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2020年02月28日

【生存戦略?】『日本人の勝算―人口減少×高齢化×資本主義』デービッド・アトキンソン


B07LFSHW9V
日本人の勝算―人口減少×高齢化×資本主義


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「2019東洋経済Top100」の中でも一番人気の作品。

過去の著作の印象から、「観光立国を目指せ!」というのかと思いきや、全然違う大胆な提言がなされていました。

アマゾンの内容紹介から。
在日30年、日本を愛する伝説のアナリスト×外国人エコノミスト118人だから書けた!大変革時代の生存戦略。

中古が1000円以上しますから、送料を合わせるとKindle版が400円以上、お買い得となります!






Performance or Time / Epha3 Lab


【ポイント】

■1.人口減少下には量的緩和は効かない
 先ほど紹介した「通貨量×通貨の取引流通速度=物価×総生産」という式に戻ります。極端な例で、均衡論の問題点を説明します。
 この式で、1000人の人が年5回、1個のモノを買うと仮定します。供給量は5000個なので、通貨量を1人当たり1とすれば、価格は1となります。
 その1000人が500人にまで減った場合、今までどおり1年に5回しか買わないのであれば、潜在需要は2500個しかありません。(中略)
 この状態で通貨の量が増えたとして、価格は上がるでしょうか。500人が5回ではなく10回買えばもとの需要量になりますが、10回買わない場合、通貨量を増やしても物価は上がらないでしょう。
 減った人の分だけ、買う回数を増やしてもらわないと均衡がとれません。だから、価格が上がらないのは明白なのです。
 つまり、量的緩和で物価が上がると主張している人は、需要者が一定であると想定しているのです。日銀の2%インフレ目標が実現されない最大の理由はここにあると思います。人口減少問題を抱えている国で供給調整を行わない場合、通貨の量を増やすだけでは、人口が引き続き増加している国々と同じ2%インフレを実現することは非現実的でしょう。それが可能だと期待すること自体に無理があります。人口減少問題を抱えていない他国と同じように考えてはいけないのです。


■2.空き家比率と金融緩和の限界
 アメリカでは今でも人口が増えているので、そもそも家を買いたい人が増えています。当然、このように住宅を買う条件が好転すると、購入する人が増えます。次第に空き家比率が下がり、不動産価格が上がっていきます。
 すでに説明したように、不動産価格は物価にもっとも大きな影響を与える要因です。だから不動産価格が上昇すると、インフレに戻りやすくなるのです。
 しかし、日本はアメリカのようにはなりません。人口が激減するからです。しかも、高齢化も進んでいます。すでに住宅を所有している人が多い上、少子化によって、これから住宅を購入する層はどんどん減っていきます。しかし、住宅の数はすぐには減らないので、空き家比率は上がる一方です。
 金利を下げても、銀行の流動性を高めても、そもそも住宅を買いたい人が毎年少なくなっているのですから、資金を借りる人も増えません。
 需要者がいないので、なかなか理屈どおりには需要は喚起されません。だから空き家比率に大きな変化が生じないかぎり、2%のインフレにはならないはずです。


■3.最低賃金引き上げが望ましい6つの理由
(1)もっとも生産性の低い企業をターゲットにできる
(2)効果は上に波及する
(3)消費への影響が大きい
(4)雇用を増やすことも可能
(5)労働組合の弱体化
(6) 生産性向上を「強制」できる

(詳細は本書を)


■4.国の借金を減らすよりも、所得を増やす
 ここにも、大きなパラダイムシフトが求められています。日本では前者の「借金を減らすべき」だという考えの人が多いように思います。いまの政策や議論のポイントは「国の借金が多いから減らそう」「年金制度はもたないから、制度を変えて支給額を減らそう」というものです。しかし、これはあくまでもいまの GDP、いまの国民所得が変えられないという前提の下での議論でしかありません。前提を大胆に変えるという発想のない、ある意味で夢のない、低次元な対応です。
 しかし、私は後者の手段をとるべきだと考えます。たとえば年金制度の健全性を見ると、その国の生産性との相関が非常に強いという、当然の結果を確認できます。日本の年金制度の評価が低い理由の1つは、国民所得が低いことに由来しています。制度を変えるより、パラダイムシフトを意識して所得を増やすことを優先すべきです。
 たしかに、所得水準を向上させるのは、口で言うのは簡単ですが、実現するのはとても大変です。しかし、これが実現できたら、問題は根本から解決します。


