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2019年08月07日

お前らもっと『倒産の前兆』の凄さを知るべき


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倒産の前兆 (SB新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、昨日の「未読本・気になる本」の記事の中でも、個人的に読んでみたかった作品。

「国内最大手企業信用調査会社」である帝国データバンクの情報部が、倒産した30社の原因について分析した1冊です。

アマゾンの内容紹介から。
「あの時」気づいていれば……第一線の企業信用調査会社、帝国データバンクが見た、どこにでもある「普通の会社」の末路。

なお、中古が定価の倍以上していますから、新書とお値段同額でも、Kindle版はアリかと思われ!

……なおタイトルは、昔使った「ホッテントリメーカー」作のものをリバイスしてみました。





Toys R Us Hialeah / Phillip Pessar


【ポイント】

■1.新興企業が陥る"5つのワナ"
 急成長から一転、業容縮小の末に破産した今回の事例からは、急成長中の新興企業が陥る爍気弔陵遒箸祁雖瓩浮かび上がってくる。
(1)会社の成長スピードに資金繰りが追いつかなくなること
(2)内部管理体制の強化・充実が後手に回ること
(3)経営陣の派手な生活ぶりが取引先の離反を招くこと
(4)既存の看板商品に続くヒット商品を生み出せないこと
(5)積極的な広告展開が、もろ刃の剣となること
(詳細は本書を)


■2.「店舗が増えれば売上も伸びる」の大誤算
 プラスハートのビジネスモデルは、「積極的な出店→知名度向上→集客力アップ→売上上昇→収益アップ→さらなる出店」という好循環を生むはずだった。それが、ふたを開けると一転、「積極的な出店→借入れ増加→他社との競争激化→売上伸び悩み→値引き販売→収益低下→さらなる借入れによる出店→不採算店舗増加」という負のスパイラルに陥っていた。
 攻めの姿勢によって、確かに店舗数は増えた。多角的にコンセプトを設け、かつコンセプトに特化した店舗展開をすれば、幅広い消費者ニーズを店ごとに取り込むことが可能となり、会社全体の利益は拡大するように思える。
 しかし、その内実は違った。いわゆる「百均」などの均一ショップまで含めた競合他社との差別化がしきれなかったことで苛烈な価格競争に巻き込まれ、各店舗でしっかり利益を出す設計が立っていなかったために「店舗が増えれば増えるほど利益が圧縮される」というジレンマが生じた。そして、負債は雪だるま式に増えていったのである。  そして、負のスパイラルに陥るにつれて、ブランドイメージそのものも陰っていった。


■3.経営危機をもたらした"コンビニスイーツ"台頭
 日本フランチャイズチェーン協会の統計データによると、調査が始まった1983年には7000店にも満たなかったコンビニは、2000年代に突入する頃には3万8000店余りにまで増加。花園万頭が大赤字となった2009年前後には、4万店を突破していた。しかも、店舗数が増加し、消費者にとって一段と身近な存在となるにつれて、「便利だが品質はイマイチ」だったコンビニ商品に質的な向上も見られるようになった。その代表格が、およそ2006年頃に始まった爛灰鵐咼縫好ぁ璽牒瓩凌焚修任△襦3謄船А璽鵑離廛薀ぅ戞璽肇屮薀鵐匹如⇔行が取り入れられ、安価で、しかもおいしいスイーツが続々と世に送り出されるようになった。
 こうしたコンビニのスイーツが競合となったことで、近年売上は伸びず、これに東日本大震災による特別損失の計上が輪をかけるかたちで資金繰りが悪化した。


■4.多重リースで資金を「荒稼ぎ」
 さらに、エルエスエムは銀行だけでなく、リース会社も欺いていた。同社が購入した工場設備投資のリノベーション工事について、複数のリース業者に相見積もりをとったところ、複数のリース会社から決裁が得られた。これをきっかけに、同一の倉庫設備設置工事について複数のリース会社からリース契約・割賦販売契約などの名目で資金を調達する多重リースを行なっていた。
 たとえば1億円の倉庫設備を購入、設置し、同一物件を複数のリース会社に売却したうえで、それぞれのリース会社とリース契約、 割賦販売契約(日用品などの耐久消費財や、不動産などを販売する際、分割支払いを認める契約)を結べば、月々の支払いは生じるものの、数億円の資金をまとめて調達することも可能なのだ。
 リース会社への売却は帳面上で行なうものだから、設置する工事業者や設備の納入業者と結託して書類さえ作成すれば、同一物件で複数のリース会社と契約していることが知られることはほぼない。リース会社が実地調査を行なったとしても、実際に設備物件は工場内に存在するため、見破ることは困難だ。


■5.消費者ニーズに合致しない「中途半端」な価格設定
 デフレ進行を受け、小売業界全体で販売価格が低下した。消費者の間でも低価格志向が強まったが、だからといって、消費者が安いものしか買わなくなったわけではない。とくに服飾品では、多少お金を出して「いいもの」を買う一方、「普段使いのもの」には安さを求めた。つまり「高価格」と「低価格」という商品の二極化が起こったのである。
 靴・サンダル業界も例外ではなかった。消費者のニーズは1万円前後の高価格帯、もしくは1000円以下の低価格帯に分かれた。しかしマルチウの商品の価格帯は、1足2000円から3000円の「中価格帯」が中心だった。
 同業の各社が値下げ競争を繰り広げる中、マルチウが値段を下げられなかったのは、自社の商品企画力を発揮したものづくりにこだわっていたからだ。そのために中価格帯の商品販売から脱することができず、消費者ニーズに的確に対応できなかった面は否めない。


