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2019年11月20日

【失敗学?】『ミスしても評価が高い人は、何をしているのか?』飯野謙次


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ミスしても評価が高い人は、何をしているのか?


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事にて人気だった「ミス対処本」。

著者の飯野謙次さんは、スタンフォード大学で博士号を取り、博士畑村先生で知られる「失敗学会」で、副会長を務められている方ですから、その主張にも説得力があります。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
「ミスや失敗が汚点となって、うだつが上がらない人」と「ミスや失敗を乗り越えて、メキメキ評価を上げていく人」には、明確な差がありました!
「ミス・失敗」は、その扱い方を変えるだけで、あなたと職場の分析力・計画力・学習力・伝達力が上がります。
本書では、その方法を、わかりやすい図を用いて紹介します。
「やばい‼」「しまった‼」を、最高のチャンスに変える仕組みを、今すぐ、日々の仕事に取り入れましょう。

なお、上記記事の時点ではなかったKindle版も配信されましたから、こちらもご検討ください!






failure / mikecohen1872


【ポイント】

■1.ミスが起きたらチェックすべき3つの点
●その失敗は「どこ」まで影響するか?(=影響範囲)
 まずチェックすべきは、「その失敗はどこまで影響するか?(=影響範囲)」です。私たちは何かミスや失敗をすると、つい目の前の事態に気を取られて、それがどんな影響を周囲に及ぼすのかを見過ごしがちです。とくに失敗やミスが大ごとであればあるほど、影響範囲への視点が薄れてしまいます。
 そこで最初に、その失敗がどこまで影響するかを意識的に考えるようにするのです。
●「どうすれば」影響範囲全体への影響を最小化できるか?
 会社員のミスや失敗の場合には、多くの場合、「どうすれば影響範囲全体への影響を最小化できるか?」に対する動作の1つとして、まず上司に報告・相談する、という手順が加わるはずです。あなたより多くの経験を積み、権限を持った立場から、ミスや失敗の影響を最小化する方法を一緒に考えてくれるでしょう。
●「誰」に伝えればその影響範囲をカバーできるか?
 この「誰に伝えればその影響範囲をカバーできるか?」を考える際のポイントは、最悪の事態を想定でき、そうならないためのポイントを的確に考えられるのは誰かということです。


■2.ほとんどの失敗には理由があるが、成功の多くには理由がない
 ミスや失敗を「なかったこと」にしてしまう組織や個人がなし得る成功の多くは、ミスや失敗の余地のないものか、あるいは、様々な幸運が重なったうえでの偶然的なものです。その成功は、多くの場合、再現性がなく、もう一度成功をしたいと思っても、再び幸運が訪れるのを待つしかありません。(中略)
 一方、ミスや失敗を蓄積し、レベルアップできる組織や個人の成功には、ミスや失敗の余地のないものと、様々な幸運が重なったうえでの偶然的なものに加え、「失敗やミスの芽を摘んでいった先にある成功」という3つ目の要素が加わります。この3つ目の成功の特徴は、「経験に基づいたもの」であり、「再現性がある」こと。前のミスや失敗が、次の成功へのステップになっているということです。
 ですから、ミスや失敗を蓄積していける組織や個人は、自らの経験によって、徐々に成功確率を上げていくことができる、というわけです。


■3.「計画外」を予定に入れる
 ボーイング社が新しい機種を開発する際には、その計画を立てる段階で、予算の10%程度を「いまだ誰も体験したことのない不具合が起こったときに対応するため」に確保しています。彼らは、航空機を開発するうえで、必ず何かしらの計画外が起こることを織り込んでいる、というわけです。
 しかもその数字は、単なるあてずっぽうではありません。実は彼らは、過去数十年にわたり、従業員の仕事を分単位で管理しています。「その人が、その日、何分間その作業に従事したか」を記録し、蓄積しているのです。(中略)
 ですから、もしあなたが何かの組織を運営する立場にあるならば、事業の手順書化と工数管理・記録を取り入れてみてください。すると、その組織が続けば続くほど、より強固な運営の仕組みができるはずです。
 あるいは、個人として働くうえでも、自分の業務の手順書化と工数管理・記録をとるようになれば、勤続年数が上がれば上がるほど、より計画が立てやすく、成果を上げやすい状態になるでしょう。
 それこそが、本章の目的である「計画力を上げる」ということなのです。