■5.最低賃金と移民政策
 一般的に日本は移民政策に反対する傾向にありますが、最近、企業はその態度を変化させ、外国人労働者の受け入れ増加に積極的になってきました。
 それはなぜか。理由は簡単です。途上国からの安い労働力を使いたいという、明確な賃金抑制戦略です。(中略)
 生産性向上を実行して、最低賃金を引き上げていくという政策を実施しているのであれば、移民政策も実施する価値はあるかもしれません。
 しかし、安易に安い賃金で働く外国人労働者を増やす政策は、生産性向上を邪魔する政策になりかねません。ただでさえ日本人の所得水準は低いのです。さらに賃金が低い労働力を増やせば、価格競争を今以上に激化させて、日本人労働者をさらに苦しめる政策になります。社会保障のコストは負担できず、国が破綻します。最悪以外の言葉が見つかりません。


【感想】

◆冒頭でも触れたように予想外の内容で、ハイライトを引きまくることになりました。

あくまでアトキンソンさんの言われていることが正しい、という前提ですけど、今の日本の政策や、企業の経営者をバッサバッサと斬りまくり。

そのバックボーンとなっているのは、内容紹介にもある「外国人エコノミスト118人」の論文やレポートです。

そういう意味ではロジカルであり、「エビデンスベース」の作品と言えるでしょう。

ただし、論理的に正しいことに、必ずしも感情的に同意できるとは限りませんし、実際、自分のことを言われている、と思った方には、耳イタイ内容だと思います。

特に経営者層の方なら、「カチン」ときそうな予感!?


◆さっそく個々のテーマについて見ていくと、まず問題として挙げられるのが、上記ポイントの1番目の「量的緩和」です。

現政権は、ほぼこの方策に頼っていますが、本書によると2%のインフレ目標を達成するのは無理な模様。

ちなみに単純な人口減だけでも問題なのに、本書で紹介されている論文によると、インフレと「75歳以上の人口には負の相関がある」そうですから、これからの高齢化を迎える日本としては、まずいことこの上ないワケです。

さらには上記ポイントの2番目にある「空き家比率」の問題。

もちろん東京等の一部の大都市だけを見たら、まだまだ不動産が不足しているかもしれませんが、日本全体としては空き家比率が上がり、今後不動産価格は下がらざるを得ないでしょう。

その東京も、オリンピック後の不動産価格については、正直不安なのですが……。


◆そこで本書が提言しているものの1つが、「輸出の拡大」です。

私も「あれ? 日本って既に輸出大国じゃね?」と思ったのですが、それはあくまで総額ベース(第4位)のお話で、人口1人当たりで見ると、世界第44位なのだそう。

また、アトキンソンさんお得意の観光業についても軽く触れられていますが、詳細は下記のような他の著作の方が良いでしょう(一応こちらもセール対象本です)。

B00YOCT9ZC
デービッド・アトキンソン 新・観光立国論―イギリス人アナリストが提言する21世紀の「所得倍増計画」

また、1つの章(第4章)を費やして、生産性向上の見地から、中小企業をM&A等で整理して規模を拡大することを推奨されているのですが、こちらについては、ややデリケートなテーマなので、今回は割愛しました。

