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2019年08月26日

【マネジメント】『GREAT BOSS(グレートボス) ―シリコンバレー式ずけずけ言う力』キム・スコット


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GREAT BOSS(グレートボス) ―シリコンバレー式ずけずけ言う力


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、今月の「Kindle月替わりセール」の中でも当ブログ向きな1冊。

著者のキム・スコット女史は、あのシェリル・サンドバーグが大学院の同級生だったことからGoogleに誘われ、その後アップルにも引き抜かれたという経歴の持ち主です。

アマゾンの内容紹介から。
「お前の仕事はダメだ」、「あなたがバカに見える」きつい言葉を極上の成長アドバイスに変える。Apple、Googleで体当たりで学んだ知恵。自分の会社をつぶし、社員が離れていった女性起業家が最高のリーダーに生まれ変わった話。

なお、セール期間中であれば、このKindle版が500円強、お買い得となっています!





Google vs Apple / g_vondewall


【ポイント】

■1.「徹底的なホンネ」の関係とは何か?
「徹底的なホンネ」の関係は、相手を「心から気にかけ」ながら、「言いにくいことをズバリと言う」時に生まれる。ホンネをズバリと言うことで、信頼が築かれ、コミュニケーションが生まれ、狙った結果が出るようになる。(中略)
 どうして「徹底的」でなければならないのか? それは、わたしたちが本心を言わないことに慣れ切っているからだ。人付き合いをスムーズにするために、なんでもオブラートに包むことが習慣になっている。それは対立や気まずさを避けるための知恵なのだろう。しかし、上司が対立を避けると、悲惨なことになる。
 なぜ「ホンネ」なのか? チームメンバーがお互いに(上司にも!)ズバリと言い合えるような文化を作るには、全員が批判に慣れなければならない。お互いへの批判は、意味があいまいではいけないし、それでいて謙虚でなければならない。「正直さ」ではなく「ホンネ」という言葉を選んだのは、自分が正しいという思い込みが謙虚ではないからだ。


■2.「いい人のふり」は保身
 アップルで最高デザイン責任者を務めるジョニー・アイブは、チームの仕事を批判すべき場で矛先を引っ込めた時の話を教えてくれた。スティーブ・ジョブズから、なぜダメな点をもっとはっきり指摘しないのかと聞かれたジョニーはこう答えた。「チームを気にかけているから」。するとスティーブ・ジョブズはこう返した。「違う、ジョニー。それはただの見栄だ。みんなに好かれたいからだよ」。その時のことを思い出しながら、ジョニーは言った。「僕はすごくムカついた。だって彼が正しいとわかっていたからね」
 コリン・パウエルが、「リーダーシップとは時に人を怒らせてもいいと開き直ることだ」と言ったのは、そういう理由からだ。人にどう見られるかを心配しすぎると、言わなくてはいけないことを言いにくくなる。あなたもジョニーのように、部下を気にかけているつもりでも、心の底では部下にどう思われているかが気になっているだけかもしれない。つまり、気にかけているのは部下ではなく自分なのだ。わたしにもそんな経験がある。みんなそうだ。


■3.「お前の仕事はクソ」という発言の真意
ジョブズ:本当に優秀で、本当に頼りになる相手のために自分ができる一番大切なことは、彼らがそうでない時──彼らの仕事が期待以下だった時に、それを教えてあげることだと思う。そのことをはっきり伝えて、理由を説明すること……そして彼らを本来の軌道に戻すことだ。
 ジョブズ自身も、そう答えながら自分の言葉を徐々に理解していることがわかる。ジョブズは個人攻撃をしないよう気をつけていた。「彼らが期待以下だった時」とは言っていない。「彼らの仕事が期待以下だった時」と言っている。この区別は重要だ。批判につきものの過ちを、ジョブズも気にかけていた。それは、外部要因よりもその人の性格を挙げつらうという過ちだ。その人の行動の中にある欠陥を探すより、その人自身の性格のせいにする方が簡単だ。「だらしない」と責める方が、「このところ夜も週末も働き詰めで疲れているから、論理の間違いに気づけなくなっているよ」と指摘するよりたやすい。だが、性格を責めても、その人の助けにはならない。


■4.「やり遂げ(GSD)サイクル」とは?
 実際、グーグルとアップルのどちらも、純粋なトップダウンの経営スタイルではない。だが、見事な結果を出してきた。ここから大きな疑問が生まれる。社員は自分が何をすべきかをどう見極めるのだろう? 戦略や目標はどう設定するのか? まったく違うこの2社の強烈な文化はどのように作られたのだろう? 何万人もの社員がその使命をどう理解するのだろう? アップルは整然としているし、グーグルは混沌としているが、高い次元でのマネジメントの過程は同じだ。この過程を、わたしは「やり遂げ(GSD)」のサイクルと呼んでいる。
聞く
はっきりさせる
議論する
決める
説得する
実行する
学ぶ
(詳細は本書を)


■5.フィードバックは面と向かって言う
 面と向かってフィードバックしにくい理由のひとつは、相手の感情的な反応を見たくないからだ。それは当然だ。だが、あなたがそこにいて相手の感情を受け取ることでフィードバックの質は上がる。もし相手が動転したら、共感を表す機会になる。つまりそれが「徹底的なホンネ」の表の中の「心から相手を気にかける」の軸を上に上がるチャンスになる。相手の感情的な反応を見ることで、あなたの言葉がどう受け止められたかがより正確に理解でき、言い方を調節する助けにもなる。あなたのフィードバックを相手が一蹴した時(シェリルが最初にわたしの「え〜っと」という癖を指摘してくれた時にわたしがやってしまったように)には、「徹底的なホンネ」のフレームワークの中の「言いにくいことをズバリと言う」ことをさらに心がけた方がいい。でも、相手が動転したり、怒ったりしたら、心から気にかけていることを示す方に集中しよう。相手に感情的に対応されても、ズバリと言ったあなたの善意が無駄だったとは思わないでほしい。


