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2020年02月17日

【名著ガイド?】『一行でわかる名著』齋藤 孝


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一行でわかる名著 (朝日新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事の中で、個人的に読んでみたかった1冊。

おなじみ齋藤 孝先生が、さまざまな名著から「渾身の1行」を選び出してくださっています。

アマゾンの内容紹介から。
一行「でも」わかるのではない。一行「だから」わかるのだ。
『百年の孤独』『悲しき熱帯』『カラマーゾフの兄弟』『老子』──どんな大作も、神が宿る核心的な「一行」をおさえればぐっと理解は楽になる。
魂への響き方が違ってくる。
究極の読書案内&知的鍛錬術。

なお、新たに発売となったKindle版は、予想どおり「25%OFF」とセール並みにお買い得となっています!





Guns, Germs, Steel - - Jared Diamond / Cea.


【ポイント】

■1.「私は論語で一生を貫いてみせる、 金銭を取り扱うが何ゆえ賤しいか」
 冒頭の一行は、渋沢が友人に対して、ある啖呵を切った言葉です。  
 1873(明治6)年のこと、大蔵省(現在の財務省と金融庁)を退官し、経済で国に貢献をしようとした渋沢は友人からこう言われます。「官にあって国家のために尽くすべき身だ、しかるに賤しむべき金銭に眼が眩み、官を去って商人になるとは実に呆れる」。なかば軽蔑されてしまうわけです。
 それに対し、渋沢は中国北宋の政治家・趙普が経済で皇帝を助けた『論語』のエピソードを引き合い、「論語の教訓を標準として」一生商売をすると宣言するのでした。

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論語と算盤 (角川ソフィア文庫)


■2.「他人が我々を自然に眺めるときの視線に従って、 自分自身を眺めなければならない」
 紹介した一行「他人が我々を自然に眺めるときの視線に従って、自分自身を眺めなければならない」とは、ほかの人から自分の行動がどのように映るのか、客観的に考えて行動をしようということです。
 自由主義の社会では、法律だけがレフェリーと考えられがちです。しかし、スミスは、それに加えて、「共感」という概念をあげます。それは道徳的に見て正しいかどうかを感情的に判断するということ。人というものは利己的ではあるけれど、他人の幸せを是認する心を持っています。これが共感です。さらに、「自分がされて嫌なことを、人にしてはならない」という共感感覚を有することで、社会の秩序を保っているのです。

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道徳感情論 (講談社学術文庫)


■3.「ヨーロッパ人がアフリカ大陸を植民地化できたのは地理的偶然と生態的偶然のたまもの」
 かなり分量があり、頭から読んでいくと、途中で挫折するかもしれません。これは小説ではないので、最初に結論を知っておいてから、各論を読んでいいのです。
「結論を述べると、ヨーロッパ人がアフリカ大陸を植民地化できたのは、白人の人種主義者が考えるように、ヨーロッパ人とアフリカ人に人種的な差があったからではない。それは地理的偶然と生態的偶然のたまものにすぎない」。こう著者は述べています。
 これまではヨーロッパ人が知能や体力に勝っていたために、他地域よりも有利な立場に立てたものだという考え方がありました。しかし、決して、人種的な能力の問題ではなく、単純に居住場所をはじめとした偶然の産物だったというわけです。

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銃・病原菌・鉄 1万3000年にわたる人類史の謎 文庫 (上)(下)巻セット


■4.「私、不良が好きなの。それも、札つきの不良が、すきなの」
「私、不良が好きなの。それも、札つきの不良が、すきなの」は、かず子が上原への書簡の中で心情を告白したセリフです。
「札つきの不良」といえば、一般的には「どうしようもなく本当に悪い奴」というイメージでしょう。しかし、かず子の母は上原をこう評します。
「札つきなら、かえって安全でいいじゃないの。鈴を首にさげている子猫みたいで可愛らしいくらい」
 それを聞いたかず子は「うれしくて、うれしくて、すうっとからだが煙になって空に吸われて行くような気持」になったと告白します。「札つき」という言葉は、潔さや正直さを表す形容詞へと変換されました。魔法のように言葉を操る太宰の語彙力の真骨頂です。

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斜陽 (新潮文庫)


■5.「ただ牛のように図々しく進んでいくのが 大事です」
 時は1916年のこと。芥川と久米は、同人誌『新思潮』を発行。特に芥川は、前年の1915年に代表作「羅生門」を発表し、その翌年に『新思潮』に掲載した「鼻」を漱石に絶賛されるなど、まさにノリに乗った状態でした。しかし、漱石は「あせら」ず、「牛」のように「図々しく」進んで行くようにとアドバイスを送りました。続けて、「世の中は根気の前に頭を下げる事を知っていますが、火花の前には一瞬の記憶しか与えてくれません」。
「牛」というのは、漱石にとって重要なキーワードです。「われわれはとかく馬になりたがるが、牛にはなかなかなり切れない」牛になって「うんうん死ぬまで押すのです」と説きます。何を押すか。「人間を押すのです。文士を押すのではありません」と。同業者に認められるという結果だけを求めてはいけない。重要なのは、目の前の人間を観察し、読者を啓蒙し、あるいは楽しませることである。過程が重要であるということです。この考え方も、ありがたいものです。