■4.「了解メール」はあいまいに書かない
「あいまいさ」に関連して私が気になっているのは、依頼や指示のメールを出したあとに返ってくる「了解です(承知しました・かしこまりました)」の返信です。たとえば、メールで、
明日の11時の会議までに、提案書をまとめて、 本メールに添付した資料と一緒に人数分コピーをしておいてください。
 という指示がきたとき、あなたはどう返事をしますか?(中略)
 では、この場合、一番好まれる返信はなんでしょうか? 私は、何を了解したのか、その部分を本文に引用するなり、自分の言葉に置き換えるなどして了解した旨を伝える返信だと考えています。今回の例でいえば、
資料と提案書の準備の件、承知しました。
承知しました。明日の11時までに、提案書と資料を人数分用意しておきます。
 くらいの返信をしてほしいと思います。


■5.ミスや失敗を評価につなげるための10のマインド(抜粋)
●「失敗はあるもの」と考える
 たとえばシステムを組もうとするときは、考えた個々の部分がうまく機能することを想定して予定を立てます。もちろん、一発でうまくいくように目指してつくることは大切ですが、「失敗は起こるもの」だというのを忘れてはいけません。
「失敗は起こるもの。だからこそ、どう対策を立てるのか」
 それがやはり、私たちの仕事の基本なのです。
●ミスや失敗の原因を「うっかり」に求めない
 人間、誰しも「うっかり」することはあります。しかし、たとえその失敗やミスに、「うっかり」が絡んでいたとしても、失敗やミスを「うっかり」のせいにしてはいけません。
 仮に、「うっかり」に原因を求めた場合に立てられる対策は、
「うっかりしないこと」
 になってしまいます。「注意力のムラ」は、人間ならではの特性です。「絶対にうっかりしないようにしよう」と思えば、人間をやめるしかありません。
● 他人の仕組みを何も考えずにコピーしない
 ミスや失敗に対してはきちんと対策を練る必要がありますが、その人に合わない対策は、ときに、何もしないよりも悪い結果をもたらします。(中略)
 ですから、他人が自分の失敗やミスに対してつくった仕組みを、そのままコピーするのはやめてください。ミスや失敗から成長するためのコツは、「自分の頭で考えること」です。「このミスにはこの対策が効く」とばかりに、何も考えずに導入しても、意味はありません。
 

【感想】

◆まず本書のタイトルを最初に見た際、「ミスしても評価が高い」のは、てっきり「それ以外の部分が優秀」だから、つまり「日頃から評価が高い」、ということだと思っていたワタクシ。

実際、表紙には
あなたの仕事の「スピード」×「質」×「評価」を最大化する方法
とあって、ここだけ見たら、普通の仕事術本にも見えます。

ところが、冒頭の内容紹介では「『ミス・失敗』は、その扱い方を変えるだけで、あなたと職場の分析力・計画力・学習力・伝達力が上がります」とありますから、「これはひょっとして『失敗学』の本?」と思い始め、本書を読むと、上記ポイントでもご覧いただいたとおり、まさに「失敗学」そのものという。

そして「ミスをしても評価が高い」のは、上記ポイントの2番目にもあるように、「前のミスや失敗が、次の成功へのステップになっている」からなワケです。


◆では具体的にミスが起きた場合にどうするか、について触れられているのが、本書の第1章。

まずは「気持ちを落ち着ける」(詳細は割愛)のですが、次に行うべきが上記ポイントの1番目の「3つのチェック」です。

本書では、「飯野さんが誤って、実験用の部屋の鍵を持ったまま大阪に向かってしまったミス」を例に、この3つのチェックを行っていますのでご参考まで。

さらには、こうしたミスを将来に生かすべく、「再発防止策」を考えるのですが、ここで大事なのが、「精神論」ではなく、「『次に同じミスをしようとしても、もうできない』という仕組みを考えること」です。

本書では「NG」と「OK」の具体例が挙げられているのですが。
NG 異物混入を防ぐために、チェック要員を増やす。(NGの理由:マンパワーでは結局見落とす可能性が高い)

OK 工場のラインに異物が混ざらないように、カバーで覆って何も入れないようにする(ペヤングの例)。
NG 情報保持に関する社員教育を徹底する。(NGの理由:教育では100%防ぐことができない)

OK 情報 漏洩 を防ぐために、重要なエリアには電波ガード装置をつけ、電子機器の持ち込みや持ち出しを制限する。
とあって、まさに先日読んだこの記事を思い出しましたよ……。

システムの穴を 「運用でカバーする」っていう思考法やめようよ、と強く強く思った話。 | Books&Apps


◆続く第2章では、むしろこうした「ミスや失敗」がもたらす「メリット」についてのお話が登場。

上記でも触れましたが、上記ポイントの2番目にあるように、「前のミスや失敗が、次の成功へのステップになっている」のは、
●不十分な仕事のやり方をアップデートできる
●観察力・分析力が必然的に上がる
●計画力・学習力・伝達力が高まる
といった理由があるからです(詳細は本書を)。

