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2019年11月13日

【オススメ!】『サバイバル組織術』佐藤 優


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サバイバル組織術 (文春新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、明日で終了となる「文藝春秋秋祭り」の中で、個人的に読んでみたかった作品。

皆さまご存知である佐藤 優さんが、組織における生き残り術を指南してくださっています。

アマゾンの内容紹介から。
理不尽な人事、職場のいじめ、女性と仕事、予期せぬクライシス―。会社から国家まで、現代人は「組織」とのかかわりなしには生きていけない。日本の文学や漫画、ドラマなどをテキストに「組織」を読み解き、実体験も交え、生き抜く極意を指南。人事は最も危険な仕事、漱石が描いた「組織と個人」、クライシスを生き抜く非情の戦略、現場にツケを回す上司のキーワード、人材の枠を狭めると組織は滅ぶ、生活保守主義の恐ろしさ、人脈はABCに分類せよ、上司と戦ってはいけない、ほか。実戦で使える思考とノウハウ。

まだ中古があまり値下がりしていませんから、このKindle版が400円以上お買い得となります!






【ポイント】

■1.マトリクス図でみる「組織の中の個人」
 組織に所属する人は、図で示した4つの象限のどこかに含まれます。縦軸は、生産性が高いか低いか。横軸は、仕事が楽しいか楽しくないかを表します。  
 気六纏が楽しく、生産性が高い人〈ハイパー〉です。仕事術を扱ったビジネス書や自己啓発セミナーなどで、最も望ましく目標とすべき人間像として提示されています。
 それに対して、兇蓮劵錙璽ホリック〉です。生産性は高いが、仕事は楽しくない。いわゆる仕事中毒ですが、社内では重宝されます。
 靴蓮劵弌璽鵐▲Ε函咫G海┸圓型、すなわち仕事が楽しくなく、生産性も低い人たちです。この〈バーンアウト〉状態が続くと、組織にとどまること自体ができなくなり、〈ドロップアウト〉を余儀なくされるケースも生じます。  最後の犬〈マイペース〉。生産性は低いが、仕事は楽しいといった類型です。(中略)
 このモデルは、組織のなかの自分の位置取りを考えるときにとても役に立ちます。まず自分が気痢劵魯ぅ僉次咾紡阿靴討い襪塙佑┐討い訖佑蓮◆崛反イ砲箸辰董△いなる個人も入れ替え可能である」という大原則を思い出してください。サバイバルにおいて重要なのは、現実にはほぼありえない気鯡椹悗垢海箸任呂覆、靴痢劵弌璽鵐▲Ε函咾亡戮蕕覆い海箸任后そのために、日々のチェックが必要なのです。


■2.不測の事態における4類型
 この本でもうひとつ強く印象に残ったのは、クライシスに直面した人間のタイプ別分析です。佐藤一男さんは、次の4通りに分けています。
(1)やるべきことをきちんとやる人。  
(2)やるべきことをまったくやらないか、不十分にしかやらない人。
(3)やってはいけないことをやる人。
(4)やってはいけないことをやらない人。
 何か不測の事態──たとえば交通事故とか会社でトラブルが発生したとか──が起きたとき、周りの人たちの対応を思い出してください。だいたい、この4通りのなかに収まるのではないでしょうか。ここで問題なのは(2)と(3)です。深刻なクライシスほど、ほとんどの人がこの(2)と(3)になる。すると、対応ミスの連鎖が起きて、事態はいっそう想定外のものになってしまうというのです。
 つまり、クライシスにおいて被害の程度を分けるのは事後の対応であり、それは危機に直面した個人の行動にかかっているのです。そのときに重要なのは、クライシスの対応に正解はないと理解しておくことです。思い込みを排して、自分の能力の限界もわきまえたうえで、事態をしっかり観察する。そして、まず「やってはいけないこと」を見分けていく。これがクライシス・マネジメントの第一歩だと思います。


■3.「自己犠牲」の力に注意する
 人を動かすとき、最も力を発揮するのは、命令や強制でもなく、利益誘導でもありません、実はこの感化の力です。人の振る舞いをみて、影響を受け、自分も何かやらなくてはと思う。それは自発的な行為だけに強いのです。
 人は、自己犠牲的な行動を取る人から感化され、動かされる。人を率いるためには、自己犠牲を厭わないこと。少なくとも自己犠牲を演ずること。これこそ人心掌握の要です。
 このことを、裏返して考えてみましょう。もしもあなたの周りに、自己犠牲的に仕事に打ち込み、周りに気配りも欠かさない人間がいたら、その引力圏に引きずり込まれないように注意すべきです。その彼ないし彼女は、もしかすると大変に恐ろしい人間で、大石内蔵助のように、あなたを吉良邸に導き、気がついたら並んで切腹させられてしまうかもしれないからです。
 この自己犠牲の構図は、実はブラック企業においても観察されます。ブラック企業は、従業員を脅しあげてブラック化するだけではありません。一生懸命に自分の仕事をこなし、睡眠時間も削り、チームや部下のために誠心誠意働いている上司がいると、「この人についていきたい」と感化を受け、自らブラックな働き方に突入していくのです。