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漱石書簡集 (岩波文庫)


【感想】

◆自分でご紹介しておいてアレですが、私自身、読み始めるまで本書の内容を少々勘違いしておりました。

要は、映画の内容をキャッチコピーのように一言でまとめる感じで、さまざまな名著を一行で表現するのだと、思い込んでいたという。

実際には書影にもあるように、その本のなかにおける「核心の『一行』」を、齋藤先生の分析やあらすじ等とともに紹介する、というもの。

ですから、今回改めてとりあげるまでもなく、元から有名な「一行」もありましたし、私自身、初めて知った「一行」もありました。

いずれにせよ、本を要約するワケではありませんから、人によっては違う部分を選ぶ可能性もあるかもしれません。


◆ウラを返せば、本書は「核心の『一行』」をウリにした、齋藤先生の名著のブックガイドと言えるかと。

実際、収録された61冊の作品は、齋藤先生いわく「古今東西でおさえておくべき名著」とのこと。

それらを下記目次にもあるように7つの章に分けて(先生いわく「私たちの知的能力がどう拡張されうるか」に因るそう)、解説されています。

ちなみに本書における「一行」は、一般的な書籍の一行の字数=42字以下にこだわって抜き出したのだとか。

なるほど確かにそれは守られているのですが、本によっては、「他にも捨てがたい」と思われる「一行」が、別途掲載されていたりするんですけどねw


◆ちなみにその61冊を、上記ポイントで挙げた5冊を除いて、全部ここで列挙してもいいのですが、アマゾンでも版元サイトでも書名が挙げられていないので、一応自重。

代わりに、上記ポイントでご紹介できなかった作品を、その本の「一行」とともに、いくつかご紹介してみます。

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月と六ペンス (新潮文庫)
川に落ちれば、泳ぎのうまい下手は関係ない。岸に上がるか溺れるか、ふたつにひとつだ。

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白鯨 上 (岩波文庫)
あなたのやっていることは正しい。勝負に生き、勝負に死ぬのです!

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バガヴァッド・ギーター (岩波文庫)
あなたの職務は行為そのものにある。決してその結果にはない。

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論理哲学論考 (岩波文庫)
謎は存在しない。問いが立てられうるのであれば、答えもまた与えられうる。

ちなみに、「一行」ではないのですが、下記の本の表紙に載っている「美意識の見取り図」は非常に興味深いので、ちょっと本自体も読んでみたいな、と(クリックすることで、アマゾンで多少大きな図でご覧ください)。

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「いき」の構造 他二篇 (岩波文庫)


◆なお、齋藤先生が読書をする際に、三色ボールペンを活用することをご存知の方は多いと思います。

以下、本書の「はじめに」から。
本を読んでいて重要な文章に線を引いていくのですが、客観的に「すごく大事」と思われる部分は赤。「まあ大事」と思われる部分には青で、「個人的におもしろい」と思った部分に緑を引きます。
そしてその本の内容等を思い出したり、人に教えたりするときには、この線を引いた個所を参照しているのだそうです。

そしてその一方で、この「一行」は、先生の読書活動にとっても意味があるとのこと。
 同時にそれらの一行は、登山者が険しい岸壁を登るときに 穿つハーケンのように、本を読んだ私自身の精神に突き刺さった「芯」にほかなりません。 その一行を「芯」とすることで、読書を「体験」として自分自身に引き寄せ、理解と洞察を積み重ねることができた。一行をまず自分の中に入れ、精神に芯を作ることが、読書では何より重要なのです。
読者の皆様も、本書をご一読の上で、今後読書の際には「神が宿る核心の『一行』」を意識していただけたら、と。


濃厚な読書体験を目指すために読むべし!

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一行でわかる名著 (朝日新書)
第1章 一行で、生きる情熱に火をつける―生命力をきたえる読書
第2章 一行で、深い真理に到達する―洞察力をきたえる読書
第3章 一行で、未知の世界の扉を開く―想像力をきたえる読書
第4章 一行で、人間の強さと弱さを知る―理解力をきたえる読書
第5章 一行で、世界を見る目を深くする―認識力をきたえる読書
第6章 一行で、武器としての言葉を得る―語彙力をきたえる読書
第7章 一行で、この世に生きる意味を知る―共感力をきたえる読書


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【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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