【感想】

◆本書のテーマでもある「徹底的なホンネ」。

具体的にどのようなものであるかの例の1つとして、本書ではスコット女史自身のエピソードが紹介されています。

グーグルに入社してまもなくのこと、創業者たちの前で業績報告をして好反応を得たことから、隣にいたシェリル・サンドバーグに褒められると思ったところ、オフィスまで連れ戻された彼女。

そこでまず、プレゼンの良いところを3〜4つ挙げられます。

わざわざそんな話をするなんて、と疑問に思い、ダメなところがあったのでは?と尋ねると、サンドバーグは全体としてはよかったと認めつつも「何度も『え〜っと』と言ってたわよね」と指摘。

そんなことか、とホッとし、ハエでも追い払うように手を振りながら「ただの口癖だと思いますけど」と答えた彼女に、サンドバーグは笑いながらこう伝えます。
「その手の動き、わたしの言ってることなんてあなたは気にしてないみたいに見える。もっとはっきり言わないとわかってもらえないようね。あなたはわたしの知り合いの中でも最高に賢い人なのに、『え〜っと』って言ってるとバカっぽく見えるのよ」
そこで彼女は初めて問題の大きさに気づき、提案された話し方のコーチに訓練を受ける決断をしたのでした。


◆このように「徹底的なホンネ」とは、上記ポイントの1番目にあるように、「心から気にかけること」と「言いにくいことをズバリと言う」を兼ね備えています。

本書ではこれを「『徹底的なホンネ』のフレームワーク」と題して、それぞれを軸とした2軸4象限のマトリクスを提示。

Excelで作ってみたのですが、ちょっと見にくいですね……。



目指すところはもちろん、右上の「徹底的なホンネ」なワケですが、往々にそうはいかず。

本書ではそれぞれの象限について解説しているのですが、たとえば、上記ポイントの2番目にある「いい人のふり」というのは、その真逆である「摩擦の回避」に該当しています。

また、上記ポイントの3番目のジョブズの「お前の仕事はクソ」という発言は、右下の「イヤミな攻撃」と「徹底的なホンネ」の境界線に該当するという。


◆そしてこうしたマネジメントのサイクルを図化したのが、上記ポイントの4番目にある「GSDサイクル」。

上記では項目が単に列挙されているだけですが、実際には円を描いてそれらが矢印でつながれており、最後の「学ぶ」から「聞く」に戻ってちょうど一周しています。

本書ではもちろん、それぞれの項目について、留意点や事例を挙げているのですが、スペースの関係でここでは割愛(すいません)。

ちなみに事例にツイッターの元CEOのディック・コストロが頻繁に登場していて、同じツイッターのジャック・ドーシーやビズ・ストーンに比べてあまり印象がなかったのですが、意外とスゴイ人だったんですね(今さら)。
わたしはこれまで数多くの企業の社員アンケートを見てきたが、スティーブ・ジョブズを超えるのは不可能だろうと思っていた。わたしのアップル在職中、9割を超える社員がCEOを好きと答えていたのだ。しかし、CEOのコストロを好きと答えたツウィープスの割合はそれより高かった。
……いや、それよりジョブズが9割というほうがビックリですけどw


◆なお、上記ポイントの5番目は、第6章の「フィードバック文化の作り方」からのもの。

ここでは「受け取る」「与える」「お互いに奨励する」の3つのシーンを、「賞賛」と「批判」に分けて、それぞれについてフィードバックの留意点をチェックしています。

このポイントの5番目は「面と向かって言う」お話ですから、「与える」シーンで「賞賛」と「批判」の双方に該当。

もちろん、人前で言うか、二人きりで言うか等の使い分け方や、メールでのフィードバックの留意点にも触れていますから、一般的なマネジメントにも参考になると思います。

いずれにせよ、うわべだけのマネジメントではなく、「徹底的なホンネ」を言い合えてこそ、深いつながりができると思いますし。


現状のマネジメントを見直すために読むべし!

B07NMKK3L3
GREAT BOSS(グレートボス) ―シリコンバレー式ずけずけ言う力
PART1 最高の職場を作る新しいマネジメント手法
CHAPTER1 「徹底的なホンネ」の関係を築く―職場であなたのすべてを見せる
CHAPTER2 「徹底的なホンネ」のフレームワーク―開かれたコミュニケーションの文化を作る
CHAPTER3 「成長管理」のフレームワーク―部下のやる気の源を理解し、夢の実現を手助けする
CHAPTER4 「GSDサイクル」―命令をせずに結果を生み出すフレームワーク)

PART2 ツールとテクニック
CHAPTER5 部下と信頼関係を構築するテクニック―自分を犠牲にしないで良い職場を作る
CHAPTER6 フィードバック文化の作り方―批判と賞賛を与え、受け取り、奨励する
CHAPTER7 「成長管理」の実践―退屈させず、燃え尽きさせないテクニック
CHAPTER8 「GSDサイクル」で結果を出す「ミーティング」のコツ―一緒に仕事を成し遂げるためにできること


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【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

B079DL1YSY
コミュ障のための聴き方・話し方 人と会っても疲れない

ライフハッカーの書評コーナーでもおなじみである印南敦史さんのコミュニケーション本は、当ブログでもレビュー済み。

中古も1000円近くしますから、送料を合わせるとKindle版が700円弱、お得な計算です。

参考記事:【コミュ障?】『コミュ障のための聴き方・話し方 人と会っても疲れない』印南敦史(2018年09月05日)


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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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