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2020年01月14日

【名著続々!?】『理学博士の本棚』鎌田浩毅


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理学博士の本棚 (角川新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事の中でも、大人気だったブックガイド。

京大の名物教授として知られる鎌田先生が、「中古典」(古典に昇格する前の中途半端に古い本)の名著をおススメしてくださる1冊です。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
若い頃に読んだ本が、その後の人生に大きな影響を与えることがある――。テレビや雑誌、メディアで活躍する「科学の伝道師」にして、京大人気No.1教授が、青春時代に大きな感銘を受けた意外な中古典の名著12作品を紹介。あらすじ、著者紹介、本文からのピックアップ、そして「鎌田の解読」として、著者がどうその本を読み、科学者としての視座を作ってきたかを語る!

新書と比べてお安くないのが残念ですが、私はKindle版で読みました!





The Catcher in the Rye / sagesolar


【『理学博士の本棚』から選んだ5冊】

■1.寺田寅彦『天災と国防』
 彼は帝都の被災状況をつぶさに観察したあと、地震の研究は科学者の興味で行うだけでは不十分で、防災という観点から遂行する必要があることを痛感した。さらに自然災害の発生を文明発達と絡めて考察し、「文明が進めば進むほど天然の暴威による災害がその劇烈の度を増す」(「天災と国防」12ページ)と断言した。
 そうなる理由は、「文明が進むに従って人間は次第に自然を征服しようとする野心を生じ(中略)自然の暴威を封じ込めたつもりになっている」(「天災と国防」12ページ)からである。
 まさに現代社会の問題を予言したものであり、内容がまったく古びていないことに、私は今でも驚く。日本人は世界屈指の地殻変動帯に住みながら、地震と津波に対する防御がきわめてお粗末なのである。

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天災と国防 (講談社学術文庫)


■2.サリンジャー『キャッチャー・イン・ザ・ライ』
 過剰な自意識と他者に対する過敏な反応に翻弄される若者たち。大人たちは彼らに対して 腫れ物に触るように接する。ホールデンの感覚を理解しない大人たちと、鬱屈せざるを得ない子どもたち。ユニバーサルに存在する人間模様を、村上は見事に訳し出している。
 世相はどうであれ、少年の深層心理に変わりがあろうはずがない。人類(ホモ・サピエンス)が誕生してから20万年、まったく同じことの繰り返しと言っても過言ではない。
 だから主人公のホールデンは、妹のフィービーにこう言われる。
けっきょく、世の中の すべてが 気に入らないのよ(村上春樹訳、286ページ)。
この言葉にすべてが凝縮されているように今も感じるのである。

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キャッチャー・イン・ザ・ライ (ペーパーバック・エディション)


■3.アラン『幸福論』
 本書のメインテーマを一言で表せば、「行動が思考を変える」という発想だ。
 アランは、思いきって行動すると、その結果は自分が考えた以上に効果が現れる、と力説する。
人からもらった快楽というものは、約束しただけのものを決して支払ったことがないのに反して、行動することの快楽は、必ず約束した以上のものを支払う(129ページ)。
 さらにアランは、「悩みはじめたら考えることをやめて体を動かそう」と提案する。
心配のある時には理屈を考えたりしてはいけない。推理は君自身に対する鉾先となるからである(53ページ)。
 つまり、 悩んだらまず動いてみる。その結果、必ず事態は好転し、新たな展望が開けるものである。何ともポジティブなすばらしい考え方ではないだろうか。

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幸福論 (角川ソフィア文庫)


■4.伊丹十三『ヨーロッパ退屈日記』
「動詞的」読書とは、つまり本を読んだあとに、その通りに実際に行動してみるということだ。作者の勧めていることを忠実に実行し、本の内容をそのまま自分の人生に組み込むのである。『ヨーロッパ退屈日記』は、まさに自らの行動規範へ搭載するに値する内容を持つ、「動詞的」読書向きの本と言っても過言ではない。
 著者は稀代のマルチタレント、伊丹十三である。彼の審美眼はいくつの時代を経てもなお、少しも 色褪せることがないほどに洗練されている。
 たとえば、カッコヨク生きるとはどういうことか。日本人はどのように海外で振る舞うべきか。独特の表現で軽快に、かつオシャレに綴っている。まさに世界標準のカッコイイ「大人像」がここにはある。

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ヨーロッパ退屈日記 (新潮文庫)


