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2020年02月26日

【ヤバ本?】『スマホ依存から脳を守る』中山秀紀


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スマホ依存から脳を守る (朝日新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の中でも、個人的に読まねばならなかった1冊。

4月からムスコが中学生になるため、スマホを買い与えようとしていた私にとって、色々と考えさせられた作品でした。

アマゾンの内容紹介から。
スマホは依存物です。知らないうちに“脳内借金”をつくる最凶の相手です。大人も子どもも依存物と知らずにつきあい、気づいたときには重症化しているのがスマホ依存症の恐ろしさ。病の予兆が「疲労」「不眠」といったシグナルにしかならず、症状が脳内で進行するのが、この精神疾患のやっかいなところ。久里浜医療センター精神科医が警告する、オンラインゲーム障害を中心にしたスマホ依存症とその治療、「初めの一歩は、病の正体を個人も社会もよく知ることです」

中古が定価の倍以上のお値段なのに、Kindle版は「24%OFF」とお買い得ですから、ぜひご検討ください!





Fast Company magazine cover: April 2010 / karen horton


【ポイント】

■1.オンラインゲームの依存的特性
 多くの青少年にとって、スマホのインターネットやオンラインゲームは「快楽」をもたらし、「楽しい」──こうした「快楽」や「楽しい」性能自体は、決して悪いことではありません。
 しかし、最も注意しなければいけないことは、スマホやオンラインゲームの「無限性」です。やっても、やっても、またやれる。これらの世界は人間がつくったものなので有限なのですが、一個人がそれで遊ぶ場合、かなりの長時間そして長期間、飽きずに楽しむことができます。「快楽」を「無限」に得続ける環境が簡単に手に入ってしまう。自分の部屋のゲーム機器や、常時携帯しているスマホがその入り口となり、やめるきっかけが無くなってしまうのです。1つのコンテンツやゲームはいずれ飽きるかもしれませんが、インターネットコンテンツやオンラインゲーム全体で考えると、「快楽」を「飽きず(飽きにくい)」に得られるという依存物ならではの特徴を、十分に持っているのです。


■2.インターネットメディアの依存的性質
 既存のメディアから進化したインターネットは、大量の情報を瞬時に相互に送ることができるため、時間の様相を変えてしまいました。既存メディアの欠点のほとんどを補っているといわれるほど、「双方向」しかも「個別」に「同時に」機能します。それゆえ、やりだしたらきりがない「依存的性質」を備えるメディアになりました。「使用中止」の判断はあくまでも自分の手、自制心にゆだねられているメディアなのです。
 こうした依存的使用に関する報告が最も多いのはゲームのようですが、SNSや動画、メッセージアプリ(LINEなど)、掲示板、情報サイトなどの依存的使用もあります。そして買い物依存症やギャンブル依存症も、インターネットが介在することによって(オンラインショッピングやギャンブル要素のあるアイテム課金など)、その様態を急速に変えています。
 しかもそれらすべてを「携帯可能」にし、いつでもどこでも「手軽」に、「快楽」を「飽きにくい」性質のあるインターネットコンテンツで利用可能にしたのが、現在最強の依存物の1つであるスマホなのです。


■3.スマホ依存の兆候の1つ「睡眠問題」
 たとえば、中学生の調査では、インターネット依存度が高いほど睡眠時間がより短く、就寝時刻が遅く、起床時間が遅い傾向にあります。特に依存度の低い(IAT得点39点以下)人たちと、依存度の高い(IAT得点70点以上)人たちを比較すると、睡眠時間や就床時刻は、それぞれおおむね一時間程度の差があることが報告されています。私たちの調査でも、インターネット問題使用群(IAT得点40点以上)では、通常使用群(IAT得点39点以下)に比べて、就寝時刻はより遅く、授業中の眠気をより自覚している生徒の割合が高かったという結果が出ています。私はこれらの悪影響の中で、就寝時刻の遅延は最も危険な兆候の1つだと思っています。
 実際、睡眠不足や就寝時刻の遅延は、学校でのパフォーマンスの著しい低下を招き得ます。朝の起床時刻が遅れると、遅刻や欠席に直結します。起床が遅くなって遅刻が必至の時間になっても、あきらめずに登校してくれればいいのですが、遅刻することによって恥ずかしい思いをするとか、先生に叱られる(先生も強く叱責しているようではありませんが……)などの理由から欠席を続けてしまい、そのまま不登校になってしまうケースもあります。そうなると一日の時間を持て余してしまうので、さらにインターネットやゲームをする時間が増えていきます。


