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2019年10月07日

【知的生産術】『大人の読解力を鍛える』齋藤 孝


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大人の読解力を鍛える (幻冬舎新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事にて、一番お求めいただいた知的生産本。

多作で知られる齋藤先生の作品は、当ブログではスルーすることが多いのですが、その結果を受けてさすがに取り上げざるを得ませんでした。

アマゾンの内容紹介から。
人間関係におけるトラブルの多くは、相手が「何を伝えたいか」「何を言いたいか」を正しく理解できていないことに端を発している。情報が複雑に飛び交う現代だからこそ、言葉を、言葉の集合体としての情報を、正確に読み解く力が不可欠なのである。具体的なテキストを挙げながら、行間を読む、感情を読む、場の空気を読む、想像力を働かせて相手の心情を察するといったコミュニケーション全般のスキル向上を目指す。社会人必読の一冊。

中古は値崩れ気味ですが、送料を考えるとKindle版の方がお買い得です!





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【ポイント】

■1.言葉の中心を見極めて確実にミートする
 大人の読解力の基本は「相手の伝えたいことの中心=真意を捉える」ことにあります。野球にたとえるなら、ボールをバットの「真芯」で捉えて打ち返すバッティング技術のようなものと言ってもいいでしょう。芯で捉えられる人は、どんな変化球が来ても、ピッチャーが手を滑らせて大きく外れたボールでも、巧みに対応できます。真芯がどこにあるのかをわかっているから、捉えることができるのです。
 文章や言葉の読解も同じことです。
 真意を的確に読み取れる読解力のある人は、どんな小説を読んでもどんな映画を観ても、作者や監督の意図をあまり外さずに把握できますが、読解力のない人は、何を読んでも何を観てもことごとく外します。そうした読解力の欠如によって、ときに社会人としての資質を疑われる恐れもあるのです。


■2.読解力という「違和感センサー」がハラスメントを防ぐ
 この線引きについては、「受けた側が『これはセクハラだ』『これはパワハラだ』と感じるか感じないかが基準」という考え方が主流になっています。そうであるならば、ここにも読解力の欠如が大きく関わっているといえるでしょう。なぜなら言葉や表情、態度や反応の仕方などから、心のなかで感じている「イヤだ」「困ったな」という真意を読み取ることができるかどうかが重要になるからです。
 自分の言動を、相手が「セクハラだと受け止めるかもしれないな」「イヤだと思われそうだな」と感じ取れれば、事前に避けることができます。いつもの話し方や表情と違う、反応が普段とは違うという「違和感」を敏感に読み取る、いわば「違和感センサー」としての読解力を働かせることで、爐修鵑覆弔發蠅呂覆い里縫魯薀好瓮鵐鉢瓩箸いν遒箸祁蠅魏麋鬚任るのです。
 直接的な言葉や態度には出しにくいけれど、嫌だと思っている。相手のその心理を読解することが、ハラスメント防止には非常に重要だということです。


■3.言葉にかけられた「回転」を読み解く
 私は、会話によるコミュニケーションは卓球のラリーのようなものだと考えています。なぜなら人が話す言葉には、常にさまざまな「回転」がかかっているからです。とくに日本人には、何かにつけて言葉に回転をかける傾向が強く見られます。
 わかりやすい例を挙げるなら、「謙遜」という回転がいいでしょう。
 みなさんの周囲に「〇〇さんって仕事が速いですね」「さすが、上手ですね」などとほめたり評価したりしても、「いやいや、私なんかミスしてばかりですよ」「とんでもない。私なんてまだまだ下手くそで」と何でも全力で否定する人がいませんか。
 そういう人は、その否定を真に受けて「確かにミスは多いですよね」「まあ、普段はたいしたことないか」などと同調すると、途端に機嫌が悪くなってしまうわけです。
 そうなってから「しまった、『そんなことない』って言ってほしかったのか」と気づいても、もう後の祭り──。「私なんて」にかけられた謙遜という回転を読み違えてストレートに打ち返したら、ネットに引っ掛かって場の空気が悪くなった。そんな経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか。