■4.企画、実行、評価を分ける
「うまくやれ」型組織原理が行き着く先は、「現場の暴走」です。そもそも上が「工夫しろ」「うまくやれ」と丸投げしているのですから、いざという場面で、統制がきくはずがありません。
 つまり企画立案を現場が行なう。実行も現場が行なう。そしてその評価も現場が、自分自身で行なうようになるのです。すると、どんな作戦だろうと、報告されるときには「成功」か「大成功」になってしまうのです。第3章で取り上げた『不毛地帯』について論じた、参謀の無責任も、ここに根本的な原因があります。
 まともなリーダーシップが機能している組織では、こうはなりません。戦国武将にたとえるならば、攻撃目標を決めるのは織田信長です(企画立案)。そして、そのための作戦を立て実際に戦うのは配下の武将たちでしょう(実行)。そして最後に評価を下すのは信長です。
 ひるがえって近年の日本の外務省のホームページを見てみると、あらゆる会談や外交交渉は「成功」で終わっています。それは企画立案を外務省が行なって、遂行も外交官が行なって、そのシナリオ通りに政治家が動き、評価も外務省自身がするからです。
 これは、昭和の日本軍の轍を踏んでいるとしか思えません。そうした自己評価による「成功」と「大成功」の集積が、結局、敗戦という「大失敗」に日本を導いていったのです。


■5.上司と戦ってはいけない
 多くのビジネスパーソンにとって、組織における悩みの大半は上司と部下の関係から派生してきます。では、そりが合わない上司とはどのように戦ったらよいのでしょうか?
 私の答えはシンプルです。上司とは戦ってはなりません。なぜなら上司は組織を体現するものだからです。上司と戦ったとして、たとえ局地戦で勝利したとしても、次の上司が出てくるだけでしょう。そして3人目の上司が送り込まれるころには、組織に反抗した人間として必ず潰されます。上司と戦っていい目をみている人間が本当にいるかどうかをよく観察してみてください。(中略)
 そもそも「上司と戦う」という発想を持つこと自体、組織の本質を理解していません。個人としての上司を追い出すことはできるかもしれません。しかし、組織の一員としての上司には絶対に勝てない。いかなる上司も──部下から見てどんな駄目な上司でも──人事という組織の判断の結果、そのポジションに置かれています。だから、上司に逆らうことは、組織に逆らうことにほかなりません。個人はいつも一人、組織はいくらでも人を入れ替えることができる。組織の数的優位は明らかで、戦力の大きいほうが最終的に勝つのは軍事の初歩中の初歩です。


【感想】

◆冒頭の内容紹介にあるように、本書は佐藤さんの過去の著作とは違って、「日本の文学や漫画、ドラマなどをテキストに」しています。

私は購入前に、その辺を全然見ていなかったので、いざ本書を読み始めてから少々面くらいました。

形式的には、いくつかの齋藤孝先生の作品に近いと言いますか、選書したそれぞれの作品の内容に沿う形で、佐藤さんご自身の見解が述べられる感じ。

ただし、選書を含み、テイスト的には佐藤優さんらしさは十二分に健在でありながら、このレビューによると、佐藤さんの「これまで読んできたものとの内容面での重複は殆どない」そうなので、従前からのファンの方にもお楽しみいただけると思います。

……てか、本を選んで言及していることに関しては、このレビューのタイトルにも「読書案内(ブックレビュー)と組織内サバイバル術の『ハイブリッド本』」とありましたね(いつもレビューは読まずに買っております)。