一方第3章では、ミスや失敗を分析する方法が解説されているのですが、そこで登場するのが「個人の失敗原因まんだら」という図。

画像だと引用できないので割愛しましたが、一応、畑村先生のこのまんだらから、個人の仕事に活用できるように、要素を厳選したもののようです。

図1 失敗まんだら(原因)

本書で用いられているのは、上層に5つ、その下の下層に18の原因があるまんだら図であり、いくつかの事例に当てはめて分析する方法が紹介されていますので、ぜひご確認を。


◆また、第4章から第7章までは、「個人のミスや失敗の原因」の4つである「計画不良」「学習不足」「伝達不良」「注意不足」について、それぞれ1つの章を割り当てて解説がなされています。

上記ポイントの3番目は、第4章から抜き出したもので、「計画不良」に対応。

「自分の業務の手順書化と工数管理・記録をとるようになれば、勤続年数が上がれば上がるほど、より計画が立てやすく、成果を上げやすい」という指摘は、私自身、確かにそうだと思います。

一方、上記ポイントの4番目のメールのお話は、第6章のテーマである「伝達不良」に対処するもの。

確かに私自身、顧問先からのメールの「了解しました」で、分かりにくいと思ったことが何度かあっただけに、腑に落ちました。


◆ちなみに、第7章の「注意不足」のところで例に挙げられていたのが「ながらスマホ」。

これに関連して、当ブログでも大人気だったこの本が紹介されていました(下記レビューはブクマ560超ですので、未読の方はぜひ!)。

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錯覚の科学 (文春文庫)

参考記事:『錯覚の科学』が想像以上に凄い件について(2014年08月19日)

さらに飯野さんが、「人の注意力がいかに信用できないものであるかを聴衆に納得してもらうために、講演で好んで使う動画」として挙げられていたのがこちらです。



……ちょうど昨日の記事でご紹介した動画をアレンジしたものというw

実際、上記の『錯覚の科学』でも
携帯を使っていても基本的な作業(決まった道路を走ること)は、相変わらずできているため、運転に支障はないと思い込むのだ。問題は、ドライバーが想定外の、危険をはらんだできごとを見落としがちになること。そしてそのような事態はめったに起きないため、日常体験からは学びにくい。
と言われいますし、「実は手動式の携帯もハンズフリーの携帯も、注意力への影響という点ではほとんど差がない」そうなので、皆さまご注意を。


ミスや失敗に注意し、それを生かすために読むべし!

4822289990
ミスしても評価が高い人は、何をしているのか?
はじめに「ミスしたのに、評価が上がる」仕事術
1章 ミスしてしまったとき、「評価される人」はこう対処する
2章 だから、乗り越えた先に「急成長」が待っている
3章 問題点をピンポイントで見抜く
4章「圧倒的な結果」を生み出す「計画の質」の高め方
5章「何歳になっても成長し続ける人」は何が違うのか?
6章 仕事をスピードアップでき、関係性までよくなる「伝え方」
7章「どんなうっかり者でも、うっかりできない」仕組みをつくる
8章 なぜ「ミスを正しくシェアする」だけで、あなたの評価が上がるのか?
巻末付録 ミスや失敗を評価につなげるための10のマインド


【関連記事】

【ミス撲滅】『仕事が速いのにミスしない人は、何をしているのか?』飯野謙次(2017年02月05日)

東大教授は『なぜかミスをしない人の思考法』の夢を見るか(2013年11月30日)

【事前検死?】『先にしくじる 絶対に失敗できない仕事で成果を出す最強の仕事術』山崎裕二(2018年12月09日)

【失敗?】『失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織』マシュー・サイド(2016年12月28日)

せっかくだから『ビジネスで失敗する人の10の法則』について語るぜ!(2012年10月21日)

『錯覚の科学』が想像以上に凄い件について(2014年08月19日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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アマゾンと物流大戦争 (NHK出版新書)

当ブログでもレビュー済みのロジスティクス本は、中古は底値ですが、送料を加味すると「299円」のKindle版がお買い得。

参考記事:【ロジスティクス】『アマゾンと物流大戦争』角井亮一(2017年01月19日)

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[音声DL付]イメージでわかる・使える英単語[動詞編] アルク・ライブラリーシリーズ

丁度先日ご紹介したばかりの英語本でも推奨されていたやり方である、「コア」から英単語を覚える作品は、Kindle版が500円強、お求めやすくなっています!


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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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