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2019年11月14日

【実行機能?】『自分をコントロールする力 非認知スキルの心理学』森口佑介


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自分をコントロールする力 非認知スキルの心理学 (講談社現代新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事にて、大人気だった1冊。

俗に「自制心」とも呼ばれる「非認知スキル」について、その研究者である森口佑介博士が、最新のエビデンスをもとに解説してくださっています。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
近年にわかに注目を集める「非認知スキル」。そのなかでもとりわけ「自分をコントロールする力(実行機能)」は、どうやら学校の成績や仕事の業績、そして将来の健康をも大きく規定するようです。
果たしてその能力は、どのようにして身につくのでしょうか。あるいはどんなときに働かなくなるのでしょうか。発達心理学の最新知見から、その育て方・鍛え方を大公開します。

若干ですが、お得なKindle版がオススメです!





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【ポイント】

■1.実行機能と学力は関係する
 私が高校受験に臨んでいたときのことです。「紅白歌合戦を見た人は志望校の入学試験に必ず落ちる」と、通っていた塾の講師が断言しました。視聴率低迷が叫ばれる紅白歌合戦ですが、その頃の視聴率は50%前後。中学生ともなれば流行の音楽が気にならないはずもありません。入学試験という一大事を目の前にした生徒たちは、この言葉を聞いて、一様に動揺し、当時流行していたtrfのステージを視聴するかどうか、真剣に相談したものです。(中略)
「今日くらい、いいだろう」と考えて紅白歌合戦を見る生徒は、他の場面においても、目の前の誘惑に負けることが多いかもしれません。友達と遊びに行ったり、漫画を読んだり、ポケベル(現在で言えばLINEなどのSNS) を延々としたりして、勉強に取り組まないでしょう。一方、誘惑に打ち勝てる生徒は、他の場面でも、誘惑に抵抗し、勉強に励むことができるでしょう。このように、実行機能と学力は関係するのです。


■2.子どもの時の実行機能が成人後の暮らしに関係する
ダニーデンの縦断研究では、青年期に酒やタバコ、ドラッグのような違法行為を全く犯さなかった「優等生」グループが、大人になったときに経済面や健康面においてどのような成績を示すかを調べました。
 その結果、優等生グループは、他の参加者と比べて、経済面においては金銭的に恵まれており、かなり健康であることが示されました。青年期のような頑張るべきときに頑張れる人、自分をコントロールするべきときにコントロールできる人というのは、将来的に社会で必要とされることが多いのでしょう。
 重要なのは、このような青年期の行動が、子どものときの実行機能と強く関連することです。子どものときに実行機能が高いと、青年期に無茶をしすぎません。
 つまり、誰しもある程度は青年期には実行機能が低下するのですが、子ども期に実行機能が高いと、青年期の行動にブレーキを利かせられるのです。専門的な言い方をすると、子ども期の実行機能は、青年期における防御因子になるのです。


■3.社会経済的地位が低いと子どもがストレスを感じる
 なぜ、社会経済的地位は子どもの実行機能に影響を与えるのでしょうか。その理由の1つは、社会経済的地位が低い家庭では、高い家庭よりも、子どもがストレスを感じる経験が多いことです。第4章でも触れたように前頭前野は強いストレスに対して脆弱なので、社会経済的地位が低い家庭では前頭前野の発達が影響を受けてしまいます。(中略)
 子どもが直接的に暴力を受けなくても、たとえば父親が母親に暴力を振るうのを見るだけでも、子どもには大きなストレスがかかってしまいます。夫婦間の暴力はもちろん、口論すら子どもにストレスを与える可能性があります。オレゴン大学のグラハム博士らの研究では、1歳以下の赤ちゃんが睡眠中に両親が口論すると、赤ちゃんの脳がストレスを受けることが示されています。
 それ以外にも、家族にアルコール依存者や薬物依存者がいること、精神疾患を持つ人がいること、服役中の人がいることなども子どもに大きなストレスを与えます。


■4.運動は実行機能を向上させるか?
 この研究では、4つの活動が思考の実行機能に与える影響を比較しました。
 1つ目は座ってビデオを見るという活動です。2つ目は、座ったままできるテレビゲームです。ここでは任天堂Wiiの「スーパーマリオワールド」を使っています。
 3つ目は、体を使うテレビゲームで、こちらもWiiなのですが、マラソンのゲームで、実際に走るかのような身体運動を伴います。4つ目は、少しだけ体を使うゲームで、ジョギングしたり動いたりするかのような身体運動を伴います。3つ目と4つ目は、1つ目と2つ目に比べて、運動の負荷が高いということになります。
 子どもは、それぞれの活動に参加した後に、思考の実行機能のテストを受けました。その結果、身体的な活動量が多い3つ目と4つ目の活動に参加すると、実行機能の成績が良いことが明らかになりました。運動は実行機能を向上させる効果がありそうです。


