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2020年03月01日

【読解力?】『AIに負けない子どもを育てる』新井紀子


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AIに負けない子どもを育てる


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「2019東洋経済Top100」の中でも、個人的に読んでみたかった1冊。

「AI読み」というキーワードとともに大きな話題となった『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』(こちらもセール対象です)の続編に当たる作品です。

アマゾンの内容紹介から。
AIが苦手とする読解力を人間が身につけるにはどうしたらいいのか?読解力向上のために親、学校、個人ができることを提言。小学校・中学校で実際に行われて成果をあげている授業・取組みを公開!大人が読解力を身につける方法も明らかにする。

なお、中古がそれほど値下がりしていませんから、このKindle版が400円以上お得な計算です!





Annotations / vickysandoval22


【ポイント】

■1.機能語を正しく使えるようになる
 さて、字が読め、十分な語彙量があれば、不自由なく文章を読むことができるでしょうか。
 いいえ。それでもまだ十分ではありません。そのことを科学的な形で示したのが、 RST(リーディングスキルテスト)だと私は考えています。もちろん、これまでの国語教育で重視されてきた文脈や行間や、その文章が書かれた背景を知ることも、文章をより深く理解する上では必要でしょう。ですが行間をくみ取る前に、「行中」を読めるようになるためには必ずできなければならないことがある。それが、文の作り(構文)を正しく把握したり、「と」「に」「のとき」「ならば」「だけ」など、 機能語 と呼ばれている語を正しく使えるようになることなのです。

(詳細は本書を)


■2.キーワードに頼らず読む
誰もが、誰かをねたんでいる。
 難しい単語は1つも出てきませんね。そして、これ以上易しくしようがないほど単純な文です。まさに、誰もが理解できるはずの文、でしょう。
 この文を、意味を変えずに、自然な「受け身形」にするとどうなりますか?
 少なからぬ読者が次の文を思い浮かべたのではないかと思います。
誰もが、誰かからねたまれている。
 本当に2つの文は「同義」でしょうか。
 先日、ツイッターでこの質問を投げかけてみたところ、7000人を超える回答者のうち半数近くが、同義だと答えました。「ある人は、誰かからねたまれている」とか「誰かは、誰もからねたまれている」が最初の文と同義だと考えた人も、それぞれ17%、10%いました。
 実は、この文章と同義になる(自然な)受動態文は「ない」というのが正解なのです。


■3.リーディングスキルテストの手順
 まずは難易度中程度の問題をいくつか解いてもらいます。それに対する受検者の「反応」(正答するか誤答するか、諦めてスキップするか)に基づいて、より難しい問題を出題するか、簡単な問題を出題するかを決めます。それを繰り返すことによって、最終的に、正答率が半々になるあたりの問題の難易度が、受検者が正確に読むことができる「限界だろう」と診断するわけです。(中略)
 ですから、RSTは紙で受検することは不可能なのです。
「全員が紙で、初出の問題を一斉に解く」ということに慣れている学校関係者は、まずこの受検スタイルに驚きます。(中略)
「一斉に受検させないと、カンニングが横行するのではないですか?」
「同じ問題を繰り返し出題したら、受検対策をされてしまいませんか?」
と不安に思う人もいるでしょう。心配はいりません。まず、隣の受検者はあなたと全然違う問題を解いていますから、カンニングはできません。また、 RST 受検中は読むので精一杯なので、問題と答えの対を完全に暗記して漏洩することは、まずできないでしょう。


■4.AI読みが生まれた理由
 疑問に思って、いろいろな自治体の小中学校のワークシートやプリントを集めてみました。それで「アッ」と思いました。先生の手作りのものも業者によるものも、文章を書かせるものより、穴埋め形式のものが圧倒的に多かったのです。
 これでは、黒板に書かれていたり電子黒板に投影されている文章を「文章として」読まなくても、キーワード検索でプリントを埋められてしまいます。そして、そのキーワード部分を覚えれば、テストでそれなりの点を取れてしまうではありませんか!
「一人も置き去りにしない」ために、書く速度が遅い生徒に合わせたプリントやワークシート類、情報化を推進するための電子黒板が、ノートを取れないまま卒業する小学生を大量に生んでいたのです。彼らはそのままノートの取れない中学生になります。中学校でも彼らを置き去りにしないためにプリントやワークシートを多用するようになりました。
 そして、彼らはそのままノートの取れない高校生や大学生になったのです。その中で、彼らは「キーワード検索でプリントを埋める」とか「そのプリントでテスト対策をする」術を身につけていったのではないかと思います。


■5.読解力をあげるためには、ゆっくりでも正確に読む
 RSTでは、速く読むことよりも、正確に読むことを重視している。実は、当初私は、正確に読むよりも速く読めたほうがよいのではないのかと思い込んでいた。その過ちに気づけたのは、先ほど述べたようにレビュー担当者になったときである。早く読もうとするあまり不正確な読みをしてしまうと、書かれていることを正しく理解することができないばかりか、誤った知識を獲得してしまう危険性もある。
 おもしろいデータがある。RSTのこれまでの調査結果から、中学生は学年が上がると全体的に正答率が上昇することが知られている。一方、正答率が上昇しても解答数はそれほど増えないのだ。読める生徒は決して速く読んでたくさん解答するとは限らないのである。
 普段新聞を読んだり、マニュアルや契約書を読んだりするときのことを想像してみてほしい。急いで文を読もうとすればするほど、キーワードになりそうな語句を拾い読みしてしまうことは誰もが体験していることだろう。読むスピードを上げつつ、正確に意味をとらえることはとても難しいのだ。


