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2019年07月29日

【タブー?】『事実 vs 本能 目を背けたいファクトにも理由がある』橘玲


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事実 vs 本能 目を背けたいファクトにも理由がある


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、再び先日の「未読本・気になる本」の記事でも人気だった1冊。

おなじみ橘玲さんが、炎上しがちなテーマを「これでもか!」とばかりに詰め込んだ問題作です。

アマゾンの内容紹介から。
この残酷な知識社会を生き抜くためには、「本能」の壁を乗り越えて「事実(ファクト)」に目を向けなければならない。最新知見から明らかになる現代ニッポンの姿とは? 異色の社会評論!

単独でのセールをほとんどしない集英社さんが版元ですから、2割引きのKindle版がオススメです!





"Who was the greatest" ~ Mark 9:30-37 / Art4TheGlryOfGod by Sharon


【ポイント】

■1.目黒の女児虐待死事件でメディアが絶対にいわないこと
 この事件について大量の報道があふれましたが、じつは意図的に触れていなかったことがふたつあります。
 女児を虐待したのは継父で、母親とのあいだには1歳(当時)の実子がいました。じつはこれは、虐待が起こりやすいハイリスクな家族構成です。
 父親は自分の子どもをかわいがり、血のつながらない連れ子を疎ましく思います。母親は自分の子どもを守ろうとしますが、それ以上に新しい夫に見捨てられることを恐れ、夫に同調して子どもを責めるようになるのです。なぜなら進化論的には、ヒトは自分の遺伝子をもっとも効率的に残すよう爛廛蹈哀薀爿瓩気譴討い襪ら……。
 これが進化心理学の標準的な説明で、こうした主張を不愉快に思うひとは多いでしょうが、アメリカやカナダの研究では、両親ともに実親だった場合に比べ、一方が義理の親だったケースでは虐待数で10倍程度、幼い子どもが殺される危険性は数百倍であることがわかっています。


■2.テロ事件の犯人が「救世主」になる理由
 さまざまなテロ事件のもうひとつの共通点は、犯人が自らの凶行をまったく反省していないことです。これは自分が「正義」を体現していると確信しているからでしょう。(中略)
 テロの実行者は、たとえ単独犯であっても、「白人」「イスラーム」「日本人」などの(幻想の)共同体を代表し、「仲間たち」を救うために犯行に及んだと主張します。彼らはみな、妄想のなかでは「救世主」なのです。
 しかしそれでもなお疑問は残ります。ほとんどの若い男は、たとえ過激な思想の持ち主でも、女子どもを含む見ず知らずの人間を殺して自分の人生を台無しにしようとは思わないからです。
 そうなると最後の共通点は、「彼らの人生はもともと台無しだった」ということになります。そして不吉なことに、世界じゅうで(もちろん日本でも)、社会からも性愛からも排除された若い男は激増しているのです。


■3.高齢者に偏見を持つと早死にする
 高齢者のなかでも年をとることを否定的に感じているひとは、喫煙のような健康に悪い習慣があり、心筋梗塞などの心疾患を起こしやすいことがわかっています。だとしたら、このステレオタイプはどのようにつくられたのでしょうか。
 研究者はそれを知るために、1968年までさかのぼるデータを使って、18歳から49歳のアメリカ人約400人が老人に対してどのようなイメージを持っていたかを調べ、その後の(2007年までの)健康状態と比較しました。すると驚いたことに、若いときに老人に対してネガティブなステレオタイプを持っていたひとは、そうでないひとに比べてずっと心疾患を起こしやすかったのです。(中略)
 人種や国籍、性別や性的指向など、差別や偏見は通常、自分とは「ちがう」相手に向けられます。ヘイトスピーチを平然と叫ぶことができるのは、「俺たち(日本人)」と「奴ら(外国人)」のあいだの境界線が明確だと思っているからです(だからネトウヨは外国人参政権や帰化に反対します)。
 ところが高齢者を「ヘイト」していた若者は、やがて自分が高齢者になったことに気づきます。しかしそのときには「予言」は自己成就し、健康を害して早世するか、偏見のとおりの「みじめな老人」になってしまうのです。