■5.勝 海舟『氷川清話』
 なぜ勝海舟はこれほどまでに人気があるのだろうか。一言で言うと「腹が据わっている」からだ。古来東洋では、腹が据わっていることを「胆識がある」と表現する。(中略)
 では、「胆識がある」とはいったいどのような姿だろうか。さまざまな記述が可能だが、「自分の信念がある」「権力や体制に 媚びない」「誘惑にも脅しにも左右されない」という姿も一つの表出である。
 また、「小さなことに振り回されない」「世間の常識ですら間違っていると思ったら捨てる」「必要とあれば勇気を持って断固として行動する」という生き方も胆識の一例だろう。
 こうした姿を勝海舟は持っており、その潔さが多くの日本人を強く惹きつけてきた。
『氷川清話』は、常人とはかけ離れた胆識を備えた勝海舟が、開国から幕末、さらに明治の外交で何を考え、どう行動してきたかをフランクに語ったものである。晩年に行った談話の数々を新聞記者がまとめた原稿がもとになっている。

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氷川清話 (講談社学術文庫)


【感想】

◆本書を読むまで、「中古典」という言葉を知らなかったのですが、本書のまえがきによると、「いわゆる『古典』と呼ばれるほどの評判ではないものの、紐解いて欲しい本」という定義のよう。

確かに下記目次には、本書に登場する全12冊が列挙されており、それを見ると「古典」というのは少々ライトな作品も含まれています。

ちなみに鎌田先生は、以前このような本も書かれてらっしゃいまして。

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座右の古典 (ちくま文庫)

『論語』『ソクラテスの弁明』や『読書について』といった、この本に収録されているような定番モノを「大古典」、本書収録本のようなものを「中古典」と呼ぶらしいです。

……ググっても、全然ヒットしないので、鎌田先生独自の呼び方なのかもしれませんが。


◆さて本書はブックガイドであるがゆえ、12冊それぞれについて、統一されたフォーマットにて解説されています。

その部分を本書のまえがきから引用。
 最初に【本文ピックアップ】として著者の考えがよく表れている文章を挙げる。
 次に【本のあらすじ】と【著者はこんな人】で概要を簡潔に紹介する。
 そして【鎌田の解読】として、私がどのように読み、科学者としての視座を作ってきたかの経験を語りたい。
 最後に【本書のポイント】としてまとめと、【次に読みたい本】としておすすめの本を紹介している。
このうち、その本について深く掘り下げているのは、【鎌田の解読】部分。

結果、上記ポイントで抜き出しているのも、すべてこの部分からになっています。

なお、【次に読みたい本】では、10〜14冊程度の関連書籍が挙がっているものの、下記関連記事の鎌田先生の著作以外は、私は読んだものがなかったという……。


◆さて、個々の作品について見ていくと、まず1番目の寺田寅彦は、名前だけは聞いたことがありましたが、世界的な物理学者であるだけでなく、文才もあった模様。

ポイントで挙げた『天災と国防』は、科学的素養に基づく作品ですが、かつては純粋な文学系の作品も書いていたのだそうです。

さらに驚くべきことに、明治時代にして、すでにライフハックにも長けていたらしく。

たとえば小学校時代に、ポストイットのようなものを自ら考案したとのこと。

ただし、そのことが詳しく書かれているのは、この『天災と国防』ではなくて、『全集』の第13巻ということなので、多分こちらのことでしょう。

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寺田寅彦全集〈第13巻〉日記 (1961年)

また勉強法としても、中学時代にはノートではなく教科書に直接書き込んでいたそうで、まさに多くの勉強本で主張されていることを、こんな昔から実践していた次第。

他にも語学の学習法やら、図版等のビジュアルを重視していたお話等々、ライフハックネタがかなり面白かったので、できれば本書にてご確認いただきたいところです。


◆2番目のサリンジャーの名作は、読まれた方も多いのではないでしょうか。

ちなみに、下記目次でも「サリンジャー『キャッチャー・イン・ザ・ライ』」となっていますが、これは村上春樹の新訳の方で、本書ではこちらの野崎孝の旧訳と併記されています。

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ライ麦畑でつかまえて (白水Uブックス)

本書では両者の違い等にも触れられていますから、既にお読みの方でも、違いを比較しても面白いかもしれません。

一方3番目のアランの『幸福論』は、普通に自己啓発書として有名ですから、当ブログとも親和性大。

さらに、鎌田先生も「魅力的な名言の宝庫」と断言し、こう言われています。
 まさに言いたいことの本質がコンパクトに表現されている。また、いずれもが私たちの生活に即しており、誰もが共感できる内容なのだ。身近なエピソードを見事なキーフレーズに凝縮する文章力。現代ならアランは一流の コピーライター としてもやっていけるにちがいない。
 古典の教訓は、本文からキーフレーズとして抜き出してみると、ぐっと自分に身近になる。こうした場合、アランの『幸福論』ほどエッセンスをピックアップしやすい本は、めったにないのではないか。
本書では、具体的にフレーズも抜き出されているのですが、直接『幸福論』を読んだ方が手っ取り早いかもしれません。