実際、むしろわが国では、下記のような税制を見る限り、中小企業を延命させる方針の気がしないでもなくて……。

法人版事業承継税制|国税庁

これ、簡単に言うと、親の会社の株式を継ぐ際の贈与・相続が安くなるものなのですが、その代わりM&Aはできなくなっちゃうんですよね。


◆もっとも、デリケートという意味では、もっときわどいのが、上記ポイントの3番目で簡単に列挙してしまった「最低賃金引き上げ」です。

そもそも経営者が猛反対しそうなこの方策、お隣の韓国では、見事に失敗しています。

韓国の最低賃金引き上げは、なぜ失敗したのか 超競争社会の生き地獄から逃れられない「3低」労働者(木村正人) - 個人 - Yahoo!ニュース

ただしこれは、一気に16%も引き上げたから、と本書では指摘。

逆に、最低賃金の取り決めがなかったイギリスでは、引き上げることによって成果が出ているのだそうです。
 韓国とは対照的に、イギリスでは最低賃金を導入し、徐々にその水準を上げていますが、雇用に悪影響は出ていません。イギリスは今まで20回にわたって、平均して年間4.17%引き上げてきました。もっとも大きい引き上げ率は2001年から2002年の10.81%ですが、それ以降、3回も7%の引き上げを実施しています。にもかかわらず、雇用への悪影響は出ていないという事実は、見逃すべきではないでしょう。
本書の第5章では、この問題についてかなり掘り下げて(論文等を明記して)論じていますので、ぜひご覧になってみてください。

特に意外だったのが、「生産性が上がった」から「最低賃金を上げる」のではなく、「最低賃金を上げる」ことによって企業は努力せざるを得ず「生産性が上がる」ということ。

ただし、この最低賃金を取り決めるのが、我が国の場合厚生労働省であり、「経済政策」ではなく「社会政策」であることから、管轄する役所を変えることも含めて検討する必要はあるようです(さらにハードルが高くなる気が……)。


◆一方、現状の政策方針についても異論を唱えているのが上記ポイントの4番目と5番目。

前者は引用部分でも触れているように、「パラダイムシフト」とも言えるものであり、「消費税増税」や「年金支給額削減」とはまったく異なるものです。

結局、生産性を高めることにより、所得を増やし、財政を再建するということ。

さらに後者は、人口減によって「移民もしょうがないか」という風潮に対して、警鐘を鳴らしています。

ただ、最低賃金の問題はさておき、不動産の問題は、人を呼び込まないとどうにもならないとは思うので、今後徐々に移民は受け入れていくのだと思いますが。

いずれにせよ、自分自身がすぐにできることは少ないかもしれませんが、こういう考え方ができるか否かは大事ではないか、と。


これからの日本で生きていくためにも、必読の1冊!

B07LFSHW9V
日本人の勝算―人口減少×高齢化×資本主義
第1章 人口減少を直視せよ――今という「最後のチャンス」を逃すな
第2章 資本主義をアップデートせよ――「高付加価値・高所得経済」への転換
第3章 海外市場を目指せ――日本は「輸出できるもの」の宝庫だ
第4章 企業規模を拡大せよ――「日本人の底力」は大企業でこそ生きる
第5章 最低賃金を引き上げよ――「正当な評価」は人を動かす
第6章 生産性を高めよ――日本は「賃上げショック」で生まれ変わる
第7章 人材育成トレーニングを「強制」せよ――「大人の学び」は制度で増やせる


【関連記事】

【超生産性?】『反常識の生産性向上マネジメント』小林裕亨(2019年10月17日)

【生産性?】『なぜ日本の会社は生産性が低いのか?』熊野英生(2019年01月21日)

【生産性向上?】『チームの生産性をあげる。―――業務改善士が教える68の具体策』沢渡あまね(2017年07月20日)

【生産性】『仕事の「生産性」はドイツ人に学べ 「効率」が上がる、「休日」が増える』隅田 貫(2017年12月08日)

【少子高齢化】『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』河合雅司(2017年06月27日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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凡人起業 35歳で会社創業、3年後にイグジットしたぼくの方法。

著者の小原さんが実は「凡人でない」疑惑(?)がある起業本は、Kindle版が400円強お得。

B00GU4R8O6
「事務ミス」をナメるな! (光文社新書)

下記のようにご紹介済みのミス対策本は、「63%OFF」という値引き率のおかげで、Kindle版に軍配が上がります。

参考記事:【ミス対策】『「事務ミス」をナメるな!』中田 亨(2011年01月19日)


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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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