しかったから買った。ようは、そこに大きな違いがあるということだ。
 また、ポルシェを買ったら、ゲームが買えなくなる、友達と飲みにいく金がなくなる、家賃が払えなくなる、など、ほかの切実な問題が生じる可能性が高い、という観測があって買えない、という判断をする場合もあるだろう。これは、実際に「ポルシェが大好きで、絶対に欲しいんだけれど」とおっしゃっている方でも、買わないのはこの判断からだと思われる。しかし、要約すると「それほどまでして欲しくない」という意味だ。
 こう考えていくと、「お金がないから」という理由は、ただ言葉として、当たり障りのない理由を(ある意味、遠回しに)述べただけであり、いわゆる「一身上の都合」と同じことだといっても良いだろう。結局は、「ポルシェを買いたくない」から買わない、とほとんど違いはない。


■5.価値がわかる人のところへ価値は届く
 おそらく、食材などでも、一番良いものは有名料亭へ直行し、そこでグルメの客を 唸らせるために使われる。破格の値段で取引きされるのだろう。その次は、お金持ちがどこかへ送りつける品として選ばれる。これも高く売れるルートがあって、良いものがそちらへ流れる。こういったところへ行かなかった、いわば落ちこぼれの残りものが、普通の市場へ流れてくる。最後はスーパマーケットに並んで、一般庶民が買うことになるのである。普通の店で普通の値段で買えるものとは、つまり、そういうものだと理解した方が良いだろう。自分が欲しいものを買っているようで、実は、二流、三流のものを買わされている、という状況にも見える。
 僕自身はグルメでもないし、全然それで構わないと考えている。ただ、自分が欲しいものになれば、話は別である。欲しいものに対しては、どんどん知識が増えるし、目利きもできるようになる。そうなるほど、欲しさも増幅される。


【感想】

◆本書の「まえがき」によると、本書に関して、そもそも森先生が受けた当初の依頼は「『お金の増やし方』について書いて欲しい」というものだったそうです。

ちなみに先生はかつて、「作家の集中力」という執筆依頼に対して書いたのが『集中力はいらない』という作品ですから、根っからの天邪鬼。

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集中力はいらない (SB新書)

……今気が付きましたが、この本Kindle版だと「50%OFF」ですね(4月23日まで)。

そして本書も無事(?)、真逆なテーマで書かれた次第です。

ただし、「減らす」と言っても、散財の仕方についてのみ書かれているわけではなく、冒頭の内容紹介にあるように、多方面から「お金」について論じていますので、ご安心を。


◆その内容紹介でも触れられている、「『お金』とは一体なんなのか」をテーマにしたのが、本書の第1章です。

「価値を交換するため」というような、定番のお答えがある一方、心しておきたいのが上記ポイントの1番目。

おっしゃることはごもっともなのですが、欲しいものややりたいことがなくとも、「日々生きるためにはとにかくお金が必要」という考え方は、森先生の中にはないようです。

と言いますか、先生ご自身も作家として売れるまでは、結構質素(今でも趣味以外の日常生活にかける金額はわずからしく)というか、むしろ貧しい方だったそうのですが、それを気にも留めない性格のようでして……。

ではそんな先生が「お金を何に使うか」について明かされているのが、本書の第2章です。

今まで類書でも紹介されているように、この章ではさまざまな趣味等の、森先生がお金をかける対象が登場。

どうも模型等の「なかなか手に入らないもの」を、ネットオークションで買ったりされているそうなのですが、留意したいのが上記ポイントの2番目の「自分で消費する」という考え方です。

つまりどんなに値上がりしても売ったりはしないし、そういう基準でモノをみていないため、買ったら入っていた箱もすぐ捨ててしまうのだそう。


◆一方、本来の執筆依頼に沿ったと思われるのが、本書の第3章「お金を増やす方法」です。

といっても、ここではあまり森先生らしい話(?)が述べられておらず、ほぼ一般論に終始。

上記では割愛しましたが、「自分自身の仕事能力を高めること」が「『お金の増やし方』としてもっとも有効」と、一般的な自己啓発書のような結論に至ってらっしゃいます。

とはいえ、森先生らしいのが、上記ポイントの3番目の「好きなことを仕事にしない」という指摘であり、この辺は、多くの自己啓発書と異なっているかと。

ちなみにご存知の方も多いと思いますが、そもそも森先生は小説が得意なわけでも好きなわけでもありません。

当時やりたいこと(土地を買って自分の作った機関車を走らせる)をするのにお金が必要な一方、大学の仕事が忙しくて時間がないため、印税目当てで仕方なく書いて講談社に持ち込んだ処女作が、そのまま書籍化され、そのまま売れ続けているワケです。

自分を客観的に見る、という意味で「好きなことを仕事にしない」という理屈は分かるのですが、森先生のケースはちょっと特殊過ぎる気が……。


◆また、上記ポイントの4番目のお話は、本書の第4章「お金がないからできない?」からのもの。

お金を理由にするのは、「それほどまでして欲しくない」と同じ、という理屈はわからないでもないのですが、ポルシェを引き合いに出せるのは、年収1億(多分今はもっと印税が入っているハズ)の森先生だからでしょう。

ただ、こういう「モノの見方」ができるのは大事ですし、何か欲しくなった際には心しておきたいところ。

さらに上記ポイントの5番目は第5章から抜き出したのですが、森先生のように高額の模型をネットオークションで取引している方にとっては、「価値がわかること」というのは非常に重要なのでしょうね。

もっともこの第5章で興味深かったのは、先生のご自宅の「庭園鉄道」の本が、「誰が買うのか」と思っていたら意外と売れて、印税が1千万近くになった、ということでしょうか。

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ミニチュア庭園鉄道〈3〉欠伸軽便鉄道弁天ヶ丘線の野望 (中公新書ラクレ)

……何をおやりになっても売れてしまうのは羨ましい限りです。


森先生流の「お金論」を学べる1冊!

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お金の減らし方 (SB新書)
第1章 お金とは何か?
第2章 お金を何に使うのか?
第3章 お金を増やす方法
第4章 お金がないからできない?
第5章 欲しいものを買うために
第6章 欲しいものを知るために


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【オススメ】『常識にとらわれない100の講義』森 博嗣(2012年08月20日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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頭がいい人の読書術

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参考記事:【読書術?】『頭がいい人の読書術』尾藤克之(2020年02月07日)

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