◆続く4番目の伊丹十三の作品は「行動する」ことの重要性をうたった作品。

また、映画監督だったこともあるからか、物事を見る視点が、普通の人とちょっと違っている印象を受けました。

本書では上記のほか、「握手の仕方」について述べられた部分も引用されているのですが、これが結構「目からウロコ」。

鎌田先生同様、次に誰かと(おそらく外人さん?)と握手する時には、こうしてみようと思ったくらいです(詳細は本書を)。

そして最後の勝海舟が「人気がある」というのは、私は正直知りませんでした。

ただし、本書で鎌田先生が紹介されている勝海舟のセールスポイントは、どれもビジネスパーソンとして身に着けたいものばかりでしたから、その意味では当ブログ向きと言えるかも。

特に「想定外のことへの対処力」は非常に優れていたようですから、これからの不確実な時代に向けて、チェックしておくべきだと思いました。


◆今回、めちゃくちゃ長くなっているのですが、抜き出さなかった本についてもいくつか。

まず畑正憲『ムツゴロウと天然記念物の動物たち』は、絶版になっていたものを、鎌田先生が何度も交渉して、やっと復刊してもらったのだそう。

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ムツゴロウと天然記念物の動物たち 森の仲間 (角川ソフィア文庫)

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ムツゴロウと天然記念物の動物たち 海・水辺の仲間 (角川ソフィア文庫)

何でそこまでこだわったのかは、本書を読んでくみ取ってください。

それと、ミヒャエル・エンデの『モモ』が、こんなに時間について深く考えさせる作品だとは知りませんでした。

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モモ (岩波少年文庫(127))

一方、野口晴哉の『風邪の効用』については、医学に関するお話なのに、とある主張部分のエビデンスがない(詳細は本書を)のが気になったワタクシ。

むしろ風邪に関しては、こちらの本の方が、個人的にはしっくりくるんですよね。

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かぜの科学:もっとも身近な病の生態 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

参考記事:お前らもっと『かぜの科学』の凄さを知るべき(2015年01月21日)


鎌田さんがこの12冊を推すワケをぜひご確認ください!

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理学博士の本棚 (角川新書)
第1冊 寺田寅彦『天災と国防』
第2冊 野口晴哉『風邪の効用』
第3冊 立花 隆『青春漂流』
第4冊 畑 正憲『ムツゴロウと天然記念物の動物たち』
第5冊 サリンジャー『キャッチャー・イン・ザ・ライ』
第6冊 ミヒャエル・エンデ『モモ』
第7冊 アラン『幸福論』
第8冊 伊丹十三『ヨーロッパ退屈日記』
第9冊 手塚治虫『火の鳥』
第10冊 トーマス・マン 『トーニオ・クレーガー』
第11冊 ヘルマン・ヘッセ『車輪の下』
第12冊 勝 海舟『氷川清話』


【関連記事】

「ラクして成果が上がる理系的仕事術」 鎌田浩毅(著)(2006年06月04日)

【読書術】『読まずにすませる読書術 京大・鎌田流「超」理系的技法』鎌田浩毅(2019年03月11日)

【ライフハック】『京大・鎌田流 一生モノの時間術』鎌田浩毅(2013年09月15日)

【これはヤバいw】『面白い本』成毛 眞(2013年01月24日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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ウケる筋トレ 筋肉がよろこぶ! かっこいい体に最短でなれる

昨今の筋トレブームに当然乗ってくるべきだったなかやまきんに君のご本は、Kindle版が500円以上お買い得。

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安売り王一代 私の「ドン・キホーテ」人生 (文春新書)

当ブログでもご紹介済みのドンキ本は、送料を足しても中古の方が数十円お得ですが、下記レビューを参考の上、ご検討ください!

参考記事:【夜の行動経済学?】『安売り王一代 私の「ドン・キホーテ」人生』安田隆夫(2015年12月10日)


【編集後記2】

◆昨日の講談社「英語本フェア」の記事で人気のあったのは、この辺の作品でした(順不同)。

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ポケット版 ドラゴン・イングリッシュ 必修英文法100 (講談社+α文庫)

B06XRX2HQG
一生モノの英語力を身につけるたったひとつの学習法 (講談社+α新書)

参考記事:【英語】『一生モノの英語力を身につけるたったひとつの学習法』澤井康佑(2017年03月31日)

B01C3P4G7W
ポケット版 ドラゴン・イングリッシュ 基本英文100 (講談社+α文庫)

B07MYXLMHP
英語で話す「日本の謎」Q&A 改訂第2版 (KODANSHA BILINGUAL BOOKS)

宜しければご参考まで!


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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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