【感想】

◆自分の本業でも、クライアントが倒産等したこともあるだけに、色々な意味で考えさせられた作品でした。

さすが「天下の帝国バンク」といったところでしょうか。

ありとあらゆるパターンの倒産事情が列挙されている次第です。

そんな中、ありがちなパターンをまとめたのが、上記ポイントの1番目。

これはノンシリコンシャンプー「レヴール」で一世を風靡したジャパンゲートウェイの項からのもので、本来、新興企業だけに限ったものではありません。

実際私の顧問先でも、ある時一気に売上が過去平均の10倍になって、雑居ビルから某有名ビルのテナントに移転したところがありましたが、売上が頭打ちになった時点で広告費を抑えたら、その後右肩下がりになってしまいました((5)のケース)。

いずれにせよ、1つでも当てはまると、先行きが怪しくなるものが、このジャパンゲートウェイではすべてに該当し、最終的には破産に至ったようです。


◆また、よくあるのが、上記ポイントの2番目の「積極的な出店」が裏目に出るパターン。

そこに名前が出ている生活雑貨小売りのプラスハートも、「攻めの出店攻勢」が、結局「不採算店増加で転落」してしまいました。

なお、このプラスハートは、同じ雑貨系のシステムジュウヨンという会社の元取締役が独立して設立した会社だったため、プラスハートの倒産直後に、システムジュウヨンの業績が悪化した際、多くの取引先が信用不安に陥いり、資金繰りに苦しんだのだそう。

もちろんそれだけが原因ではありませんが、最終的にシステムジュウヨンも民事再生法の適用を申請することとなりました(本書の別の項で登場)から、これはちょっとレアなケースかもしれません。

話が戻りますが、実は上記で触れた私の顧問先も、多店舗展開が赤字転落後は大きな負担になりました。

不採算店舗ゆえ、早めに撤収するのは良いのですが、出店費用を回収する前に、撤収費用がさらに発生するわけですから、それは赤字も大きくなります罠。


◆一方、上記ポイントの3番目は、強敵が現われて売上不振になるパターン。

特にこのコンビニスイーツは強力ですから、客の奪い合いになる商品が商売の柱だと、非常に苦しいと思います。

……そもそもコンビニが出店するだけで、その周囲の小売や飲食業はインパクトがあるでしょうが。

また、強敵はコンビニに限りません。

「いきなりステーキ」の登場によって、ステーキレストラン経営のステークスは経営不振に陥りましたし、格安スマホ「FREETEL」運営のプラスワン・マーケティングは、大手キャリアが系列の格安スマホ(ワイモバイル等)を投入することで業績が落ち込みました。

本来、業績が好調な時でも、こういう「刺客」が現れることを覚悟(想定)して、経営しないといけないのでしょうが。


◆なお、本書の中でちょっと毛色の違うのが、第7章の「信頼構築のためにトップが不正行為に手を染める」で、ここでは倒産事由ではなく、経営陣が粉飾決算や簿外債務を生み出す手法を紹介しています。

上記ポイントの4番目の「多重リース」もその1つで、これやられたら、存在するリース資産も正しいですし、リース会社同士で確認しない限り、傍からはまず分からないでしょうね。

もっとお手軽(?)なところでは、「複数の銀行から借入を起こして、それぞれの銀行の金額だけを正しくした帳簿を銀行の数だけ作って簿外債務を生み出す」というものも!?
 A銀行に提出する銀行取引明細では、A銀行の借入れ残高だけは実態値(22億円)と同じにして、残りのB〜F銀行の借入れ残高を調整して総借入れ額を50億円にする(これにより貸借対照表は同一となる)。B銀行にも同様にB銀行の借入れ残高だけを実態値(18億円)と同じにして、残りの銀行の借入れ残高を調整して総借入れ額を50億円に合わせる。 
 C銀行、D銀行、E銀行、F銀行にも同様のことを行なう。すると受け取った銀行は、自行の残高は実態値であるため、他行残高を過少申告されたとしてもわからず、借入れ総額は50億円と思い込んでしまう。
他にも中国を舞台にすると、日本からは取引が見えにくい、という話もあったりと、この章は私の本業にも参考になりました(不正をするワケではありませんw)。


◆いずれにせよ、倒産の原因は、上記のような会社自体の内部要因だけにあるワケではなく、外部要因も当然あります。

思い起こせば、バブル崩壊、リーマンショック、東日本大震災等々、それだけが原因で倒産した会社も多々あったかと。

ただ、それらに対して打った施策がハマらなかったり、裏目に出てさらに経営悪化したケースも、本書では散見されました。

「負のスパイラル」とよく言いますが、本書を読んでいて、その言葉の意味を実感した次第。


反面教師として、秀逸な1冊です!

4815601461
倒産の前兆 (SB新書)
破綻の公式1 業界構造、市況変化の波を打破できない
破綻の公式2 大ヒット商品が綻びを生む
破綻の公式3 旧来型ビジネスモデルにしがみつく老舗は潰れる
破綻の公式4 ベンチャー起業の急成長は急転落の序章である
破綻の公式5 攻めの投資で上場企業が破綻する
破綻の公式6 経営陣と現場の乖離は取引先の離反の元
破綻の公式7 信頼構築のためにトップが不正行為に手を染める
破綻の公式8 「倒産の前兆」はあなたの会社にも存在する


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【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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