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2019年11月19日

【科学的自己啓発書】『Think CIVILITY 「礼儀正しさ」こそ最強の生存戦略である』クリスティーン・ポラス


B07SJYTZ8X
Think CIVILITY 「礼儀正しさ」こそ最強の生存戦略である


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、現在開催中である「東洋経済新報社フェア」の中でも人気の1冊。

セール記事の最初に表示されますから、ご覧になった方も多いと思います。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
全米で話題「礼節の科学」、ついに日本初上陸!
MBAで「職場の無礼さ」を研究する著者、20年間の集大成がこの1冊に凝縮!
一流のエリートほど、なぜ不機嫌にならないのか?
ビジネスでも、人間関係でも、最強の武器になる礼節の力を徹底解説!

中古が普通に高いため、このKindle版が700円弱、お得な計算です!






Civility / blech​


【ポイント】

■1.無礼な態度は単語だけでも周りの認知能力を下げる
 無礼な態度を単に言葉で連想させられただけでも、人間は注意力を削がれるのではないか。そのせいで重要な情報が提示されても見逃すことが増えるのではないか。私たちはそう仮説を立て、その仮説の正しさを検証するために、心理学者ダニエル・シモンズとクリストファー・チャブリスの有名な「見えないゴリラ」の手法を借用させてもらった。
 単語の作業を終えた被験者たちに、ある映像を見せる。何人かがバスケットボールをしている映像だ。その映像を見て、プレーヤーが何度パスをするかを数えるよう指示をする。途中、ゴリラの着ぐるみを着た人がプレーヤーの中を通り過ぎる。映像を見終わった被験者には、パスの回数が何回だったかを書くように言う。
 文を作る作業で無礼な態度を連想させる言葉を見ていた被験者は、映像に登場するゴリラを見逃すことが多い。実験では、中立的な言葉だけを見ていた被験者の5倍の頻度で見逃すことがわかった。
 これは、意志の力だけで無礼を「乗り越える」ことが不可能だということを意味する。無礼さは、本人も気づかないうちに注意力を奪い、頭のはたらきに影響を与えてしまうからだ。


■2.無礼は伝染して、次の無礼を生む
 誰かに無礼な態度を取ること、取られることを、「自己完結的」な体験だと思っている人は多い。直接、やりとりをした当事者どうしで完結することだと思っている人が多いのだ。だが、実際には、無礼さはウイルスのように人から人へと伝染していく。その後、関わった人たちすべてに悪影響を与え、人生を悪い方に導くことになる。
 たとえば、ある企業の本社内のあるオフィスで誰かが誰かに無礼な態度を取ったとする。すると、その悪影響は知らない間に、廊下にも、3つ上のフロアにも、休憩室にも伝染していく。影響を受けた人はその後、社外の人、顧客などとも接することになるだろう。
 誰も気づかないうちに、無礼さの影響は社内全体に広がり、すべての人をより不親切に、より不寛容にし、すべての人の元気、楽しさを奪う。その分だけ悪い企業になっているということだ。


■3.「温かさ」と「有能さ」は相反しない
 これまでに、人間の200種類を超える行動特性が調査の対象となっている。その中でも特に重要だとわかったのが、「温かさ」と「有能さ」の2つだ。この2つが、他人に与える印象を大きく左右する。この2つがほぼすべてと言ってもいい。
 良い印象にしろ、悪い印象にしろ、この2つでその90パーセントが決まってしまうからだ。あなたが誰かに「温かい」「有能」という印象を与えることができれば、その人はあなたを信頼する可能性が高い。あなたを信頼してくれた人とは良好な人間関係を築くことができる。その人はあなたが何かをする時に、おそらくそれを支持し、応援してくれる。
 ただ、ひとつ注意しなくてはいけないことがある。「温かさ」と「有能さ」は相反する特性と思われがちだということだ。(中略)
 だが、すでに書いてきたとおり「この人は実は、有能な上に温かい」と思ってもらうことは可能である。そのためにできることはひとつしかない。ここまで読んできた人にはもうわかるだろう。「礼儀正しくふるまうこと」である。