■4.論理的な文章は、書き手の「好き嫌い」を読み解く
 評論文などのロジカルな文章は、まず書き手の「感情」を読み取れ──大学の授業で現代文の読解を取り扱うとき、私はいつも学生たちにそう指導しています。
 人が何かを主張するとき、その手段が文章であれ言葉であれ、その裏には必ずその人の感情が張り付いています。いくら論理性を重視していても、感情は切り離せません。論理とは、感情による価値判断という土台があって初めて構築されるものだからです。(中略)
 例えばサイバー犯罪増加のデータを集め、ネット依存の症例を積み重ね、セキュリティの脆弱さを訴え──ネット社会のあらゆる弊害を書き連ねた評論文があったとします。
 この文章全体をパラパラッと見て、そうした項目ばかりが目に入ってくれば、理由はともかく「この書き手は、インターネット社会に否定的(嫌い)」という感情をベースにして書いていることが即座にわかります。
 AI(人工知能) に関する評論文があったとしたら、最初に書き手は「AIに希望を感じている(好き)」なのか「AIを恐れている(嫌い)」なのかを探ってみる。
 その肯定否定の感情や価値観さえ読み解ければ、少なくとも「その感情を理屈で武装している文章」であることがわかります。


■5.映画のワンカットから世界観を読み解く
 また、北野武監督の『アウトレイジ 最終章』の冒頭シーンに注目してみましょう。
街を流す黒塗りの外車。そのピカピカに磨かれたルーフに夜の街のネオンが反射して映し出されている。映り込むネオンのなかにはハングルの文字も見える──。
 ほんの数秒ですが、映像としての美しさに加えて、観る者に「フィルム・ノワール(黒い映画=暗黒街を舞台にした退廃的で虚無的な犯罪映画)」的な作品世界を瞬時にイメージさせる重要なシーンです。
 磨き抜かれた黒塗りの車と映し出されるネオンだけで「危険な人たち、その筋の人たち」による「夜の街を舞台にした」「危険な物語」という作品世界が読み取れるのです。
 あるテレビ番組でビートたけしさんにお会いしたときに、「あの最初のワンシーンだけで、どんな世界なのかがすぐわかりますね」とお伝えしたところ、「そうなんだよ。映画ならパッと一回見せただけでその世界観を伝えられる。でも、小説だとすべて文章に書いて説明しなきゃいけないでしょ。今、小説も書いてるんだけど、そこが大変なんだよね」とおっしゃっていました。
 ひとつのシーン、一瞬のカットが象徴している作品の爛錙璽襯畢瓩鯑匹濕茲襦そうした見方をすることで、映画の楽しみ方の幅はぐんと広がるはずです。


【感想】

◆内容紹介にもあるように、齋藤先生が、色々なモノを「読む」ことを扱った作品でした。

「読解力」というくらいですから、文章やメールはもちろんのこと、上記ポイントの5番目にあるように「映画」や、今回は割愛したものの「歌」まで「読む」対象にしているという。

そういう意味では、本書は「知的生産術本」に該当するのだと思います。

ただし、上記ポイントの2番目や3番目にあるように、「人の気持ち」をも「読む」ワケですから、「コミュニケーション本」とも言えるわけでして。

さらにはその「コミュニケーション」の流れから、図式化するための「俯瞰力」や、類書でもテーマとなった「要約力」にも、本書では言及しています。

結局、この辺のスキルは、すべて必要だと齋藤先生は考えてらっしゃるようで、まとめて面倒みてくれている次第。


◆さて、まず第1章では、特に「大人」に必要な読解力についてのお話が。

それこそまさに、上記ポイントの1番目で触れられているように、「相手の伝えたいことの中心=真意を捉える」ことにあります。

これはもちろん、該当する文章だけでなく、その前後の文章からも真意を理解しなくてはなりません。

そして上記で触れた「要約力」のほか、理解するためのベースとなる「語彙力」も必要となります。

当ブログでも、齋藤先生の著作として、こんな本をレビューしていますし。

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大人の語彙力大全 (中経の文庫)

参考記事:【語彙力?】『大人の語彙力大全』齋藤 孝(2018年01月17日)