■4.トランプ大統領の就任式で大物歌手が出演を断った理由
 オバマ大統領の2期目の大統領就任式では人気歌手のビヨンセがアメリカ国歌を歌いましたが、トランプ大統領の就任式では、得意のネゴシエーション力にもかかわらずすべての歌手が出演を断ったようです。それ以前に、ザ・ローリング・ストーンズ、エアロスミス、アデルなどのミュージシャンがトランプの集会で自分たちの曲を使わないよう求めています。
 これは政治的イデオロギーの問題というよりも、彼ら/彼女たちがアメリカだけでなく世界じゅうにファンを持つグローバルなスターだからです。
 アメリカ国民3億人のうち、2億人が保守派(ドメスティックス)だとしましょう。リベラルは1億人ですから、選挙では常に保守派が優位に立ちます。だったら、政治家と同様に人気商売の芸能人もみんな保守派に鞍替えすべきではないでしょうか。
 そんなことにならないのは、ちょっと考えればわかります。スーパースターは70億人を超えるグローバルマーケットを相手にしており、わずか2億人のアメリカの保守派の機嫌をとるために、世界じゅうのファンを失うリスクを冒すはずがないのです。


■5.厚労省の統計不祥事が起きるのは素人集団だから?
 日本の会社の際立った特徴はスペシャリスト(専門家)をつくらないことで、「ゼネラリストを養成する」という建前の下、数年単位でまったく異なる部署に異動させていきます。(中略)
 世界でも特異な日本的雇用慣行は役所も同じで、上司や部下が専門とはまったく関係のない部署から異動してくることは日常茶飯事です。――私の知人は、芸術文化振興の部署から自治体病院の事務局長に異動しました。厚労省の統計部門の詳細はわかりませんが、大学や大学院で統計学の専門教育を受けたスタッフはほとんどいなかったのではないでしょうか。(中略)
 不正が明らかになっても過去の経緯が不明なのは、組織的に隠蔽しているというより、担当者が何人も代わってだれがなにをしたのかわからなくなっているのでしょう。
 過去の統計資料を廃棄していたことも明るみに出ましたが、これも悪気があるのではなく、「どうでもいい」と思った担当者が独断で捨てていたと考えるのが自然です。


【感想】

◆相変わらずの「橘節」が全開の作品でした。

もともと橘さんは、デビュー直後の経済ネタを扱ってらっしゃる頃から、良くも悪くも「身も蓋もない」話を作品でされていましたから、基本的にはまったく変わってないわけで。

実際、以前は作品中で「いかに保険がムダか」のような話をされていたのですが、保険会社からクレーム等は一切なかったのだそうです。

それは結局、彼らも合理的に考えたら橘さんが言われていることが正しいのは分かっているからでしょうし、だからこそ、消費者の「感情」に訴えて商品を売ったりしていたのかと。

ところが大ヒットとなった『言ってはいけない』辺りから、必ずしも「合理的に考えて正しい」テーマだけではなくなってきましたから、話がややこしいことになり、アマゾンレビューも賛否両論。

とはいえ本自体は55万部を超えたそうですから、著者としては「正解」と言えるのだと思います。


◆一方、本書はさらに可燃性の高いネタがいくつも登場。

たとえば、上記ポイントの1番目を抜粋した元である『週刊プレイボーイ』のコラムは、100万PVいったのだそうです。

本書の第1章では、他にも「ひきこもり男性によるバス襲撃事件」や「千葉県の女児虐待死事件」「若手女優出家事件」「西部邁氏『溺死』事件」といった、その時点で話題となっていた事件と、その裏側や、まさに「『言ってはいけない』こと」 に正面から言及。

これらはその属性にあてはまる人や、正義感に燃える人等にとっては、カチンとくることばかりでしょう。

……ネットで政治家や芸能人をバッシングしまくる人を、橘さんは「正義依存症」と呼んでいますが、これも言われた本人にとっては、決して気持ちの良いものではないハズ。


◆続く第2章では、「私たちのやっかいな習性」と題して、海外の著者によるエビデンスのあるお話のうち、私たちが「意外」と思われるようなものが紹介されています。

これらが結構、当ブログでもレビューしたものが多くて、たとえば「恋愛やビジネスに成功するカンタンな方法」という項はこの本からのエピソードが。

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赤を身につけるとなぜもてるのか?

参考記事:【スゴ本】『赤を身につけるとなぜもてるのか?』タルマ・ローベル(2015年08月11日)

「ゴマはすればするほど得をする」という項は、こちらから。

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残酷すぎる成功法則 9割まちがえる「その常識」を科学する

参考記事:【科学的自己啓発書】『残酷すぎる成功法則 9割まちがえる「その常識」を科学する』エリック・バーカー(2017年10月27日)

「日本人の女の子はモテるけど、男の子はモテない?」という項は、この本から。

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ハーバード数学科のデータサイエンティストが明かす ビッグデータの残酷な現実―――ネットの密かな行動から、私たちの何がわかってしまったのか?