■5.独り言を奨励する
成長とともに、子どもは考えるための言葉も発するようになります。周りに誰もいないのに「これなんだろう」とか、「これすきなうただ」などと発するようになります。他の人と話すための言葉と、考えるための言葉が、両方とも言葉として出てくる時期です。後者が独り言です。(中略)
 つまり、子どもの独り言とは、本来考えるために用いられる言葉を発声している状態です。特に、難しい問題に取り組んでいるときに独り言が出やすいようです。私たち大人も、難しい仕事を与えられた場合、ついつい独り言を言ってしまうことがありますよね。
 子どもも、言葉として出すことによって、問題を解こうとしているようです。そして、独り言を多く発する子どもほど、実行機能や難しい問題を解く能力が高いのです。
 プログラムでは、この点を重視します。たとえば絵をかいたり文字を書いたりする際に、まず、教師が独り言を言いながら活動するお手本を見せ、独り言を言って活動するよう指示します。その後、子どもたちに実際に活動させる際に、独り言を言うように奨励するのです。


【感想】

◆「非認知スキル」の本のハズなのに、延々と「実行機能」と言い続けてすいません。

実は本書の最初の方で、用語についての解説があるのですが、ざっくり言うと、まず「認知スキル」とは、IQ等の「頭の良さ」のこと。

一方、「非認知スキル」には大きく分けて3つの能力があり、それぞれ
・他者とうまくつきあう能力
・自分の感情を管理する能力
・目標を達成する能力
となっています。

そしてこのうちの「目標を達成する能力」のことを、「実行機能」と呼ぶとのこと。

さらに「実行機能」は「感情の実行機能」と「思考の実行機能」に区別できるのですが、本エントリーではまとめて「実行機能」と呼んでます。

ちなみにこの「実行機能」と「自制心」との関係なんですが、著者の森口さんによると
自制心は自分をコントロールすることに主眼を置いていますが、実行機能は目標を達成することに主眼が置かれます。本書では、この点を強調したいので、実行機能という言葉を使います。
とのこと。

以降、本書では基本的には「実行機能」を掘り下げていく次第。


◆さて、第1章の「実行機能とは?」での解説に続き、第2章の「自分をコントロールすることの重要性」で、こういった概要について説明されています。

ただ、同じ第2章で気になったのが、当ブログの読者さんならご存知であろう「マシュマロテスト」のお話。

マシュマロ実験 - Wikipedia

現在でもまだ議論は続いているものの、どうも「幼児期のマシュマロテストが青年期の学力や問題行動に与える影響は極めて小さい」のだとか。

ただし、この「マシュマロテスト」とは別に、「実行機能」を測定するテストは他にありますし(本書にもいくつか収録されています)、その結果の「実行機能」とその子どもの将来には、上記ポイントの2番目にあるようにキチンと相関性があります。

……もちろん、上記ポイントの1番目の「紅白歌合戦」に限らず、学力とも関係があるのも当然のこと。


◆一方、「理屈はいいから、とにかく実行機能を高めたい」という方にお読みいただきたいのが、本書の第6章と第7章です。

まず第6章では、「実行機能の育て方」と題して、環境や育児法、さらにはテレビやメディアとの接し方まで指南されていました。

テレビがあまりよろしくないのは予想していましたが、メディアでも双方向性があるものは、ちと違う模様(詳細は本書を)。

また、第7章ではもっと踏み込んで、「実行機能の鍛え方」が展開されています。

たとえば上記ポイントの4番目で述べられているように、「運動」は効果があるそうなのですが、これは「脳ネタ本」でも推奨されていましたから、やはり、といったところ。

また、割愛した中でも、「音楽」や「マインドフルネス」も登場していますが、意外なことに「アレ」が効果がなかったという(ネタバレ自重)。

さらには「心の道具」と呼ばれるツール群から選んだ、上記ポイントの5番目の「独り言」は、子どもにかぎらず、様々なシーンで活用されてきましたから、これも個人的には腑に落ちました。


◆さて、こうして見てきたお話の多くが、「子ども」に関することに気がつかれましたでしょうか?

もちろん、大人も日々の生活で「実行機能」は用いてますし、伸びるならそれに越したことはありません。
大人でも実行機能を鍛えることは理論上可能です。ただし、これらの研究に問題がないわけではありません。たとえば、訓練をすることで実行機能が向上したとしても、その訓練を継続しない限りはその効果は一時的なもので、3ヵ月後などに再調査すると、訓練の効果がなくなっています。筋肉もそうですが、やはり鍛え続けることが大事なようです。少しの間だけ訓練したところで、その効果は長続きしません。
「じゃあ、ゲームで脳トレを毎日!」と思ったら、
ものすごくがんばって鍛えても、効果はわずかであり、訓練をやめたら効果はなくなり、しかも、日常生活にはあまり活かされません。
とのこと。

結果、本書はお子さんの「実行機能」を高めたいお父さん、お母さんには有意義な作品なのですが、お子さんがいらっしゃらない方にとっては、それほどでもないかもしれません。

ただ、巻末にぎっしり収録された参考文献をベースにした理論展開は、「科学的自己啓発書」のテイストと言えますから、その手の本がお好きな方にも、お楽しみいただけるかと。


「我が子の幸せ」を願う方なら要チェックな1冊です!

406517919X
自分をコントロールする力 非認知スキルの心理学 (講談社現代新書)
第1章 実行機能とは?
第2章 自分をコントロールすることの重要性
第3章 実行機能の育ち方
第4章 自分をコントロールする仕組み
第5章 岐路となる青年期
第6章 実行機能の育て方
第7章 実行機能の鍛え方
第8章 非認知スキルを見つめて


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【編集後記】

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