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2019年10月18日

【マーケティング】『売ってはいけない 売らなくても儲かる仕組みを科学する』永井孝尚


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売ってはいけない 売らなくても儲かる仕組みを科学する (PHP新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、一昨日発売されたばかりであるマーケティング本の注目作。

当ブログでは以前『売れる仕組みをどう作るか トルネード式 仮説検証(PDCA)』をご紹介した、永井孝尚さんの最新作です。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
販売至上主義で売れた時代は、とうに終わった。
にもかかわらず、いまだに昭和型の「大量生産、安価で大量販売」モデルから脱け出せていない企業のなんと多いことか。
ドラッカーは「マーケティングの究極目的は販売を不要にすることだ」と言った。
本書はマーケティング発想へ切り替えることで「売らなくても儲かる」仕組みの作り方を解説する。

なお、1日早く配信されたKindle版は「14%OFF」とお買い得となっています!





marketing / Luc Van Braekel


【ポイント】

■1.蔦屋家電+(プラス)の意外な「儲ける仕組み」とは?
 蔦屋家電+で製品を展示するメーカーは、一区画を月額20万円で契約する。全部で30区画あるので、蔦屋には月600万円の売上が入る。坪当たりの売上は通常の家電店よりも高いという。ここでの商品売上は、すべてメーカーの取り分になる。
 蔦屋家電+の店員は、売上ノルマを一切持たない。リアルなお客に接して、悩みやニーズを引き出すことが仕事だ。商品を説明し、会話から顧客ニーズを巧みに引き出していく。ネット販売ではこんなことはわからない。さらに、店に設置しているAIカメラを使った分析データや来店客のマーケティングデータを得て、メーカーと共有している。
 これらは、新商品が売れるかどうかを判断したいメーカーにとって、喉から手が出るほど欲しい貴重なマーケティングデータだ。こうして、メーカーは未発表製品の市場性を判断できるのだ。


■2.「クレーマー一発退場」で急成長したラクサス
 月6800円で30万円以上もする57ブランドの高級バッグが使い放題、というサービスで急成長を遂げているのが、「ラクサス」だ。(中略)
 ラクサスが成功した1つのきっかけは「クレーマーや困った客は、一発退場」という方針を打ち出したことだ。
 当初、ラクサスの月額料金は2万9800円だった。バッグを汚して返却したり、しつこく苦情を言ってきたりする顧客への対応で、大きなコストがかかっていたのだ。
 しかし、実際にはマナーが悪い客は全体の1%。1%の客のために、残り99%の客が割を食っていた。ルールを守る客にとって、これはフェアでない。
 そこで、ラクサスは「クレーマーや困った客は、一発退場」という方針を決め、6800円へ大幅値下げを断行した。実に1/4の値下げだ。いろいろな高級バッグを使いたい女性にとって、「2万9800円はムリ。でも6800円なら……」と値ごろ感が出た。あえて顧客を選んだおかげで、優良顧客へのメリットが出て、ユーザーが急増したのである。


■3.セグウェイ、プレミアムフライデーが失敗した理由
 セグウェイやプレミアムフライデーには共通点がある。
 顧客のどんな課題が解決できるかがよくわからないことだ。
 セグウェイは見た目はすごいが、何に使えるかが不明だ。時速19キロはちょっと遅い。自転車のほうが手軽で安い。すべてが中途半端。積極的に買う理由がなかった。
 プレミアムフライデーの月末は、多忙な締め日だ。「早く帰って消費を増やし、経済活性化を!」と言われても、「でも目の前の仕事はどうなるの?」が会社員の本音だろう。
 必要なのは早く帰宅できる機会の提供よりも、早く仕事を終える解決策の提供である。
 鳴り物入りで登場して失敗した商品やプロジェクトの多くは、このパターンである。
 すごい商品や話題性で、 一時 は世の中の関心を集めるかもしれない。しかし、顧客が買うという行動にまでは至らない。だから売れない。必要なのは「ぜひ買いたい」という顧客を見つけ出し、「ぜひ買いたい」と思うように改良し続けることだ。


■4.飲み物の色もブランド価値の一部
 2018年、透明飲料ブームが日本列島を駆け巡ったのはまだ記憶に新しい。
 褐色のコーラ、琥珀色のビール、さらにはコーヒーや紅茶までも透明にした新商品が次々と新発売された。色つきが当たり前だった飲料が透明になるのは実に目新しく、インパクトも強かった。メディア各社も「透明飲料ブーム到来!」と大きな特集を組んだ。
 しかし、1年が経過した2019年現在、透明飲料はあまり見かけなくなった。(中略)
 そもそもブランドとは、顧客に対する約束だ。
 透明飲料を飲んで改めて実感したのは、「色」も重要なブランドの一部だということだ。
 ブランドとは、単なる「マーク」や「デザイン」だけではない。
 消費者の様々な体験の集合体が、ブランドを創り出している。商品のパッケージ、形、触感、シズル感、味、匂い。それらに加えて色も、ブランドの大事な一部なのである。
 私たちはコーラを飲む時、あのカラメル色を見ながら、ちょっと鼻にツンとくるコーラ独特の味を味わうことで、「ああ、いまコーラを飲んでいるんだな」と実感するのだ。