【感想】

◆子育てをしているご家庭や、実際に教育現場に立つ方にとっては、きわめて有益な作品でした。

逆に、一部の低評価レビューでも触れられているように、タイトルに含まれている「AI」は、ほとんど関係なく、おそらく版元リクエストによるもの。

前作であるこちらが28万部超のヒットとなったため、経営判断として入れざるを得なかったのだと思います(基本的に著者に書名を決める権利はほぼないので)。

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AI vs. 教科書が読めない子どもたち

参考記事:【AI読み?】『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』新井紀子(2018年11月21日)

では実際に本書のテーマは何かというと、著者の新井先生らが開発した「RST(リーディングスキルテスト)」。

上記の前作でも、10問強、紹介されていましたが、本書ではかなり掘り下げて言及されています。


◆まず「RST」を構成するのは、「係り受け」「照応」「同義文判定」「推論」「イメージ同定」「具体例同定(辞書・数学)」の6分野7項目。

題材となる文章は、許可を得た上で、
東京書籍の英語と国語を除く高等学校と中学校の教科書、毎日新聞、東京・中日新聞、読売新聞の3紙の主に科学面や小中学生向けの記事を使って、各分野数百問ずつ作成
されています。

さらには上記ポイントの3番目にあるように、全員が同じ問題を解くわけではないのが大きな特徴かと(上記では割愛しましたが、パソコンやタブレットを用います)。

しかも、各分野ごとの制限時間が終了するまで順に出題されるため、簡単な問題から解く、ということはできません。

実際の問題例については、前作をお読みいただいている方はご存知かと思いますが、たとえばこんな感じです。
次の文を読みなさい。
Alexは男性にも女性にも使われる名前で、女性の名Alexandraの愛称であるが、男性の名Alexanderの愛称でもある。
この文脈において、以下の文中の空欄にあてはまる最も適当なものを選択肢のうちから1つ選びなさい。
Alexandraの愛称は(   )である。

Alex   Alexander   男性   女性
なお、上記ポイントの2番目は、「RST」の問題ではないものの、いわゆる「AI読み」(キーワードに頼って読む)をしている人にとっては、引っ掛かってしまうもののよう。


◆逆に「こんなの簡単じゃん!」と思われた方は、本書の第3章にある「RST」の体験版に挑戦アレ。

ここでは「RST」の7項目から各4問ずつが出題されており、それぞれ「易」「普」「難」「超難」というレベルも表示されています(実際の「RST」は違うと思いますが)。

ただし、「ビジネス書」という本書の性格上、問題的には「成人向け」を選んでいる、とのこと。

とはいえ、一部の専門知識以外に「知識の有無」によって、正誤が分かれないよう留意はされていますから、お子さんに試されてもいいとは思います。

ただ、日頃ネットとマンガくらいしか文字を読まないお子さんにとっては、読解力以前に問題の素材(「江戸幕府」や「国名」等々)自体に面食らって、間違えてしまう気がしないでもなく……。

なお、この「RST」の各項目の内容やその意味するところ等については、本書の第4章を、項目ごとの点数によってカテゴライズされたタイプの分析については、第5章にてご確認ください。


◆さらに第6章では、「リーディングスキルテストでわかること」と題して、匿名の偏差値の異なる高校別の各点数を比較しています。

案の定というか、東大含め旧帝大に100人以上の合格者を出すところと、普通校、大学付属校、全入校(誰でも入れる学校)とは、それぞれ違うな、と。

実際、ムスコの中学受験を経験して、理科や社会の単なる知識があっても、問題で問われていることが分からなかったり、ひっかけにひっかかったりすることは多々ありましたから、この結果もある意味当然でしょう。

また、上記ポイントの4番目は、第7章から抜き出したものであり、読解力の乏しい「AI読み」発生の原因が、小中学校で先生が作ってくれた「プリント」にあるのでは、と推測されています。

ただこれも、もし先生がやってくれなかったら底辺レベルの子は、授業に完全においていかれたでしょうし、責めるのは酷かな、と……。


◆そこで第8章では、逆に読解力が身につくような授業具体例を再現。

小学4年の国語と算数、中学2年の数学の実況をそれぞれ紙上で行っていますから、親御さんや教育関係者の方はぜひご一読ください。

また、「子どもはいいから大人の読解力を!」という方は最後の第10章は見逃せないところ。

ここでは新井先生の教え子で、「RST」開発にも尽力した菅原慎吾氏が、実際に読解力を上げることができた経緯について触れられています。

なお、上記ポイントの5番目は文体が急に「ですます体」から変わっているのは、この菅原氏によるものだから。

当初、上記で引用した「Alex」問題を間違えた上に、なぜ正解が「Alex」なのかが分からなかったそうです。

それが今では読解力も論理力も身について、講演までされているそうですから、ケースとしては少ないものの、参考になりました。


真の読解力を身につけたい方なら必読の1冊!

B07WTLTZKX
AIに負けない子どもを育てる
第1章 AIの限界と「教科書が読めない子どもたち」
第2章 「読める」とはなんだろう
第3章 リーディングスキルテスト、体験!
第4章 リーディングスキルテストの構成
第5章 タイプ別分析
第6章 リーディングスキルテストでわかること
第7章 リーディングスキルは上げられるのか?
第8章 読解力を培う授業を提案する
第9章 意味がわかって読む子どもに育てるために
第10章 大人の読解力は上がらないのか?


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【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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参考記事:【問題解決】『「ゴール仮説」から始める問題解決アプローチ』佐渡 誠(2019年01月30日)

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Posted by smoothfoxxx at 10:00
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