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2020年01月16日

【語学学習】『総理通訳の外国語勉強法』中川浩一


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総理通訳の外国語勉強法 (講談社現代新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事の中でも人気だった勉強本。

帰国子女でもないにもかかわらず、外務省のアラビア語の通訳として活躍されている中川浩一さんが、その語学勉強法を指南してくださいます。

アマゾンの内容紹介から。
世界最難関のアラビア語を24歳になってから始め、天皇通訳、総理通訳まで務めた現役外交官が、苦難の道のりの中で編み出した秘伝の外国語習得術を惜しみなく伝授!
グローバル社会で外国語を武器にしたいビジネスパーソン、英語を一からやり直したい日本人必読の書。

若干とはいえ、Kindle版がお買い得となっていますから、こちらもご検討ください!





Reading / TMAB2003


【ポイント】

■1.外国語の習得に「なぜ?」は不要
 先述のとおり、私がエジプトに留学中、一緒に勉強したアメリカ人、フランス人たちは、自分の母国語へのプライドから、なかなかアラビア語を素直に受け入れられないようでした。
 私ももちろん日本語にプライドはありますが、そもそも外国語を学習するということは、外国の文化、歴史、価値観を学ぶことと一緒と考え、寛容の精神をもって、全身全霊で吸収することに努めました。
 この点、よく気がつく人や繊細な人は、外国語と自国語との違いに疑問をもたれ、その理由を解明しようとされるのかもしれませんが、私はそういうところには脇目も振らず勉強しました。
 皆さんもなぜ外国語ではこういう文法、発音になるのかと思う暇があったら、寛容の精神で素直に受け入れ、その時間に1つでも多くの単語、構文を素直に、がむしゃらに覚えてください。
 それが実は外国語学習の王道だと私は思います。


■2.リスニングで聞き流しは絶対にダメ
 よく英語の学習教材で、「一日何分『聞き流す』だけで、みるみる上達」などのフレーズを目にしますが、英語を楽しむために学習する方はともかく、ビジネスパーソンは絶対にやってはいけません。(中略)
普段から聞き流す癖をつけてしまうと、本番で最も重要な「集中力」が養われず、得てして悪い癖が出てしまい致命傷になるものです。
 それでは逆に、聞き流さないようにするにはどうすれば良いのでしょうか。答えは簡単です。知らない単語が出てくるから聞き流すしかないのです。
 だったら、最初からすでに理解している文章だけを聞けば良いのです。リスニングはやみくもに聞けば良いというものではありません。(中略)
 繰り返しますが、リスニングのコツは、聞き流さず、習った文章だけをひたすら何度も聞き「復習」することです。
 わかりやすく言えば、「私はりんごが好きです」という文章を読めて理解できるようになったら、それを耳で確認するのです。
 決して「私はみかんが好きです」という文章をリスニングしてはいけません。
 自分が読めない、わからないことを聞いて理解することは決してできないのです。


■3.いつでも話せる「自己発信ノート」を作る
 これまで述べてきたように、私は、とにかく少ないインプットの中でいかに外国人と話すかに腐心してきました。
 そのためには、外国人に対して、まず自分のほうから先手を打って発信できる自己紹介や、話すべき自分の意見をしっかり事前に考えておくことが最も重要と考えて力を注ぎました。
 学習する題材を最大限活かして自己紹介や自分の意見をまとめた文章を作り、いつでも自分から話せるようにこれらをノートに書き留めて暗記しておく。
 これを「自己発信ノート」と呼ぶことにします。
 私はこのノートを作り覚えることで、アラブ人に対しても臆することなく、これだけは言えるという自信がつきました。
 いつでも外国人にアウトプットできる状況を整えるために効果的ですので、あなたにも是非おすすめします。
 これから新しい外国語を始めようという方は、最初に外国語の参考書を読むのではなく、是非この「自己発信ノート」を「日本語」で作成することから始めてみてください。
 英語をやり直したい方も、この機会に初心に帰って、日本語で自己紹介文を作ってみてはいかがでしょうか。


■4.言い換えで表現力を高める
私が皆さんにおすすめしたいのは、まずはその前提となる「単語」「表現」の言い換えです。
 1つの単語、表現を可能な限り違う言葉、表現に言い換えることで、あなたの自己発信のバリエーションが確実に増え、外国人に対してあなたの語学力はすごいと思わせることができるので、大変重要な練習です。
 この「表現力」を具体的に説明すると、たとえば日本語では、「精一杯」には、「精一杯」を含めて「全力で」「一生懸命」「力の限り」の4通りの類義語があり、「努力する」には、「努力する」を含め、「頑張る」「力を注ぐ」「尽力する」「精進する」「奮闘する」の6通りの類義語があるとすると、「精一杯努力する」は、実に24通りの言い回しができることになります。
 これを外国語にも適用し、自分の中でできる限り多くの組み合わせを外国語で作るのです。
 そして、「精一杯努力する」のバリエーションを立て続けに計24通り外国語で発声する練習をします。
 ただし、いきなりここまで行かなくても、2通り(「精一杯」「全力で」)×2通り(「努力する」「頑張る」)の4通りでも十分です。