■4.未成年者の依存症の問題点
 成人であれば、依存症が重症化して仕事ができなくなると食べていくのに困るため、依存症から回復しようと思うかどうかは別としても、依存物とのつきあいはほどほどにしておこうと思う人が大半です。(中略)
 しかし、未成年者は異なります。
 未成年者の場合には、依存症が重症化して学校に行けなくなっても、保護者はその生活を維持します。食事を用意し、洗濯をし、電気代を払う。要するに、未成年の依存症者には親に見捨てられてしまうというリスクはほとんどなく、それがかえって依存症の状態を支え、さらに重篤化させてしまう場合があるのです。未成年者が重度のネット・ゲーム依存症になって、ひきこもり生活になっても、保護者がその生活を維持することで2、3年もしくは10年という時間があっというまに過ぎ去ってしまうこともあります。こうして「自己責任」のない未成年者の依存症は、大人よりも深刻化する可能性が高いのです。


■5.スマホ依存症からの回復
 依存症からの回復には、「依存物の使用を断ち続けること」と「依存物を適切に使用し続けること」の二種類がありますが、どちらがより難しいのでしょうか。
 一見「依存物を適切に使用し続けること」のほうが簡単そうに見えるかもしれません。しかし、実際は全く逆です。私の印象では「依存物の使用を断つこと」の難易度が「富士山」に登ることぐらいだとすると、「依存物を適切に使用し続けること」は「エベレスト」に登るレベルです。私はどちらの山にも登ったことはありませんが、たぶん「富士山」のほうは、普通の体力を持つ人がきちんと準備をすれば、天候や季節が悪くなければ登頂できると思われます。「エベレスト」は、相当入念な準備をした卓越した体力と十分な経験のある人でも(そして天候や季節に恵まれていたとしても)、登頂に失敗することがあるでしょう。
 なぜ、適度な使用がこれほど難しいのでしょうか。
 本書をここまで入念に読んでくださったみなさんなら、もうおわかりですね。 「依存物の使用を断ち続ける」と「負の強化」は軽減していきますが、「依存物を適切に使用し続ける」と常に「負の強化」と闘い続けなくてはなりません。その難易度の差は歴然としています。


【感想】

◆読めば読むほど、スマホに伴う問題の重要性が実感できる作品でした。

まず第1章では、スマホにかぎらず「依存物」と呼ばれるものの問題点について言及が。

2つの大前提
・快楽をもたらす
・飽きない、飽きにくい、続けられる
のうち、たとえば「カレーライス」は、前者は該当しても、3日も続けて食べたら飽きてしまい、後者は満たせません。

同じく「遊園地」も、時間的・経済的余裕がないため、10日も20日も通い続けられないのが普通です(TDLなら常連がいますがw)。

さらに、依存物でも「流行っているもの」と「あまり流行っていないもの」があって、「流行っているもの」は、
「(一見すると)安価」「手軽」「確実」「(一見すると)安全」
といった特徴を持つとのこと。