参考記事:【出会い系?】『ハーバード数学科のデータサイエンティストが明かす ビッグデータの残酷な現実』クリスチャン・ラダー(2016年08月08日)

「子どもがいるひとは、いないひとより3.6倍もその決断を後悔している」という項は、つい先日ご紹介したばかりのこの本から。

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誰もが嘘をついている ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性

参考記事:【オススメ】『誰もが嘘をついている〜ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性〜』セス・スティーヴンズ=ダヴィドウィッツ(2019年07月24日)

なお、上記ポイントの3番目もこの第2章からなのですが、翻訳されていない論文が元ネタのせいか私も知らなかったので、ご紹介した次第です。

他にも当ブログでご紹介していない翻訳本も多々登場しますので、こういったエビデンス系のお話がお好きな方は、お見逃しなく。


◆さて、この辺までは炎上しやすいとはいえ、当ブログでも従来ご紹介できたテーマでした。

ところが続く第3章は「『日本人』しか誇るもののないひとたち」と題された、炎上必至のテーマが登場。

「反中」「嫌韓」「靖国神社」といった、下手に当ブログで何かを引用すると、そこに書かれている「橘さんの考え」に賛成していると取られかねないものが多々述べられています。

実際、韓国の「徴用工判決」の件を沖縄の基地問題に絡めたお話が収録されているのですが、これはまぁ、炎上してもしょうがないかな、と……。

なお橘さん自身は、この件について「追記」として本書ではこう言われていまして。
これについてはツイッターで多くのコメントをいただきましたが、その大半は「なぜ韓国はまちがっているのか」という指摘(というか罵詈雑言)で、私の疑問(日本人の民意と韓国人の民意をなぜ差別するのか?)にこたえるものは数えるほどしかありませんでした。
まー、そう言われても、人によっては橘さんが「韓国を擁護している」と誤読(?)してもしょうがないと思います。


◆一方第4章では、やや可燃性が低めの時事問題がテーマ。

ここからは上記ポイントの5番目を引用しましたが、他には「日大のパワハラ事件」や、「老後2000万円必要問題」などが登場します。

第3章でエキサイトした方も、この章で落ち着いていただけたら、と。

ただ、第5章ではふたたび「右翼」ネタが登場したので、こちらはパスさせてもらいました。

……以上、全般的に炎上性が高めのお話が多いので、多分アマゾンレビューも荒れると予想される本書。

現時点ではまだレビューが1つもないですが、今後いきなり星1つのレビューが連発されていても、本エントリーを読まれた方は、落ち着いて判断してください。

ただ長いこと橘さんのファンをしていると、そういうのも含めて橘さんらしいと思えますし、私は十分楽しめましたが。


必ずしも万人には勧められませんが、気になる方は読むべし!

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事実 vs 本能 目を背けたいファクトにも理由がある
Part0 ポピュリズムという「知識社会への反乱」
Part1 この国で「言ってはいけない」こと 
Part2 私たちのやっかいな習性
Part3 「日本人」しか誇るもののないひとたち
Part4 ニッポンの不思議な出来事
Part5 右傾化とアイデンティティ


【関連記事】

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【遺伝の真実?】『もっと言ってはいけない』橘玲(2019年01月28日)

【R指定?】『言ってはいけない 残酷すぎる真実』橘 玲(2016年04月17日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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成功に奇策はいらない――アパレルビジネス最前線で僕が学んだこと

英治出版さんの作品で、今年2月に出ていたようなのですが、結構面白そうなのにまったくノーケアでした(恥)。

「63%OFF」と値引率が高めなこともあり、Kindle版が700円弱、お得な計算です!


【編集後記2】

◆昨日の「講談社のビジネス・経済書 ベストセラーセレクション」の記事で人気だったのは、この辺の作品でした(順不同)。

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When 完璧なタイミングを科学する

参考記事:【科学的自己啓発書?】『When 完璧なタイミングを科学する』ダニエル・ピンク(2018年09月06日)

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本物のリーダーは引っ張らない チームをつくる4つの感情スイッチ

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描いて、見せて、伝える スゴい! プレゼン

参考記事:【プレゼン】『スゴい! プレゼン 描いて、見せて、伝える』ダン・ローム(2015年03月04日)

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成功するには ポジティブ思考を捨てなさい 願望を実行計画に変えるWOOPの法則

参考記事:『成功するには ポジティブ思考を捨てなさい』のあまりの凄さに戸惑いを隠せない(2015年06月10日)

よろしければ、ご参考まで!


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Posted by smoothfoxxx at 08:00
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