■4.ワンランク上の礼節を身に付けるための5つの心得
 たとえば、廊下で同僚とすれ違う時、軽く会釈をするだけで通り過ぎることもできる。しかし、同僚に笑顔を見せたらどうなるだろう。
 そうすれば、不意にすれ違って喜んでいるという感情を相手に伝えることはできる。ほんの短い間に、温かい感情と仲間意識が伝わることになる。もちろん、そんなものを伝える義務はない。誰もそうしろと強制することはできない。
 しかし、もしあなたが自分の意志でそうすれば、同僚は微笑みを返してくれるかもしれない。あなたが伝えたのと同じものがあなたへと返ってくるわけだ。
 職場で礼儀正しくあるためには、微笑むだけでは不十分で、他にも必要なことはたくさんある。私がこれまでに行った調査と、コンサルティングをしてきた経験によれば、必要なことは大きく分けて5つだ。
❶ 与える人になる
❷ 成果を共有する
❸ 褒め上手な人になる
❹ フィードバック上手になる
❺ 意義を共有する
(詳細は本書を)


■5.採用の際には言動から礼節の高さを測る
 志望者が何を言うか、だけではなく、何を言わないかにも注目すべきだ。話が具体的になった時には、特にその人の礼節に関係が深そうな部分をよく聞く。また話している時の態度が、言語にはならない情報を伝えてくれることもあるのでよく見る。
 礼節に関する話をする時の志望者の表情や仕草はどうだろうか。しかめ面をしていないだろうか。落ち着きがなくなったりはしていないか。あなたの会社の価値観に合う人だと感じられるだろうか。
 その人が会社の価値観に合わないのだとしたら、そのことはできるだけ早くわかった方が良い。志望者が面接に訪れた際には、面接官以外の社員と接触する機会もあるだろう。その時の態度も注視すべきだ。
 たとえば、駐車場の案内係に対して、志望者はどういう態度だったか。受付係や、アシスタントに対してはどうか。腰が低く、優しかったか、それとも横柄で見下したような態度だったか。
 私は多数の企業の人事担当者から話を聞いたが、彼らによると、就職志望者についての最も有用な情報は、空港に車で出迎えに行った社員や、入り口で出迎えた受付係などから得られるという。


【感想】

◆昨日の作品で「ハイライトを引きまくった」と言ったばかりですが、本書はさらに引きまくるハメになりました。

もちろん、昨日は新書で、本書は340ページ超の単行本ですから当然なのですが、1つには冒頭の内容紹介にも「礼節の科学」とあったように、かなりエビデンスベースで書かれていたことが大きかったと思います。

たとえばアマゾンのページにも掲載されている「職場で誰かに無礼な態度を取られていると感じた人が、次のような行為に出る」という割合ですが。
・48パーセントの人が、仕事にかける労力を意図的に減らす。
・47パーセントの人が、仕事にかける時間を意図的に減らす。
・38パーセントの人が、仕事の質を意図的に下げる。
これは本書の第2章「無礼な人がもたらす5つの費用」における費用の1つ、「無礼な人は会社に損害をもたらす」で詳細が述べられており、「17の業界の800人の管理職、従業員を対象」に、著者が同僚のクリスティーン・ピアソンとともに実施した調査」から得たものとのこと。