■5.「売れる」サブスクリプションモデル「メチャカリ」
 もう1つ紹介しよう。月5800円で新品の服をレンタルし放題のサービス「メチャカリ」を提供しているのが、女性向けのアパレルショップ「アースミュージック&エコロジー」などを展開しているストライプインターナショナル(以下ストライプ) だ。
一度に借りられる服は3着まで。返却すれば何着でも借り換えられるので、レンタル数の上限はない。返却には1回380円の手数料がかかる。対象は50ブランド、1万着だ。
 これは「お洒落な服が借り放題だったら、助かります」という女性の声に応えるために始めたサービスだ。
「これで儲かるのか?」と思ってしまうが、すでに黒字化の目処はついている。
 ストライプは、メチャカリで返却された服を自社サイトで中古販売している。返却されるのは数回しか着ていない服がほとんどで、古着よりも高く売れる。中古販売の消化率は95%。商品定価に対してメチャカリで2割、中古販売で5割、合計で定価の7割を回収できる。通常の服は平均だと定価の4割引販売なので、定価の6割しか回収できない。
 さらに、メチャカリはストライプのECサイトと物流倉庫を共有しているので、サブスク専用の在庫を抱える必要もない。売れ残りリスクを抱える心配もない。
 メチャカリのほうが、通常の店舗販売よりも利益率が高いのである。


【感想】

◆非常に当ブログ向きというか、興味深いマーケティングの事例が多々紹介されている作品でした。

そもそも表紙に掲載されている事例からして、「好きない人にはツボ」なお話ではないか、と。

まずネスレについては、例の「アンバサダー」のお話ですから、私もこの本で読んで知っていました。

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ダントツ企業―「超高収益」を生む、7つの物語 (NHK出版新書 544)

参考記事:【ビジネスモデル】『ダントツ企業―「超高収益」を生む、7つの物語』宮永博史(2018年07月21日)

続くマルイは、以前からテナント料を収益の柱にしていると聞いたことはありましたが、最近ではさらに「デジタル・ネイティブ・ストア」に移行したとのこと(詳細は本書を)。

そしてその流れに沿うのが、上記ポイントの1番目にある「蔦屋家電+」です。

蔦屋家電+ 4月5日(金)オープン!第1期 展示プロダクトを発表

実はこれ、「マーケティング調査目的のショーウィンドー」であり、メーカーにとっては顧客の声を集められ、一方顧客は、ユニークな新商品を手に取れるという仕組み。

まさに、メーカー、店舗、顧客にとって「三方よし」になっている次第です。


◆ここまでは第1章からでしたが、第2章の初っ端に登場するのが、上記ポイントの2番目の「ラクサス」。

【公式】ラクサス|使い放題のブランドバッグレンタルアプリ。40日分無料お試しOK!(ファッションシェア)

サブスクリプションモデル以前に、ユニークなのが上記でも触れた「一発退場システム」です。

というか、こういうモンスター顧客を排除するだけで、お値段1/4になるのだとは……。

むしろ、ホテル等だと、料金が高い方が質の良い客が集まるモノですが、「値段が安くても、良質な顧客」というのは、双方にとってハッピーではないでしょうか。

そして、こういう「客を選ぶサービス」として登場するのが、やはり表紙に掲載されている某「行列カレー屋」さん。

詳しくは本書をお読みいただきたいのですが、そこまで「上から目線」(?)でも、お客さんが殺到するだけのカレーを出している(素材へのこだわりはすごいです)からこそ、できるのだと思います。


◆こうした成功例とは逆に、失敗例を挙げているのが、第5章から引用した、上記ポイントの3番目と4番目。

まず3番目のセグウェイは、言われてみたら、確かにそうだよね、と。

思い返しても、「免許等がいらない(公道に出ない)施設内」くらいしか、活用されているのを見た記憶がありません。

また、プレミアム・フライデーも、公的な拘束力はないですし、「仕組みづくり」というよりは、単なる「きっかけ作り」のようなものですから、そりゃ流行らなくても当然でしょう。

一方、4番目の透明飲料も、発売当初(第1週)は、それなりに数字は出ていたのだとか。

ところがリピーターが付かず、急速に人気が下がったのだそうです。

こういう話を聞くと、改めて「ブランド」の持つさまざまな要素の重要性を実感せざるを得ません。


◆そして今回の事例で、一番「目からウロコ」だったのが、上記ポイントの5番目の「メチャカリ」。

ファッション(洋服)レンタルならメチャカリ|人気ブランドが新品で借り放題

当たり前ですけど、顧客側に回収率なんて明かしませんから、こんな仕組みになっているとは知りませんでした。

なるほど、中古販売まで計算に含めたら、リーズナブルな会費でサブスクモデルが実現できるんですね。

さらに物流倉庫まで共有しているとあっては、ゼロから始めて同じサブスクをやろうとしても、敵うワケなさげ(スゲー!)。


豊富な事例でマーケティングレベルが高まる1冊です!

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売ってはいけない 売らなくても儲かる仕組みを科学する (PHP新書)
まえがき マーケティング発想で「販売が不要」になる
第1章 無理に売るのをやめたら、儲かるようになった
第2章 その売り方で、売ってはいけない
第3章 お客を知らずに、売ってはいけない
第4章 盛り過ぎで、売ってはいけない
第5章 大市場に、売ってはいけない
第6章 売れる価格で、売ってはいけない
長めのあとがき 売れない失敗こそ、バカ売れの種


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【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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偉くない「私」が一番自由 (文春文庫)

当ブログでは書評でもおなじみの米原万里さんの作品を、ロシアつながりで佐藤優さんが選んだという1冊。

中古は底値なのですが、「75%OFF」の「199円」という超激安設定だと、送料の方が高くつくという。


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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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