◆まず第1章では、夏目漱石の『坊ちゃん』を題材にした、「組織」における「個人」についてのお話が。

ここで本書の中で、どうしても紹介しておきたかったのが、上記のサムネイルにもあった「組織の中の個人」を分類したマトリクス図です。

もちろん本書ではもっとキレイな図なのですが、私がExcelでちゃちゃっと再現してみました。

実はこの4つの分類(〈ハイパー〉〈ワーカホリック〉〈バーンアウト〉〈マイペース〉)は、他の章でも頻繁に登場しますので、本書のベースとなるものかと。

なお、本当の意味で、組織と調和できるのは、〈ハイパー〉のみで、残りの3つは調和できていません。
学校という組織には適合できなかった坊っちゃんでしたが、より人との関わりが薄い技術職に転じることで、辛うじて組織の一員として生きることができました。ここで導かれる結論は、一つの組織にしがみついて〈バーンアウト〉になるくらいならば、〈マイペース〉を維持できる職場に転じたほうがよい、ということです。
そして佐藤さんいわく、こうした「組織と調和できない」人間たちを描いているため、夏目漱石は今現在も読まれている、とのこと。

また、第1章の後半では、同じ漱石の『門』を『坊ちゃん』と対比させて論じているので、こちらも合わせてお読みください。


◆一方1つ飛んだ第3章では、「クライシス・マネジメント」がテーマ。

上記ポイントの2番目では、こうした不測の緊急時における人間のタイプ分析が紹介されています。

ただし、その元となった『原子力安全の論理』(佐藤さんはクライシス・マネジメントに関していろいろなところでお勧めしているそう)ではなく、この章でメインで取り上げられているのは、山崎豊子さんの『不毛地帯』。

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不毛地帯(一〜五) 合本版

佐藤さんは、主人公の壱岐正と部下の小出航空機部員を比較して、タイプ分析をもとに、「組織に切り捨てられてしまう男」と「生き残る男」の違いを分析しています。
なぜ小出は頑張りきれなかったのか? それは彼の中に組織への不信、さらには壹岐への強い反感がもともと伏在していたからです。しかし、取調べを受けるほどの危機状況において、そうした感情を爆発させるのは最も「やってはならない」ことでした(もちろん警察はそれを分かっていて攻めてくるのですが)。つまり、先に紹介したクライシスに直面した人間の四つのタイプで言えば、小出は家族を守るという、(2)の〈やるべきことをまったくやらないか、不十分にしかやらない人〉であり、(3)の〈やってはいけないことをやる人〉となってしまったのです。
一方、壱岐の対応については、本書にてご確認を。


◆続く第4章では、おなじみ『忠臣蔵』が登場します。

私はドラマも映画もちゃんと観ていないので知らなかったのですが、彼ら四十七士は必ずしも「一枚岩」ではなかったのですね。

ただし、実際に取りつぶしになった藩はいくつもあるものの、元藩士たちが結束して異議申し立てを完遂したケースは、ほとんどなかったのだそうです。

それができたのは、やはり筆頭家老であった大石内蔵助のリーダーシップによるものであり、それは佐藤さんによると「桃太郎型リーダーシップ」であるとのこと(詳細は本書を)。

そしてこの『忠臣蔵』が人々をひきつける理由が、上記ポイントの3番目にある「自己犠牲」です。

……なるほど、会社にこういう「自己犠牲」を実践する上司がいると、ブラック企業まっしぐらですな。


◆続く第5章ならびに第6章では、おなじみ「日本軍」の分析が。

上記ポイントの4番目にあるように、その「悪しき伝統」は「近年の日本の外務省のHP」にも表れているようです。

さらに第7章の「女性」、第8章の「貧困」もそれぞれハイライトを引きまくったのですが、当ブログ的に押さえておきたいのが、第9章の「現場で役に立つ組織術」。

上記ポイントの5番目の「上司に対する対応法」はもちろん大事ですが、他にも
・人物を見分ける最大の武器は「直感」
・人脈はABCに分ける
・酒は強力なコミュニケーション・ツール
・部下の正しい叱り方
・プレゼンには2種類ある
等々、当ブログ的にツボなお話が目白押しでした。

……うーん、この章だけで1つ記事が書けたかも!?


これはオススメせざるを得ません!

B07VD39C7F
サバイバル組織術 (文春新書)
第1章 いかに組織を生き抜くか
第2章 人事の魔力
第3章 極限のクライシス・マネジメント
第4章 忠臣蔵と複合アイデンティティ
第5章 軍と革命の組織学
第6章 昭和史に学ぶ
第7章 女性を縛る「呪い」
第8章 生活保守主義の現在
第9章 現場で役に立つ組織術


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【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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死刑 その哲学的考察 (ちくま新書)

当ブログとしてはテーマ的に重いので、ちとレビューは難しいのですが、アマゾンレビューの平均は「4.3」と、なかなかのもの。

中古は値崩れしているものの、送料を加味するとKindle版に軍配が上がります。


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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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