本書ではさらに続きがあって、6項目ほど問題点が挙がっているものの、キリがないので省略しますが(詳細は本書を)。


◆実際、この「無礼な人がもたらす5つの費用」はどれもしゃれにならないものでして、上記ポイントの1番目もその1つ。

「見えないゴリラ」については、以前別の作品のレビューでご紹介したことがありますが、再度掲載しておきます。



「単語」だけでも、というのが想定外でしたし、さらに「無意識のうちに」となると、私たち自身が気が付いていないことが明らかかと。

さらにこの「5つの費用」の1つが「無礼な人は周りを攻撃的にする」で、最初は「え?逆じゃないの?」と思ったのですが、どうも「攻撃的な態度」は伝染するようです。

そしてこれに関連しているのが、本書の第4章「無礼は無礼を生み、礼節は礼節を生む」から抜き出した、上記ポイントの2番目。

ここでは単に「伝染する」としか触れられていませんが、その続きを読むと「いやな気分」が染るだけでなく、「無礼な態度」も伝染してしまうそうです。


◆一方、上記ポイントの3番目は、本書の第6章の「礼節ある人が守る3つの原則」から抜き出したもの。

ここでは「温かさ」と「有能さ」となっていましたが、以前ご紹介したこの本では「温かさ」と「強さ」でしたっけ。

B01JADEDUK
人の心を一瞬でつかむ方法―――人を惹きつけて離さない「強さ」と「温かさ」の心理学

参考記事:意外と知られていない『人の心を一瞬でつかむ方法』のテクニック10選(2015年05月23日)

ただ、いずれにせよ、イメージとしては両者は相反しそうですが、そうならないためには「礼儀正しくふるまえばいい」ワケです。

ちなみに本書では、もろに「相反している」ジョブズについても触れられているのですが、あの傲慢なジョブズでも成功しているではないか、という指摘に対して「礼節が高ければより成功していた」と主張しているという……。

そこまで「有能」ではない私たちは、まずは「温かさ」を高めたいところです。


◆そこでご覧いただきたいのが、上記ポイントの4番目の「ワンランク上の礼節を身に付けるための5つの心得」。

これは本書の第8章の章題そのままであり、この「5つの心得」のそれぞれについて、本書では細かく解説がなされています。

このうち、3番目の「褒め上手な人になる」というTIPSは、当ブログでも関連書籍を多数ご紹介済み。

また1番目の「与える人になる」では、やはりこの本が挙げられていました。

B00IRV39FM
GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代 三笠書房 電子書籍


◆ここまでは個人のお話が中心でしたが、第10章以降(第3部)は、会社のお話が中心に。

上記ポイントの5番目は採用の際のTIPSであり、やはり「礼節の高さ」は、ここまでの各章を読んできた上だと、非常に重要な要素であることが理解できます。

また不幸にもそうではない社員がいる場合の、対処の仕方についても言及が。

「行動を改善させる4つのステップ」という項目はあるものの、それでもダメな場合は、やはり最終的には解雇する必要があるようです。

なお本書に関して惜しむらくは、巻末の脚注等や参考文献がないこと。

版元が東洋経済さんで、テイストが「科学的自己啓発書」なのに、これは少々意外でした。

もちろん、中身的にはクオリティが高いので、リーダーはもちろんのこと、成功したいビジネスパーソンなら一読の価値があると思います!


礼節を重んじる人を目指すために読むべし!

B07SJYTZ8X
Think CIVILITY 「礼儀正しさ」こそ最強の生存戦略である
はじめに 礼節は最強の武器になる
第1部 なぜ礼節ある人は得をするのか
 第1章 無礼な人が増えた根本理由
 第2章 無礼な人がもたらす5つの費用
 第3章 礼節がもたらす5つのメリット
 第4章 無礼は無礼を生み、礼節は礼節を生む
第2部 あなたの礼節を高めるメソッド
 第5章 あなたの礼節をチェックしよう
 第6章 礼節ある人が守る3つの原則
 第7章 無意識の偏見を取り除こう
 第8章 ワンランク上の礼節を身に付けるための5つの心得
 第9章 礼節あるメールの作法を身に付ける
第3部 礼節ある会社になる4つのステップ
 第10章 礼節ある人を見極める採用システムを作る
 第11章 礼節を高めるコーチングを取り入れる
 第12章 誤った評価システムを改善する
 第13章 無礼な社員とどう向き合うか
第4部 無礼な人に狙われた場合の対処法 
第14章 無礼な人から身を守る方法
おわりに あなたはどういう人間になりたいか


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【ホメ】『ほめる生き方』西村貴好(2012年06月04日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

B07VDLS2JX
むずかしすぎる コウペンちゃんまちがいさがし

子ども向けかと思いきや、レビューを読むと意外と難しそうな!?

中古が定価以上なので、Kindle版が500円弱、お買い得です!


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