……この本、KADOKAWAさんのセールのおかげで、Kindle版は「50%OFF」になってますねw


◆続く第2章では、主にコミュニケーションのシーンにおける「読解力」に注目しています。

そしてすでに触れたように、上記ポイントの2番目と3番目は、いずれもこの章から抜き出したもの。

上記ポイントの2番目の「違和感センサー」は、実際にハラスメントをする方にしてみたら、常時壊れているようなものなのでしょうね。

また、上記ポイントの3番目の「回転」という考え方も言い得て妙。

ここでは「謙遜」という「回転」が登場しましたが、他にも「セルフ・ハンディキャッピング」や「アンビバレント」「オブラート」といった「回転」が事例とともに紹介されていますので、気になる方はご確認ください。


◆なお、こうした「遠まわしの表現」を正しく理解できないと、相手の意図を正しく読み取ることができません。
 女性とデートしているとき、「今日は新しい靴なのよ」と言われたら、「あーそうなんだ」では不十分。靴をほめるのは絶対必要。その上で、靴をほめるだけでなく、その裏にある真意を「ということは、足が痛いからゆっくり歩いてほしいのかな」と想像して歩調を緩められるかどうか。
……あー、これ何かのモテ本に出てたTIPSや(遠い目)。
「おなか空いてない?」と聞かれたら、自分は空いていなくても、女性からの「私はおなかが空いたんだけど」という意思表示かもしれないと慮れるかどうか。
女性はさすがに自分から「お腹空いた」とは言いだせないことが普通ですから、これも要注意!

むしろよくあるのが「トイレ大丈夫?」という問いかけなので、これはたとえ自分が大丈夫でも、「行く」ことにしないと、女性としては行きづらいかと。

さらにこれが進化(?)したのが、有名な京都の「ぶぶ漬け」
 先ほどの「ぶぶ漬け」にしても、「本音を言わない京都人の気質」というよりは、露骨に「早く帰って」と匂わせて客に不快な思いをさせないための、京都人ならではの気遣いと捉えるべきかもしれません。
なるほど、そう考えるのが「大人」なんですね。


◆一方、最後の第3章では、「大人の読解力を鍛えるトレーニング」と題して、「文学」や「歌詞」、そして上記ポイントの5番目にあるように「映画」を題材に、「読解力」を掘り下げています。

このうち「文学」は、いわゆる名作のほか、童話や子ども向け小説も登場。

また「歌詞」は「行間を読む力」を養うのに最適なのだそうです。

実際、私も何の疑問もなく普通に聴いていたこの曲に、そんな「オトナな意味」があったとは!?



それと、上記ポイントの5番目の『アウトレイジ 最終章』の冒頭シーンは、予告編でも一瞬垣間見れますね(開始11秒辺り)。



……たまたま実際に「暴走」された方がチラホラと(大汗)。


大人ならこういう「読解力」を身につけるべし!

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大人の読解力を鍛える (幻冬舎新書)
第1章 大人に必要な読解力

第2章 会話読解力と情報読解力

第3章 大人の読解力を鍛えるトレーニング


【関連記事】

【語彙力?】『大人の語彙力「言いまわし」大全』齋藤 孝(2018年12月04日)

【語彙力?】『大人の語彙力大全』齋藤 孝(2018年01月17日)

【思考法?】『考え方の教室』齋藤 孝(2016年01月11日)

【AI読み?】『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』新井紀子(2018年11月21日)

【読解力】『できる子は本をこう読んでいる 小学生のための読解力をつける魔法の本棚』中島克治(2017年01月18日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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移民の宴 日本に移り住んだ外国人の不思議な食生活 (講談社文庫)

在日外国人の人々の食卓に迫るという、なかなか面白そうな作品。

中古は値崩れしていますが、送料を加味するとKindle版に軍配が上がります。


【編集後記2】

◆昨日ので人気だったのは、この辺の作品でした(順不同)。

B07MV2RNQ3
宇宙はどこまでわかっているのか (幻冬舎新書)

B07HFT3XV2
出世する人の英語 アメリカ人の論理と思考習慣 (幻冬舎新書)

B07PZL2GDT
日本の「老後」の正体 (幻冬舎新書)

B07BFT23R9
世界一簡単なフランス語の本 すぐに読める、読めれば話せる、話せれば解る! (幻冬舎新書)

宜しければ、ご参考まで!


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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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