■5.要約力を磨く「サマライジング」
 よく大学入試などでリーディングテストの一環として要約問題がありますが、実際のビジネスシーンや外国人とのコミュニケーションで求められるのは、相手が話したことをいかに短時間で自分の脳で要約してポイントをつかみ、それをベースに次の発信ができるかです。
 そのためには、外国語の例文を音声でパラグラフあるいは文章のまとまりとして聞いて、それをあなたの脳の中で簡潔に日本語で要約して、紙に書き出す練習が効果的です。
 これを通訳の世界では、「サマライジング」と言います。(中略)
 先ほど述べたように、ビジネス本番ではメモは取れないことを前提に、できる限り記憶する練習をしましょう。枝葉末節にとらわれるのではなく、文脈上大切なキーワードを拾い、それを文章化することがポイントです。
 また、より簡単な練習としては、日本語のニュースを30秒聞いてから、日本語で要約して紙に書くことです。日本語から外国語に置き換える能力がある程度上達したら、ここからは、理解力や知識力のレベルになるので、外国語ではなく日本語で訓練することも可能です。


【感想】

◆アラビア語に限らず、語学力向上に役立つTIPSが詰まった1冊でした。

そもそも著者の中川さんは、外務省に入省した時点では、アラビア語の「ア」の字も知らず(専門語学を第5希望まで書く際にも書いていなかった)、しかたなく身に着けざるを得なくなったという方です。

そんな中川さんが、苦労をしながらアラビア語をマスターし、内容紹介にもあるように「天皇通訳」「総理通訳」まで務めることになったのですから、その勉強法が気になるところ。

それはそれとして、まず本書の第1章では「総理通訳への苦難の道のり」と題して、外務省入省以降の中川さんの回顧録が語られています。

いや、それにしてもアラビア語の面倒なこと!

横書きでも右からミミズのような文字(失礼!)を書くことは知っていましたが、話し言葉と書き言葉が違ったり、主語や時制に応じて単語がくっついたりとワケワカメ。
英語でたとえると「私は輸入するだろう(I will import)」と言う場合は、Iwillimportとなるため、文法を理解してからでないと語源(根) が見つけられず辞書を引くことができないのです。
一応、世界の言語の難易度別カテゴリーでは、アラビア語は中国語、韓国語、日本語と並んで「非常に難しい言語」に指定されているのですが、私たち日本人にとっては、どう考えても一番難しそうな気が……。


◆さて、第2章では具体的な勉強法の前の「心構え」等々が紹介されています。

上記ポイントの1番目の「『なぜ?』は不要もその中の1つ。

「なぜ?」以前に、素直に言われたとおりに学ぶのが良いことは、語学に限らず、おそらく学習全般に言えると思います。

同様に上記ポイントの2番目の「聞き流し禁止」もこの第2章から。

「聞き流すだけではダメ」という話は類書でも結構ありますが、それだけでなく「最初からすでに理解している文章だけを聞くべし」とのこと。

実際、上記ポイントでは割愛しましたが、第4章では
自分が発声したことのない単語は、脳に音を「受信」する態勢ができていないために、どんなに良い音でインプットしても、脳には残らないのです。
と言われていますから、そちらもご確認いただければ、と。


◆一方、こうした主張を踏まえた上で、具体的な勉強法が解説されているのが、本書の第5章です。

実際上記ポイントの3番目以降はすべてここからのもの。

まずポイントの3番目の「自己発信ノート」については、具体例が記されているのですが、まず作るべきは簡単な自己紹介文です。

これを外国語に訳しておいて、さらにテキスト等で新たに学んだ文章を、この自己紹介文にどんどん組み込んでいき、繰り返しアウトプットする次第(詳細は本書を)。

もちろん、自己紹介や日常会話レベルに留まるのではなく、ビジネスや自分の関心のある分野についても、自分の意見を言えるようにしていきます。


◆ちなみにこの「自己発信ノート」をベースとした、「オリジナル単語帳」を作成することも提案されているのですが、こうした単語についても、上記ポイントの4番目にあるように「言い換え」の訓練が必須。

単語単位での言い換えができるようになったら、次は文章単位で行っていきます。

これらは通訳の人が実際に用いている、「パラフレージング」というトレーニング法なのだそうですが、本書では他にも、瞬発力を鍛える「クイックレスポンス」や、メモを取らなくても再現できる訓練である「リプロダクション」といった方法が紹介されていました。

上記ポイントの5番目の「サマライジング」もそうなのですが、この辺りまでくると、正直な話、普通の語学学習者にはちとハードルが高そうな気が……?


◆なお、最後の第6章では「通訳のすすめ」とあったので、当初は「関係ないか」と流すつもりでしたが、ビジネスシーンにおいてプレゼンや商談で、通訳する場合も想定したお話もありますから、こちらもお見逃しなく。

この第6章で、中川さんもこう言われています。
 大事な商談になればなるほど、自社で育てた通訳は社長や取締役の発言の意図を汲んで、最も相応しい表現でそれを相手に伝え、商談を成功に導いてくれるでしょう。
 あなたもどうか自分の語学力で会社をリードしてください。通訳は社益を代表する極めて重要なポストで、社長の右腕と言っても過言ではありません。
そう考えると、先ほどの第5章で挙げられたトレーニング法もそれぞれ大事なのだな、と思う次第。


もちろん英語学習にもフル活用できる1冊です!

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総理通訳の外国語勉強法 (講談社現代新書)
第1章 総理通訳への苦難の道のり
第2章 外国語習得のエッセンス
第3章 「ネイティブ脳」より「日本語脳」
第4章 「インプット」より「アウトプット」
第5章 外国語習得の具体的メリット
第6章 通訳のすすめ


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【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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