そう考えると、上記ポイントの1番目にある「オンラインゲーム」が、いかに「流行っている依存物」に当てはまるか、お分かりになると思います。


◆また、1つ飛んだ第3章では、過去におけるさまざまな「依存物」との「闘いの歴史」を紹介。

かつては覚せい剤も日本で規制されていませんでしたし、逆にアメリカには禁酒法がありました(今でもイスラム世界ではお酒は飲めませんが)。

また、お酒やたばこは、年齢的に禁止されている一方、「オンラインゲーム」は、一部の残酷なものを除けば、特に法的な年齢制限がありません。

さらに、「オンラインゲーム」だけでなく、そもそも「インターネットメディア」自体にも問題があることを指摘しているのが、上記ポイントの2番目です。

そして、こうしたメディアやゲームを、より身近にしてしまったという「スマホ」は、依存症の観点からいかに危険であるかが、実感できるのではないか、と。


◆こうした「スマホ依存症」の実態例が登場するのが、本書の第4章です。

本記事では具体的には触れませんが、重症化すると、引きこもりになってしまいますし、学校にも通えなくなる模様。

また、ここまでひどくならないにしても、問題化の兆候の1つなのが、上記ポイントの3番目の「睡眠不足」です。

以前から「睡眠本」で、就寝前のスマホが眠りの質的に問題をもたらすことは、たびたび指摘されていましたが、量的にも顕著になるらしく。

実際、ウチのムスメも、ベッドに入ってから親の目を盗んでスマホをいじることもあるようですし、元から朝起きられないタイプだったのが、よりひどくなっている印象を受けます。

……うーん、ムスコ、大丈夫やろか(困惑)。


◆一方、第5章では、スマホ依存症対策について言及。

たとえば最近目にすることが多くなった「eスポーツ」で、「プロになるために努力する層」は、一部の人たちかもしれませんが、徹夜でゲームをすることを正当化してしまいます。

これは実は「YouTuber」も同様であって、小学生の「将来なりたい職業」に「YouTuber」が入っているのを見ると、こうした依存症予備軍も意外と多いのかもしれません。

また、ムスメの通う学校では、iPadを用いて学習を進めており、私は以前から問題視していたのですが、やはり「遊ぶのを我慢」して勉強するのは無理があるそう。
勉強道具しか周囲にないのであれば、「自分の目の前にない娯楽を我慢する」だけで済みますが、目の前のタブレットが勉強以外の娯楽目的でも使えるのであれば、娯楽利用を強く我慢しながら勉強することになります。つまり、「勉強による苦痛(?)」に「目の前にある娯楽を我慢する強い不快感」が加わるので、使用者は 地獄をみる ことになるのです。結局耐えきれずに、ゲームや動画、SNSに走ることになります。
もちろん、タブレットの利便性や学習効果は認めますが、学校全体として使用する際に、こうした問題を検討したことがあったのかは疑問です。


◆なお、最後の第6章では、スマホ依存症からの回復方法についての紹介が。

上記ポイントの5番目にあるように、「適切に使用し続けること」よりも「使用を断ち続けること」の方がベターなのは、理解しておきたいところです。

ここの最後で触れている「『負の強化』と闘い続けなくてはなりません」というのは、上記の「(遊ぶことができる)タブレットで勉強する」のも同様のお話。

ムスコの通う中学では、特にタブレットを用いたりはしないようなのですが、いずれにせよ通学時間が片道50分くらいある(徒歩時間除く)ので、これをフルにスマホに費やしていたら、「スマホ依存症」になっても不思議ではありません。

……何かしら管理アプリ(良いのがあるのかも知らないのですが)を入れなくては(一応、管理ができる「子ども用機種」を与える予定ですが)。


お子さんにスマホを与えているご家庭なら、要チェックな1冊です!

4022950536
スマホ依存から脳を守る (朝日新書)
第1章 依存物は最高だ!
第2章 脳内借金としてのスマホ依存症
第3章 依存物との闘いの歴史
第4章 スマホ依存症の実態
第5章 スマホ依存症対策の壁
第6章 スマホ依存症からの回復


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【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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